レビュー

【タイヤレビュー】ダンロップの新世代タイヤ「エナセーブ 100」「エナセーブ ネクスト」

石油外天然資源比率100%の「エナセーブ 100」

 岡山にあるテストコースにおいて、ダンロップ(住友ゴム工業)の2つの新商品を試す機会に恵まれた。

 1つは、世界で初めて100%石油外天然資源を実現した「エナセーブ 100」、もう1つは、エナセーブ史上でNo.1の低燃費とウェット性能を実現した「エナセーブ ネクスト」。今や数あるエコタイヤの中でも、かたや環境性能、かたや燃費性能に、それぞれ非常に特化した特色のある商品だ。

エナセーブ 100

 まずは、エナセーブ 100についてお伝えしよう。ダンロップでは、すでに石油外天然資源比率を97%にまで高めた「エナセーブ 97」を2008年に市販している。なぜ97%かと思うところだが、残り3%に天然資源を用いることが非常に難しかったという。ところが、ついにそれらの素材を創生して置き換えることに成功した。

 そんなエナセーブ 100と、2009年10月発売の低燃費タイヤ「エナセーブ EC202」を装着した車両を周回路で乗り比べた。現在発売中であり、エナセーブ EC202の後継の「エナセーブ EC203」がとてもオールラウンドな性格のタイヤになったことを思うと、前身にあたるエナセーブ EC202は、全体的に硬さや安っぽさを感じるのは否めないことを、改めて乗って感じた。

 そのエナセーブ EC202と比べると、かなり特殊なタイヤであるはずのエナセーブ 100だが、それほど乗り味の面でハンデを感じることはなかった。路面からの入力の伝わり方も自然だし、音や振動の収束の仕方にも軽薄な印象はあまりない。

 ステアリングを中立から切り始めるときの微小舵のフィーリングについては、エナセーブ EC202よりもリニアに感じられたほどだ。このあたりは、成り立ちが特殊かどうかというよりも、設計時期が新しいことが効いているように思えた。

「c」と「a」グレードの差を実感

 続いては「エナセーブ ネクスト」。こちらは発熱を抑える技術を駆使して、転がり抵抗を2008年の商品「エナセーブ EC201」などに比べて半減することに成功。エナセーブの中でも低燃費性能最高グレード「AAA」を達成した「エナセーブ プレミアム」に対しても10%の向上を果たしている。

エナセーブ ネクスト

 さらにはウェットグリップ性能においても、「c」グレードのエナセーブ プレミアムよりも10%向上し、「a」グレードを達成。低燃費タイヤにおける「AAA-a」の最高ランクを達成したという商品だ。2015年の市販化が予定されていたが、1年前倒しで発売されるはこびとなった。

 これを量販モデルの旧商品である「エナセーブ EC201」と比較。テストコース内にある水のまかれたスキッドパッド上で、エナセーブ EC201装着車で走って感覚を確かめておき、続いてエナセーブ ネクスト装着車に乗り換えた。走り始めた瞬間から、全体的にグリップが上がっていることを感じる。アクセル全開での旋回を試みたところ、EC201ではスピードメーター読みで約35km/hの速度で、ずっとVSCが介入する状態で、ほぼ舵角一定で回ることができた。

エナセーブ EC201
エナセーブ プレミアム

 それに対しネクストでは、同じような走り方を試すと、一旦はもっと高い車速に達したところでVSCが介入して、車速が30km/h程度まで落ちて、また上昇するという動きを繰り返す。

 一見、不安定になったように感じるところだが、これはVSCが介入する速度が高いこと、すなわちグリップ性能が高いことと、クルマ側のVSCの性能=介入の仕方がこのようになっているからだと考えられる。これぞまさしくウェットグリップ「c」と「a」の差であり、そこまで車速が出るほどグリップが高いと解釈していいだろう。

転がり抵抗半減の実力のほどは?

 続いて、1周3.2kmの周回路へ。このコースはすでに完成から28年が経過しており、路面が荒れている個所もあって乗り心地の評価には厳しい面もあるのだが、だからこそよいタイヤが作れると開発関係者は述べる。

 こちらでは、現行商品であるエナセーブ EC203との比較となり、相手がよくできたタイヤであるだけになおのこと、エナセーブ ネクストには内圧を高くしたタイヤを履いたような若干の硬さを感じるも、不快なほどではない。一時期のエコタイヤからすると印象はずっとよい。

 そしてやはり、転がり抵抗の小ささを実感する。なにしろ、2008年に比べて半減というのだから相当なもの。そうしたかなり“特殊”なタイヤのわりには、あまり気になるところもなく乗れるところはたいしたものだ。開発関係者に聞いたところ、転がり抵抗を半減し、ウェットグリップを上げるためには、多少硬くなるのはやむをえなかったとのことで、そのあたりは承知の上でのようだが、将来的には性能を高めながら乗り味もよくしたいとのことだったので、期待したいと思う。

 続いてエナセーブ ネクストとエナセーブ EC201の装着車両を、トラックの荷台から同一条件で下ろして、どこまで距離を転がるかをチェックしたところ、驚くほどの差がついた。

参考程度に見ていただきたいが、エナセーブ EC201がおよそ60m超え、エナセーブ ネクストが100m超えだった

 ダンロップは、独自のアプローチで他メーカーがやっていないようなことにチャレンジし、それを着実にものにしている。遠い夢と思われたような話も、こうしてメーカーの技術力により次々と現実のものになっていく。ダンロップの底力をあらためて思い知らされた今回の試乗であった。

岡本幸一郎

1968年 富山県生まれ。学習院大学を卒業後、自動車情報ビデオマガジンの制作、自動車専門誌の記者を経てフリーランスのモータージャーナリストとして独立。国籍も大小もカテゴリーを問わず幅広く市販車の最新事情を網羅するとともに、これまでプライベートでもさまざまなタイプの25台の愛車を乗り継いできた。それらの経験とノウハウを活かし、またユーザー目線に立った視点を大切に、できるだけ読者の方々にとって参考になる有益な情報を提供することを身上としている。日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。