DIYでクルマいじり

NAOさんのDIYでクルマいじり

第25回:大容量インバーターで快適電化生活! アイドリングストップ条例との兼ね合いは!?

いつでもどこでも家電が使える快適ドライブを実現してくれる大容量インバータ。悪天候時でも気軽に使えるよう工夫してみよう

カーバッテリー、点検・交換していますか?

 みなさんは「バッテリー上がり」を経験したことがあるだろうか? この年末年始もJAFロードサービスの依頼No.1はバッテリー上がりで、全体の36%にも達したそうだ。

 もし高速道路をドライブ中、バッテリートラブルで立ち往生してJAFロードサービスを呼んだ場合、非会員は費用2万4190円とバッテリー代金実費が掛かるそうだ。旅行は台無し、お財布に大ダメージとならないためにも、日々のバッテリー点検または定期的な交換はしっかり行いたい。

JAFニュース 2014年1月14日

http://www.jaf.or.jp/profile/news/file/2014_60.htm

 バッテリーの寿命は機種・車種・使用状況などによって大幅に変わるためここでは説明を割愛するが、筆者はおよそ3年ごとに交換し、取り外したバッテリーはアウトドア用電源として活用している(※1)。自動車用バッテリーはセルモーター始動など「ここ一発」の大電流を取り出しやすく設計されているため「バッテリー単独で空っぽになるまで使う」といった用途にはまったく向かないのだが、ディープサイクルバッテリーは価格も高いし別途購入するのもアレなので、筆者は「お下がりカーバッテリー」を活用している。

じゃじゃーん!これから数年お世話になるボッシュ ハイテックシルバーII HTSS-135D31L、CCA(コールドクランキング電流)=830。よろしく頼みますよ~!
こちらが今まで頑張ってくれたボッシュ ハイテックシルバー HTS-115D26L、CCA=730。純正のD23サイズから1ランクサイズアップ。ノントラブルに感謝
D26サイズとD31サイズ、数字どおり5cm横幅が広くなる。当たり前か(笑)
115D26サイズの重量は18.9kg。鍛造シルバー合金極板やら鉛カルシウム素材やら、高性能が詰まったありがたい重さ。交換作業時は腰に気をつけたい
135D31サイズの重量は22.9kg。115D26と比較し、ちょうど4kgの重量増。前回交換時に比べ、全体的にカーバッテリーが値上がりしていてビックリ
参考までに、電動工具の電源用などに長年活用しているボッシュ メガパワーシルバー 46B19L。9.5kgと持ち運びに便利
インジケーターはもちろんコンディション・グリーン。行くぞ、野明!

性能ランクアップ、物理サイズアップでパワーアップ

 筆者の愛車は納車直後に標準装着 55D23バッテリーから115D26バッテリーに1ランクサイズアップしており、今回はさらに1ランクサイズアップの135D31を装着した(※2)。サイズアップすれば当然5時間率容量が増え、搭載しまくっている各種電装品をより安定して使用することができる。充電すべき容量が増えるためオルタネーターの負荷も増えるが、これまで一度も不都合を感じたことは無いし、もちろんノントラブル。

 車種によりバッテリーホルダー(受け皿)部分の形状はさまざまなので、性能ランクはともかく物理サイズを変更する際はホルダー形状との相談が必要。走行中にバッテリーがグラグラ動くと配線に大きなダメージを与えることになるため、シッカリ固定できるよう対処しよう。

23Dから26Dにサイズアップして横幅が3cm広がっているが、まだまだ周辺には余裕がある(撮影のため化粧カバーと吸気ダクトを取り外した状態)
受け皿の横幅がギリギリアウトだったので一部加工。バラしたついでに掃除もしておこう
23D → 26D → 31Dと、都合8cm横幅が拡大。31Dサイズを装着して、左右各パーツとのクリアランスは2cm程度。問題なし
マイナスターミナル横の黒い箱が充電制御用の電流センサー。充電制御車ではバッテリーのマイナス端子に直接配線することはできない
プラス端子側は通常どおりの配線でOK。大容量ヒューズを飛ばすと高くつくので、そういう意味でも気をつけて作業したい

大は小を兼ねる!? 大容量インバーター

 本連載でも何度となく紹介してきた「DC/AC インバーター」、みなさんもお使いだろうか。容量が小さなものならアクセサリーソケット(昔で言うところのシガーソケット)に差し込むだけで手軽にAC100V電源(ただし矩形波)を確保することができる便利なアイテムだ。

