レビュー

【スタッドレスタイヤレビュー】ダンロップ「ウインターマックス」を長期間使ってみる(第3回)

ウインターシーズンが始まり、雪道を走ってみた

 ダンロップ(住友ゴム工業)のスタッドレスタイヤ「WINTER MAXX(ウインターマックス)」を長期間使ってみるこの連載も最終回。季節は冬となり、スタッドレスタイヤを装着していないがゆえに起こるトラブルのニュースなども聞こえてきている。この連載でお届けしている営業のEさんの愛車「スバル XV ハイブリッド」は、夏からウインターマックスを装着していたため、突然の降雪に対する備えはできていた。最終回ということもあり、雪道の感想をお伝えするため雪を求めて出かけてみることにした。

 ダンロップのウインターマックスは、前作の「DSX-2」に比べ氷上ブレーキ性能11%アップ、ウェットブレーキ性能15%アップ、耐摩耗性能は48%アップと性能が大幅に向上しており、それは雪道においても同様だ。その詳細なレビューは以前掲載した記事を参考にしていただき、本記事では雪の一般道走行の模様をお届けするとともに、これまでの摩耗具合を報告する。

●2012-2013年シーズンの新スタッドレスタイヤを雪氷レビュー 第2回:ダンロップ「WINTER MAXX(ウインターマックス)」
http://car.watch.impress.co.jp/docs/news/20120925_561018.html

雪をもとめてロマンチック街道へ

 前回は、Eさんの家族による星空ドライブを報告したが、今回は筆者とのドライブ。雪道を走行するEさんの感想を直接知りたかったこともある。筆者とEさんはスキーを共通の趣味としてもっており、部署は違うものの同じ社内ということもあって、なんどか一緒にスキーに出かけたこともある。

 以前のEさんの愛車は、直結4WDにもなるSUVタイプのクルマ。いわゆるパートタイム4WD車で、エアバッグ装着も義務化されていない時代のシンプルなクルマだった。それゆえにEさんは雪道でのテクニックを磨かざるを得ず、雪道の運転が大好きなのは見ていても分かるほどだった。

 今回、我々が雪をもとめて向かったのは、ロマンチック街道で知られる国道120号。雪道を長距離走行することを考え、あちこちのライブカメラをチェックしていたら、結局2回目と同じく関越自動車道 沼田IC(インターチェンジ)を下り、金精峠を抜けて日光へ向かうというものになってしまった。この国道120号沿いには多数のスキー場があり、Eさんはほとんどの道を走ったことがある。それだけに快適な雪道走行を楽しめたようだ。

 沼田IC近くには雪はなかったものの、国道120号を東へ向かうと、丸沼スキー場近辺から道は圧雪路面になってきた。スタッドレスタイヤとしては最も得意な路面になるが、シーズン1発目の雪道としては基礎的な性能が分かるありがたい路面だ。

国道120号を東へ。丸沼スキー場を越えると、道は雪道に
気温は-9℃。凍結路面が現れることを予測して運転する必要がある
路面は薄い圧雪路となっていた

 Eさんの今の愛車は、スバルの誇る4WDシステム「シンメトリカルAWD」で構成された最新ハイブリッドSUV「XV ハイブリッド」。EyeSightをはじめEBD(電子制御制動力配分システム)付4センサー4チャンネルABS、VDC(ビークルダイナミクスコントロール)など各種の安全デバイスが搭載されている。とくにVDCについては、4輪個別のブレーキ制御、エンジン出力制御、AWDトルク配分制御を行う高度なもので、Eさん自身はそれらのシステムにやや懐疑的な部分もあったようだ。

闇の中を照らすXV ハイブリッドのヘッドライト。こういう悪条件は、タイヤのグリップがしっかりしているほうがいい
金精トンネルに到着。こちらは群馬県側
栃木県側に抜けると夜明けが近づいていた

