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スバルスピリットに触れる! 工場見学ツアー
クラッシュテストの現場見学から未来のスバルデザインまで
(2015/10/16 14:22)
- 2015年9月22日開催
スバル(富士重工業)は9月22日、同社の製造拠点である群馬製作所 矢島工場にて「スバルスピリットに触れる! 工場見学ツアー」を開催した。
スバルがメーカーとして、製品以外の部分でも既存ユーザーに限らずさまざまな人と接点を持ち、もっと繋がっていこうとする「SUBARU ACTIVE SQUARE」と称した取り組みの一環として行った参加型イベントだ。スバルは通常時でも工場見学を受け付けているが、今回は「大人の社会科見学」として満足できるものを目指して工夫を凝らしたスペシャルバージョンで、2257組4528人の応募の中から抽選で選ばれた48名が参加した。
ツアーは矢島工場の敷地内にある見学施設「スバルビジターセンター」にて、群馬製作所の大河原所長による歓迎の挨拶よりスタート。富士重工業の歴史や工場の説明、現在の経営についてなどさまざまな視点でスバルブランドを伝えるためのプレゼンテーションが行われた。
また、ここで初めて今回のツアーの詳細が明かされた。その内容は通常使用される工場内の見学通路からの見学にとどまらず、本工場の研究部門まで足を運んで生の衝突実験を見学。最終組み立て工場ではより現場の雰囲気を味わうため、EVカートに乗りスタッフと同じ目線での見学。そして見学後はデザイン本部長自らこれからのスバルデザインについてのプレゼンテーションを行うという、通常の見学では決して体験できない3つの特別プログラムが発表された。
ホンモノの衝突実験を生で見学
数ある自動車工場見学の中でもまずお目にかかれないのがこのプログラムだ。集合した矢島工場からバスに乗って本工場まで足を運び、通常は外部の人に決して見せることのない実験を生で見学したのだ。
実験車は輸出用の「BRZ」(左ハンドル)。衝突実験は、その衝突形態や速度の違い、またロールオーバーや後面衝突などさまざまな形で行われるとの事だが、今回行われたのはハニカムバリアへの40%オフセット衝突実験で、実験時の速度は64km/hだった。
参加者が所定の位置につき、照明が灯されて会場に緊迫感が漂ったあと、高速で走ってきたBRZはドン!という大きな音とともにハニカムバリアに衝突。ほんの一瞬の出来事に会場内は静まりかえり、その後どよめきが起こった。衝突の瞬間からボディーの変形が収束するまでの時間は約0.1秒。その僅かな時間のストーリーこそがこのセクションの真価が問われるのだと担当者は語った。
また、衝突安全という言葉すらまだなかった時代に「スバル 360」を使った衝突実験の映像などもここで公開され、スバル開発陣の安全に対する歴史と想いを感じられるプログラムであった。なお、衝突実験中は取材メディアの撮影も完全に禁止であったため、衝突後に照明が消されて重要部分にシートが被されたのちの模様をお伝えする。
矢島工場にて製造工程の見学 その1(プレス~溶接)
衝突実験見学後、再び矢島工場に戻り今度は製造工程の見学となる。前半は工場内の見学通路からの見学で、こちらは普段でも事前申し込みすれば見学可能なコースだ。巨大なプレス機でドアやボディーが生産されていく様は壮観だ。工場内に積まれているロール状の鋼板や金型は、テレビや雑誌等で目にする機会はあっても、やはり生で見ると新鮮な驚きがあるものだ。また、ほぼ自動化されている溶接の現場で粛々とロボットが作業している様もなかなか面白い。
矢島工場にて製造工程の見学 その2(トリム工場での最終組み立て工程)
プレス~溶接の工程が済んだら次は最終組み立て工程の見学だ。こちらでは「ステラ」の電気自動車を改造した見学用サンラックと呼ばれるカートに乗り、現場の人間と同じ目線で工場の雰囲気を味わいながら見学する特別プログラムだ。この見学用サンラックは吉永社長の工場視察などにも使われたもので、今回参加した48名はまさにVIP待遇なのだ。なお、ペイント工場だけは完全密封で、従業員でも簡単には入ることのできない場所であり、見学は見送られた。
禁断の話満載のデザイン部プレゼンテーション
こちらも今回の特別プログラムで、デザイン部の石井部長から今後のスバルデザインについてのプレゼンテーションが行われた。富士重工業の新中期経営ビジョンではクルマの総合性能や安全性とデザインが同列に扱われている事に触れ、これからはクルマ全体でスバルを表現し、マークを隠して街で見てもひと目でスバル車と分かるデザインを目指していくと宣言。基本的な方向性としては有機的でヌメヌメしたデザインを避け、シンプルで硬い感じを目指し、それがこれからのスバルデザインに大事な事だと語った。
キーワードはダイナミック&ソリッド。そのデザインコンセプトは部分的に現行車にも取り入れているものの、根本的に全身で表現しているのは昨年のジュネーブショーで発表した「VIZIV 2 コンセプト」であり、現実的には次期「インプレッサ」で表現したいとの事だ。
また、フロントグリルは蜂の巣や雪の結晶等に見られる自然界で最も安定した形と言われる六角形(ヘキサゴン)を採用。これは戦後、中島飛行機が解体されたあとに6つの会社が合わさってできた経緯を持つ富士重工業の歴史も表現しているとの事だ。そのヘキサゴングリルのボンネットに収まる水平対向エンジンをかたどった、コの字を両側に配したデザインがスバルの今後の顔となると明言した。
なお、プレゼンテーションではまだ確定していない今後のロードマップや、デザインにおける他社銘柄との相対的な違い等ここでは書けない話も多数あり、少々暴走気味な部長のプレゼンテーションは、参加者にとっては大きなサプライズプレゼントになったであろう。
以上3つのプログラム以外にも、展示ホールやざまざまなギャラリーを持つビジターセンターの見学や質疑応答の時間も設けられ、参加者には充実した1日になったようだ。特に質疑応答の時間には、参加者から世界的に見ても採用するメーカーが少ない水平対向エンジンの弱点に関する質問や製造工程の自動化率に関する質問、また、製品の個体差についてなど忌憚のない質問も多く、その1つひとつに丁寧に答える誠実さもこのツアーの質の高さを表しているように思えた。
特別な見学プログラムから現場統括者が直接披露するプレゼンテーション、生の衝突音、新鮮な光景、詳細な映像は募集倍率100倍ものプラチナチケットを手にした48人にとっても貴重な体験であり、充実した1日であったであろう。
【お詫びと訂正】記事初出時、「ステラ」の車名を間違えて掲載しておりました。お詫びして訂正させていただきます。