写真で見る日産「NV350キャラバン」


 日産自動車の「NV350キャラバン(E26型)」は、キャブオーバータイプのビジネスバン。初代E20型は1973年にデビューしており、このセグメントのクルマとしては長い歴史を持つモデルだ。

 先代モデルのE25型は2001年にデビューしたが、2004年にモデルチェンジを行ったハイエース(200系)に、販売面で大きな差を付けられてしまう。

 その最大のポイントとなったのが荷室長だ。E25型は全長を4ナンバーサイズである4.7mに抑えつつ、衝突安全性を確保するために2.8mとしたが、ライバルは3mをしっかりキープ。積載量を重視するこのクラスのクルマでは、わずか200mmの差が大きなデメリットとして捉えられてしまったのだ。

 新型キャラバンはこうした反省を踏まえつつ、2007年頃から開発がスタート。その柱に据えられたのは、

・クラストップの低燃費
・堂々として存在感のあるデザイン
・広くて使い勝手のよい荷室空間
・従来の商用車にはない先進装備

の4項目となる。

 低燃費のカギを握るのはやはりエンジンだ。NV350では直列4気筒DOHC 2.5リッターディーゼル「YD25DDTi」のほか、ガソリンが直列4気筒DOHC 2リッター「QR20DE」と直列4気筒DOHC 2.5リッター「QR25DE」の計3ユニットが用意される。

 YD25DDTiは、コモンレール式燃料噴射システムやクールドEGRシステムなどを採用し、平成21年規制に対応したクリーンディーゼル。同時に電子制御可変ノズルターボチャージャーを採用することで、E25型に搭載する3リッターディーゼルエンジン「ZD30」と同等のパワー(ZD30:130PS/YD25DDTi:129PS)を発揮しつつ、大幅なトルクアップを実現(ZD30:27.0kgm/YD25DDTi:36.3kgm)している。また、トランスミッションを従来の4速ATから1段増やして5速ATに変更。高速走行時の静粛性を高めつつ、燃費もE25型が8.8km/Lだったのに対して、新型は12.2km/Lと大幅に向上している。

 ガソリンエンジンはE25型にも採用されていたQR20DEおよび、QR25DEと2ユニットを用意。新型への搭載にあたっては、オルタネーター回生制御や低フリクション化、アイドル回転数の低下などの改良を実施。その結果、平成17年排出ガス基準50%低減を達成するとともに、燃費も2リッターモデルで9%ほど改善するなど、環境性能の向上が図られている。
 エクステリアのポイントはホイールベースが140mm拡大されたことだ。ボディーそのものは4.7×1.7m未満という4ナンバー枠から動かすことはできないため、同時にフロントオーバーハングが140mm減少している。となれば、衝突安全性が気になるところだが、高張力鋼板の採用拡大やシミュレーション技術の向上などにより、十分なレベルが確保されていると言う。

 ホイールベース延長の恩恵を受けるのが荷室だ。最大荷室長はE25型より250mm拡大され3050mmを確保。加えて5:5分割可倒式シートや、収納棚などの固定に便利なユーティリティナットの採用、上面をフラットにしたホイールハウスなどにより、使い勝手も高められている。

 乗用車レベルの先進装備も注目のポイント。商用車初となるインテリジェントキーやプッシュエンジンスターターをはじめ、視認性が高く美しいファインビジョンメーター、車両情報表示が可能なカラーディスプレイなど、乗用車ライクな装備の数々を贅沢に採用。全車オプション設定となるものの、キセノンヘッドランプ&LEDポジションランプも用意されている。これは「長時間、高い頻度で運転する機会が多い商用車だからこそ、安全に、そして疲れを少しでも低減するために採用した」とのことだ。

 グレードはバンが「プレミアム GX」「DX」、ワゴンが「GX」「DX」と、ともにベーシック&プレミアムの2グレード構成。

 ボディーバリエーションは、バンでは今回紹介する4ナンバーサイズのロングボディーのほか、1ナンバーサイズとなるスーパーロングボディー/ハイルーフの2タイプ。ワゴンはロングボディー、スーパーロングボディー/ハイルーフの2タイプで、どちらも3ナンバーとなる。また、今回は発表されていないが、ワイドボディーやそのほかのバリエーションも予定されているようだ。

 搭載エンジンはバンの4ナンバーモデルがQR20DEとYD25DDTi、1ナンバーモデルがQR25DEとYD25DDTで、YD25DDTiモデルのみ4WDが選択可能。ワゴンは2WD&QR25DEの組み合わせのみとなる。