 しかしながら、ウインターマックス+XV ハイブリッドでの走行はとても好印象だったようで、以下にその感想を紹介していく。

──ウインターマックスで雪道を走った第一印象はどうですか?
Eさん:質問の意図とズレるかもしれませんが、また冬が きたなぁ、雪道走れるなぁ、と、子供みたいにワクワクしてました。

──ウインターマックスの雪道における基本的なグリップ力はどうですか?
Eさん:十分なグリップがあります。真夏の時期を含め半年以上スタッドレスタイヤであるウインターマックスを履いてるわけじゃないですか。せっかくの新品を夏に履いててなんだか性能を無駄遣いしてるというか、冬タイヤとしての性能が下がったらもったいないなって思ってましたが、全然問題ないですね。新品のスタッドレスタイヤで走行したときとなんら遜色ないですよ。最近のタイヤってこんな感じなんですかね、ちょっと驚きました。

──コーナリングについてはどのような感じでしたか?
Eさん:えっと、ザックリいうと圧雪路なら舗装路とさほど変化ありません。スピード出しすぎたりすれば別でしょうけど、それでも滑り出す限界は結構高いんじゃないですかね。

──細かく聞いてみます。ステアリングの切り始めの印象は?
Eさん:素直についてきます。ビクビクすることもなく、ごく普通に切り込んでいけますよ。

栃木県側の雪は、わずかながら湿雪気味の雪だった。雪は止んでおり、溶け始めているのかもしれない

──ブレーキを踏んだときの印象はどうでしょうか?
Eさん:これもあまり神経質にならずに踏めます。今回の走行では意識的に急ブレーキでも踏まない限り、ロックしたりもしませんでしたね。それに今のクルマはABSがあるじゃないですか。1回ホントに急ブレーキ踏んじゃったんですが、ABSがククッって動作して、その状況でも少し曲がれるし、クルマが不安定にならないんですよね。このウインターマックスと、ABSの組み合わせはかなり安心でしたね。ただ、もちろんつるつるのアイスバーンが突然出てくるとか、雪道って本当にいろいろですから、過信は禁物だと思いますが。

──下り坂での印象は?
Eさん:アウト側が低くなってるような雪道のカーブを曲がるときは怖く思うものですが、取り越し苦労でしたね。今回走った峠道では、滑りだしたりすることもなく、安心して降りていくことができました。

──いくら最新のスタッドレスタイヤといえども、滑るときには滑りますが、滑り始めのコントロール感とかはどうですか?
Eさん:今回、だれもいない広い駐車場があったので、旋回してみたんですよね。でもVDCも手伝って全然滑らない。なので、いちどVDCを切って少々急旋回気味に回ってみました。そうすると確かに滑り出すんですが、なんというかいきなり後輪が滑りだすといったような滑り方はしないんですよね。徐々に滑り出す感じで制御不能な状態にならない。なんというかコントロールしやすいんです。

 VDC以外にもクルマの重量配分とか4WD性能とかクルマ側の要素もいろいろでしょうが、そもそもタイヤが踏ん張れないとどうしようもない。でもこの感じなら少々古いクルマに履いても結構安心できるというか、コントロールしやすいんじゃないですかね。

──VDCを切って滑らせたとのことですが、滑った際の不安感はどうですか?
Eさん:不安感はありません。滑るのが楽しいくらいです。雪道は滑る前提で運転するものだと思ってましたので不安といえば不安でしたが、 少なくとも圧雪路でしたら最小限しか滑らないので不安感はまったくないですよ。ただ何度も言いますが、雪道っていろいろですからね。過信しないようにしないと。

──雪道での乗り心地はどうですか?
Eさん:これは以前も言いましたが、このタイヤが低扁平率(225/55 R17)ということもあると思うんですが、ふにゃふにゃしないんですよ。締まった感じの走りができます。そのフィーリングが雪道でも発揮される感じです。雪道なりにキビキビ走れます。

