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ダイハツ、全方位での進化を遂げた新型「ムーヴ」発表会

新ボディー骨格構造の採用やドラポジの適正化などで小型車並みの基本性能を実現

2014年12月12日開催

ムーヴ X“SA”(写真左)とムーヴカスタム RS“Hyper SA”、ダイハツ工業 取締役社長の三井正則氏

 ダイハツ工業は12月12日、同日発売した新型「ムーヴ」の記者発表会を都内で開催。ダイハツ工業 取締役社長の三井正則氏とともに技術本部 副本部長 上田亨氏が登壇し、新型ムーヴの概要を説明した。

 新型ムーヴに関しては関連記事(http://car.watch.impress.co.jp/docs/news/20141212_680011.html)に詳しいが、従来からのムーヴ、ムーヴカスタムに加え、上質感や高級感を極めた「ハイパー」を新設定。登録車から乗り換えるユーザーも視野に入れた、意欲的な作品となる。

 パワートレーンは、自然吸気/ターボエンジンに全車CVTを組み合わせ、全グレードに2WD(FF)と4WDを展開。JC08モード燃費は2WD車の自然吸気モデルが31.0km/L、ターボモデルが27.4km/L、4WD車の自然吸気モデルが27.6km/L、ターボモデルが25.6km/Lで、全モデルともエコカー減税の免税(100%減税)対象になっている。

ムーヴカスタムのさらに上級グレードにあたる「ハイパー」(写真はRS“Hyper SA”)。ボディーカラーはブラックマイカメタリックとファイアークォーツレッドメタリックの2トーン仕様。価格は166万8600円
RS“Hyper SA”のエクステリアでは前後カラードエアロバンパーに加え、フロントグリルはダーククロームメッキ(LEDイルミネーション付)仕上げに。さらにフロントLEDイルミネーションランプ、LEDヘッドランプ、LEDフォグランプ、LEDストップランプなどが標準装備される。ホイールもハイパー専用となる15インチアルミホイール(X系は14インチを装着)
RS“Hyper SA”のインテリア。専用となるギャラクシーマーブル調のインパネガーニッシュを採用し、本革とファブリックのコンビネーションシートにはブルーステッチがあしらわれるなど上質感を感じられる仕上がりとなっている。また、自発光式2眼メーターの中央に軽自動車初採用となるTFTカラーマルチインフォメーションディスプレイを搭載
ムーヴカスタム RS“SA”の価格は153万9000円。ボディーカラーはメテオライトグレーイリュージョナルパール
ムーヴ X“SA”は130万6800円。インテリアはダークグレー、ホワイト、グレージュの3トーンとして華やかさを演出。標準グレードながらタコメーターが標準装備されるのもポイントの1つ
直列3気筒DOHC 0.66リッターターボエンジンは最高出力47kW(64PS)/6400rpm、最大トルク92Nm(9.4kgm)/3200rpmを発生
直列3気筒DOHC 0.66リッターエンジンは最高出力38kW(52PS)/6800rpm、最大トルク60Nm(6.1kgm)/5200rpmを発生

新型ムーヴはダイハツ製品群の中心的役割を担うモデル

技術本部 副本部長 上田亨氏

 現在のダイハツの軽自動車ラインアップは、楽しさを強調する「コペン」、広さを特徴とする「ウェイク」「タント」、個性的な「ムーヴコンテ」「ミラココア」などを展開するが、今回の新型ムーヴはその製品群の中心的役割を担うモデルに仕上げたという。

 そのモデルチェンジに先立ち、軽自動車を購入しなかった登録車ユーザー、軽自動車を購入したダウンサイザーの両方からの声を徹底的にヒアリング。そのいずれかからも、「信号待ちからの出足で加速不足を感じる」「凸凹道や曲がり道で車体がふらつく」といった基本的な走行性能に不満の声があること、そして輸入車を含め小型車で高い基本性能を持ったモデルが存在感を示していることから、従来からの「低燃費」「低価格」「足まわりを中心にした基本性能の向上」に加え、新型ムーヴでは車体全体での基本性能の向上(=小型車同等の基本性能)、軽量化&低コスト化にも貢献する新しいボディー骨格構造の採用、そして高い質感を実現することに注力して開発を行ったという。

 こうして完成した新型ムーヴのアピールポイントは、「基本性能(安心感ある走行性能と快適な乗り心地)」「デザイン(新グレード“ハイパー”の設定と上質感あるデザイン)」「低燃費(NA全グレードで31.0km/L[2WD]を達成」「先進・快適装備(スマートアシストの進化など軽初採用となる先進装備)」「福祉車両(カスタム・ターボ設定と福祉機能の強化)」の5点。

軽の本流であるムーヴ
軽自動車を購入しなかった登録車ユーザー、軽自動車を購入したダウンサイザーの両方からの声を徹底的にヒアリング
新型ムーヴでは車体全体での基本性能の向上、軽量化&低コスト化にも貢献する新しいボディー骨格構造の採用とともに、高い質感を実現することに注力
新型ムーヴのアピールポイント

