レビュー

【タイヤレビュー】ブリヂストン、プレミアムブランドタイヤ「REGNO(レグノ)」試乗会

乗用車用「REGNO GR-XI」とミニバン専用「GRVII」、その性能を試す

 ブリヂストンは、1月にプレミアムブランド「REGNO(レグノ)」の新製品2モデルを発表した。乗用車(セダン・コンパクトカー)用として「REGNO GR-XI(ジーアール・クロスアイ)」を、ミニバン専用として「REGNO GRVII(ジーアールブイ ツー)」をラインアップ。この2モデルに自動車ジャーナリストの橋本洋平氏が試乗。そのインプレッションをお届けする。

 なお、発売日は「REGNO GR-XI」が2月20日、「REGNO GRVII」が4月1日となっている。


静粛性や乗り心地はそのままに、走りの部分を強化することを目指した「REGNO GR-XI」

「高い静粛性と上質な音色を実現」「優雅な乗り心地と応答性のよいハンドリングを実現」「高次元の低燃費性能とウェット性能を両立」の3点が商品特長となる「REGNO GR-XI」。「REGNO GRVII」を含め、ラベリング制度の転がり抵抗性能「A」、ウェットグリップ性能「b」に適合する

 昨年末の忘年会シーズン。ついつい帰りが遅くなり終電を逃し、最後はタクシーを使うハメになることが何度かあった。「せっかく高いお金を払うなら個人タクシーに乗ろう」と寒空の中で探し回ってみると、行き着いた個人タクシーの足下には、いずれもブリヂストンのプレミアムブランド「REGNO」の文字が刻まれていた。

 ブリヂストンの社内調査によれば、都内の個人タクシーユーザーのREGNO装着率は24%(ブリヂストンタイヤ全体の装着率は48%)だったというから、およそ4台に1台はREGNOを装着していることになる。経費とはいえ、自らの懐を痛めて購入しているプロドライバーがこれだけ支持しているのだから、REGNOの魅力は計り知れない。

 僕が乗った個人タクシーのドライバーさんは「個人タクシーを開業してから大半をREGNOとともに走ってきました。でも、1回だけほかのブランドに浮気したことがあったんですよ。するとね、やっぱり乗り心地は悪化するし音がうるさい。やっぱりREGNOじゃなきゃダメですね」と語っていた。

 これほどまでに支持されるREGNOは、1981年の発売以来、静粛性や乗り心地、そして運動性能などを高次元でバランスさせてきたブランドだ。30年以上に渡るその歴史では、一貫してブリヂストンが持つ最先端技術を惜しみなく投入。あらゆる領域を高次元でバランスするように設計されていた。

 REGNOブランドをこれまでおよそ4年に渡り牽引してきた現行型の「GR-XT」は、それ以前の「GR-9000」と同じく、外乱を受けにくくするための非対称形状を採用。また、REGNOの十八番ともいえるロードノイズを低減するための消音器(パターンで達成したもの)を、4本すべての縦溝(GR-9000は2本の縦溝にのみ配置)に立体的に配する3Dヘルムホルツ型消音パターンも特徴的だった。おかげで路面と縦溝との間で生まれてしまう気柱管共鳴音をGR-9000よりも静めることに成功したのだ。

 ただし、ここまで特化した特性を持たせた結果、縦溝の両側にあるリブ部分の剛性は劣っていたように僕は感じていた。リブ剛性はステアリングの微操舵域のフィーリングに直結するものであり、結果として微操舵域の応答性は若干曖昧に。平たく言ってしまえば、ステアリングのセンター付近における不感帯が存在していたのだ。

 新たに登場したREGNOシリーズ10代目となる「GR-XI」(クロスアイと読む。意味は11000)は、結論から言えば従来から持つ静粛性や乗り心地はそのままに、走りの部分を強化することを目指したタイヤである。トレッドパターンを見ると一目瞭然だが、センターには消音器を持たない独立したリブが奢られ、そこで微操舵域のハンドリングを出そうとしたことは明白だ。

新レグノシリーズでは、静かで快適な車内空間を追求するため路面ごとの音の違いに着目。なめらかな路面で気になりやすいパタンノイズ(高周波)、荒れた路面で気になりやすいロードノイズ(低周波)それぞれで気になる音の低減に取り組んだ。写真上は向かって左がIN側、右がOUT側

 ただ、それではすべての溝に対して消音器を持たせることができないため、1つの消音器で2本の溝の共鳴音を低減する「ダブルブランチ型消音器」を搭載していることが新しい。これにより高周波のパターンノイズは現行品のGR-XTに比べて15%も軽減できたという。また、低周波のロードノイズを低減しようと、改良が加えられた「ノイズ吸収シートII」をベルト上部にセット。さらに3Dノイズカットデザインをショルダー部に与えることで、クッション効果を持たせ、振動を伝わりにくくさせているところも特徴的だ。これにより低周波のロードノイズはGR-XT比で5%軽減したとのこと。

