写真で見るプロトン「サトリアネオ」


 モータースポーツ向けの各種パーツ開発を手がけるキャロッセ(クスコ)が、マレーシアの自動車メーカー・プロトンのコンパクトカー「サトリアネオ」を正規輸入すると発表したのは既報のとおり。

 パーツメーカーであるキャロッセが自動車の輸入に踏み切ったのは、ラリーなどを筆頭としたモータースポーツに“気軽に”参加できる車両がないため。気軽にというのは、すなわち価格面のことを指しており、誰もがモータースポーツ競技でトップを目指しているわけではなく、純粋に競技を楽しみたい、クルマの運転を楽しみたい層がいて、そうした向きにサトリアネオを提案したいというのが、キャロッセの考えだ。

 プロトンは創業当初、三菱自動車工業との資本提携などを行っており、先代のサトリアネオは「ミラージュ」のOEMモデルという位置づけだった。今回導入される現行サトリアネオも、足まわりやギアボックスの一部に三菱製を使っていてその名残りがあるが、スイフトと同等のショートホイールベースや、バルクヘッドまわりのフレーム剛性が高いことから得られる回頭性のよさ、1160kgという軽い車重、リアに奢られるマルチリンクサスペンション&ディスクローターなど、モータースポーツ向けのベース車両としての素質を多数兼ね備える。

 ちなみにキャロッセは、今年の全日本ラリー選手権とAPRC(アジア・パシフィックラリー選手権)のジュニアカップに、サトリアネオのラリーカーで参戦する。

 こうしたレース活動を行っているキャロッセが直接車両を仕入れることで、パーツ開発がスピーディに行われるメリットも生まれる。実際、グループN規定に沿ったホモロゲーションパーツの開発は、サトリアネオの試乗会を行った1月の時点ですでに終えており、今後のレースで蓄積されていくであろうサトリアネオのノウハウは、ユーザーも享受できるようになる。そのメリットは特筆すべき事項だろう。

 気になる販売方法については、キャロッセおよび全国の特約契約店で行われる。特約契約店についてはまだ正式に発表されていないが、すでに30~40店ほど候補が挙がっていると言う。大手自動車メーカー並みに全国どこへ行ってもディーラーがある、というわけにはいかないかもしれないが、きちんとした車両保証をつけて販売することもアナウンスされているし、各種メンテナンスを特約契約店で受けることもできる。サトリアネオに興味を持たれた方は、自宅そばに特約契約店があるかどうか問い合わせてみてはいかがだろうか。

 なお、車両価格は現在調整中で、4月から5月の間に決定するとしており、150~160万円程度が見込まれている。デリバリーは7月から開始する予定で、まずはレース参戦希望者から優先的に納車される。

 エンジンは最高出力83kW(113PS)/6000rpm、最大トルク148Nm/4000rpmを発生する直列4気筒DOHC 1.6リッターを搭載し、前輪を駆動。トランスミッションは競技車ベースの車両らしく、5速MTのみの設定。ボディーサイズは3905×1710×1420mm(全長×全幅×全高)で、ホイールベースは2440mm。ガソリンはハイオク指定となる
つり目のヘッドランプと格子状のグリルなどで、シャープな印象を受けるフロントマスクヘッドランプ消灯時(写真左)と点灯時
スチールホイールのサイズは15×6.0J。タイヤサイズは195/55 R15スポーティなフューエルキャップドアミラーはターンシグナルランプが備わらないシンプルなもの
テールまわりはシンプルな造形。センター出しマフラーが目を惹くテールレンズ下がブレーキランプ、上がターンシグナルランプとバックランプ
プロトンはかつてロータスを買収したことでも知られており、テールゲート左に「HANDLING BY LOTUS」のエンブレムが備わる。右側には車名が入る直列4気筒DOHC 1.6リッターエンジンが横置きされる
インテリアは至ってシンプルなもの
ステアリング中央にプロトンのエンブレムが入るステアリング左側に備わるレバーでヘッドランプの点灯/消灯およびシグナルランプの操作を行う右側でワイパーの操作を行う
運転席側のドア。小さな小物入れが備わる1DINサイズのオーディオが装備され、その上には収納ボックスがあるトランスミッションは5速MTのみの設定
エアコンの操作スイッチは円形。シンプルだが慣れると操作しやすいグリップタイプのサイドブレーキレバーMT車なので3ペダル。右からアクセル、ブレーキ、クラッチ
グレー×ブラックのツートンカラーのシートフロントシートの調整レバー5名乗車が可能なためリアシートには3つのヘッドレストが備わる
サイドブレーキレバー後方にリアシート用のカップホルダーが2つ用意されるトランスミッションの脇にドアミラーの角度調整スイッチとDC12V電源があるグローブボックスはコンパクトで、車検証が入れられる程度のスペースとなる
グローブボックスにサービスブックが入っていたラゲッジルーム横に小さな収納を用意ラゲッジルーム下にスペアタイヤとジャッキがある
リアシートは7:3分割可倒式で、シートバックをダイブダウンさせればカーゴスペースを拡大できる
キャロッセ代表取締役社長の長瀬努氏。今回サトリアネオを輸入することについて、「ランニングコストに優れた車両を取り扱うことで手軽にモータースポーツを始められるし、自分で愛車を作りあげていく楽しさを提供したかった」と説明してくれたクスコワールドラリーチームの炭山裕矢選手。炭山選手にサトリアネオに試乗した感想を聞いたところ、「サトリアネオは全高が低く、車速がのったときの腰高感がない。スイフトスポーツに比べてエンジン出力は非力だが、100km/hからの安定感は(サトリアネオのほうが)高く感じる。手ごろなレースカーという意味で非常に好印象」と述べていたAPRC(アジア・パシフィックラリー選手権)にサトリアネオで参戦する番場彬選手(右)と、同じくサトリアネオで全日本ラリー選手権に参加する牟田周平選手(左)。番場選手は本番に向け、丸和オートランドでサトリアネオのラリーカーでテスト走行を行っていた
サトリアネオ ラリーカー

番場選手によるサトリアネオ ラリーカーのテスト走行







R3仕様のサトリアネオ
 サトリアネオには、本国プロトンのモータースポーツ部門「R3」が開発を手がけたパーツが用意される。

 こちらは今のところ日本で販売される予定はないが、カーボンボンネットやオーバーフェンダー、アルミホイールなどの外装パーツ、マフラー、エキゾーストマニホールド、エアインテークといった吸排気系パーツ、専用シート、インパネなどの内装パーツが開発されており、よりスポーティな仕様にカスタムすることが可能となっている。


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http://car.watch.impress.co.jp/docs/news/photo/

(編集部:小林 隆 Photo:堤晋一)
2011年 4月 20日