【インプレッション・リポート】
スバル「レガシィ」

Text by 岡本幸一郎


 そろそろ次期年次改良の声も聞こえてきているスバル(富士重工業)の「レガシィ」。ここでは、昨年年次改良を受けた現行レガシィについてのインプレッションをお届けする。

C型レガシィ
 昨年6月14日に年次改良を受け「C型」となったレガシィは、ボディーカラーや、インテリアではデコラティブパネルなどの設定が一部変更されるなど、視覚面に大きな変更はないが、ドライブフィールは大きく変わっている。

 従来のA型、B型は、それ以前の4世代にわたる歴代レガシィから全面的に刷新されたせいか、それほど足まわりが硬いわけでもないのに、ハーシュネスがきつかったり、微振動の収まりもよろしくなく、ワンダリングも気になったりと、ところどころに煮詰めの甘さが感じられた。それはビルシュタインを装着するスポーティな位置づけのS Package系モデルではなく、スタンダードモデルのほうに、むしろ粗さが見受けられたように思う。

 ところがC型は、そのあたりが全面的に改善されていた。その主要因は、まずリアサスペンションの改良にありそう。アッパーアームを鋳造品から板金のものに変更し軽量化するとともに、ラテラルリンクのラバーブッシュを廃してピロボールブッシュ化。動きをなめらかにするとともに、外乱が入っても常にトーインを維持するよう、安定方向に手を入れた。一方フロントも、スタビライザーの効きの向上のため、取り付け部のブッシュを変更している。

 それらにより、まず乗り心地がずいぶん改善されていたし、直進安定性が向上し、操舵に対しリアが遅れてついてくる傾向があったところがクイックに反応するようになった。これは手法こそ異なるが、インプレッサWRX STIのマイナーチェンジにおけるビフォア・アフターで乗り味が変わり、応答性が上がったのにも通じる印象だ。

 ビルシュタインではないスタンダードモデルは、しなやかさが印象的で、本来こうあるべきと思える乗り味を身につけていた。一方、18インチタイヤを履き、ビルシュタインを装着するS Package系は、スタンダードグレードに比べると、乗り心地はやや固めで、明らかにスポーティなハンドリング。固いといっても、けっして不快ではなく、せっかくS Packageを買おうというユーザーにとっては、これぐらいじゃないと物足りないのでは、というレベル。姿勢変化も小さく、やや少し高めの速度域を得意とする印象だった。

 とはいえ、個人的には、あまり何も気になるところのない乗り心地と、素直な操縦性を持つスタンダードモデルのほうに好感を抱いた。とても身軽で、クルマの大きさや重さをあまり感じさせないところもよい。全体的なまとまりのよさは、こちらのほうが上と言えそうだ。

 また、もう1つC型レガシィで気づいたことに、CVTのノイズがさらに小さくなっていたことが挙げられる。世に出てまもないころのリニアトロニックは、CVTバリエーターが発する音が結構気になった。これまでにも改良されてきたが、今回さらに改良が進み、これでほぼ気にならないレベルまで音の問題は払拭されたと言える。

EyeSight
 C型では、EyeSight(アイサイト) Ver.2も大きく進化を遂げた。筆者は、B型の現行レガシィより搭載された「ver.2」と呼ばれるEyeSightは、結構よくできていると感じていた。たしかに、重箱の隅をつつけば、改善の余地もなくはなかったわけだが、そこまでやらなくても十分に有益で、仕上がりも上々だと思っていた。しかし名称は同じながらC型に搭載されたものは、さらに上の次元に達し、もはや本当にこれ以上はないのではと思えるほどの完成度となっていた。

C型レガシィのEyeSight Ver.2。制御に変更は加えられているが、外観上の変更はない

 機能面での進化点を挙げると、
・ステレオカメラの認識性能向上=データ処理速度を速めた
・VDCユニットの改良=最大液圧を1.5倍に向上
・制御ソフトの熟成=追従クルーズコントロール時のブレーキングのタイミングを早めにするとともに、加速の立ち上がりを早くした
とのこと。

 また、プリクラッシュ時の作動の安定と、単独クルーズコントロール時のブレーキ制御を追加し、下り坂での車速オーバーを抑制したと言う。

 インターフェイスについても、プリクラッシュブレーキが作動して停車した後の自動ブレーキ解除警報を付加して注意を促す機能と、メーターとスイッチの表示について、従来の文字から、より分かりやすいISOアイコン化への対応を図るなどの改良が加えられた。

 まず、これまでEyeSight搭載車にサンルーフは組み合わせられなかったところが、ようやく可能となったことを歓迎したい。今回はC型だけでなくB型も用意されていたので、直接比較することができて、違いをつぶさに体感することができた。

 プリクラッシュブレーキについて、B型では、目の前に障害物が迫ってきたときに、本当に止まるのかと不安になり、思わずブレーキを踏みたくなったのは否めない。そして本制動では、減速Gの立ち上げ方が急激だなという印象もあった。

 それについて、開発を担当した柴田氏によると、もともと予備制動は入れていたが、C型では減速度の出し方を変えたと言う。開始タイミングは変えていないが、いろいろな条件によって減速Gの出方に差があったところを、安定して性能が出るように改良した、とのことだ。また、低い速度では、あまり強い予備制動を行っていなかったが、20km/h程度でも、それなりのGが出るように細かいところの制御を変えたと言う。

 その予備制動が効いていることに加え、本制動においても、強い減速を行なうシーンで、従来のものは、後半でもりもりとGが来る感じだったところ、最初に一気にGを立ち上げて、速めに速度を落としており、よって障害物にあまり接近する前に停止できるケースが増えたはずとのことだった。

 追従クルーズコントロールについても、今回、B型とC型をほぼ同じシチュエーションで試すことができたのだが、かなり洗練されていることを体感。狙いどおり、より自然で滑らかな作動が実現されることを確認することができた。B型では、追従時の反応が遅れたり、ちゃんと前走車や割り込むクルマを見つけられていないのではと感じたりすることがたまにあった。ところがC型では、先行車の加減速に対する反応の速さや、割り込むクルマを見つける速さなど、いずれも進化していることを確認することができた。結果、ぶつかるのではと心配になってブレーキを踏み足したくなったり、置いていかれてアクセルを踏み増したくなる頻度が明らかに減っている。

 また、単独クルーズコントロール時の、ブレーキ制御が追加。下りで速度オーバーとなるようなシーンで、ブレーキを効かせて速度を抑制してくれる。ちなみに、自動ブレーキとなると、後続車への合図も必要となるわけが、0.05G以上かかる場合には自動的にブレーキランプが点灯するようになっている。

 柴田氏によると、「このバージョンでやりきった感じ。従来のものもそれなりのレベルに達していたと自負していますが、今回はさらにやり残した部分に手を入れました。このEyeSightをベースに、いろいろな車種への展開を図っていく予定です」とのことだった。

 C型レガシィは、見た目はそれほど大きく変わらなかったものの、中身は大きく洗練されていた。すでにあるクルマに対しても丁寧に手を加えて改良していくところはスバルならでは。その作業の労を惜しまない、スバルの真摯な姿勢を改めて感じた次第。そして、さらに完成度の高まっているであろう、やがて出るD型にも、大いに期待したいと思う。


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http://car.watch.impress.co.jp/docs/news/impression/

2012年 4月 25日