インプレッション
2016 ワークスチューニンググループ 合同試乗会(NISMO編)
2016年7月25日 00:00
「NISMO(ニッサン・モータースポーツ・インターナショナル)」「無限(M-TEC)」「TRD(トヨタテクノクラフト)」「STI(スバルテクニカインターナショナル)」という4社の合同グループ活動である「ワークスチューニンググループ」。
日ごろのモータースポーツシーンではライバルとして切磋琢磨しているが、アフターマーケットでは競合しないとのことから、お互いのレベルアップと効率化を図ろうと、1993年より合同で活動している。
その目的はモータースポーツとスポーツドライビングの振興にあり、一般ユーザー向けのサーキット走行会なども実施している。また、1年ぶりに舞台を伊豆の日本サイクルスポーツセンターに移して開催された報道向け試乗会もその活動の一環である。
NISMOは、年初の東京オートサロン2016で初披露された、「セレナ」と「エクストレイル」の「NISMO パフォーマンスパッケージ」と、NISMOパーツをふんだんに装着した「GT-R」という3台を持ち込んだ。
まず、念のためにおさらいしておくと、“NISMO”と名のつくモデルとしては、日産自動車が完成品として販売するコンプリートモデルと、NISMOが設定しているパッケージオプションをユーザーがディーラーで後付けするものがあり、今回のNISMO パフォーマンスパッケージの2台はむろん後者となる。日産としても、すべてのモデルにNISMOのコンプリートモデルをラインアップすることは難しい。それを補完する意味でも、こうしてNISMOでパッケージ化したオプションとして設定しており、追求する方向性は基本的には同じといえる。
そんなNISMO パフォーマンスパッケージを装着したセレナとエクストレイルは、いずれも車高が約30mmローダウンされ、足下に精悍なデザインのアルミホイールを装着。エアロパーツをまとったホワイトのボディのボトム部分に、アクセントとして鮮烈な赤のラインを配したルックスが目を引く。これだけでノーマルとはずいぶん雰囲気が変わって、ずっとスポーティになっている。
SUPER GT GT500クラスの空力エンジニアが監修したというエアロパーツは、フロントのダウンフォースと直進安定性の向上に寄与している。
セレナ NISMO パフォーマンスパッケージ
セレナの試乗車は「ハイウェイスター G」がベース。おそらくセレナのユーザーで「ステアリングを切ったときの動きが大きい」ということが気になっている人は少なくないと思うが、セレナ NISMO パフォーマンスパッケージは重心の高い背高ミニバンながら、重心の高さによるハンデを感じさせないドライブフィールが好印象。ロールがかなり抑えられていて、コーナリングでの不安感が小さい。セレナらしからぬ走りっぷりを見せてくれた。これには前述の空力性能の向上も少なからず効いていることに違いない。
それでいて、ミニバンゆえ後席乗員が不快に感じないよう配慮したとの開発担当者の言葉どおり、跳ねや突き上げは上手く抑えられていた。家族みんなで乗ったときに同乗者も快適で、ドライバーも楽しめるよう、操縦安定性と快適性のバランスがほどよく両立されている。
エクストレイル NISMO パフォーマンスパッケージ
一方、同じNISMO パフォーマンスパッケージのエクストレイルは、ノーマルからの変更内容は基本的にセレナと同じだが、会場となった日本サイクルスポーツセンターのようなワインディングでも、より軽快なハンドリングが楽しめるように味付けされていた。
引き締められた足まわりはコーナリングでの姿勢変化を小さく抑えつつ、タイヤと路面の状況を分かりやすく伝えてくる。あえてNISMOを選ぶ人には、これぐらいノーマルとの違いを感じられるほうが好まれるのではないか、という印象だ。一方、エクストレイルだけにSUVとしてオフロードを走ることも考慮して、ある程度はサスペンションストロークも確保しているという。
また、どちらもやや低音を効かせたスポーティなエキゾーストサウンドを楽しめるのもうれしい。欲をいうと、これだけ走りを楽しめる味付けだけに、どちらもパドルシフトが欲しくなった。また、足まわりの味付けがノーマルとだいぶ異なるのに合わせて、電動パワステのマッチングを見直してくれると、なおよくなるだろう。
GT-R NISMO カスタマイズパーツ装着車
もう1台のGT-Rは、すでに市販されているNISMOのカスタマイズパーツの数々が装着されていた。発表されて間もない2017年モデルの各種情報もメディアをにぎわせているところだが、こちらのデモカーは発売初期の2008年モデル。それでもNISMOパーツの装着により、ここまで走行性能を引き上げられることをつくづく思い知った。伸びやかなエンジンのパワー感、応答遅れの少ないステアリングフィール、タイヤと路面のコンタクトフィールやトラクションの高さなど、改良を重ねた後年のGT-Rにもひけをとらない走りを味わわせてくれた。
しかも今回は「NISMOアンバサダー」を務めるミハエル・クルム氏のドライビングで、そのポテンシャルを存分に引き出した走りを助手席で体感することもできた。クルム氏の卓越したドライビングスキルとそれにしっかり応える試乗車の走りには、ますますGT-Rと、ひいてはNISMOの底力を見せつけられた思いである。