レビュー

【スタッドレスタイヤレビュー】横浜ゴム「アイスガード ファイブ プラス」を「CX-3」に装着して1000km走ってみた

ドライ路での燃費性能は純正装着タイヤ同等

マツダ「CX-3」に装着した「iceGUARD 5 PLUS(アイスガード ファイブ プラス)」

 積雪が発生するたび大パニックになる大都市圏。つい先日も通勤ラッシュの時間帯と降雪がバッティングし、駅から溢れかえる通勤・通学客の映像がテレビから何度も放送されたばかりだ。クルマの使用環境で言えば、スタッドレスタイヤやチェーンを持っていない人がカー用品店やガソリンスタンドに駆け込み、夏タイヤのままで走るクルマが坂道を登りきれず、路肩に放置される。これらは大都市圏で積雪があったときに恒例の光景となってしまっている。

 確かに大都市圏では、雪が降っても積雪まではならない年もあれば、一昨年のように10cm以上の積雪を何度も観測することもある。事前から確実な積雪が予報されていれば、冬場はスタッドレスタイヤに履き替えようということになるが、起きるか分からない現象に対しての対応が後手後手になることも理解できる。ただ、積雪の予報が出てからスタッドレスタイヤやチェーンを買いにいくと、売り場に合うサイズがなかったり、希望する商品が買えないことも多い。

 なぜ、冬装備をするのに二の足を踏むのかを考えると、コストに加えて夏タイヤと比べたときの燃費とハンドリングの悪化を想像するからではないだろうか。

 確かにスタッドレスタイヤを購入するときのイニシャルコストは高いかもしれないが、1シーズンで消耗するものではなく数シーズンは使える。雪が降るたびに積雪を心配することを考えれば、スタッドレスタイヤを購入することを検討してほしい。

3年ぶりの新作となったアイスガード 5 プラスをCX-3に装着

 筆者が乗っているCX-3には、2015年の8月から発売が始まった最新スタッドレスタイヤ「iceGUARD 5 PLUS(アイスガード 5 プラス)」を履いている。CX-3の純正タイヤサイズは、専用開発されたニュータイヤという影響もあってかなり珍しいサイズとなっている。採用されている215/50 R18というサイズは夏タイヤでもラインアップが少ないので、スタッドレスタイヤを探すのもひと苦労。だが、アイスガード 5 プラスは、13インチから19インチまで計104サイズを展開しているので、たいがいのモデルならば最適なサイズが見つかるはず。かく言う筆者も、この豊富なサイズラインアップの中に適合する215/50 R18のサイズがあったので装着できた。

タイヤサイズは純正と同じ215/50 R18。アイスガード 5 プラスはタイヤ幅により2つのトレッドパターンを採用。CX-3では225以下のサイズに対応する「IG50」トレッドパターンとなる

 3年ぶりに新作として投入されたアイスガード 5 プラスは、「氷上性能」「タイヤ性能の維持」「省燃費性能」をさらに追求したモデルになる。優れた氷上性能については発売後のインプレッション記事でもすでに既報となっているので、そちらも参照してもらいたいが、筆者が雪道を走ってとくに感じているアイスガード 5 プラスの美点は、グリップ感が手に取るように分かるところだ。圧雪でもアイスバーンでも優れたグリップ性能を見せるのはもちろんだが、滑り出したときにタイヤがどのような状況になっているのかが分かりやすい。そのため、どんな操作をすればクルマの挙動が安定するのか、グリップ力が戻ってくるのかといった判断がしやすいのだ。なので、万が一グリップを失って滑っても、安心してコントロールできる。

 また、ドライ路での操縦性も高い性能を確保している。大都市圏のユーザーならば、スタッドレスタイヤを履いていても多くの時間はドライ路面を走っているはず。アイスガード 5 プラスを履き始めてから1000kmほど走ったが、平均燃費は16.9km/L。夏タイヤを履いているときでも16km/L代なので、まったく変わらないレベルの数値をマークしている。タイヤの表面を覆っているトレッドゴムの下層に積層されている低発熱ベースゴムがよい影響を及ぼしているのだろう。新規採用された低発熱ベースゴムは、タイヤの剛性を保ちつつエネルギーロスを低減する。そのため、燃費性能が向上していて、夏タイヤと同等の平均燃費を示しているのだ。

スタックしやすい新雪路でも、最低地上高より低い積雪ならばしっかりと雪を踏み固めて進むことができる
圧雪路ならFFのCX-3でも問題なく走破。雪上での走行性能は高い
高速道路を走っているときの不安感も皆無だ

 タイヤ自体の剛性も上がっていてタイヤのたわみを抑制しているので、高速道路やワインディング路を走っていて操縦安定性が純正タイヤに劣るようにも感じない。とくに高速道路を走っているときにタイヤがよれると不安感につながるるが、それが皆無と言える。純正タイヤと比べるとトレッドゴムがわずかに柔らかく感じるが、それがドライ路で不快に感じることもなく、違和感なく走行できる。ロードノイズに関してはやや大きくなるのは確かだが、スタッドレスタイヤを履いていると思えばうるさく感じるほどでもない。

 このように、アイスバーンや雪上での性能を引き上げていながら、大都市圏を走っていれば多くのシーンをともに走るドライ路面での性能も重視しているのが新作のアイスガード 5 プラスになる。

 大寒は過ぎたといっても、大都市圏においては2月や3月でもまだまだ降雪や積雪に油断はできない。この際、ドライ路での燃費性能やハンドリング特性にも優れたアイスガード 5 プラスに履き替えてみてはどうだろう。サイズによっては売り切れになる可能性もあるので、自分のクルマのサイズがあるかカー用品店や専門店で確認してみてほしい。

真鍋裕行

1980年生まれ。大学在学中から自動車雑誌の編集に携わり、その後チューニングやカスタマイズ誌の編集者になる。2008年にフリーランスのライター・エディターとして独立。現在は、編集者時代に培ったアフターマーケットの情報から各国のモーターショーで得た最新事情まで、幅広くリポートしている。また、雑誌、Webサイトのプロデュースにも力を入れていて、誌面を通してクルマの「走る」「触れる」「イジる」楽しさをユーザーの側面から分かりやすく提供中。AJAJ・日本自動車ジャーナリスト協会会員。