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自動車向けイメージセンサーで世界シェア1位のオン・セミコンダクターが事業戦略を説明
メルセデス・ベンツ「CLS」のライティングシステムの仕組みなども解説
(2015/12/11 21:37)
米国の半導体メーカー「ON Semiconductor」の日本法人であるオン・セミコンダクターは12月8日、都内で記者説明会を開催し、オン・セミコンダクターの事業戦略を説明した。
オン・セミコンダクターは1999年にモトローラから分離・独立した半導体メーカーで、2010年に日本国内で三洋電機(現在はパナソニックに統合されている)の半導体子会社を買収した経緯もあり、日本国内にも製造拠点を持つなど、日本での事業も盛んに行なっている半導体メーカーになる。
また、11月にはインテルの創業者が創業前に勤めていたことで知られている名門半導体メーカー「フェアチャイルド セミコンダクター」を買収する契約を結んだと明らかにするなど、近年は積極的なM&Aにより事業規模を拡大している。記者説明会では、そうしたオン・セミコンダクターの事業方針などについて説明が行なわれた。
自動車向け半導体で市場シェア第7位
米オン・セミコンダクター コーポレートストラテジー&マーケティング担当副社長のデビッド・ソモ氏は、オン・セミコンダクターの概要を説明した。ソモ氏は「2014年時点で32億米ドルの年間売り上げがあり、さまざまな半導体製品を多角的に製造し、供給している。多彩な製品をそろえて顧客のニーズに応えることができるようになっており、自動車、産業向け、通信向けが売り上げの70%を占めるようになっている。売り上げのうち3分の2はアジア太平洋地域で、日本は全体の10%を占めている」と述べ、同社のビジネスにとって日本は売り上げの10%を占める非常に重要な市場であるとした。
その上でソモ氏は、今年の11月に発表した米フェアチャイルド セミコンダクターの買収について説明した。フェアチャイルドは1960年代にシリコンバレーで創業した名門半導体メーカーで、インテルの創業者であるロバート・ノイス氏、ゴードン・ムーア氏、アンディ・グローブ氏などが、インテルを創業する前に勤務していた会社としても知られている。その後、ナショナル セミコンダクターに買収されたあとに再度独立し、近年はパワー半導体などの製品を提供するメーカーとして知られていた。
ソモ氏は「これまで弊社が得意としてきた低電圧から中電圧の半導体に対して、フェアチャイルドは中電圧から高電圧を得意としている。これにより、弊社のラインアップは低電圧から高電圧まで全領域をカバーすることができるようになる」と述べ、合併が完了して両社の売り上げを合わせると、メモリーを除いた半導体メーカーの市場で10位に浮上するという見通しを明らかにした。これは日本のルネサス エレクトロニクスの9位に次ぐ位置で、半導体ビジネスは基本的には規模の経済であるので、オン・セミコンダクターのポジションを大きく強化することになる。
自動車向け半導体の売り上げは年々増加。自動車向けの割合は31%に
次にソモ氏は、同社が現在力を入れている「自動車」「無線通信」「産業向け」の3つの分野についての説明を行なった。自動車に関しては2012年は売り上げの26%だったが、2014年の段階では31%に上昇していることなどを示し、自動車向け半導体における同社の立場は強化されているとした。「現在、自動車向けの半導体市場ではグローバルで7位のサプライヤーとなっている」とソモ氏は述べ、電装系やイメージセンサーなどの分野で特に強く、イメージセンサーについてはシェア45%でグローバルで1位だとした。
その上で、2015年型のメルセデス・ベンツ「CLS」に装着されているヘッドライトのシステムに、同社の半導体が多数使われていることを説明した。具体的にはLEDの駆動部分、ハイビーム/ロービームの切り替え、ライトの向きの左右切り替えなどに同社の半導体が使われているという。その説明後にビデオが紹介され、車内に設置するイメージセンサーを活用して、対向車に合わせてハイビームとロービームを切り替えたり、先行車両の動きに合わせてヘッドライトを左右に動かすといった様子が示された。
このほか、IoT(Internet Of Things)向けに同社が用意している、バッテリーを必要としないスマートパッシブセンサーや、AirFuel Alliance(かつてはA4WPという名称だったが、AirFuelに変更された)が規定しているワイヤレス給電システム向けのパワーマネージメントICを他社に先駆けて発表したことなどが説明された。
日本でも製品開発を実施。日本の顧客ニーズに合わせた製品開発も行なっていく
米オン・セミコンダクター システム・ソリューション・グループ 上席副社長 兼 ゼネラル・マネージャーのマムーン・ラシード氏は「日本の製造業は弊社にとって重要なカスタマー。日本には新潟工場をはじめとした前工程を行なう半導体生産工場や製品開発を行なうチームがあり、私自身も日本に常駐して指揮をしている。富士通と合弁で会津の工場を運営していくと発表したが、それもうまくいっており、2016年末には月産1万5000枚のウェハーを生産できるようになる見通しだ」と同社の日本における現状を説明した。
すでに述べたとおり、同社は旧・三洋電機の半導体子会社を買収した経緯があり、それらの日本での施設を引き継いでいる。それと同時に、富士通の半導体子会社である富士通セミコンダクターが福島県の会津若松市に所有している工場に、オン・セミコンダクターがファウンダリ生産の委託と少額出資を行なっており、富士通セミコンダクターの工場でオン・セミコンダクター向けのウェハー(半導体を生産するときのシリコンの板のこと。最終的には切り離して活用する)生産を行なっている。その会津若松の工場における生産が徐々に増えており、2016年末には月産1万5000枚まで増やす計画であることを公表。これにより、同社の日本での生産量を増やせるようになる。
また、ラシード氏が率いているシステム・ソリューション・グループの事業についても触れ、バッテリーの電源管理、スマートフォン向け、モーター制御、車載向けなどのアプリケーション分野でさまざまな製品を開発しているとした。特に開発チームが日本にいることで、日本に数多く存在する自動車メーカーのニーズなどをいち早くつかみ、それを製品開発に役立てていることなどを説明した。