写真で見るトヨタ「パッソ」/ダイハツ「ブーン」


 トヨタ自動車とダイハツ工業は、Bセグメント・ハッチバックである「パッソ」および「ブーン」をフルモデルチェンジし、2月15日に発売した。パッソはスペシャリティ色の強い「iQ」を除けば、日本国内マーケット向けトヨタ車としては最小となるモデル。一方のブーンは、ダイハツの現行ラインアップでは唯一となるリッタークラス・コンパクトで、ともに2004年のデビュー以来、約6年ぶりに初めてのフルチェンジを受けたことになる。

 今回の2代目のパッソでは、標準モデルに加えて「+Hana」(プラスハナ)と呼ばれるスペシャルバージョンを上級に設定しているのが最大のトピック。一方、先代ブーンのみに設定された、ラリー競技などのモータースポーツに参加するユーザー向けの「X4」(クロスフォー)が、残念ながら今回のモデルチェンジを機に廃止されてしまったことからも分かるように、トヨタ・パッソ/ダイハツ・ブーンともにF1層(20-34歳の女性)を主たるターゲットユーザーとする従来モデルのコンセプトをさらに推し進めた車となった。

 ボディーサイズは全長×全幅×全高が3640×1655×1535mm。初代パッソ/ブーンに比べると、全長で40mm拡大している。さらに+Hanaではノーズ形状の違いから、もう10mm伸ばされている。しかし、その一方で全幅が10mm狭くなったのは注目すべきポイントである。Bセグメントのコンパクトカーでも3ナンバーサイズに達する車が続々と誕生している時代のトレンドに逆行するがごとく、敢えてナロー化を図ったのは、取り回しの向上のためと考えられる。女性ドライバーが多数を占める、このモデルならではの決定だろう。また、シート座面高を従来モデル比で10mm上げたのも、小柄な女性ドライバーでも充分な視界を確保できるようにするためのデバイスと思われる。

癒し系のエクステリア/インテリア
 2代目パッソ/ブーンは、初代と同様にトヨタとダイハツの共同で開発されたモデル。そのエクステリア上の相違点はエンブレムていどのもので、いわゆる“バッジエンジニアリング”の姉妹車である。

 ボディースタイルは、初代のスクウェアで硬質なスタイリッシュ志向から一転して、のどかでキュートな“癒し系”デザインとなった。レギュラーモデルのトヨタ・パッソとダイハツ・ブーンは、ともに可愛らしい丸目のヘッドライトやベージュ系のインテリアを採用。一方パッソ+Hanaは、フォグランプを組み込んだ専用フロントマスクや、シャンパンゴールドにペイントされたドアミラー&ドアハンドルなどでシックに装われる。

 ところで、今回のフルモデルチェンジではプラットフォームを筆頭とするコンポーネンツの多くを先代から引き継ぐなど、フルチェンジとはいえメカニズム上のトピックは決して多彩とは言えないのだが、その一方でインテリアにはひとかたならぬこだわりを見せているのが最大の特徴と言えるだろう。

 まずダッシュボードは、コストの制約の厳しい廉価モデルということで上級車のようなソフトパッド張りというわけにはいかず、樹脂成型のハードタイプとされているのだが、その表面モールドはありがちな革シボ調などでなく、リネン製の壁紙クロスを思わせるシックなもの。特に+Hanaは、チョコレート系のボトムに生成りコットンのようなオフホワイトのトップを組み合わせた、まるでLOHAS系の洒落たカフェのインテリアを思わせるベンチシートを採用しているなど、なんとも居心地の良い空間を演出しているのだ。

 ダイハツ・ブーンには、パッソ+Hanaにあたるグレードの設定はないのだが、上級モデルのフロントにはパッソ+Hanaと同形状のベンチシートを採用している。

 オプションのアクセサリーが充実しているのもこの車の特徴で、特にインテリアでは持ち前の“カフェ感”をさらにアップする、センスの良い小物が数多く用意される。また、パナソニックの「nanoeテクノロジー」を採用し、美肌効果を持つという「ナノイー・ドライブシャワー」ユニットがオプションで選べるあたりも、まさに女性の嗜好をくすぐるところだろう。

メカニズムはコンベンショナル
 パワートレーンは先代からキャリーオーバーされた1リッター直列3気筒DOHCに加えて、1.3リッター直列4気筒DOHCが用意されることになった。これは、日本国内でもリリースされたiQの1.3リッター版と基本的には同じもので、95PSのパワーと12.3kgmのトルクを発生する。

 トランスミッションは初代パッソ/ブーンのトルクコンバーター式4速ATから進化し、全車CVTが組み合わされることになった。このCVTは、1リッター用と1.3リッター用ではまったくの別物で、前者はダイハツのターボ付き軽自動車用を改良したもの。一方の後者は、トヨタのiQなどと基本的には変わらないものとのことだ。10・15モード平均燃費は1リッター版で22.5km/L、1.3リッター版で21.0km/Lと、初代パッソ/ブーン比で1~3km/Lほど向上している。

