写真で見るマツダ「RX-8」


 「大人4人が快適に乗れるスポーツカー」として2003年3月にデビューした「RX-8」。現在世界で唯一の「ロータリーエンジン搭載量産車」であり、また、観音開きドアにすることで、普通の4ドア車に比べホイールベースを短縮し、スポーツ性を高めたことから、国内外に確固たるアイデンティティーを確立した。

 そのRX-8が5月にマイナーチェンジを受けた。といっても、今回はいわゆる小変更で、基本的には2008年3月に登場したモデルと大きく変わるところはない。これまでグレードによってオプションもしくは標準装備として設定されていた「レインセンサーワイパー」「オートライトシステム」「撥水フロントドアガラス&ドアミラーガラス」「アドバンストキーレスエントリー&スタートシステム」を全車に標準装備としたほか、ボディカラーに新色として「アルミニウムメタリック」「メトロポリタングレーマイカ」の2色を追加設定(計7色)。また、オーディオに関して「オーディオレス仕様(4スピーカー)」を全車で標準としている。

 グレード構成は、レカロシートやビルシュタインダンパーで「武装」する最上級モデルの「タイプRS」、スポーティグレードの「タイプS」。本革シート仕様の「タイプE」、ベーシックグレードの「タイプG」の4車型(これまで「RX-8」だったグレード名を「タイプG」に変更)。トランスミッションの組み合わせは、タイプRSとタイプSが6速MTのみ、タイプEとタイプGは6速ATのみという設定になっている(5速MT仕様は廃止)。