 基本性能においては外部からクルマにかかる力、クルマから外部に伝わる力をコントロールすることに着目し、新骨格構造「D monocoque(Dモノコック)」を採用した。Dモノコックではサイドアウターパネルに厚板のハイテン材を使用し、ボディー全体で20kgの軽量化に成功するとともに、その軽量化分を原資として基本性能を高めるためアンダーボディーの補強を実施。さらに新型ムーヴに最適な改良を施した「D suspension(Dサスペンション)」、ステアリングのスイッチで走行モードを切り替えられる「D assist(Dアシスト)」などを新たに採用した。これらによって日常の運転時(30km/h程度)での頭部の動きが少なく、収まりも早くなり、結果的に疲れにくいクルマが実現したという。

 さらにドライビングポジションにも着目し、ステアリングレイアウトやペダルレイアウトを見直したほか、シートの骨格とパッドの変更により「圧力分散」「適正支持」「スムーズな圧力変化」を実現。またシートバックのサイドサポートの大型化や剛性アップによりホールド性が高められ、運転中に最適な姿勢を保持できるようになっている。

 一方で、随所に吸遮音材を配置するとともに、ドアミラーやフロントピラーの形状の見直しによる風切り音の低減、ステアリング支持剛性を高めたことによる振動やノイズの低減、ボディー穴を減らすなどの改善を実施。騒音の侵入経路を従来型から約20%削減し、小型車並みの静粛性を手に入れたとした。

Dモノコック
赤い個所が補強されたポイントとなる
こちらはDサスペンション
外部からクルマにかかる力、クルマから外部に伝わる力をコントロールすることに着目
Dモノコックではサイドアウターパネルに厚板のハイテン材を使用し、ボディー全体で20kgの軽量化に成功
新型ムーヴに最適な改良を施したDサスペンション、ステアリングのスイッチで走行モードを切り替えられるDアシストも新採用
DモノコックやDサスペンションなどの採用により、頭部のふらつきを抑えて疲れにくいクルマが完成した
ドライビングポジションも適正化
静粛性にもこだわった
デザインについて
新グレードとなるハイパーを新設
ムーヴ、ムーヴカスタムのデザインテーマ
カラーバリエーションはムーヴ、ムーヴカスタムそれぞれに13色を設定。合計21色のカラーバリエーションを用意
燃費に関して。自然吸気エンジンの2WD車は従来の29.0km/Lから31.0km/Lへと進化。ターボ車も含め全グレードエコカー減税の免税(100%減税)対象となっている
空力性能も高められ、従来型から約10%ほどCd値が改善されている
衝突回避支援システム「スマートアシスト」は、これまでの「低速域衝突回避支援ブレーキ機能」「誤発進抑制機能」「先行車発進お知らせ機能」に加えて、軽自動車で初となる「後方誤発進抑制機能」が加わり安全性が高められた
パッケージやシートアレンジについて。快適・便利機能も充実
グレード体系について
福祉車両「ムーヴ フロントシートリフト」もモデルチェンジされ、初めてカスタム・ターボ車を設定。あわせて昇降機構も一新している
福祉車両シリーズの価格設定

「これまでの軽とは次元の異なる快適で安心感のある乗り心地」と三井社長

三井社長は「軽の本質、本流という軽自動車に普遍的に求められる要素をさらに進化させ、全方位で総合力を高めた」とアピール

 また、発表会の冒頭に登壇した三井社長は、「1995年に誕生した初代ムーヴは、広さが売りのファミリー向け軽乗用車としてヒットし、その後もモデルチェンジの度に燃費や安全性、デザインなどあらゆる面で常に軽自動車のレベルを引き上げてきた。まさにダイハツの、軽の中心として市場をけん引してきたクルマ」と、これまでを振り返る。

 そして新型ムーヴについては「軽の本質、本流という軽自動車に普遍的に求められる要素をさらに進化させ、全方位で総合力を高めた。ムーヴがこれからも軽の本流であり続けるという、ダイハツの強い意志を感じていただける1台になったと考えている。昨今、少子高齢化や登録車からのダウンサイザーの増加、登録車メーカーの軽市場本格参入など、市場が構造的に変化する中、ダイハツはお客様のニーズにお応えするべく、何度もお客様の声に耳を傾けてきた。新型ムーヴは、その中でもご要望の声を多くいただいた基本性能の大幅な進化を目指し、将来を見据えた次世代ベストスモールを目指して開発を進めた。私も実際にハンドルを握りましたが、お乗りいただいた方に『なんだか運転が上手くなった気がするな』と感じていただけるほどに、これまでの軽とは次元の異なる快適で安心感のある乗り心地の1台となった」とアピールを行った。

 また、今回から採用したDモノコックについても触れ、「今後のラインアップへの展開を見据え、新たなコア技術としてさらに(Dモノコックを)育成していく。また、これらの新技術の背景には、ここ数年進めてきた新しい開発体制がある」とし、これまでプラットフォームやサスペンションなど、個別の部位ごとに行ってきた設計・評価を、例えば基本性能を高めるといった目的別の組織に再編したことを報告。

 最後に、「全方位での進化を遂げた新型ムーヴは、軽ユーザーの皆さまだけでなく登録車からの乗り換えの方にも必ずやご満足いただけるクルマ。これからもお客様の声に耳を傾け、軽の本質・本流を磨き上げていく。軽の魅力をスピードを上げて高め、軽市場をけん引する。今後のダイハツのクルマ作りに引き続きご期待ください」と、新型ムーヴの完成度に自信を覗かせた。

(編集部:小林 隆)