 一部のハイブリッドカーなどではAC100V /最大 1500W(以下AC100Vは省略)という大電力(しかも家庭用とかわらない正弦波)を供給できる車種もあるが、大多数のガソリン車に純正オプション装着できるものは最大100Wのタイプが多く、これではノートパソコンを動かす程度で精一杯。そのため筆者の愛車は連載第1回目で紹介したバッテリーから別系統の配線を引き出す「バッ直」を行った上で、定格800W(瞬間最大1600W)のインバーターを車室内の邪魔にならない場所に常設し活用している。

 800Wあれば結構いろいろな家電製品を活用することが可能だが、湯沸かしポット、電子レンジといった超便利家電を動かすには容量不足。そのため必要な際には、エンジンルームを開けて定格1800W(最大2000W / 瞬間最大 3800W)のインバーターを使用しているのだが、晴れの日はともかく雨や雪の日は運用が大変。できるかぎりスマートな設置と運用を模索してみよう。

20系ヴェルファイアに搭載されているオルタネーターの発電容量は、標準仕様・寒冷地仕様ともに150Aと大容量。これは助かる!(ほぼ新車時の写真)
こちらは10万km走行時のオルタネーター記念写真。ハウジングに塩害、アース部に錆びと歴戦の跡は見えるが問題なし。コイルもピカピカ
効率を高めるため、オルタネーターのB端子とインバーターを直接配線。80Aヒューズを入れた20SQ配線を2系統、慎重に取り付ける。(写真は作業途中の仮組み状態)
ゴム製キャップに追加配線2本を収めることはできないため、気密防水テープと自己融着テープでしっかり養生
マイナス系統は「バッテリーマイナス端子部ではなく」ボディーアース部に共締めする。固定が甘いと大電流で異常発熱するので要注意!(写真は錆び取り・共締め前の状態)

愛車のオルタネーター容量を知ろう

 大容量インバーターの説明書注意書きに、以下の記述がある。

・普通乗用車の発電能力は約50A~70Aです。このため普通乗用車で連続使用できる機器の消費電力は約700W程度までとなります。
 例:機器の消費電力1800W≒バッテリー90Ahが必要

・エンジンを停止した状態で本製品を使用しないでください。バッテリー上がりの原因になります。

・本製品はエンジンを始動させた状態で使用するものであり、バッテリーのみで使用した場合は保護回路などが作動し本来の能力を出せない場合があります。

 20系ヴェルファイアのオルタネーター(品番:27060-28341)は、標準仕様・寒冷地仕様ともに出力 DC12V 150Aと強力大容量。ライトや熱線など大電流を必要とする装備を使っていなければ、かなりの電流をインバーターに供給することが可能となる。

 湯沸かしポット、ドライヤー、電子レンジの負荷は1000W~1300W程度。実験の結果、この程度の負荷を掛けてもアイドリング回転のままで電圧ドロップもせず、安定動作できることが分かり一安心。これは活用の幅が広がるぞ。

 充電制御機能を搭載した車両の場合は、インバーターのマイナス系統を「必ずボディーアースに」接続する必要がある。バッテリーのマイナス端子に直接接続してしまうと、大電流を消費しているにも関わらず充電制御回路がそれを検知できず、発電量不足となり一気に電圧がドロップし、エンジン回転数も不安定になる。

 きちんと配線した場合は1500W程度の負荷でもエンジン音が乱れることはなかったが、バッテリーに直接配線した場合は400W程度の負荷でも異常が発生。充電制御回路に「大電流を使っていますよ!」と知らせることが重要なのだ。

 動作時の冷却ファン騒音も大きいため、大容量インバーターはエンジンルーム内に固定した。熱くて寒くて揺れて湿気も多い場所なので、配線は他所に干渉せずエンジン排熱の直撃も受けないよう慎重に取り回し、本体はバッテリー上の位置に木製ステーで仮固定。確実に固定され、かつ簡単に脱着できるようにする必要があるため、金属ステーなどで工夫した(※3)。

仮の木製ステーで位置決め中。確実に固定、確実に配線、簡単に脱着、安全第一で。配線類は位置決め後にコルゲートチューブなどで養生する
AC 100Vとリモート配線は、助手席側グロメットからVCTF(より線)ケーブルで引き込む。ここなら分配やブレーカーを置いてもじゃまにならない
ブレーカーや配線器具はVVF(単線)ケーブル用なので、絶縁被覆付きの棒形圧着端子を使う(ブレーカーは参考用)
インバーターのリモートON/OFFは、純正パワーアウトレットスイッチ(品番:84485-28020)へ接続。スイッチ搭載位置は違うが純正の仕上がりに
ヘアドライヤーの弱モード、約400Wの負荷を掛けた際のDC系電圧は13.9V前後。余裕のよっちゃん
電気ポットで湯沸かし中、約1100Wの負荷を掛けても13.3V前後で安定。まだまだ余裕
インバーターの最大出力 2000Wの負荷を与えると、動作はするが11.3V前後までドロップ。でも非常時緊急用としては心強い

