レビュー

【タイヤレビュー】ヨコハマタイヤの最新ミニバン専用タイヤ「BluEarth(ブルーアース)RV-02」

ウェットグリップ性能「a」を獲得

ウェットフル制動でクルマ1台分短く止まれる

 かねてからミニバン専用タイヤには大いに注力しているヨコハマタイヤ(横浜ゴム)では、このほど4年ぶりにモデルチェンジした新商品「BluEarth(ブルーアース)RV-02」を発表した。

 発売は2015年2月となるが、ブルーアース RV-02は従来品「ブルーアース RV-01」の後継モデルで、低燃費タイヤのラベリング制度で、従来の「A-b」から「A-a」を達成。ミニバン専用低燃費タイヤ初のウェットグリップ性能最高グレード商品となる。

 詳しい解説は下記の記事のとおりで、今回は発売に先立ち、テストコースと一般道でひと足早く試乗することができたので、ここにお届けする。

ウェットグリップ性能「a」となったミニバン専用タイヤ、ブルーアース RV-02
偏摩耗を抑制するためシミュレーション技術によりプロファイルを最適化。「ナノブレンドゴム」はウェット性能を高めるシリカ、ウェット性能と低燃費性能をバランスさせるシリカという特性の異なる2種類を組み合わせた「ダブルシリカ配合」を新採用して“雨に強いゴム”に進化した
ふらつき防止や静粛性向上を目的として新設計の非対称パターンを採用。センターと両サイドのリブはわずかにショルダー部分を下げたアーチ形状にして、接地したときに均一に圧力分布する「マウンド・プロファイル」を使って偏摩耗を防ぐ。写真右がアウト側となる
写真左がイン側。一番イン側のブロックは高剛性の「パワーインサイドショルダー」となっており、ミニバンの高荷重に対応。従来のブルーアース RV-01はイン側のショルダーとセンターリブの間は独立したブロックタイプだったが、今回から幅広リブを2本並べる「ツインパワーリブ」に変更して操縦安定性を強化。イン側のグルーブから細く縦方向に伸びる「カットグルーブ」が、水膜を切り裂くように働いて排水性を確保する

●ヨコハマタイヤ、ウェットグリップ性能「a」を獲得したミニバン専用低燃費タイヤ「BluEarth RV-02」
http://car.watch.impress.co.jp/docs/news/20141201_678296.html

 最初に、直線でのウェット制動能力をブルーアース RV-01とRV-02で比較試乗。100km/hで走行後、目安のポイントでフル制動を行う。使用車種は「アルファード」で、タイヤサイズはいずれも215/60 R17であった。

 ウェットグリップ「b」のRV-01もわるくないなと思いつつ、RV-02装着車に乗り換えて同じことを試す。すると全体的にグリップ感が高く、とくに車速が落ちてきてからは減速Gが大きく出ている印象で、完全停止するときもギュッと路面を掴む感覚がある。印象としてはクルマ1台分、約4~5mは短く止まれたようだ。これは大きな進化に違いない。

RV-02装着車でのウェットブレーキ。クルマ1台分短く止まることができた。とくに車速が落ちてきてから減速Gが大きく出る印象

 加えて、コースを往復する際に、隣のレーンに設定されたいろいろな路面で乗り心地や音をチェック。編集担当氏に運転してもらい、2~3列目の乗り心地もチェックしたところ、RV-02は引き締まっていながらも乗り味がまろやかで、音も抑えられており、より快適に乗れることが確認できた。

専用タイヤの優位性をあらためて痛感

 続いて、テストコース外に出て一般道を走行。車種は、折り返し地点までの往路に「オデッセイ アブソルート」、帰路に「エスクァイア」のハイブリッドをチョイスした。

 オデッセイ アブソルートの車両自体は、市販車はすでに改良されているのだが、現行モデルが発売された当初の設定では乗り心地がかなり硬く、試乗車はまさしくその仕様だった。それだけに、印象としては乗り心地が硬いことには違いないものの、本来はもっとガチガチで跳ね気味なところが、RV-02の効果でやや緩和されていて、収束性も高まったように感じられた。

 エスクァイアはハイブリッドカーなので、市街地で普通に走っているときにエンジンが止まるとタイヤからの音が気になる状況もあるはずだが、とくに気になることはなかった。

オデッセイ アブソルートの硬く跳ね気味な足まわりの仕様がやや緩和されるという印象

 コースに戻り、続いては周回路でブルーアースシリーズのスタンダードモデルである「AE-01F」(AAA-c)とRV-02を、「ノア」のハイブリッドと「セレナ」でそれぞれ比較試乗した。ラベリング制度のグレードでいうと、「AAA-c」と「A-a」となり、ここではミニバン専用の低燃費タイヤと、一般的な低燃費タイヤを重心の高いミニバンに装着した場合に、コーナリングや静粛性、操縦安定性などにどのような差があるかをチェックした。

 まず、ノアから走行し、次いでセレナに乗ってみて、いずれも傾向としては似たような感じだったが、車両重量の大きいノアのほうがその差はより歴然と感じられた。AE-01Fでは、すべてのアクションに対する反応がワンテンポ遅れる印象で、ステアリングを切ってから曲がるまでもそうなら、もどしてからは大きな揺り返しが来る。微小舵を与えたときの反応にも乏しい。こちらでも音はそれほど気にならない。