 ちなみに新型パッソ/ブーンともに1リッター車と1.3リッター車の一部が、エコカー減税およびエコカー補助金の対象となっており、1リッター車(2WD)が75%減税、1.3リッター車(2WD)が50%減税の対象となっている。

 TV CFや各種プロモーションでも、女性をターゲットユーザーであることを明示しているパッソ/ブーン。特にパッソ+Hanaは、明らかにF1層に“刺さる”ことを狙っているようだが、車としての出来も最新鋭の小型車として充分に及第点を与えられるレベルに達していることからも、ただただ若い女性だけに独占させておくのは少々もったいない気がしてしまう。例えば子供たちの手が離れた熟年夫婦が、お洒落なカフェやパン屋を探して歩く……、なんて生活にもとても良く似合うと思うのだが、いかがなものだろうか。

パッソ +hana

パッソの上級版として設定された+パッソHanaは、全長が10mm長い専用のフロントマスクが与えられ、スタンダード版パッソ/ブーンとの差別が図られている。フォグランプも標準装備。ちなみにこのボディーカラー名は「ウグイスメタリック」

 

+Hana専用のヘッドライトは、先々代に当たる「デュエット」(=ダイハツ・ストーリア)を思わせる形状+Hanaは、クリアレンズの専用テールランプを持つ1.3+Hanaは、シャンパン塗装のアルミホイールを標準装着(1リッター版はオプション)
+Hanaはボディーカラーを問わず、ドアハンドルとドアミラーがシャンパンゴールドに仕立てられる

 

チョコレートのようなダークブラウンの専用トリムで仕立てられた+Hanaのインテリア。ザックリとした手触りの良いジャカード織ファブリックのシートと一体成型のトリム類は、シンプルな意匠を持つ。コラムシフトでセンターコンソールも無いので、前席左右のウォークスルーが可能
+Hana専用のジャカード織ベンチシートと、生成りの壁紙クロスを思わせる表面モールドの施されたオフホワイト色のダッシュパネルが、“カフェ”感を演出
ETCユニットは、ダッシュボード下の左端に装着スペースが用意されるパーキングブレーキは足踏み式
1.3+Hanaは、オートエアコンを標準装備。メーカーオプションでチョイスできる「HDDシンプルナビゲーションシステム」には、バックモニターもセットで装備される
リアシート座面を前方にスライドする「ロングクッションモード」は、ブレーキング時に座面の荷物がフットスペースに落ちてまわないための工夫3名乗車で長尺物を積む際には、後席のシートバックを6:4分割で前方に倒すことができる
もちろんリアシート全体を前方に倒すことも可能。大容量のラゲッジスペースが得られるリアシートはリクライニングも可能
シートバックの固定レバー。後席シートバックは2段階にリクライニングできる。レバーは大型のガッチリとしたもので、女性ユーザーでも非常に扱いやすい
ラゲッジスペースは、可倒式の後席シートバックで3種類のスペースを選ぶことができる。フロア高は低く、リアバンパー上面を深く切り欠くことでリアゲートの開口部も広く取ってあるので、例えば女性ユーザーが重い荷物を積み込むような際にも、イージーにアクセス可能
通常モードのトランク。ベーシックカーながら、ちゃんとフルトリムされており、鉄板の露出はない試乗会場には、リアシートの可動状況を示した原寸大モックアップも用意された

パッソ

標準型パッソのプロフィール。+Hanaよりもノーズが10mm短いことから、あえて寸詰まり感を強調した可愛らしいスタイルが際立つ。この車両のグレードは1.0X“Lパッケージ”で、ボディーカラーは標準型パッソ専用色の「ユキ」
標準型パッソは簡潔で可愛らしさを強調したマスク。どことなく“豆しば”などのゆるキャラを思わせる?ダイハツ・ブーンとの大きな違いは、フロントグリル内の意匠とエンブレムのみ
+Hanaと違って、ドアミラーとドアハンドルはボディー同色で仕上げられる

 

標準型パッソは、フロントシートがベンチシートでなく、ハイバックスタイルのセパレート式となる。ファブリック表皮も、柔らかい手触りのジャージ生地が採用された。内装カラーは「キナリ(=生成り)」と呼ばれる明るいベージュの単色ダッシュボードは+Hanaと共通だが、2トーンカラーでないせいか印象はかなり異なって感じられる
左右セパレートシートのため、ウォークスルー時のアクセス性は、若干ながら+Hanaに劣る気がするメーターは全モデル共通。良く見ると、先代のキャッチフレーズだった“プチトマト”印の警告灯が……こちらもダッシュボードには、壁紙クロス状の表面モールドが施される
一体成型のドアトリムは、+Hanaの2トーンではなく、“キナリ”色のコンベンショナルなもの左右セパレートシートの間に置かれるコンソールは、小物を置けるスペースとされている
ダッシュボード中央下部に設置されたマルチトレイは照明付き。さらにその下には、ドリンクホルダーないしは小物入れとしても使用できる、使い勝手の良い格納式の引き出しが据え付けられている
ルームランプはコンベンショナルなものサンバイザー裏側にはバニティミラーを装備。助手席だけでなく運転席側にも用意されている
パッソ/パッソ+Hana/ブーンに全車標準装備される“買い物フック”は、簡素ながら非常に便利なアイデア装備。回転格納式で、約3kgまで吊り下げが可能とのことである