発電するにはエンジンパワーが必要 × アイドリングストップ条例

 おなじみティファールの電気ケトルは、カップ1杯140ccのお湯が沸くまでわずか50秒前後。カップラーメン1杯300ccでも2分待たずに熱湯が沸く。いつでもどこでもサッと暖かいスープが楽しめ、実に便利だ。アクセサリーソケットのDC12Vで動作する車載用電気ポットも市販されているが、ラーメン1杯分のお湯を沸かすのに20~50分も掛かり、これではちょっと実用が難しい。

 オルタネーター容量さえ足りていれば、エンジンパワーを活用して大電力を得ることができ、各種家電製品を快適に利用できる。だが、エンジンパワーなしでこれを実現しようとすると、大きく重たい大容量のディープサイクルバッテリーを複数系統用意し、かつ事前に満充電しておくなど相当な装備と時間が必要になる。

 ラーメン湯沸かしにしろ、雪道で濡れたズボンの裾をドライヤーで乾かすにしろ、電子レンジでお弁当を温めるにしろ、動かす時間はせいぜい5分程度。たった5分、されど5分。現在は全国各地でアイドリングストップ条例が施行されているため、もしもこの「発電のためのエンジン稼働」が「無駄なアイドリング」と解釈されてしまうと、まさかの条例違反ということに。

「走行中に同乗者がポットに水を入れ、走行しなから湯を沸かし、走行しながら揺れる車内で熱湯をカップラーメンに入れて……、3分経ったら安全に停車できる場所を都合よく発見して、ラーメンを食べる」

 こんなバカバカしい使い方はあり得ないので(笑)、以下の内容を東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県の各担当部署に照会してみた(※4)。

質問:「自家用車のエンジン出力を利用してDC/ACインバーターを作動させ湯沸かしや調理をする場合でも、アイドリングストップ条例違反に該当するかどうか」

前提として:
・駐停車が認められている場所に停車する。
・混雑した場所や民家の目の前など、そもそも迷惑になるような場所は論外。
・電源出力のためにエンジンの稼働が必要(バッテリー容量だけでは不足)。
・動作させる時間は必要最小限とし、使い終わったら速やかにエンジンを停止する。
・無駄なアイドリングをする意図はなく、あくまで電源確保のためにエンジン出力を使用したい。

東京都(一切使用不可)

東京都環境局 自動車公害対策部 規制課
(都民の健康と安全を確保する環境に関する条例 第52条~第56条)

・冷凍車や生コン車など業務用車輌を除き、一般乗用車、キャンピングカーを含めすべて条例違反となる。
・従って、時間の長短にかかわらず、東京都内では問い合わせの機器を一切使用できないと考えていただきたい。
・バッテリーだけでは駆動できずエンジン出力が必要な機器を業務用車輌以外に車載している場合、それは東京都内では使用できないということになる。
・この条例が適用されるのは東京都下のみなので、それ以外の地域で活用していただきたい。

神奈川県(常識の範囲内でエンジン稼働可能)

神奈川県 環境農政局 環境部 大気水質課 交通環境グループ
(神奈川県生活環境の保全等に関する条例 第35条)

・あくまで不要不急時の無駄なアイドリングによる大気汚染防止を主眼とした条例であり、利用者の利便性を損なう意図ではない。
・交通法規その他を遵守し、かつ周囲の住環境等に配慮するのは大前提だが、乗用車に搭載した機器を作動させるに際し、エンジンの動作が不可欠な場合は条例違反とは判断しない。
・必要の範囲内で、周囲に迷惑を掛けることなく、速やかに使用していただきたい。
・何分何秒までならよいのかという時間は定めていない。実際の判断基準は市町村に任せてあるので、どこまで使ったら指導の対象になるかは個別に確認してほしい。
・いずれにしても「常識の範囲内で」ということになる。

千葉県(常識の範囲内でエンジン稼働可能)

千葉県 環境生活部大気保全課 自動車公害対策班
(千葉県環境保全条例 第56条の6)

・あくまで不要不急時の無駄なアイドリングによる大気汚染防止を主眼とした条例であり、利用者の利便性を損なう意図ではない。
・交通法規その他を遵守し、かつ周囲の住環境等に配慮するのは大前提だが、乗用車に搭載した機器を作動させるに際し、エンジンの動作が不可欠な場合は条例違反とは判断しない。
・必要の範囲内で、周囲に迷惑を掛けることなく、速やかに使用していただきたい。
・「不要な場合」のアイドリングストップを義務としているので、このケースでは「必要な範囲」なのだから条例違反とはならない。
・一概には言えないが、「猛暑の日にちょっと待機する時でもエンジンを切ってエアコンを使うな」というのもナンセンスであり、そんなことをしたら赤ちゃんやお年寄りなどは体調を崩してしまいかねない。
・周囲の迷惑にならないよう、必要な範囲内で利用してほしい。