 続いてRV-02装着車に乗ると、走り始めた瞬間から同じクルマと思えないくらい、しっかり感がまるで違うことが分かる。速めのアクションにもしっかりついてくるし、あまりオツリも出ず即座に収束する。ロール角も小さく、走りに一体感がある。微小舵を与えたときも、操舵したとおりについてくるので、AE-01Fのようにふわっとしていない。

 直進性はAE-01Fもわるくはなかったが、RV-02のほうが据わりがよく、直進「安定」性が高いという印象だった。ハイスピードのままバンクを走るという公道にはない状況で試しても、不安感がまるで違った。とにかく乗れば乗るほど、ミニバンの走行特性を深く理解して開発された印象を受けた。

 いわば、AE-01Fではいかにもミニバンらしい動きだったところ、RV-02では、まるで目線だけ高いところにある乗用車に乗っているかのような、心地よい乗り味になる。箱型ミニバンのユーザーには、ミニバン専用タイヤを使うことを強く推奨したいと思った次第である。

 音のレベルや質もかなり違うし、RV-02のほうが剛性感は高いのに、波状路でも衝撃をあまり感じない。むろんRV-02も音はするが、AE-01Fでは曲がりながら凹凸を越えるたびに少しずつ走行ラインがずれていくので修正舵が必要になるところ、RV-02はイメージしたとおりをキレイにトレースしていけるところも大きな違いだ。

 全体的にセレナのほうがシャシーの基本性能が高いのか、AE-01Fとのマッチングがよいのか、ノアに比べるとRV-02との差が小さく感じられた。とにかく、そんなこんなで全体的に安心感がまったく違うし、長距離のドライブになるほど、疲労感もまったく違ったものになるだろう。

ウェットグリップ「b」と「a」の差は小さくない

 最後に、RV-01とRV-02を装着したアルファードで、散水した低ミュー路での円旋回とハンドリングをチェックしたが、これも予想どおり大きな違いがあった。

 MAXで60km/hぐらい車速が出るジムカーナのようなコースを、RV-01装着車でしばらく走って感触をつかみ、すぐさまRV-02装着車に乗り換えたところ、やはり走り始めた瞬間からグリップ感が異なり、ステアリングを切った手応えもまったく違う。RV-01装着車では横に逃げるだけの状況でも、RV-02装着車ならブレーキングでもアクセルでも横に逃げながら前にも進む。とくに奥のヘアピンでは、RV-01装着車だと、横に逃げて散水した水がなくなるあたりまで滑ってしまっていたところ、RV-02装着車はアンダーステアを出しながらも前に進んでいく。

 横滑り防止装置をONにしていても、逃げるときは逃げて、RV-01装着車ではスピンモーメントの兆候が出るときもあるが、RV-02装着車ではそれが起こりにくい。数百mのコースでラップタイムは測っていないが、かなり差があるのではないかという感触だった。

 続いて、同じくスキッドパットで円旋回を行い比較。これまたグリップ感がぜんぜん違って、限界でコーナリングしたときの車速にはかなり差があることは間違いない。スピードメーターを見ていると、車両のほうで何か制御が入っているせいか、なぜか両車で同じぐらいの車速を示していたのだが、感覚としてもだいぶ違ったので、実際には少なからず差があるはずだ。RV-01よりもRV-02装着車のほうが、アクセルのON/OFFで積極的に姿勢を作っていける印象だった。

横浜ゴム 消費財製品企画部 製品企画1グループ 鶴田裕佳氏

 走り終えて、RV-02の企画をとりまとめた横浜ゴム 消費財製品企画部 製品企画1グループ 鶴田裕佳氏に話をうかがった。女性ながら、ただならぬ愛情を注いでRV-02の開発に携わったという。「市場でどういうタイヤが求められているかを調査したところ、静粛性やしっかり感を求める方が多いのに加えて、ウェットグリップを『a』にしてほしいという声が非常に多いことが分かりました。そこで、まず社内の開発関係者にも同じ目標を持ってもらうことから始めましたが、比較的短い期間でそれを実現することができました。やはり自分で運転するときでも雨の日というのは怖いと思いますし、家族を乗せて走るミニバンであればなおのことです。雨の日でも安全に安心して走れて、高速でもふらつかずに、静かで快適に走れるタイヤというのが求められると考えました」という鶴田氏の言葉どおり、RV-02はすべてのミニバンユーザーに太鼓判を押して勧められるタイヤに仕上がっていると思う。

岡本幸一郎

1968年 富山県生まれ。学習院大学を卒業後、自動車情報ビデオマガジンの制作、自動車専門誌の記者を経てフリーランスのモータージャーナリストとして独立。国籍も大小もカテゴリーを問わず幅広く市販車の最新事情を網羅するとともに、これまでプライベートでもさまざまなタイプの25台の愛車を乗り継いできた。それらの経験とノウハウを活かし、またユーザー目線に立った視点を大切に、できるだけ読者の方々にとって参考になる有益な情報を提供することを身上としている。日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

Photo:堤晋一