写真で見る日産「フェアレディZ」


 日産自動車、いや日本を代表するスポーツカーがフェアレディZだ。初代「Z」のデビューは1969年なので、なんと40年もの歴史を持つ。長きに渡り国産スポーツカーのジャンルを常にリードしてきた存在だ。

 現行モデルはその6代目となるが、先代モデルのデザインイメージを踏襲しつつ、ヘッドライトまわりに斬新なキャラクターラインを追加するなど、現代のスポーツカーらしい「進化」を遂げる一方、リアサイドウインドーには初代Z(S30)のデザインモチーフが盛り込まれ、ネオレトロな雰囲気も醸し出している。

 ハード面では、エンジンの排気量が先代モデルの3.5リッターから3.7リッターに拡大され、6速MTと7速ATを組み合わせている。V型6気筒 3.7リッターエンジンはスカイラインクーペに搭載されたVQ37VHRをベースに、各部をリファインし、247kW(336PS)の最高出力を実現(エンジンは1種類のみ)。車重は最上級グレードのバージョンST(6速MT車)で1520kgと決して軽くはないが、それでもパワーウェイトレシオは4.52kg/PSと、その潜在能力は相当高い。また、世界初搭載となる「シンクロレブコントロール」機構が、さらにそのスポーツフィーリングを高めてくれる。

 インテリアは、いかにもスポーツカー然としたタイトなもの。車幅が1845mmもあるにもかかわらず、室内はその車幅から予想するほど広くはない。むしろ、「適度なタイト感」を強調すべく、ダッシュボードやコンソール、シートなどがデザインされているという印象だ。しかし、これこそ“Zのコクピット”。乗り込んで操縦しているときの満足感は格別だ。

