レビュー

【タイヤレビュー】“疲れにくい”という安全性能を付与したブリヂストンの新タイヤ「Playz PX」を試す!!

セダン・クーペ用「Playz PX」、ミニバン用「Playz PX-RV」、軽・コンパクト用「Playz PX-C」を設定

商品コンセプトは「疲れにくい」

 今から約11年前の2005年2月。ブリヂストンは業界初となる非対称形状タイヤである「Playz PZ-1」を発売した。このタイヤは簡単に言ってしまえば、外側はラウンド形状、内側はスクエア形状とすることで、わだちや突起などの外乱をタイヤが吸収し、“ラク”に走らせようと狙ったタイヤだった。

 そして今回発表された「Playz PX(プレイズ ピーエックス)」も、基本的にその考え方は変わらない。非対称形状はもちろん継承。コンセプトは“ラク”から進化し、運転中に蓄積されていくストレス、疲れを低減しようというもの。キーワードは“疲れにくい”である。

非対称形状を採用する新タイヤ「Playz PX」(セダン・クーペ専用)。商品コンセプトに「“疲れにくい”という安全性能」を掲げ、運転中の無意識に蓄積されるストレス/疲れを低減することを目標とした
「Playz PX」では、応答性を高めるとともにクルマの動きを抑制する「高剛性ショルダーブロック」をはじめ、高いハンドリング性能を実現する「クロスリーフカットグルーブ」、グリップ力を最大限に引き出す「ラウンドリブエッヂ」からなる新パターンを採用。これにより「ヨーレートの変化(横ブレ)が小さい」「旋回時の舵角が小さい」「レーンチェンジ時の修正舵が少ない」など“疲れにくいタイヤ”を実現。写真中央がIN側、写真右がOUT側

 そのコンセプトを達成するためにブリヂストンが必要だと考えたことは主に3つ。直進時のハンドルのブレを少なくすること。思い通りのハンドリングを実現すること。そしてレーンチェンジ時にふらつかず、修正操舵を少なくすること。当然のようなことばかりだが、実はそれを達成するのは難しい。

 個人的にはこれまで非対称形状のタイヤはあまり好まなかった。外乱を嫌うためのデバイスが、ステアリングインフォメーション性能を低下させ、さらに大入力に対して弱い傾向があったからだ。いくら“ラク”でもきちんと走れなければバツだと考える僕のような走り馬鹿にとって、これまでのPlayzはちょっと物足りなかったのだ。

「Playz PX」では車種別専用設計が与えられた。写真はミニバン専用の「Playz PX-RV」
コーナリング時やレーンチェンジ時のふらつきといったミニバン特有の現象を抑えるべく、「Playz PX-RV」ではタイヤのIN側のブロック剛性を高める「ティアドロップスロット」を採用しているのが特徴になる。写真中央がIN側、写真右がOUT側

 新生Playz PXは、“疲れにくいタイヤ”を実現するため、非対称形状技術だけでなくトレッドパターンも大幅に見直している。ショルダー部はブロックの1つひとつを大き目にすることで高剛性を実現。センター部の接地性を大切にすることで思い通りのハンドリングを実現する「クロスリーフカットグルーブ」も搭載している。これらの搭載技術により直進安定性、旋回時の操舵角、そしてレーンチェンジ時の修正操舵も少なくなるというのだ。ブリヂストンではPlayzとスタンダードタイヤ「ECOPIA EX20」を装着したそれぞれのクルマに、テスターを乗り比べさせて脳波を計測。すると、ストレス値が低減していたことが分かったというから興味深い。

 一方でウェット性能や低燃費性、さらにはライフ性能にまでも配慮をした新トレッドゴム配合技術を搭載。シリカ粒子径を小さくすることで耐摩耗性を向上。さらにシリカやポリマーをうまく分散させるサステナブル分散性向上剤を採用することで、低燃費性能を高めている。

 結果としてECOPIA EX20と同等のウェットブレーキ、転がり抵抗性能を達成。摩耗寿命については10%向上することに成功したという。以前のPlayzはECOPIAに比べてしまうと30%以上も転がり抵抗がわるかっただけに、これは大幅な進化といっていい。ちなみにPlayzの実勢価格はECOPIAに比べれば高くなってしまうが、摩耗寿命までを考えればトータルコストはそれほど変わらないそうだ。

軽・コンパクト用「Playz PX-C」
軽・コンパクト車では街乗りの機会が多く、据え切りによって偏摩耗しやすい傾向にある。またハイト系の軽自動車は高速道路などでふらつきやすいことから、「Playz PX-C」ではサイドウォール部を強化した「パワーサイド」を採用。これによりECOPIA EX20と同等の摩耗寿命を実現しながら、耐偏摩耗性能では33%も向上させることに成功している。写真中央がIN側、写真右がOUT側

思った通りに走り、ストレス軽減を実感

 今回はそんなPlayzとECOPIAをさまざまなシーンで比較した。

 すると、はじめに走ったウェットハンドリング路では明らかに操舵角が減り、かなり高剛性であることを確認できた。ECOPIAに比べるとケースのヨレも少なく小舵角で素直に走ってくれる。そして切り込み応答も優れていることから、結果としてかなりハイペースで走れてしまう。もう頼りない非対称形状タイヤのイメージはない。これならいつでも思い通りに走り、ストレスが軽減されているというのも頷ける。

ウェットハンドリング路では「Playz PX」と「ECOPIA EX20」(タイヤサイズ:各195/65 R15)を履いたCT200h、「Playz PX-RV」と「ECOPIA EX20RV」(タイヤサイズ:各195/65 R15)を履いたセレナの試乗ができた

 それはドライ路面におけるレーンチェンジの収束性、さらにはハイスピードコーナリング時における確かな手応えとグリップ感もかなり高い。ECOPIAと比べてしまえば、エコタイヤと入門スポーツラジアルくらいの差が感じられてしまうのだ。それでいて直進性はしっかりとキープされており、荒れた路面でもきちんと走れそうな感覚がある。

ドライ路面では「Playz PX」と「ECOPIA EX20」(タイヤサイズ:各195/65 R15)を履いたCT200hをドライブ。両者の直進安定性、ハイスピード時のコーナリングでの性能差は明らかだった
ムーヴは「Playz PX-C」と「ECOPIA EX20C」(タイヤサイズ:各155/65 R14)を装着しての比較
「Playz PX-RV」と「ECOPIA EX20RV」(タイヤサイズ:各195/65 R15)を履いたセレナでもドライ路面をテストドライブ

 これで燃費がよいならもうECOPIAはいらないのかもしれない。そんなことを思わせるほどトータル性能が高い。それが新生Playzの仕上がりだ。

Photo:安田 剛

橋本洋平

学生時代は機械工学を専攻する一方、サーキットにおいてフォーミュラカーでドライビングテクニックの修業に励む。その後は自動車雑誌の編集部に就職し、2003年にフリーランスとして独立。走りのクルマからエコカー、そしてチューニングカーやタイヤまでを幅広くインプレッションしている。レースは速さを争うものからエコラン大会まで好成績を収める。また、ドライビングレッスンのインストラクターなども行っている。現在の愛車は18年落ちの日産R32スカイラインGT-R Vスペックとトヨタ86 Racing。AJAJ・日本自動車ジャーナリスト協会会員。