インプレッション

シトロエン「DS4」

 「待ってました!」と言っても、シトロエン「DS4」そのもののことではない。DS4はすでに2011年9月に日本デビューを果たしている。待っていたのは、今回新たに搭載されることになった6速ATと、それがもたらす走り。

 DS4は当初、直列4気筒1.6リッターツインスクロールターボエンジンと組み合わされるトランスミッションが6速シーケンシャル・トランスミッション「EGS」と6速MTの2タイプだった。新搭載となった6速ATは、すでに「C5」や「DS5」とプジョー車にも搭載済みではある。が、DS4にとってこの6速ATはまるでシンデレラのクツのようにマッチし、このクルマの走りや乗り味の印象をよりよく高めていると感じたのだった。

スタイル優先!

 DS4は同じシトロエンのモデルラインナップにある「C4」とプラットフォームやデザインのベースを共用するが、C4が比較的コンサバティブかつユーティリティなど実用性を重視しているのに対し、DS4はより個性的なデザインやスポーティさを強めたプレミアム性の高いモデル。そこでフロントマスクのデザインには勢いがあり、ボディ全体の精悍さはサイズを超えた存在感を放っている。

 インテリアはインストゥルメント・パネルを含む前席周辺のデザインをC4と共有するものの、ドアを開けた瞬間から視界に入るシートのデザインに目を奪われる方も少なくないはずだ。2タイプのグレード展開があるDS4の中で「Chic」(シック)はファブリックとレザーを組み合わせたスポーティなコンビネーションシートが、「Sport Shic」(スポーツ・シック)にはスポーティなレザーシートが標準設定されている。

 が、個人的には37万円を捻出して、新オプションに加わったクラブレザーシートの「ハバナ」を選び、このコンパクトなモデルでラグジュアリーな室内空間を楽しみたいと想像が膨らんだ。

 C4とDS4はデザインのシルエットは類似しているが、C4は4ドアの実用性をカタチにしている一方で、DS4はハッチバックともクーペともとれそうなルーフ&テール処理などデザインを優先。そのためリアのオーバーハングはC4よりも短く、ラゲッジスペースはその分C4の方が勝る。後席のヘッドクリアランスもわずかながらDS4は少な目ながら、私の実用基準からすれば、十分なスペースが確保されていた。

しなやかな走り

 デザイン性の高いモデルをスマートかつ軽快に扱ってみたい。そんな期待の高まるDS4に新たなトランスミッションが加わったことで、ドライブフィールの洗練度は増している。

 この1年、6速EGSと6速MTの間には見えない隙間を感じずにはいられなかった。それはトランスミッションの機構とドライブフィールにある。6速EGSは、構造はMTだがドライバーはAT車として扱えるトランスミッション。EGSはMTほどではないが燃費がよく、最近では環境性能を高める技術として、エンジンのダウンサイジングと共に多くの欧州メーカーが採用を進めている。が、DS4が採用するEGSはシングルクラッチを採用することから、変速ショックや変速ラグなどが気にならないと言えばウソになる。

 一方でよりシンプルかつ燃費性もより優れた6速MTは、国から許可されていなければ運転できないし(AT限定免許では運転できない)、そもそも操作が面倒だし、坂道発進が怖いという人には勧められない。選択肢はおのずと6速EGSとなる。でもでも乗り味のスムーズさは……うーむ、どちらも微妙。「もっと普通のATがあったらいいのに……」という思う方、沢山いたのではないか。

 6速ATに1.6リッター ツインスクロールターボエンジンを組み合わせたDS4 Chicの走りは、とてもしなやかだ。そもそもDS4はスポーティと言っても、サスペンションのストロークを活かしたしなやか走りが気持ちいいモデル。着座位置が少し高めの設定にあるため、最初は乗り心地に腰高な印象を覚えるのだが、すぐに忘れる安定感が得られるのがDS4の素晴らしいところと言える。ステアリングの操作感もやや重めだけれど手応えは誰にでもちょうどいい重さだ。

 そこでシフトアップをトントンと走行状況に応じて素早くかつリズミカルに行い、気付かぬうちに6速でクルーズできるこのモデルは、ドライバーに余計なメカニカルインフォーメーションを与えない。特に街中では1.6リッター ツインスクロールターボエンジンを高回転まで回さずに変速していくので静粛性も高い。

 一方でドライバーが速さを求め、アクセルを強く踏み込んだときの力強さも、満足度が高い。ちなみにトランスミッションとのマッチングを考慮したエンジン・マネージメントにより、6速EGSの最高出力156PSに対し、6速ATは162PSと、わずかならパワーアップもしている。

メーターの色は文字盤と文字の色を好みで変えることができる
前席の頭上まで伸びる大きなフロントウインドー。日を遮りたい時のために可動式のサンバイザーが備わる

大本命登場

 これまでも基本性能については仕上がりのよさを見せていたDS4。新たなトランスミッションの搭載は一層滑らかな走りを得たことで上質さを高め、しなやかな走りが誰にでも楽しめるモデルと言えるだろう。

 今回追加となった6速AT搭載モデルは、6速EGSとほぼ同等の装備を持ちながら、Chicで1万円アップの310万円。この価格に中には、個人的にも大好きなアクティブ・ランバー・サポートも標準で含まれている。腰のマッサージをしてくれる機能だ。

 ただし、もし6速EGSのあのシングルクラッチの走り速が好きだと言う方は、購入を急いだほうがいいかもしれない。在庫が無くなり次第、カタログモデルからフェードアウトするそうだ。私が気になっていた6速EGSと6速MTの隙間を“今”は埋めるという表現ができるが、今後は6速ATか6速MTかの選択へと変わっていく。

 が、日本市場での大本命の登場に「待ってました!」と言いたいのは、私だけではないと思う。

 シック(6速EGS)シック(6速AT)スポーツシック(6速MT)
全長×全幅×全高[mm]4275×1810×1535
ホイールベース[mm]2610
前/後トレッド[mm]1530/1525
重量[kg]136013801400
エンジン直列4気筒DOCH直噴1.6リッターツインスクロールターボ
ボア×ストローク[mm]77×85.8
最高出力[kW(PS)/rpm]115(156)/6000120(162)/6000147(200)/5800
最大トルク[Nm/rpm]240(24.5)/1400-3500240(24.5)/1400275(28.0)/1700
トランスミッション6速EGS6速AT6速MT
駆動方式2WD(FF)
ステアリング位置
前/後サスペンションマクファーソン・ストラット/トーションビーム
前/後ブレーキベンチレーテッドディスク/ディスク
前/後タイヤ215/55 R17225/45 R18
乗車定員[名]5
JC08モード燃費[km/L]11.711.312.9

(飯田裕子)