レビュー
【タイヤレビュー】ブリヂストン「エコピア EX20」
転がり抵抗性能に加え、ウェットブレーキ性能とライフ性能を進化
(2014/3/28 00:00)
低燃費タイヤでまず大事なのは、転がり抵抗を低減することで燃費性能を高めること。そこにウェットブレーキ性能を高めることで、低燃費タイヤのグレーディング制度で少しでもよい値を叩き出すことが求められてきた。だが、そのすべてが当然の世界となり、最近では新たなる価値を追い求めて各社模索が続いているのが現状だ。
ブリヂストンでは、そんな低燃費タイヤ「ECOPIA(エコピア)」の世界をさらに広げようとさまざまな方向性でのブランドを展開。快適性、静粛性、そして乗り心地をバランスさせた「REGNO(レグノ)」。低燃費タイヤのグレーディング制度で転がり抵抗「AAA」&ウェット性能「a」といずれもトップレベルの「エコピア EP001S」。EV(電気自動車)専用タイヤ「エコピア EV-01」。運転の快適性を追求した「エコピア PZシリーズ」。あらゆる販売店で購入可能な低燃費タイヤ「エコピア EX10 & Playz RV」と、スタンダード低燃費タイヤ「NEXTRY(ネクストリー)」。エコピアの商品名やロゴを付けたタイヤがこれだけ展開されているのだ。
2014年シーズンから新たに展開する「エコピア EX20シリーズ」は、エコピア EX10&Playz RVに代わるスタンダード低燃費タイヤ。転がり抵抗を低減することで燃費性能を向上させていることはもちろん、今回テーマにすることは“雨に強く、長持ちする”ことだ。
その目標を達成するために投入されたのは、ウェット向上ポリマーの採用やシリカを増量したナノプロ・テックゴム。これによりゴムにしなやかさが増し、従来品よりも路面を捉えるようになったのだとか。このナノプロ・テックゴムとトレッドパターンの見直しを合わせることで、実接地面積は10%もアップしているという。
また、最先端シミュレーション技術とタイヤ計測技術を組み合わせた最適タイヤ設計「ULTIMAT EYE」を駆使することで、最適なトレッドパターンや水平接地形状を確保。接地圧の集中を防ぐと同時に、ハードブレーキ時にフルに接地するようになった。
結果として、すべての基本となるセダン・クーペ用の「EX20」のウェットグリップは12%も向上。ウェットグリップ性能のグレーディングも、19サイズ中18サイズで「b」から「a」へと引き上げられた。実際にウェット制動テストを目の前で見たが、そのストッピングパワーはたしかなもの。従来品よりもおよそクルマ1台分短く止まる性能には目を見張るものがあった。
水平接地形状の採用により接地圧の集中を緩和したことにより、耐偏摩耗性能にも向上がみられた。これが“長持ちする”ことにも効いており、新たなる価値へ繋がっていることも見逃せない。ライフは11%も向上したというから、お財布にも優しそう。確かなグリップと減りに強いという、相反する性能を見事に両立してみせたというわけだ。
さらに、エコピアEX20シリーズでは車種別専用設計にも踏み切った。セダン・クーペ用のEX20が採用するパターンはあくまでベースとなり、これは操縦安定性の向上を狙ったバランスのよい設計となる。軽・コンパクトカー専用の「EX20C」はラグ溝(横方向の溝)を外側まで貫通させずショルダーブロックの剛性を高めることで、街中における据え切りに対応。偏摩耗の抑制を図っている。ミニバン専用となる「EX20RV」は特にイン側のブロック剛性を高める設計を施すことで、定員乗車時にも耐える作りとした。
今回はそんなエコピアEX20と、スタンダードクラスのネクストリーとを比較試乗することに。まずはネクストリーを装着したプリウスでテストコースを走り始めると、特別にクセを感じることなくソツなく走るところに感心。スタンダードタイヤというと、どこか物足りなさを感じるのが常だが、このタイヤにはそのような感覚が一切ないのだ。
けれどもEX20に履き替えると、その感覚がコロッと変化してしまう。走り出しから何しろよく転がるのだ。まるでプラスチックの軸受けからフルベアリングに交換したRCカーのようにストレスなくスルスルと前へと進むのだ。グレーディングで見れば「A」対「AA」の差。それはきちんと肌で感じられるほどに心地いい。
そんな差をより感じたのはウェット路面における比較テストだった。ネクストリーも当然ながら走れないわけではないのだが、グリップ感、ライントレース性、そしてブレーキングまで、あらゆるシーンでEX20のほうが一枚上手な感覚。同じコーナーでコーナーリングスピードも比較してみたが、EX20のほうが遥かに速くそのコーナーを駆け抜けていることが一目瞭然だった。もちろん、ウェット&エコタイヤでコーナーリングスピードを語るなんぞはご法度だが、それほどまでにEX20には走りに余裕があるのだ。これはイザという時の緊急回避性能に確実な差が表れるに違いない。ウェットブレーキにおける1台分短く止まれる性能もそうだが、高いタイヤはそれだけ安全性が高まっていることは明らか。限界まで使い切らず街乗りをはじめとする一般的な使い方ならば減りについても伸びているに違いない。
これだけ余裕ある走りを展開しつつ、確実なウェット性能を確保したEX20は、低燃費タイヤのベーシックモデルとしては十分すぎる魅力を感じることができた。これぞ新たなる価値を持った低燃費タイヤだと言える仕上がりだったのだ。