 ちなみに現行型同様、グレーディングはA-bを獲得している。ただし厳密に計測すれば、転がり抵抗は同等ながら、ウェット性能は7%向上しているそうだ。

静粛性に優れるとともに、クルマが素直に応答してくれる感覚に溢れていると橋本氏

 その実力を知るため、まずは一般道試乗を開始した。すると、やはり微操舵域の感覚は確実なものがあり、クルマが素直に応答してくれる感覚に溢れていたのだ。決してスポーツカーのようにピクピクするようなシャープさが際立つものではないが、しっとりとした応答ながらもリニアさがある。程よいステアフィールが微操舵域から立ち上がること、これがとても心地よい。

 静粛性については相変わらずの世界観。従来型以上に上を行ったことは明らかである。パターンから発せられるはずの「シャー」音はほとんど感じられず、車内は静まり返っているという表現が相応しい感覚。ロードノイズもかなり抑え込まれた感覚があり、「これぞREGNO!」と断言できる世界観をみごとに引き継いでいるように感じる。乗り心地についてはソフトなフィーリングだった先代とは異なり、やや硬質な感覚で入力を一発で収めてくれるようなテイストへと変化したように感じた。いずれも乗り心地についてはよい部類だと思うが、方向性は少し変わったかな、というのが正直なところだ。

 後にクローズドコースで波状路やスラローム、そしてレーンチェンジテストを行った。ここでは同サイズのGR-XTとGR-XIの比較試乗を行ったのだが、特にGR-XIが際立っていたのはステアリング操舵角が減少したこと。少ない操舵角で各種テストをクリアできたことから、クルマが無駄にロールせず、揺り返しが少ないというメリットが感じられた。これは同乗者にとっては大切なこと。タイヤの特性を変化させたことで、リアシートの快適性はさらに高まることだろう。

 この仕上がりなら、今後も個人タクシーを操るプロドライバーが納得するに違いない。REGNO神話は、まだまだ続くだろうと確信した。

波状路やスラローム、レーンチェンジテストでGR-XTとGR-XIの比較を行った

確かな静粛性を感じられる「REGNO GRVII」

「広い車内空間での高い静粛性」「ミニバン特有のふらつきを高次元で低減」「高次元の低燃費性能とウェット性能を両立」の3点を特徴とするミニバン専用タイヤ「REGNO GRVII」

 一方、主にミニバン向けに開発された「REGNO GRV」もモデルチェンジが行われた。名称は「REGNO GRVII」となる。こちらも基本的な考え方はGR-XIと同様だが、ミニバン特有のふらつきを軽減するためのパターンや構造を与え、GR-XIとはイン側のデザインが異なっている。グレーディングはA-bを獲得。静粛性については現行型よりも優れ、騒音エネルギーは前席で11%、後席で19%(アルファードで計測)も低減したデータが得られているという。

「REGNO GRVII」はミニバン用として、サードシートまで高い静粛性を実現するサイレントテクノロジーを採用するとともに、「レグノミニバン用サイドチューニング」を採用することでサイド剛性を確保し、ミニバン特有のふらつきを抑えることに成功した。写真上は向かって左がIN側、右がOUT側

 走ってみるとGR-XIほどではないが、静粛性に優れていることは明らか。GR-XIよりややパターンノイズは高いように感じる。ただし、走りについてはなかなかの実力で、直進安定性はキチンと出ているところが特徴的。背の高いミニバンでもふらつきは感じられない。高速道路のインターチェンジにあるループでも、きちんと重量級の車体を支えていたところも好感触だ。こちらもまた、REGNOブランドの名に恥じないグレートバランスが備わっているタイヤだと感じることができた。

歴代レグノシリーズのタイヤパターン

歴代レグノシリーズのタイヤパターン。こちらは初代レグノの「GR-01」(1981年)
「GR-03」(1983年)
「GR-04」(1985年)
「GR-11」(1986年)
「GR-13」(1987年)
「VS51」(1988年)
「GR-600」(1990年)
「GR-600E」(1994年)
「ER50」(1995年)
「GR-7000」(2000年)
「GR-8000」(2003年)
「GR-9000」(2007年)

Photo:高橋 学

橋本洋平

学生時代は機械工学を専攻する一方、サーキットにおいてフォーミュラカーでドライビングテクニックの修業に励む。その後は自動車雑誌の編集部に就職し、2003年にフリーランスとして独立。走りのクルマからエコカー、そしてチューニングカーやタイヤまでを幅広くインプレッションしている。レースは速さを争うものからエコラン大会まで好成績を収める。また、ドライビングレッスンのインストラクターなども行っている。現在の愛車は18年落ちの日産R32スカイラインGT-R Vスペックとトヨタ86 Racing。AJAJ・日本自動車ジャーナリスト協会会員。