──今回はクルマもタイヤも前年から変わったわけですが、総合的に昨シーズンの雪道ドライブと比較して、安全性などはどのように変化したと思いますか?
Eさん:それはもう、安全性は高まったでしょう。自信を持って言えます。ボクは直結四駆に長く乗っていて、(そのクルマの方が)走破性は高いと思ってました。ただそのクルマに新品のスタッドレスタイヤをつけた際に、下りの雪道で制御不能になり、道に対して真横になって法面にフロントをぶつけたことがあります。

 後輪が滑り出したときに甘く考えてたんです。で、素直に止まればいいものを、すぐ立て直せるだろうといろいろやってるうちにだんだん制御できなくなってしまい、止められなくなってぶつけてしまいました。

 スピードは出ていなかったし対向車もおらず、法面も雪が積もってたので事故にはならなかったんですが、下りは気をつけないといけないですよね。

 でも今回のタイヤとクルマなら大丈夫だったでしょうね。素直にクルマの動きに合わせていけば制御不能になることはなさそうです。

 あと、今まではクルマが勝手にいろいろ制御するのはどうかとも思ってました。でも今回改めて思ったのは、タイヤの性能もABSもトラクションコントロールも、安全性だけでなく運転の楽しみも高めてくれるんですね。安心して走れるから、ビクビクしないで本来の走りの楽しみを感じることができるんだ、って感じました。ちょっと考え方が変わりましたね。

 ただ雪道ばかり走ってると路肩やU字溝に落ちてるクルマを何度も目にしますが、比較的そういうクルマは走破性の高い4WDが多いんですよね。人のこと言えませんが要するに調子に乗るからでしょう。安全性をいくら高めても、無茶な運転をすれば意味がありませんから、そこは勘違いせずに、雪道を楽しみたいと思います。

ラクラク上り、ラクラク曲がるスバル XV ハイブリッドとウインターマックスの組み合わせ。ウインターマックスは非対称パターンの採用により、DSX-2よりもコーナリング性能が向上している。あえて不安点を挙げるとしたら、雪道性能の高さから来る過信や慢心などのソフト面だろう。雪道は何がある分からないので、余裕をもって走りたい

 今回、Eさんの横に乗って思ったのは、「このタイヤめちゃくちゃすげぇっすよ」「最近のスタッドレスってこんなにすごいんすかね」と言いながら、本当に楽しそうに雪道を走っていたこと。また、VDCのありなしを確認しながら、クルマの挙動の違いを体に教え込もうとしていたのも印象的だった。

 さて、この連載の主眼となっている溝の減り具合を報告しておく。前回の最後が、10月18日で8.10mmだった。

日付走行距離(km)給油量(L)燃費(満タン法、km/L)燃費(メーター値、km/L)溝深さ(mm)
2014年11月15日246.328.888.59.18.05
2014年11月15日178.013.4213.313.58.05
2014年12月6日207.626.747.88.28.05
2014年12月8日442.239.9211.111.58.00

 その後の経過は、約1074kmのドライ路面を走って0.10mmの減りとなった。2014年5月からのトータルでは、約4131km走って0.65mmの減りとなる。ノギスの精度が±0.05mmのため、13ステップ減ったこととなり、平均では約316kmで1ステップ、0.05mm減ったことになり、5分山(4.3mmマイナス)となるまでに約2万7000km必要という計算が成り立つ。ドライ路面で4人家族での使用、しかも主に初夏から晩秋という使用条件での参考数字に過ぎないが、この摩耗具合であればドライ路面での走行不安もないウインターマックスをウインターシーズン前に装着し、降雪に備えておくという使い方は安全・安心のためにもありだろう。

 とくにここ数年は突然大雪が振るという気象現象が全国的に見られる。スタッドレスタイヤの早め早めの装着で、安全なウインターライフを楽しんでいただきたい。

編集部:谷川 潔

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