 価格はタイプGの263万円からタイプRSの318万円まで。「運転する楽しさ」を追求したスポーツカーとしては、かなり魅力的な価格設定といえるだろう。

4470×1770×1340mm(全長×全幅×全高)のディメンションは、4ドアとしてはかなり低いプロポーションだ。ホイールベースは2700mmで最終型のRX-7と比べ275mm増。ここ数年のマツダのコーポレートデザインである「5角形グリル」も当然ながら採用されている。今回の取材車は最上級グレードの「タイプRS」。ほかには「タイプE」「タイプS」「タイプG」があり、合計4グレードとなる
2008年のビッグマイナーチェンジで大きく変更された前後のデザイン。リアバンパーにあったローター型のバックフォグもなくなったワイパーは最近流行のフラット式ではなくトーナメント式
オートレベリング機構付きディスチャージヘッドランプ(ロービームのみHID)は全車に標準装備される。フォグランプはタイプRSとタイプSに標準、そのほかのグレードではオプションとなる。また、エンジンが173kW(235PS)のタイプRSとタイプSにのみ運転席側にもオイルクーラーが追加されツインオイルクーラーとなるフロントドアの前方に設置されたサイドウインカー。バルブ付近の反射板の形状を工夫することで、見る角度によって点灯の見え方が変化する仕組み
テールランプは丸型2連タイプ。赤く点灯する部分はLEDで、リバースランプ、ウインカーランプはバルブタイプとなっているマフラーは全グレード共通の2本出し。リアスポイラーはタイプRSのみ標準装備でほかのグレードではオプション写真のホイールはタイプRS専用装備となる19インチタイプ。純正ホイールとしては珍しいBBS製の鍛造品。タイプSの18インチやタイプGの17インチよりも軽いのが自慢のポイント
エンジンは2ローター式のRENESIS(13B-MSP)。最高出力はタイプS&RSが173kW(235PS)、タイプG&Eが158kW(215PS)となっている。トライアングル式のタワーバーはタイプS&タイプRSで標準、タイプG&Eでは2点式となるアドバンストキーレスエントリー&スタートシステムは全車に標準装備。このカード型キーを携帯するだけで、ドアのリクエストスイッチで解錠/施錠ができるほか、トランクのオープンやエンジンの始動もできる
ダッシュボードのデザインは最近のマツダ車に共通するイメージでまとめられている。オプションのカーナビはG-BOOKアルファに対応し、Bluetoothのハンズフリー機能も備えるステアリングはセンターのエアバッグの存在を感じさせないシンプルな造形。スポーク上のスイッチは全車に標準装備。ピアノブラックの加飾パネルはタイプS&RSに標準装備ダッシュボード右下にはパネルライトの照度調整ダイヤルとDSCのスイッチが配置される。エンジン始動はアドバンストキーが車内にある状態で、スタートノブを回せばよい。スタートノブを外すとキーシリンダーがあり、カードに仕込まれた補助キーで始動することもできる
メーターは3眼タイプ。各種ワーニングランプは、3つのメーターの空いているスペースに点灯する。中央のタコメーターにデジタル式のスピードメーターを組み合わせているハイパワー仕様(173kW・235PS)のレッドゾーンは8500rpmからという乗用車としてはかなり高回転型のエンジンを搭載する。なお、現行モデルでは水温によってレブリミットを変更することで、暖機中の高負荷運転を回避するシステムを搭載している。タコメーターの内側に表示されるバーグラフの点灯状態が暖機状況によって変化し、そのときのレッドゾーンを教えてくれる(もっとも水温が低いときは5000rpm。その後、2段階に変化する)
タイプRSでは前席シートはレカロ製の専用タイプとなる。4ドアとはいえ、着座位置は低め。助手席側シートには後席へのウォークイン機構も装備されるRX-8は4ドアだが、乗車定員は4名なので後席には2名乗ることになる。実際に乗り込んでみると意外と広くて快適。すべてのドアを閉めるとさすがに若干の閉塞感はあるが、窮屈には感じない前後のドアを開けるとこういう感じになる。ちなみにリアドアを閉めないとフロントドアは閉まらない構造。リアドアはセンターピラーの代わりをするので相当高い強度が与えられている
FRスポーツカーを象徴する短いシフトレバー。パーキングブレーキレバーともに本革巻きとなる。タイプRSでは、さらにステッチもレッドとなるパワーウインドースイッチの加飾パネルは「ピアノブラック」という輝きのある黒いカラーリングのもの。同色のパネルがインテリアの随所にあしらわれているリアサイドウインドーはポップアップ式に開閉する。開けたままのロックも可能だ(ただし運転席から操作するのは無理)
これまでグレードによって装備状況が異なっていたオートワイパー(レインセンサーワイパー)が、今回のマイナーチェンジにより全車に標準装備されることになった。レインセンサーはフロントガラス中央上部(内側)に配置されているオートライトシステムも全車に標準装備。暗くなると自動的にライトをオンにしてくれる
安全装備関連では、左右両座席エアバッグは標準装備だが、カーテン&フロントサイドエアバッグは全車にオプション設定。家族で乗るならぜひ装備しておきたい決して広くはない室内を有効に使うため、ルーフ側にもいろいろな装備を設置している。オーバーヘッドコンソールにはサングラスポケット、そしてバニティミラーを備えるサンバイザーの裏側にはETCユニットを埋め込む。ETCユニットはレバー操作でカード挿入口が下を向く設計なので使い勝手もよい
初期のRX-8ではオーディオスペースに市販品を付けるのが難しかったが、2008年のマイナーチェンジ後は、いわゆる「2DINサイズ」に対応。全車でオーディオレス仕様(4スピーカー)を標準とし、G-BOOKアルファ対応HDDナビや、BOSEサウンドシステムをオプション設定しているダッシュボード中央の「インフォメーションセンターディスプレー」には、時刻、気温、オーディオチャンネル、エアコンモードなどをリアルタイム表示グローブボックスは、幅が広く、またかなり下の方にヒンジがあるため大きく開く。車検証入れプラスαの物が入りそうだ
今どきのクルマには珍しく、センターパネルの最下段に灰皿を備える。シガーライターとセットで配置するレイアウトはある意味でオーソドックスだが、逆に今では貴重な存在だろう前席センターコンソールのボックスは、スライド式のフタを持つタイプ。後方にスライドさせてから左に起こすことで、2か所が同時にオープンになる仕組み。ボックス自体は底が浅いが面積が広いので使い勝手はよさそうセンターコンソール内には、シガーソケットとAUX入力のピンジャックも備える
後席のコンソールボックスは、2本分のドリンクホルダーとボックス部分が独立しており、それぞれに跳ね上げ式のフタを持つコンソール後方のパネルを外すとトランクスルーになる。このパネルにもポケットを装備
トランクは開口部こそそれほど大きくはないが、開閉リンケージがダブルヒンジ式なので、荷物の出し入れには問題はない。また奥行きが深いので、かなり多くの荷物が積めそうだトランク内に装備される車載工具類は、電動(シガーソケット)式のエアコンプレッサーと瞬間パンク修理剤がセットになったパンク修理キットと、ジャッキ、ホイールナットレンチ、牽引フック用アタッチメントのみ

(松本尊重 Photo:高橋学)
2009年 6月 29日