飯田裕子のCar Life Diary

変な外人さん!?と富士急ハイランドへGO

 日本が好きな外国人は沢山いますね。アキバ系のアレコレが好きな人、京都や鎌倉など日本のお寺や仏像が好きな人、富士山をはじめ日本の風景が好きな人、北海道のパウダースノーが好きな人、“もったいない”の心が好きな人、“スシ~、サシミ~、テンプラ~、スキヤキ~”などの食文化が好きな人、剣道や柔道などが好きな人……などなど。以前、カリフォルニアで1年だけカレッジに行っていたときは、1人の男子学生に「日本が好きなんだ。日本に行きたい。日本でニンジュツ(忍術)を学びたい」と真剣に相談されたことがありました。本当にいろいろな日本好きの方がいるものです。

 今回ご紹介する方も日本が大好きなオランダ人。AKB48が好きで、Perfume(パフューム)やきゃりーぱみゅぱみゅも好き。と、これだけ聞くと「あ~、そっち系ね」で終わってしまうのですが、その男性は無類の日本車、しかも軽カー好き。そんな彼と縁あって(いや訳あって)日本で1日ドライブに出かけることになったのでした。

「Auto Zine」の編集長イヴォ・クローネさん

 そもそも知り合ったきっかけはスペインで開催された某メーカーの国際試乗会。夕食後に日本人グループが談笑していたときに、その方は嬉しそうに近づいてきて、英語に加え片言の日本語で話しかけてきた。いわゆる「変な外人!?」と思われそうな第一印象の彼は、オランダをベースに欧州各国の言葉でクルマの紹介などを行っている「Auto Zine」の編集長、イヴォ・クローネさん。

 その時に、「近々、日本の秋葉原や京都を旅行し、関東では富士急ハイランドで“ドドンパ”に乗りたい」なんて言う。そこでつい「富士急のドドンパ、私も乗ってみたいんですよね」と日本語で呟いてしまったら、「それなら裕子が一緒に行ってあげなさいよ」と周囲に煽られ、「予定が合えば……」なんて軽く答えていたところ、今度はジュネーブモーターショーで偶然の再会。日程が決まったと嬉しそうに話し、こうなったら一緒にドドンパを乗りに行こう、と本気モードで富士急行きを計画したのでした。しかも、イヴォさんの好きな軽カー「日産オッティ」で。

日本で購入したばかりのCDを聴こうと盛り上がる車内。ドライブ中に音楽を聴くのが好きな私にとって、パフュームやきゃりーぱみゅぱみゅは新鮮。AKB48は2人で(私1人で?)唄いながらオッティを走らせました
海老名SAに立ち寄ると、すかさず目新しい軽カーにカメラを向けるイヴォさん
私の好きな富士山のある風景を見せてあげたくて山中湖に立ち寄ったものの、クリアさに欠けて少し残念
ランチは山梨のほうとうをご賞味いただきました
こちらをご覧いただけば、イヴォさんの“デカさ”が分かる!?(笑)

 ジャーナリストである彼は、私たちが海外でその国のプレスカーをお借りするように、日産本社で英語対応ナビ付のオッティを借り、多少ヒヤヒヤしながら都内のホテルまで戻ってきたと聞きました。そこで当日は先ず私がハンドルを握り、富士急ハイランドを目指すことに。イヴォさんを助手席に乗せると、スペース効率に優れた近年の軽カーであっても、人口密度ならぬ“人密度”を感じるほどオランダ人の体型の“デカさ”を実感。

 一方で「何から聴く~?」と、購入したばかりのお気に入りのアーティストのCDをこちらに見せてニコニコする姿に、私はギャップがオモシロ可笑しく、息子と会話する母のような笑みを浮かべ東名高速を走りました。SA(サービスエリア)ではカメラを手に軽カーを発見しては一喜一憂するイヴォさん。では何故そんなに軽カーがお好きなのかと聞けば、日本の自動車文化にしかない乗り物であり、そこに詰め込まれた技術やデザインが素晴らしいと言います。ちなみにイヴォさんの愛車は、オランダに住むご友人が輸入した後に譲り受けたスズキ「カプチーノ」と、オランダでも購入可能な「スイフト」。信頼性の高さと走りのよさを両車に感じ、大変満足しているそうです。

