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ホンダ、女性開発者も起用して使いやすさを高めた新型「小型耕うん機」体験会
本田宗一郎氏の「技術で人に貢献する」という意思を現代に伝える汎用製品
(2016/3/4 16:44)
- 2016年3月3日 開催
本田技研工業は3月3日、観光農園「新しい村」(埼玉県南埼玉郡)で新型耕うん機の体験取材会を開催。ホンダが2月に発表した耕うん機の新型3モデルについて説明が行なわれたほか、実際に畑を耕す体験会が行なわれた。
「プチな」「こまめ」をモデルチェンジし、「サ・ラ・ダ FF500」を一部改良
2月に市場投入した新製品は、モデルチェンジした小型耕うん機「こまめ」(F220)、「プチな」(FG201)と、一部改良を行なった自走式の小型耕うん機「サ・ラ・ダ FF500」。「こまめ」「プチな」はエンジンの上部にあるリコイルスターターのケースデザインを一新し、耕す際に直線的に進みやすいよう矢印状のグラフィックを配置。実用面でも有効なデザインとした。
本体デザイン以外の変更点では、100坪程度の畑での使用を想定した「こまめ」は15年ぶりのモデルチェンジで、回転軸への雑草の巻きつきを軽減する形状を新採用。爪の脱着に使うロックピンの形状を改良して脱着を容易にするとともに、R型形状にしてピンの脱落も防止した。
30坪程度の畑での使用を想定した「プチな」は、「こまめ」同様にロックピンを改良し、地面を耕すローターアタッチメントのタイプを増やして対応する作業の選択肢を広げた。また、フロントガードの形状を変更。持ち上げるときに握りやすいリブ形状としている。
300坪程度の畑での使用を想定した「サ・ラ・ダ FF500」は一部改良され、ハンドルとフロントホイールの操作性を向上させたほか、ヒッチを装着した場合でも車輪幅を狭くして使うことが可能になった。
3機種共通の新しい特徴として、長期保管時にキャブレター内の燃料を抜きやすくするため、手動式のキャブドレンノブとドレンチューブを標準装備にしたこと。耕うん機は1年のあいだに全く使わない時期もあり、保管期間が長くなることも多い耕うん機で発生しやすいキャブ詰まり予防のつながる。
汎用製品は創業者・本田宗一郎氏の「技術で人に貢献する」という意思
当日は開発担当者も出席し、ホンダの耕うん機の歴史や製品ラインアップ、今回の新製品の狙いなどを解説した。
本田技研工業 取締役 執行役員 汎用パワープロダクツ事業本部長の五十嵐雅行氏は「『働く人たちを技術で幸せにしたい』という創業者・本田宗一郎の意思により開始された汎用パワープロダクツ事業は今年で63年目。ホンダ汎用製品の年間販売台数は600万台で、うち420万セットがOEMのエンジン単体供給。約180万台が完成機の販売」と事業について説明した。
完成機とは、耕うん機、除雪機、発電機など、汎用エンジンを搭載して「完成品」として仕上げた機械のこと。五十嵐氏は「完成機の信頼性や耐久性、扱いやすさにおける競争力の高さも、この汎用エンジンの搭載によるところが大きい」と評価した。
また、ホンダの耕うん機は主に家庭菜園など、農業のプロではない人の利用するケースが多い。家庭菜園や園芸を志向する女性層の拡大もあり、今回の新製品は女性デザイナーや女性マーケティング担当を起用して製品開発にあたったことが説明された。
製品の概要は、本田技術研究所 汎用R&Dセンター プチな・こまめ・サラダ 開発責任者の神原史吉氏が行なった。小型の耕うん機は鍬やスコップの代わりとなり、短時間で土を耕すことが得意であると紹介した。また、用途はそれだけではなく、アタッチメントの装着で畝立て、追肥、除草などにも活用できるとした。
さらに、耕うん機の用途や規模別のラインアップと、ホンダの耕うん機の歴史を説明。1980年の「こまめ」登場時には、「こんなおもちゃみたいな商品は売れない」という声が多数あるなかで、販売開始後からすぐに大ヒットしたことも紹介し、今回のモデルチェンジでは「数多くのお客様の要望を反映している」と説明した。
今回の新製品の特徴でもあるデザインは、本田技術研究所 汎用R&Dセンター プチな・こまめデザイン担当の濱二美沙子氏が解説。ホンダの耕うん機ユーザーのうち、84%が家庭菜園などの趣味で活用していることから、まだ小型の耕うん機を使っていない人に訴求したいと考え、自ら耕うん機を操作して感じたことや、販売現場からの声をもとに、デザインやコンセプトの検討を進めたことを紹介した。
また、今回の開発では異例なことがあった。通常は1機種ずつ開発するが、今回の「こまめ」「プチな」を2機種同時に開発。そのためM「耕うん機の楽しさやわくわく感を盛り込んだ」という共通イメージを採用し、「新・車軸兄弟」という想いでデザインを進めたという。
デザイン面では「プチな」を弟、少し大型の「こまめ」を兄としてイメージを区別し、「プチな」は親しみやすく、「こまめ」は“1つ上の兄としての信頼感”を形にしたことを紹介した。
実際の畑で耕うん機の使い勝手を体験
新型耕うん機の実演と体験は、実際の畑を使って行なわれた。ホンダのスタッフから説明を受けながら耕うん作業をすると、自分で鍬を使って耕すことに比べ、簡単かつ力をかけずに畑を耕すことができた。
小型の「こまめ」については、別売のアタッチメントを装着し、耕す作業と同時に畝作りも行なうことができた。耕うん機にはさまざまなアタッチメントが用意されているが、中でも人気のアイテムは畝立て作業のアタッチメントで、販売現場では同時購入の例も多いという。
畝立て作業のコツは耕うん機を真っ直ぐに走らせること。曲がってしまえば畝も曲がり、畝の幅や高さにもムラができてしまう。真っ直ぐ走らせるために重要な点は、目標物に向けて進めること。「こまめ」新モデルの天面に書かれた矢印は非常に有効で、矢印があることで目標物の方向に耕うん機を向けやすくなっている。
また、車軸ローター式の耕うん機は、アタッチメントを付けないときは抵抗棒を装着して前に進める。抵抗棒を支点にしてハンドルを地面に押し付けると、爪が掘り返す深さが浅くなる。反対にハンドルを持ち上げ気味にすると、爪が土を捉えて深く掘り進んでいく。ハンドルの上下と耕うん機の耕す深さの関係性を理解することが難しいため、慣れるまでに若干の時間を要した。
一方、約300坪の畑での使用を想定した「サ・ラ・ダ FF500」はパワーも大きく、アタッチメントを付けてもしっかりと進んでいく。「サ・ラ・ダ FF500」の爪は正回転と逆回転のものが交互に付くARS(アクティブ・ロータリー・システム)となっており、より深く耕しながらも、回転を利用する推進力が強くなりすぎないようになっている。
「サ・ラ・ダ FF500」は耕す爪のほかに自走用の車輪があり、移動にもエンジンの回転を利用できる。直線耕幅は55cmと広く本体の自重が重いこともあって、特に意識して操作をしなくてもしっかりと土を掘っていくことが感じられた。