 撮影車両はバンのプレミアム GX。

ホイールベース拡大とフロントオーバーハング短縮により、安定感のあるスタイルに。ルーフのドリップチャンネル(雨どい)の廃止と連続したサイドウインドーの採用でスッキリとした印象を受ける
フロントには日産のSUV系モデルに準じたアングルドストラットグリルを採用。シャープさと同時にラグジュアリーなムードだエッジが効いたシャープな造形を持つヘッドランプ。標準はハロゲンタイプバンパー下部にはフォグランプを内蔵する
フロント左側にはサイドアンダーミラーを装備運転席側ドアハンドル。上級モデルはインテリジェントキーが標準装備となるため、ロック/アンロック操作が簡単に行えるフューエルリッドは右サイド。タンク容量はディーゼル、ガソリンともに65L
車名は商用車らしく「NV」ナンバーだが、日本仕様には「キャラバン」のペットネームも残るリアゲートにはグレードを示すバッヂも
スライドドアは両開き仕様。フロアは若干高めな印象ドリップチャンネルの廃止に伴い、キャリアなどを装着するためのボルト穴が片側4カ所用意されている。耐荷重はE25型の50kgから100kgにアップ
標準装備となるハロゲンヘッドランプの点灯パターン
リアコンビランプの点灯パターン
ヘッドランプと同時にフォグランプを点灯させた状態ハイマウントストップランプはリアゲート最上部にキャブオーバーボディーなのでエンジンは助手席下。写真はガソリンエンジンモデル
ガソリンエンジンは2リッター、2.5リッターともに平成17年排出ガス基準50%低減を達成しているタイヤは横浜ゴムの商用車向け低燃費タイヤ「JOB RY52」で、サイズは195/60 R15。スチールホイールだがホイールカバーが付く
上級グレードのインパネはブラックとグレーのコンビネーションカラー。エアコン操作パネルや吹き出し口などはメッキ仕上げとなるステアリングのシルバー加飾も上級グレードのみステアリングの角度は調節可能
AT車のパーキングブレーキは足踏み式を採用シフトレバーはコラムではなく乗用車的なインパネ配置。シフトパターンも一般的なストレートタイプだインパネには引き出し式のカップホルダーを装備
エアコンスイッチはダイヤル式。リアヒーター&リアクーラーのスイッチも備わるインパネの足下には灰皿とアクセサリーソケットインパネ中央、最下部には小物入れが備わる
乗用車でもまだまだ珍しいプッシュスターターを採用。車両盗難の防止という面でも効果がありそうだステアリングコラム右側にはドアミラーの調節&リトラクタブルスイッチヘッドライトレベライザーはマニュアルタイプ
下部にはフューエルリッドオープナーと小物入れ容量が大きめのグローブボックスサンバイザーはバニティミラーや照明のないシンプルなタイプ
上級グレード(バン プレミアムGX/ワゴンGX)には視認性のよいファインビジョンメーターを採用。スピードメーターとタコメーターの間には車両情報カラーディスプレイが備わるオプションのバックカメラを装着すると、その映像を車両情報カラーディスプレイに表示できる
車両情報カラーディスプレイには瞬間/平均燃費、航続可能距離などに加え、エンジンオイルやオイルフィルタの交換時期といったメンテナンス情報も表示可能
上級グレードのシート表皮は起毛織物/スエード調トリコットのコンビタイプ運転席と助手席の間には大型のマルチセンターコンソールを装備。テーブルとしての使用はもちろん、内部にはA4サイズのノートPCを収納できるほどの広さがある
運転席のドアパネル。商用車とは思えない高級感がある2列目シートは足下、頭上ともに余裕があり居住性は上々
バンプレミアムGXの2列目シートは5:5分割可倒式リクライニングはシート横のレバーで行う
シートを起こして収納する際にはシート下の赤いストラップでロックを外すマルチセンターコンソールの後ろ側にはドリンクホルダーのほか、引き出し式のテーブルも備わる
荷室はフラットかつホイールハウスの張り出しも抑えられており、使い勝手がよさそう2列目シートは5:5分割可倒式のため、3人乗車+長尺物を積むといったアレンジが可能2列目シートを収納すれば3050mmもの長い荷室を確保できる。2列目のシートキャッチもフロアへの影響は最小限
Cピラーにはパーティションパイプが装着できるフロントのマップランプと併せて合計4つのルームランプが用意されている
バンの荷室にはルーフサイドやウエスト部など合計24個(ロングボディー車)のユーティリティナットを装備
オプションのフックを付けてロープなどを引っかけたり、DIYで棚を作ったりする際に利用できる2列目シートのルーフ部にはリアクーラーの操作パネルが備わる2列目後方のラゲッジサイドにはリアヒーターの操作パネル
NV200にも採用されているスライドサイドウインドー

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http://car.watch.impress.co.jp/docs/news/photo/

(安田 剛)
2012年 6月 15日