埼玉県(常識の範囲内でエンジン稼働可能)

埼玉県 大気環境課 自動車対策担当
(埼玉県生活環境保全条例 第40条~42条)

・大前提として、「不必要なアイドリング」を規制しているので、業務用車輌だけでなく自家用車であっても、車載機器の動力源など必要な場合は規制対象とはならない。
・あくまで不要不急時の無駄なアイドリングによる大気汚染防止を主眼とした条例であり、利用者の利便性を損なう意図では無い。
・交通法規その他を遵守し、かつ周囲の住環境等に配慮するのは大前提だが、乗用車に搭載した機器を作動させるに際し、エンジンの動作が不可欠な場合は条例違反とは判断しない。
・猛暑酷暑時、出迎えで数分停車待機する際にもエアコン使用を禁止するといった意図もこの条例にはない。
・あくまで「不必要な」アイドリングを抑制し、大気汚染防止と燃料節約を励行して頂ければありがたい。

「マナーを守って」、楽しく快適なクルマ電化生活を!

 関東地方一都三県の中では東京都のみ相当厳格な運用ということが分かったが、みなさんの参考になっただろうか。

 2015年1月現在の確認内容なので、今後の状況によっては回答や運用が変わる可能性があり、そもそも条例がどうあれ人に迷惑を掛けるような、あるいは本当に「無駄な」アイドリングを行わないのは、それこそ「常識」であるのはいうまでもない。アイドリングストップ原理主義はいかがなものかと思うが、だからといって「よーし、これでエアコンをつけたまま昼寝できるぜ」は大間違い。

 大容量インバーターを搭載すれば、たとえばコンビニも何もない釣り場で暖かいカップラーメンが食べられるなど日々のレジャーでも大活躍、そして非常時には自宅の照明や炊事の電力を供給することも可能となる。ガソリンが満タンなら数日間発電し続けることも可能であり、プラグインハイブリッドカーでなくガソリン車でも「非常用 簡易電源車」に変身できることは、日本海中部地震と3.11の経験を踏まえつつ重要なことだと思う(※5)。

この便利さ、一度使えばヤミツキに! スイッチ1つで普通に湯沸かしできるのが新鮮
車室内模様替えのためにセンターコンソールボックスを取り外すと、フロア鉄板が剥き出しとなりノイズが飛び込んでくる。
レジェトレックス、エプトシーラー、ニードルフェルトなどでフロア全体を防音施工した様子は過去記事を参照されたし
「お下がりバッテリー」は常時1つ以上積載するようにしている。大容量アウトドア電源に、非常用レスキュー電源に、マルチに使える便利アイテム
余談だが、園芸用の高さ15cm棚を置くと、荷物を置いてもシート下を活用できてとっても便利。大型床下収納の新型がうらやまし~(笑)
センターコンソールボックスを取り外して、「和のくつろぎスペース?」を作ってみたところ。走る快適電化リビングへの道は続く(※6)

※1 カーバッテリーを想定用途以外に使用すると、メーカー保証の対象から外れます。

※2 カーバッテリーの性能ランク・物理サイズの変更は無理のない範囲で。型番の「135」といった数字は容量ではなく性能ランクを表しています。5時間率アンペア容量など詳細仕様は各メーカーのWebサイトなどを参照願います。

※3 インバーターの配線系統には大電流が流れるため、確実な施工とヒューズなどの安全対策が必須です。エンジンルーム内へのパーツ追加固定は、各部の本来機能に影響を与えず、脱落防止にも十分な配慮が必要です。追加する材質や形状等によっては、車検不適合となる場合があります。個別のケースについては回答できませんので、陸運局・車検場・ディーラー等で安全の確認をした上で運用してください。安全点検には費用が掛かる場合があります。

※4 しつこくて恐縮ですが、これは筆者が「無駄な」アイドリングを推奨するものでも、各条例に楯突く意図でもまったくないので、くれぐれも誤解なきようお願いします。

※5 あくまで非常時の例え話です。長時間稼働、防犯面、専用のエンジン式発電機と比較して燃費がよくないなどの問題はここでは割愛します。

※6 イメージ写真です。この状態での走行運用を推奨するものではありません。湯飲みが転がってブレーキペダルに挟まったりすると大変危険なので、耐熱紙コップがベターです。熱湯の取り扱いには十分注意を。

※ クルマいじりは自己責任で。無理な改造は事故や故障、怪我の原因となる場合があります。もちろん、違法改造はやめましょう。やむを得ず注意書きが多くてすみません。

NAO