ブーン

ダイハツ・ブーンCLリミテッド(1リッター)の2WDバージョン。カラーはトワイライトオレンジマイカメタリックヘッドライトは標準型パッソと同じ、キュートな丸みを強調した形状を採るテールのコンビネーションランプも標準型パッソと同じく、クリアタイプでないコンベンショナルなもの
ホイールは14インチ・スティール+フルホイールキャップの組み合わせ。アルミホイールは1.3CXのみ標準ダッシュボードはパッソと共通だが、上面のみ濃いブラウンの2トーンに仕立てられるドアトリムは標準型パッソと同じく単色のライトベージュ一色
ドアミラーは、電動調節+電動可倒機能が全モデルに標準で与えられるCLリミテッド以上のグレードは、パッソ+Hanaと同じくベンチシートブーンと標準型パッソは盤面がホワイトのメーターを採用。こちらにも“プチトマト”が見える
ワイパーは、ミスト/間欠/ロー/ハイの4モード。間欠時間の調節は無いが、リアワイパーは全車標準ヘッドライトとウインカーのコンビネーションスイッチ現時点ではブーン/パッソともに全車CVTオートマティックで、シフト操作はコラムレバーで行う
ABSやトラクションコントロールとともに総合制御するVSCシステムはメーカーオプションフタつきのグローブボックスは持たず、小物入れ用のくぼみのみが設けられるブーンおよびパッソ/+Hanaの上位グレードには、助手席に靴などを収めるアンダートレイも標準装備
ブーンのベンチシート車およびパッソ+Hanaの前席には、ポケット付きのセンターアームレストが設えられている
パッソ/+Hanaと同様、ドリンクホルダーを組み込んだ引き出し式の小物入れが用意されるCD・AM/FM付のインテグレートステレオは、ブーン全車に標準装備
イモビライザー機能付のキーフリーエントリーは、CLリミテッド以上のモデルに標準装備スペアタイアはテンパータイプパッソ/ブーンともに1リッター車と1.3リッター車の一部が、エコカー減税およびエコカー補助金の対象

パッソ&ブーン 用品装着車

それぞれ“フロントロアスカート”、“サイドストーンガード”、“バックドアスポイラー”、“リアロアスカート”と呼ばれる外装パーツで、その気になればスポーティなフルエアロ化も可能。これらはすべてディーラーオプションとなる
ワッフル生地のシートカバーで、トータルコーディネイトも可能となる。カラーはこのオレンジのほか、グリーンとベージュも用意。ほかにブラウンの革調シートカバーも選べるオーディオとエアアウトレットの周囲は、シートカバーと同じカラーのドレスアップパネルも装着可能
センタートレイとカップホルダーも、同じ生地とカラーのボックスでトータルコーディネイトできる標準ではグローブボックスの備えは無いが、代わりにセンターにカードなどを挟むことのできるファブリック・パットインパネボックスリッドをオプション装着することもできる
撥水・防水機能のあるトランク用のソフトトレイ。こちらもワッフル生地用の表皮を採用しており、外周のファスナーを閉じれば、バッグのように持ち運ぶことも可能となるファスナーの開閉でボックスとマット2通りの使用法ができる、ラゲージソフトボックス
ディーラーオプション部品でインテリアをフル・コーディネイトしたダイハツ・ブーン柔らかいシリコンゴム製の“イソギンチャク”センタートレイは、小物類をホールドするものトランクスペース内の荷物を隠すトノカバーは、こちらもディーラーオプションとなる

そのほか

パナソニックの“nanoeテクノロジー“を採用した“ナノイー・ドライブシャワー”がオプションで選べるパッソ/ブーンの重要ポイント、インテリアを自分好みに仕立てるシミューション用セット
従来型のパッソ/ブーンからキャリーオーバーされた3気筒1リッターは、69psのパワーと9.4kgmのトルクを発生。ダイハツ主導のCVTと組み合わせられる
パッソ/ブーンでは初採用となった直列4気筒1.3リッターエンジンは、95psのパワーと12.3kgmのトルクをマーク。こちらはトヨタ主導のCVTと組み合わせられ、街中での速さは1.0と大差ないようにも感じたが、高速域での余裕は大幅に高められた

(武田公実 )
2010年 5月 6日