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SUPER GT第2戦富士、終盤の大逆転で1号車 MOTUL AUTECH GT-R(松田次生/ロニー・クインタレッリ組)が開幕2連勝

大どんでん返しのドラマティックレース

2016年5月4日 決勝開催

第1戦岡山に続き、第2戦富士も制した1号車 MOTUL AUTECH GT-R(松田次生/ロニー・クインタレッリ組)

 SUPER GT 第2戦 FUJI GT 500km RACEが、5月3日~4日の2日間にわたって、富士スピードウェイ(静岡県駿東郡小山町)で開催された。5月4日には500kmの長丁場の決勝レースで、全110周でのレースが行なわれた。

 GT500は予選4位からスタートした1号車 MOTUL AUTECH GT-R(松田次生/ロニー・クインタレッリ組)が、残り4周の時点でそれまでトップを走っていた12号車 カルソニック IMPUL GT-R(安田裕信/ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ組)がタイヤバーストを起こすという劇的な展開で大逆転。開幕戦からの2連勝を決めた。

 GT300は予選5位から3号車 B-MAX NDDP GT-R(星野一樹/ヤン・マーデンボロー組)が、短いピット作業やセーフティーカー導入のタイミングをうまく活用しトップに浮上。こちらも逆転で優勝した。ヤン・マーデンボロー選手は、SUPER GT初優勝となる。

静かに始まったGT500のレースだが、100号車の激しいバーストでセーフティカー導入

GT500クラスのスタート。予選順位どおりの静かなスタート

 GT500クラスのレースは実に静かに始まった。スタートでは予選順位どおりに1コーナーに入っていき、その後数周は大きな順位変動もなく静かなレースが展開された。そうしたレースをリードしたのは、12号車 カルソニック IMPUL GT-R(安田裕信/ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ組)をドライブするオリベイラ選手。オリベイラ選手は、他車が1分32秒台のところを1分31秒台を連発する安定して速いドライビングを見せ、予選2位からスタートした46号車 S Road CRAFTSPORTS GT-R(本山哲/千代勝正組)を徐々に引き離し、序盤の段階で20秒近いリードを築くことに成功した。

 3位は、予選3位からスタートした立川祐路のドライブする38号車 ZENT CERUMO RC F(立川祐路/石浦宏明組)で、こちらは46号車をオーバーテイクしようと何度も背後に迫り、22周目に46号車をオーバーテイクすることに成功する。これで、1位 12号車、2位 38号車、3位 46号車という順位になり、4位に開幕戦岡山のレースで優勝した1号車 MOTUL AUTECH GT-R(松田次生/ロニー・クインタレッリ組)が続く展開となった。

 500kmという通常の倍の距離のレースであるため、2回のピットストップ、3スティントでレースが行なわれることになった。1回目のピットストップで46号車と38号車は早めのピットストップを選択し、フレッシュタイヤに交換したことで、走り続けた12号車との差を縮めることに成功した。12号車のピットストップが終了すると、12号車と2位 38号車および3位 46号車の間に20秒あったタイム差は10秒近くに縮まっており、ここから46号車の第2スティントを担当した千代勝正選手の追い上げが始まる。42周目に石浦宏明選手がドライブする38号車をオーバーテイクすると、徐々に安田裕信選手がドライブする12号車との差を縮め始める。

 このまま前戦のように、千代選手の激しい追い上げが見られるのかと思った71周目、トラブルで後退していた伊沢拓也選手がドライブする100号車 RAYBRIG NSX CONCEPT-GT(山本 尚貴/伊 拓也組)のリアタイヤがADVANコーナーで左リアが突然のタイヤバースト。非常に激しいタイヤバーストで、そのバーストの勢いでリアカウルがばらばらに壊れることになり、コース上に多数のデブリ(破片)が散らばることになった。なお、伊沢選手には別状はないことが分かるとサーキットには安堵の空気が流れたが、コース上に散らばったデブリを片付けるため、セーフティーカーが導入されることになった。

SCで46号車、38号車が脱落。12号車が優勝かと思われた終盤にドラマが

 そのセーフティカーが2位 46号車と3位 38号車にとっては運命の分かれ道となった。今シーズンからセーフティカー出動中のピットインはレギュレーションで禁止になっており、セーフティーカーが解除されてからピットに入るようにする必要がある。

 ところが、早めにピットに入った46号車はガソリンが足りず、セーフティカー中にペナルティ覚悟でピットインしなければならないハメに。その結果、46号車には90秒のペナルティピットストップが課せられることになり、これで周回遅れになり、完全にレースから脱落することになった(最終的には7位でゴール)。38号車は、セーフティカー中にはガソリンはもったものの、本来であればセーフティカーがピットに戻った周にピットに入れば間に合ったのだが、タイムロスを嫌ったのかその周にはピットに入らないことを選択した。ところが、ガソリンはそこまで持たず、その周の途中からガス欠症状を示し、最終的にはプリウスコーナーにマシンを止めることになった。