ボディーサイズは4250×1845×1315mm(全長×全幅×全高)と低くワイドなプロポーション(撮影車はバージョンST・6速MT仕様)。全長が短いので、1800mmを大きく超える車幅でもクルマの大きさをあまり感じさせない。ホイールベースは先代モデルより100mmも短縮され、2550mmとなった
スマートでシンプルなデザインながら、ボリューム感のあるフロントデザイン。ヘッドランプのデザインは書道における筆づかいの「とめ、はね、はらい」をイメージしたものだと言う。オートレベライザー付きバイキセノンヘッドランプ(ハイ、ローともにHIDランプ)は全車に標準装備フロントフェンダー後方に設置される「車名ロゴ入り」のウインカーレンズ。見る角度(方向)によって点灯の形状が違って見える
リアビューもフロントと同じイメージでまとめられている。テールランプはLED式で、オプションでクリアレンズタイプも選択できるテールランプのデザインもヘッドランプのデザインを踏襲している
マフラーは左右2本出し。テールパイプが太く力強いデザインだ。純正オプションでフジツボ製、ニスモ製のマフラーが用意されているリアフォグランプは全車標準装備フューエルリッドはボディーラインにあわせるべく複雑な形状になった。リッド(フタ)そのものは樹脂製。ドアロックと連動でロック/アンロックし手動で開閉する
ルーフはセンター部分を低く見せるキャラクターラインをあしらい、またテールゲートはガラスの周囲を取り囲むように抑揚を持たせることで、ボリューム感を演出しているグラマラスなフェンダーと、初代フェアレディZのイメージを盛り込んだサイドビューが特徴
アウタードアハンドルは縦型。後方から開ける。インテリジェントキーを使っている場合、下部にあるボタンを押すだけでロック解除可(助手席にもボタンを装備するがキー穴はない)。アウターミラーは全車ヒーター機能付きの電動格納タイプフロントからリアにかけてのサイドウインドーガラスの造形が、初代フェアレディZを彷彿とさせるデザインとなっている
エンジンは基本的にはスカイラインクーペのVQ37VHRと同じ。各部をリファインしセッティングを変更することで3PSのパワーアップを実現した。電子スロットルは左右バンクに装備する。タワーバーは中空のプレス鋼板とパイプを組み合わせたトライアングル構造で、見るからに剛性が高そうだ
バージョンSとバージョンSTにはレイズ製鍛造19インチホイールが標準装備となる。標準車とバージョンTは異なるデザインの18インチホイールを装備
撮影車(バージョンST・19インチ仕様)のタイヤはブリヂストンのポテンザRE050A。サイズはフロントが245/40 R19、リアが275/35 R19
コクピットのデザインはシンプルながら高級感がある。適度なタイト感がドライバーをその気にさせる。6連メーターは先代モデルから継承されたシートはバージョンSTおよびバージョンTでは本革とスエード調ファブリックのコンビネーション素材となる(電動スライド&リクライニング式)。このコンビシートは写真のパーシモンオレンジのほか、ブラック、グレーが用意され、それぞれドアトリムも同系色となる。また、標準車およびバージョンTはブラックのファブリックシートとなる
ステアリングは市販車としてはかなり小径でスポーティだが、3連メーターがすべてスポーク内の視界に収まる。また、チルトステアリング機構はメーターパネルが連動して動く仕組み。AT仕様ではステアリングの後方にマグネシウム製シフトパドルが設置されるオーディオは、バージョンST&TではBOSEサウンドシステムが標準装備となり、それ以外のグレードではオーディオレスが標準(4スピーカーは装備)。カーウイングスHDDナビやETC、地デジチューナー、VICSビーコンはオプション。なお、コンソール右側のスイッチはイグニッションボタン
各ペダルはアルミ製(フットレストも)。最近の国産車では珍しいオルガンペダル式のアクセルペダルを持つトランスミッションは6速。シフトストロークは短めで操作性も高い。左前にあるのは「シンクロレブコントロール」のON/OFFスイッチ。右前はハザードのスイッチだ車両安定装置のVDCは全車に標準装備。ダッシュボード右下に、作動をON/OFFするスイッチを設けている
シートリフター(デュアルアジャスター。運転席のみ)は全車に標準装備。電動シート仕様でもシートリフターは手動式ニーパッドは運転席だけでなく助手席にも装備されるランバーサポートは電動シート仕様にのみ装備
シフトレバーの後方にあるのはシートヒーターのスイッチ(バージョンST&Tのみ)。電動スライド&リクライニングのスイッチはシートの内側に配置されている。ドリンクホルダーは小物入れとしても使い勝手がよさそうだセンターコンソールボックスはプッシュボタンの操作で自動的に開く。中にはシガーソケットに加え、オプションのカーナビ装着車は、RCAピンジャックのAUX入力と、カーウイングスを利用するための携帯電話接続コネクターが設けられる
ドア開閉操作時に自動的にウインドーが少しだけ下がる「パーシャルダウンウインドー」。室内の気密性を保持しつつ、ガラスに無用なテンションを加えない効果があるインテリジェントキーシステムでは、キーを差し込むシリンダーはない。リモコンキーを携帯していればエンジン始動およびロック/アンロックは可能だ。しかし、ドライバーがどこにしまったか分からなくなることも考えられるため、「指定席」としてホルダーポケット(エントリーイルミネーション付き)を装備している。リモコンキーは手に馴染む形状で適度な重さがある
サンバイザーにはバニティミラーを装備。フタを開けると照明が点灯するセンターコンソールには灰皿はもちろん、シガーソケットもない。シガーソケットは助手席グローブボックス下に独立した形で配置されるフタの大きさから想像するより、開けてみるとかなり小さいグローブボックス。付属の取扱説明書を入れるので精一杯という感じだ
2シーターなので後部座席はないが、リアシートがあるはずの場所にはポケットが設けられている。それほど容量が大きいわけではないが、クラッチバッグやショルダーバッグを置くにはちょうどよいサイズ。また、運転席側のポケットには、フタ付きのボックスもあるラゲッジルームは決して広いとはいえない。リアタワーバーやストラットタワーがあり底面の形状が複雑ということもあるが、天地の寸法もあまりないので容量はそれなりだ
ラゲッジルームの床板の下には、牽引フックやパンク修理キット、サブウーファーが収められる。グレードやオプションによってはテンパータイヤが収納される場合もあるBOSEサウンドシステムのサブウーファー取材車はテンパータイヤの代わりにパンク修理キットが搭載されていた
3眼タイプのメインメーターは、中央にタコ、右にスピードメーターが配置される。左側にあるのは「車両情報ディスプレー」の液晶パネルダッシュボード中央部には3連サブメーターを配置。ドライバー側に向けてオフセットさせてある。左からデジタル時計、電圧計、油温計と並ぶタコメーター下部にはシフトの段数が表示される。その右側にある「S」はシンクロレブコントロール機構がONで点灯(AT車ではギアポジジョンおよびモードを表示)。また、メーター上部にはシフトタイミングインジケーターも装備する
車両情報ディスプレーはメーターフード左上のスイッチで表示を切り替えて使う。四角い液晶の上下にあるバーグラフは、上が燃料(満タンで全点灯。走行とともに右側からランプが消えていく)で、下が水温を表す(水温はランプ1個だけ点灯)。液晶部分の表示は、写真左から「走行時間&走行距離」「航続可能距離」「外気温」
瞬間燃費平均燃費&平均車速半ドアやパーキングブレーキレバーの戻し忘れ、キーONのときにキーを持ったまま車両から離れた際などには警告表示が出る
シフトアップインジケーターが点灯する回転数や、エンジンオイルのメンテナンスサイクル、出発時からの走行時間などを入力設定しておくと、アラームで知らせてくれる機能なども持つ

(松本尊重 Photo:高橋学)
2009年 6月 26日