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ブリヂストン、新しいタイヤ原材料資源「グアユール」を用いるタイヤ技術発表会
2020年のグアユールゴムを使ったタイヤの実用化に向け着実に開発が進行中
(2015/10/2 21:45)
- 2015年10月1日発表
ブリヂストンは10月1日、新しい天然ゴム資源「グアユール」から作り出したゴムを用いたタイヤに関する技術発表会を開催した。
本題となるグアユールゴムの説明に入る前に、まずはブリヂストングループの環境認識について語られた。その内容は、現在、世界では新興国を中心に人口が増え続けていて、これに伴いクルマの保有台数も増加しているため、タイヤなどの自動車向けゴム製品を生産するため、世界で年間1100万tもの量の天然ゴムが使われているという。そして世界最大のタイヤ会社・ゴム会社であるブリヂストングループでは、総消費量の10分の1に迫る約100万tの天然ゴムを1年間で使っている。
もちろん、これは無駄に消費しているわけではない。需要が多ければ製品の販売が伸び、そのため原材料の消費も増えることは当然のことだが、このまま人口増加に合わせて需要が増え続けると、原材料である天然ゴムが取り出せる「パラゴムノキ」などの資源消費が限界を超えてしまう見とおしがある。そこで年間約100万tを消費するブリヂストンとしては、これからも継続的、安定的に天然ゴムを得ていくために新しい取り組みを進める必要があると考えたのだ。
そのために掲げられたのが「自然と共生する」「資源を大切に使う」「CO2を減らす」という環境長期目標の3本の柱。この目標を達成することが地球環境の保護になり、すなわち将来においても社会が持続可能(サステナブル)になるという考えである。
ブリヂストンにおける現在の取り組みでは、パラゴムノキの増産や合成ゴムの開発、それにスペアタイヤを不要にすることで消費量が抑えられるランフラットテクノロジーの推進、耐久性向上により使用するゴムの量を軽減するハーフウェイトタイヤの開発、さらに消耗したトレッド面のゴムを張り替えてタイヤを再使用するリトレッドタイヤの技術などがある。これに加えて、もう1つ大きなプロジェクトとなるのがパラゴムノキ以外から天然ゴムを取り出すことで、「グアユール」という植物の研究を手がけてきた。
このグアユールとは、アメリカ南西部からメキシコ北部の乾燥地帯を原産とする植物で、その植物全体の組織内にゴム成分を含んでいるので根から葉まですべてを収穫して利用できる。ただし、このグアユールから天然ゴムを取り出すためには植物を粉砕して溶媒を抽出し、そこからゴムや樹脂成分を分離させるという複雑な工程が必要だった。
そこでブリヂストンは、米国アリゾナ州エロイ市に114km2(東京ドーム約25個分)という敷地を持つグアユールの栽培研究農場を設立。さらにグアユールの加工研究所も作っている。
しかし、これほどの手間とコストを掛けるくらいなら、パラゴムノキをもっと栽培すればよいのでは?と疑問に思うところだが、パラゴムノキが栽培できる地域は東南アジアに集中していて、今でも全体の約9割がこの地域で栽培されている。もちろん、ここでは植林などにより資源のサステナブル化を行っているが、その栽培地にも限界があり、生産地が1個所に集中しているとその地域や輸送ルートにトラブルがあったときに供給が途絶えてしまうリスクもある。また、パラゴムノキは植林してから収穫可能になるまで4~6年の歳月が必要で、25~30年で再植林が必要になる。これに対してグアユールは乾燥地帯で栽培できるので、産地がパラゴムノキと被らない。さらに3年周期で栽培が可能なので、生産性もよいということだ。
そんなグアユールから取れる天然ゴムだが、これをそっくりそのまま従来のパラゴムノキから作る天然ゴムと置き換えられるかと言えばそうではない。このため加工研究所で研究開発を行っているのだが、今回の技術発表会に、従来品の天然ゴムを使っていた部分のほぼ全てをグアユールゴムに置き換えた試作タイヤが展示されるほど技術が進んでいることが示された。社内で行った試験でも、すでにタイヤとしての基本性能は確認済みということで、今後は市販化に向けてさらに煮詰ていく段階とのことだった。
ちなみに、過去にもグアユール由来の天然ゴムで作ったタイヤというのは存在していたが、コストや特性、性能面の課題がクリアできずに終わっていた。これに対してブリヂストンではタイヤとして使えるレベルまで到達できた理由については、前出の研究農場での栽培、品種改良、ゴム成分の抽出、加工方法などを一貫して手がけることにより、どんどん技術を発展させていけたと説明された。
グアユールの研究は2012年からはじまり、3年が経った現在ではグアユールの品種改良や栽培について一定のレベルに引き上げられるまでに進歩。そして2020年にはグアユールゴムを使ったタイヤの実用化を目指しているという。