90秒のペナルティストップとなった46号車 S Road CRAFTSPORTS GT-R(本山哲/千代勝正組)。このペナルティストップで上位争いから脱落した

 このセーフティカー導入はトップだった12号車にとってもよくない展開となった。というのも、それまで築いたリードがすべてなくなってしまったからだ。12号車はセーフティカーが入った翌周にピット作業を終えると、安田選手からオリベイラ選手に交代してコースに戻った。その次の周に開幕戦に優勝し40kgのウェイトハンデを積んでいる1号車がピットストップを終えてみると、1号車をドライブするロニー・クインタレッリ選手が12号車の前でコースに戻ってきた。実は、1号車はトップグループの中では遅くピットに入ったため、ガソリン搭載量を少なくできることなどにより、短い時間でピットストップを終えられたのだ。

 ここから、1号車と12号車の激しいトップ争いが始まり、タイム差1秒以内の激しいレースが毎周にわたり展開された。そのレースにクライマックスが来たのが95周目。、12号車をドライブするオリベイラ選手が、1コーナーで1号車をドライブするクインタレッリ選手のインに、できるだけブレーキを遅らせて飛び込むと、クインタレッリ選手も冷静にクロスラインをとってインをキープした。2コーナーでアウトに回ったオリベイラ選手は、そのまま2コーナーをアウトで回ると、次のコカコーラコーナーではイン側になり、見事に1号車をオーバーテイクしたのだ。

12号車と1号車の激しいトップ争い。残り4周、劇的な幕切れを迎えた

 12号車が1号車を1秒程度の間隔で引き離したままレースは終わると思われた残り4周、100Rコーナーでいきなりオリベイラ選手の12号車の左リアタイヤがバーストするという、100号車と同じような症状で、いきなりジ・エンド。12号車は当然そのままリタイアとなり、ドライブしていたオリベイラ選手はその場にがっくりと座り込んでいる様子が場内のモニターに大写しとなった。

 その結果優勝したのは、1号車 MOTUL AUTECH GT-Rで、開幕戦に引き続き2連勝となった。2位は39号車 DENSO KOBELCO SARD RC F(ヘイキ・コバライネン/平手晃平組)、3位は37号車 KeePer TOM'S RC F(ジェームス・ロシター/平川亮組)で、上位陣が次々とリタイアないしはペナルティで後退などしたため大きく繰り上がって表彰台を獲得する結果となった。

2位の39号車 DENSO KOBELCO SARD RC F(ヘイキ・コバライネン/平手晃平組)
3位の37号車 KeePer TOM'S RC F(ジェームス・ロシター/平川亮組)
最終スティンとのドライバーを担当したロニー・クインタレッリ選手は、ゴール後ガッツポーズ
GT500クラス 決勝結果(暫定)
順位号車車両名ドライバーチームタイヤウエイトハンデ周回タイム
11MOTUL AUTECH GT-R松田次生/ロニー・クインタレッリNISMOMI401102時間58分58秒430
239DENSO KOBELCO SARD RC Fヘイキ・コバライネン/平手晃平LEXUS TEAM SARDBS81102時間59分01秒096
337KeePer TOM'S RC Fジェームス・ロシター/平川亮LEXUS TEAM TOM'SBS321102時間59分12秒776
436au TOM'S RC F伊藤大輔/ニック・キャシディLEXUS TEAM TOM'SBS61102時間59分13秒445
56WAKO'S 4CR RC F大嶋和也/アンドレア・カルダレッリLEXUS TEAM LEMANS WAKO'SBS161102時間59分18秒588
68ARTA NSX CONCEPT-GT松浦孝亮/野尻智紀AUTOBACS RACING TEAM AGURIBS-1102時間59分58秒494
746S Road CRAFTSPORTS GT-R本山哲/千代勝正MOLAMI221092時間59分29秒897
819WedsSport ADVAN RC F関口雄飛/国本雄資LEXUS TEAM WedsSport BANDOHYH41093時間00分02秒580
924フォーラムエンジニアリング ADVAN GT-R佐々木大樹/柳田真孝KONDO RACINGYH-1093時間00分06秒055
1064Epson NSX CONCEPT-GT中嶋大祐/ベルトラン・バゲットNAKAJIMA RACINGDL-1093時間00分06秒161
1112カルソニック IMPUL GT-R安田裕信/ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラTEAM IMPULBS121062時間52分47秒192
1217KEIHIN NSX CONCEPT-GT塚越広大/小暮卓史KEIHIN REAL RACINGBS-942時間35分01秒148
1315ドラゴ モデューロ NSX CONCEPT-GT武藤英紀/オリバー・ターベイDrago Modulo Honda RacingBS-942時間35分27秒599
1438ZENT CERUMO RC F立川祐路/石浦宏明LEXUS TEAM ZENT CERUMOBS10772時間07分02秒252
-100RAYBRIG NSX CONCEPT-GT山本尚貴/伊沢拓也TEAM KUNIMITSUBS2671時間50分34秒814
GT500クラス ポイントランキング(暫定、第2戦富士終了時)
順位号車車両名ドライバータイヤポイント数
11MOTUL AUTECH GT-R松田次生/ロニー・クインタレッリMI40
237KeePer TOM'S RC Fジェームス・ロシター/平川亮BS27
339DENSO KOBELCO SARD RC Fヘイキ・コバライネン/平手晃平BS19
446S Road CRAFTSPORTS GT-R本山哲/千代勝正MI15
56WAKO'S 4CR RC F大嶋和也/アンドレア・カルダレッリBS14
636au TOM'S RC F伊藤大輔/ニック・キャシディBS11
712カルソニック IMPUL GT-R安田裕信/ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラBS7
88ARTA NSX CONCEPT-GT松浦孝亮/野尻智紀BS5
919WedsSport ADVAN RC F関口雄飛/国本雄資YH5
1038ZENT CERUMO RC F立川祐路/石浦宏明BS5
1124フォーラムエンジニアリング ADVAN GT-R佐々木大樹/柳田真孝YH2
1264Epson NSX CONCEPT-GT中嶋大祐/ベルトラン・バゲットDL1
13100RAYBRIG NSX CONCEPT-GT山本尚貴/伊沢拓也BS1

