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マイチェンした新型「NV350 キャラバン」の耐久テストを日産車体で見学してきた
新装備「ヒルスタートシステム」などの同乗体験も
2017年7月13日 14:00
- 2017年7月13日 発売
2012年6月の登場から5年あまり、日産自動車の現行型「NV350 キャラバン」が比較的大がかりなマイナーチェンジを実施した。マイチェンの狙いは、競合車との差別化をより強化するとともに利便装備の拡充を図ることがメインテーマ。
競合車との差別化強化においては、まず内外装デザインをリフレッシュした。エクステリアではフロントグリルおよびバンパー、ハイ/ロービームともにLEDとしたヘッドライト、LEDリアコンビランプ、クロムメッキドアミラーなどを採用。
ボディカラーについても、「インペリアルアンバー」「マルーンレッド」「ダークメタルグレー」「ファントムブラック」など、商用バンとしては異例の印象的な4色の新色を含む全8色をラインアップする。
インテリアではステアリングホイールを新しいタイプに変更したほか、各所にピアノブラックとメッキの処理を施し、視認性に優れた液晶モニターと大きなスイッチ類を1つにまとめて使いやすくしたエアコン操作パネルを採用。カーナビなどを収めるスペースをワイド2DINサイズにするなどした。
加えて、日産が得意とする先進安全技術をさらに積極的に展開した。「インテリジェント エマージェンシーブレーキ」とVDCについては、これまで設定のなかった4WDを含めてバン全車に拡大採用。また、小型貨物車4ナンバークラスで初めて「インテリジェント アラウンドビューモニター(移動物検知機能付)」を設定した。
利便装備の拡充については、ユーザーから要望の声の大きかったオートエアコン+リアクーラーをプレミアムGX、およびGXに標準設定としたほか、バックドアオートクロージャーをプレミアムGX、およびGXに標準設定、DX、およびVXにオプション設定とした。また、従来あった「インテリアパッケージ」の内容を充実させた上で「プロスタイルパッケージ」とした。
この大規模な変更に際し、特別にマイチェンしたNV350 キャラバンの開発も担当した日産車体の設備を見学することができたので、許される範囲で紹介したい。
ドア開閉耐久
アクチュエーターにより開閉を行なうテスト。ドア後端外側にあるセンサーはドアの全開を検知するもので、約10秒に1回のペースで開閉する。これに加速度計、応力、ひずみゲージなどを装着し、24時間連続して稼働しながら常時監視し、なんらかの計測値でしきい値を超える変動が出た場合はただちに停止して、あとで状況を調べる。
これ以外にも、力を込めて閉めたり、早く閉めたり、斜めの場所で開閉した場合など、負荷をかけた場合にどのようなことが起きるのかも試験する。
耐熱シャシーダイナモ
室温を35度から55度まで、湿度は90%まで設定可能で、中近東よりもさらに厳しい環境を再現できる実験室でのテスト。また、フロアにはローラーがあり、前方側の送風機を使って200km/h相当の走行状態を再現することもできる。ここでの試験の目的は下記のとおり。
(1)限界登坂および限界高速走行での耐オーバーヒート。
(2)暑いなかでも問題なくエアコンが効くのか、冷房の性能の確認。
(3)温度の計測値に基づき、実際に熱被ばく量が年間どのくらいになるかを算出。熱の影響による各部のゴム部品や樹脂部品の劣化に対する保証の設定の検討。
4輪加振器
追浜や栃木のテストコースの基準路面の上下入力を忠実に再現できる設備であり、4カ所それぞれに内蔵した油圧アクチュエーターにより上下にストロークさせることで、4輪に独立した入力を与えることができる。実車で走行すると長くかかるところを、同設備を使うと3分の1から4分の1に期間短縮できる。ただし、入力は上下のみで、左右やサスペンション取り付け、制駆動による入力は再現できない。ホイールベースやトレッドを変更可能で、軽自動車からマイクロバスまで対応する。
通常はひずみゲージを用いて計測を行なう。新型車の開発時には車体がゲージだらけになるという。キャラバンのようなワンボックス車はバックドア開口部やドア開口部、コーナー部あたりに大きなストレスがかかる傾向で、重量物が取り付けられている箇所には慣性力が働く。また、共振現象も起きるので振動も見る。
重心が高いクルマなので上屋もかなり動き、下から覗くと重量物が大きく振動しているのがよく分かった。台上で車体がわなわなふるえる様子はちょっとコミカルにも見えた。
また、入力を与え続けると必ずどこかが壊れるのだが、そのときの順序が重要とのことを力説していた。例えば、リーフスプリングはアクスルの前方側が破断すると車両の挙動が大きく乱れて大事になる可能性があるので、必ず後方側が先に壊れるように設計するのだという。
環境試験室
-40℃から90℃まで温度を調整して管理できる設備。車両は1台のみ入庫可能で、シャシーダイナモはないので走行状態は再現できない。主に内外装部品の熱サイクルでの変形や変色、接着剥がれなどが起きないかどうかを確認する。
樹脂部品は熱サイクルの影響を最も受けるものだが、部品単品での試験は、熱だけでなく塩水による影響などほかの条件も含め、それぞれ小規模で行なった上で、こちらでは車両全体を入れて試験する。
さらに、テストコースにおいて下記のことを確認した。
アラウンドビューモニター
要望の声に応え、NV350 キャラバンにもようやく設定されたアラウンドビューモニター。カーナビを装着した車両では、ルームミラーとナビ画面のどちらかに画像を映し出せる。サイドブラインドビューも表示可能で、これにより補助ミラーがなくても大丈夫になったのもメリットだ。また、車両周辺に移動物を検知すると黄色い枠とブザーで警報を発するMOD機能も備える。
登坂・ねじれ路 同乗試乗
登坂路では、今回追加になった「ヒルスタートシステム」を試す。ブレーキペダルから足を離しても3秒間ブレーキが保持されて車両がずり下がらないという装備だ。
また、ねじれ路では車体をねじるような入力があるのだが、その状態でもミシミシという音が出ないかを評価する。現在では上で述べた台上試験も行なっているが、かつてはこのねじれ路をひたすら走り続けていたとのことで、今でも前後左右の入力は台上では再現できないので、計測の際にはこちらを走行させるという。
悪路走行
日産内での基準をもとに、世界中の悪路を再現したコースを走行する車両にも同乗した。外で見ているときはそれほど厳しくないように見えたが、助手席に乗せてもらうと激しく音をたてて車体が上下に揺れ、非常に過酷な条件であることを体感。それでも車両は問題なく走行していけるのは大したものだ。