レビュー
【タイヤレビュー】ダンロップ「エナセーブ EC203」
ロングライフ性能に加え、走りの性能も手に入れた低燃費タイヤ
(2014/3/27 00:00)
低燃費タイヤの試乗会だというのに、集合場所として指定されたのは修善寺。主な試乗場所は伊豆スカイラインというワインディング路だというから首を傾げた。実はこのステージ、普段であればスポーツカーなどで試乗や撮影をする場所であり、エコカーや低燃費タイヤとは無縁といってもいい場所なのだ。
キツネに抓まれた気分で新製品となるダンロップ(住友ゴム工業)の「エナセーブ EC203」装着車に乗ってみる。すると、乗り始めた瞬間から転がり出しは良好。旧製品となる「EC202」に比べると明らかに抵抗感なくスッと前に出ているのが分かる。EC202はゴロゴロとした感じとでも言えばご理解いただけるだろうか? ダンロップによれば、EC203の転がり抵抗はEC202に比べて12%低減。低燃費タイヤのグレーディングも「A」から「AA」へと昇格している。
だが、感心したのはソコじゃない。走り始めれば低燃費タイヤとは思えぬ走りを展開。ステアリングの切り始めから確かな操舵感がある一方で、荷重をグッとかけていけば確実なグリップを発揮してくれるから面白い。それほどこのタイヤにはシッカリとした感覚がある。まるでスポーツタイヤである。だからこそ、わざわざ伊豆スカイラインを試乗コースに選んだのだろう。
まるでスポーツカーのように走ってみせたEC203は、摩耗肌についても良好。EC202はセンター付近が斜めに減っていたが、EC203はそんなところが見られなかった。
結果として乗り心地についてはやや硬質だ。旧製品となるEC202は走り出しからずっとたわみを繰り返している印象だが、EC203は常にタイヤの形状を維持しながら走っているイメージ。路面からの入力も瞬間的にダンピングするタイプであり、乗り心地を硬く感じるところは否めない。これまでのヤワな乗り味に慣れてしまった人は、やや戸惑うかもしれない。
一体なぜ新たなタイプの低燃費タイヤが誕生してきたのか? ここからはその裏側をお伝えすることにする。
ダンロップの低燃費タイヤは、全国カー用品店上位2社における販売本数が4年連続第1位(日本能率協会総合研究所が1月28日に発表)という結果を残した。その中でも最も売れている製品がエナセーブ EC202になるという。これはあくまで限定的な条件下ではあるが、ユーザーの心を確実に掴んでいるという結果といっていいだろう。
そんなEC202が遂にフルモデルチェンジを行うことに。後継モデルとなるエナセーブ EC203を作るにあたってまず行ったことは、ユーザーニーズをきちんと把握すること。ユーザーの心を掴むにはソコを調べねばということなのだろう。そこで導き出された結果は、第1に減りにくいこと、第2にブレーキ性能が優れていることだったという。
そこでエナセーブ EC203が目指したコンセプトは、タイヤの原材料から化石資源使用量を減らすネイチャーセーブ。転がり抵抗を低減させ燃料消費を削減するエナジーセーブはそのままに、タイヤの寿命を延ばすロングライフ性能を重視することだ。その目標を達成するために考えられたことは、タイヤの発熱をいかに抑えるか。そしてパターン剛性やケース剛性を最適化することで、路面からの入力を一極集中せずに全体でそれを受け止めることである。
まず発熱に対する答えは、ゴムが持っている本来の性能をフルに引き出すことだ。トレッド面には「新マルチ変性SBR」と呼ばれるコンパウンドを採用。ゴムの内部にひそんでいる変性基の位置や種類を最適化。配合されるシリカをまんべんなく配合する製法も盛り込むことで、熱の発生を抑制している。
同様の考えはサイドウォール部のコンパウンドにも展開。「末端変性ポリマー」を盛り込んだところが新しい。これはポリマー末端にカーボンと結合しやすい変性基を導入することでポリマー末端にカーボンが結びつき、結果としてポリマーの動きを抑制することになる。
これらの新たなコンパウンドによって、無駄な発熱を抑え、転がり抵抗が低減するばかりでなく、減りに対しても強くなるというメリットをもたらした。
こうした発熱に関する考え方はタイヤの構造にも表れている。ケース剛性を高め、変形させないようにすることで、不要なエネルギー消費を抑制。ショルダー部からサイドウォール部の内面は断面が大きな円を描く真円プロファイルを採用することで発熱を抑え、低燃費性能を向上させている。
また、パターン剛性についても大幅に進化。新旧を見比べるとよく分かるが、ひとつひとつのブロックをできるだけ大きく、さらに細かい溝も少なめにすることでパターン剛性を最適化。軽自動車やコンパクトカーなどの小さなサイズでも剛性バランスを発揮するよう、4リブ化(大きいサイズは5リブ)している。
結果としてロングライフ性能は大幅に向上。5リブタイプは9%、4リブタイプは17%も耐摩耗性能が引き上げられたのだ。コンパウンドから剛性まで、妥協なく作り込んだ結果がそこにある。
さらに言えば冒頭に書いた走りを達成したこともまた、こうした高剛性化が活きたということなのだろう。もう低燃費タイヤだから走れないという時代は終わったのだ。
低燃費タイヤの試乗会を伊豆スカイラインで行う……。これこそがダンロップの自信の表れだったわけだ。