ポールスタートの55号車がピットストップで順位を落とす中、3号車 GT-Rが安定した走りで優勝

優勝した3号車 B-MAX NDDP GT-R(星野一樹/ヤン・マーデンボロー組)

 GT300のレースも、GT500同様に、予選順位どおりに1コーナーに入っていくという静かなレースとなった。ポールポジションからスタートした55号車 ARTA BMW M6 GT3(高木真一/小林崇志組)をドライブする小林崇志選手は、1回目のピットストップまでトップを維持した。ところが、その1回目のピットストップで給油に非常に長い時間がかかってしまい、66秒もストップすることに。これはほかのGT300のチームに比べると10秒以上も長いピットストップで、1回目のピットストップが終わってみると、トップから滑り落ちてしまったのだ。

GT300クラスのスタートシーン

 その1回目のピットストップを終えるとトップに浮上していたのは、予選5位からスタートした3号車 B-MAX NDDP GT-R(星野一樹/ヤン・マーデンボロー組)の星野一樹選手。星野選手は、ピットストップで遅れた55号車が追い上げてきても、動揺せずトップを維持することに成功した。セーフティカーが導入された後も、55号車に比べて短いピットストップで、そのままトップを維持してゴールすることに成功した。

 その3号車からピットストップの度に遅れをとることになった55号車 ARTA BMW M6 GT3だが、最後のピットストップを終えると、タイヤ無交換作戦をとった25号車 VivaC 86 MC(土屋武士/松井孝允組)にも抜かれていた。しかし、コース上では非常に速さをもっており、終盤に再び25号車をオーバーテイクし、2位を獲得した。3位は25号車 VivaC 86 MC、4位は18号車 UPGARAGE BANDOH 86(中山友貴/山田真之亮組)、5位は0号車 GAINER TANAX GT-R(アンドレ・クート/富田竜一郎組)。