さっそく撮影を始めるイヴォさん。仕事の目に変わり、コンパクトカメラを構えクルマの配置を私にやや厳しく指示する様子はやはり同業者、しかも編集長さんなんだなぁと実感させられました

 富士急ハイランドでは我々の念願のジェットコースター「ドドンパ」に搭乗(1時間近く並びました)。ドドンパの威力をご存知ない方のために少し説明をすると、ドドンパは発車後わずか1.8秒で172km/hに達し、そのときに発生する加速Gは4.25Gなのだとか。しかもわずか1分間の乗車時間のハイライトがいきなり最初にやってくるのです。いきなりドッカーンと加速するのです。ワクワクもドキドキもする間などなく、「ギャーッ!」「ヒェーッ!」と言っているうちに終わります。

 が、速いクルマがお好きな方はぜひ話のネタに1.8秒で170km/h以上に達する加速を体験されてみてはいかがでしょうか。一方でなぜ今回私がイヴォさんと2人でやってきたのかと言えば、スペインに一緒に行っていた同業の男子たちは揃って「ボクはいいよ……(冷汗)」と腰が引けていたわけで、男性の方がジェットコースターは嫌いという噂は本当なのかもしれません。

ドドンパはわずか1.8秒で172km/hに到達。最大加速度4.25Gは頭をしっかりとヘッドレストにつけておかないとキケンです。でも楽しい!
今回、富士急ハイランドをいろいろと満喫しましたが、主目的はドドンパとかき氷。周囲の悲鳴(ジェットコースターに乗る人たちの)をBGMにかき氷を食べました

 イヴォさんはその後、マツダ「ロードスター」で京都~東京を1人で“カー旅”することになっていました。そこでこの日は1日、さまざまな標識や日本の交通ルールを紹介し、パトカーや覆面パトカー、白バイ、そしてカメラによる交通取り締まりについても片言の英語で注意喚起。土地によって交通マナーやモラルが異なることも、私の印象から説明をしました。

 ただ1つ返答に私が返答に苦しんだのは、日本の制限速度のドライバーの速度認識でした。富士急ハイランドからの帰り、イヴォさんが運転に慣れるためにハンドルを握ったのですが、例えば制限速度を守って走行するイヴォさんに、スピードオーバーや走行区分違反や車間距離についての注意を説明している間にも、100km/h以上でビュンビュンと追い越し車線を走り去るクルマが沢山いるわけです。パリの高速道路では1km/hでも速度オーバーしたら捕まるそうで、慎重な速度維持を心がけます。ドイツの高速道路や郊外の制限速度の変化にも神経質なほど注意をしないといけません。日本でも制限速度は守らないといけないはずなのですが、街中のクルマの流れですら法定速度以上だったりもするわけで、制限速度と取り締まりについては日本の交通モラルが問われる鋭い質問でした。

 ほかにもお恥ずかしい話ですが、ナンバープレートのひらがななど、ルールについて正確に答えることができなかったり……。今回は行きがかり上、オランダ人のイヴォさんと富士急ハイランドへのドライブを敢行したわけですが、ドドンパの加速に感心するばかりではなく、私がこれまで見過ごしてきた日本のクルマ文化や交通環境を再認識する機会にもなりました。外国人に限らず、クルマの話にも限ったことではなく、こういうことがあるから他人の目線って面白く興味深い。

ヘッドクリアランスもたっぷりなはずのオッティですが、イヴォさんが乗るとこんな感じです。この後はロードスターで東京~京都を往復。日本語対応のみのカーナビしか搭載されてなく心配をしていましたが、スマホの地図アプリを使って無事に行ってこられたそうです

飯田裕子