2位は55号車 ARTA BMW M6 GT3(高木真一/小林崇志組)。速さを見せたが、ピットストップ時間が長く、今後の課題もうかがえた
3位は25号車 VivaC 86 MC(土屋武士/松井孝允組)
GT300クラス 決勝結果(暫定)
順位号車車両名ドライバーチームタイヤウェイトハンデ周回タイム
13B-MAX NDDP GT-R星野一樹/ヤン・マーデンボローNDDP RACINGYH21023時間00分16秒590
255ARTA BMW M6 GT3高木真一/小林崇志AUTOBACS RACING TEAM AGURIBS-1023時間00分20秒339
325VivaC 86 MC土屋武士/松井孝允VivaC team TSUCHIYAYH121023時間00分34秒799
418UPGARAGE BANDOH 86中山友貴/山田真之亮TEAM UPGARAGE with BANDOHYH-1012時間59分01秒320
50GAINER TANAX GT-Rアンドレ・クート/富田竜一郎GAINERDL61012時間59分20秒320
651JMS LMcorsa 488 GT3都筑晶裕/新田守男/脇阪薫一LM corsaYH121012時間59分22秒216
721Hitotsuyama Audi R8 LMSリチャード・ライアン/藤井誠暢Audi Team HitotsuyamaDL81012時間59分24秒576
887triple a ランボルギーニ GT3細川慎弥/佐藤公哉/飯田太陽JLOCYH-1002時間59分26秒674
930TOYOTA PRIUS apr GT永井宏明/佐々木孝太aprYH-1002時間59分40秒271
1048DIJON Racing GT-R高森博士/田中勝輝/青木孝行DIJON RacingYH-1002時間59分49秒260
1161SUBARU BRZ R&D SPORT井口卓人/山内英輝R&D SPORTDL-1002時間59分50秒588
1250ODYSSEY SLS安岡秀徒/久保凜太郎/加納政樹Arnage RacingYH-1002時間59分56秒636
132シンティアム・アップル・ロータス高橋一穂/加藤寛規Cars Tokai Dream28YH-1002時間59分58秒132
14111エヴァRT初号機 Rn-s AMG GT植田正幸/鶴田和弥Rn-sportsYH-1002時間59分59秒987
1526AUDI R8 LMS密山祥吾/元嶋佑弥Team TAISAN SARDYH-1003時間00分05秒352
16360RUNUP Group&DOES GT-R柴田優作/田中篤/清原章太TOMEI SPORTSYH-1003時間00分22秒625
17108DIRECTION 108 HURACAN峰尾恭輔/ケイ・コッツォリーノLAMBORGHINI Team DIRECTION ShiftYH-992時間59分03秒602
184グッドスマイル 初音ミク AMG谷口信輝/片岡龍也GOODSMILE RACING & TeamUKYOYH30992時間59分42秒030
1963DIRECTION 108 HURACANエイドリアン・ザウグ/横溝直輝LAMBORGHINI Team DIRECTIONYH-993時間00分22秒311
2031TOYOTA PRIUS apr GT嵯峨宏紀/中山雄一aprBS-982時間59分22秒961
2160SYNTIUM LMcorsa RC F GT3飯田章/吉本大樹LM corsaYH-983時間00分33秒140
225マッハ車検 MC86玉中哲二/山下潤一郎/影山正美TEAM MACHYH-973時間00分42秒935
2333Excellence Porsche山野直也/ヨルグ・ベルグマイスターExcellence Porsche Team KTRYH-932時間59分09秒821
247Studie BMW M6ヨルグ・ミューラー/荒聖治BMW Team StudieYH22863時間00分35秒824
2588マネパ ランボルギーニ GT3織戸学/平峰一貴JLOCYH4712時間07分33秒862
-11GAINER TANAX AMG GT3平中克幸/ビヨン・ビルドハイムGAINERDL16641時間52分34秒127
-65LEON CVSTOS AMG-GT黒澤治樹/蒲生尚弥K2 R&D LEON RACINGYH402136分10秒655
-22アールキューズ SLS AMG GT3和田久/城内政樹R'Qs MOTOR SPORTSYH-151時間02分13秒174
-9GULF NAC PORSCHE 911阪口良平/吉田広樹/ディラン・ダーダエルGulf Racing with PACIFICYH-1221分37秒802
GT300クラス ポイントランキング(暫定、第2戦富士終了時)
順位号車車両名ドライバータイヤポイント
13B-MAX NDDP GT-R星野一樹/ヤン・マーデンボローYH21
265LEON CVSTOS AMG-GT黒澤治樹/蒲生尚弥YH20
325VivaC 86 MC土屋武士/松井孝允YH17
455ARTA BMW M6 GT3高木真一/小林崇志BS16
54グッドスマイル 初音ミク AMG谷口信輝/片岡龍也YH15
67Studie BMW M6ヨルグ・ミューラー/荒聖治YH11
751JMS LMcorsa 488 GT3都筑晶裕/新田守男YH11
80GAINER TANAX GT-Rアンドレ・クート/富田竜一郎DL9
911GAINER TANAX AMG GT3平中克幸/ビヨン・ビルドハイムDL8
1018UPGARAGE BANDOH 86中山友貴/山田真之亮YH8
1121Hitotsuyama Audi R8 LMSリチャード・ライアン/藤井誠暢DL8
1251JMS LMcorsa 488 GT3脇阪薫一YH5
1387triple a ランボルギーニ GT3細川慎弥/佐藤公哉/飯田太陽YH3
1430TOYOTA PRIUS apr GT永井宏明/佐々木孝太YH2
1588マネパ ランボルギーニ GT3織戸学/平峰一貴YH2
1648DIJON Racing GT-R高森博士/田中勝輝/青木孝行YH1

(笠原一輝/安田 剛/Photo:奥川浩彦)