飯田裕子のCar Life Diary

“クルマ好事家的ぶらりシャンゼリゼ通り散歩”

 プジョーの新型「308」国際試乗会に向かう途中、束の間ながら久しぶりにパリの街を歩くことができた。パリはシャンゼリゼ通りに並ぶショップがあちこち入れ替わっていても、街中でタイムスリップ感覚を味わえるのが素敵。歴史のある建物が“ずっとそこにあるのが当たり前”的な佇まいであちこちに残っているからだと思う。

 そんな風景やノスタルジックな気分から、意識を鮮やかに“今”に引き戻すのは人やクルマなのではないかな、と。街中を走るクルマは新しめのモデルも多い。ただ、もっとカラフルな交通風景を期待していたけれど、意外と無難な色のクルマが多かったのは期待ハズレ。一方で、人々はやっぱりオシャレな装いが多い。想像以上に寒かったパリでも「ココでもやっぱりTシャツなんですね」と、どこから来たか分かりやすいアメリカ人観光客もいた。でも、全体の印象としてはファッションにこだわっていたり、それを楽しんでいる人が多く目に映ったのだった。

 そんなパリには、クルマ文化もオシャレに楽しめるステキなスポットがある。短いパリ滞在で少しだけ楽しんだ“クルマ好事家的ぶらりシャンゼリゼ通り散歩”をご紹介。それはクルマ好きならちょっとしてみたい、自動車ブランドのショールーム巡りなのであります。

交差点での1ショット。パリを走るクルマたちはもう少しカラフルなイメージを持っていたけれど、たった1台、プジョー「107」がコンパクトながら最も存在感を主張しているだけだった。ちなみにプジョー「107」は日本未発売
訪れたビジターをノスタルジックな世界に一瞬でタイムスリップさせてくれるシトロエンの「2CV」。歴史のある街並みになんの違和感もなく溶け込んでいた
凱旋門から続くシャンゼリゼ通りは、道幅70mに片側4車線という大通り

 スポットの数としては意外と多いのではないかと思う。シャンゼリゼ周辺にはシャンゼリゼ通りを含め、私が確認できただけでも本家の「プジョー」「シトロエン」「ルノー」、同じヨーロッパの「メルセデス・ベンツ」「フィアット」、それに日本の「トヨタ」も存在する。また、シトロエンといえば2013年12月に『DS WORLD』もオープンしている。

 ショールームといってもここでクルマを販売するのではなく、あくまでも“ブランドイメージを売る”というのが目的。それはさながら、表参道や骨董通りあたりにあるファッションブランドの路面店のようなスタイリッシュさがあり、それぞれの展示にはセンスが光る。だからこそメッセージ性も強く、分かりやすく楽しめる。

 今回はシトロエンとオープンからまだ半年も経たない『DS WORLD』をのぞいてみた。プジョーの試乗会でフランスに行ったのだからプジョーにも行きたかったけれど、なんと「改装中」ということで断念。各ショールームは時々模様替えや改装を行っているらしく、まあ、こういうことは事前チェックしておくか、覚悟を決めて出かけて行ったほうがよさそう。

シトロエン「C42」

シトロエンのショールーム「C42」。42の意味は“パリの42番地にあるから”だとか。ただいまは「MY CITROEN ADVENTURE」が展示のテーマ
エントランスを入り、まずは今シーズンWTCCに参戦中の「CITROEN C-Elysee WTCC」にご挨拶。セバスチャン・ローブもWRCからサーキットレースに転向し、このマシンのステアリングを握っている。シトロエンチームは開幕以来4連勝中。秋の鈴鹿ラウンドが待ち遠しい!
8段重ねになったターンテーブルが、吹き抜けスペースを使って地下1階から地上3階までそびえ立つ
一番下になる地下1階のターンテーブルには今年のWRCカー「DS3 WRC」を展示
そのほかの展示車両。はるか昔のハーフトラックモデルから最新モデルのC4 CUCTUSまで一堂に展示されている
ミニカーやアパレル商品を販売するグッズショップ

シトロエン『DS WORLD』

ガラス張りで先進的な「C42」とは対照的に、『DS WORLD』の外観はとてもシックで落ち着いた雰囲気
地下1階、地上2階建ての1階入り口では「DS3」が出迎えてくれた
地下はモダンな工房のような雰囲気。オートクチュールのブティックのような一角に「DS5」や「DS3 CABRIO」が静かに佇む。そんな状況にもかかわらず、今にも動き出しそうに感じるのはエモーショナルなデザインのせいだろう
初めてDSのコンバーチブルモデル「DS19 デカポタブル」を見ることができた。1960年の秋から「DS19」をベースに、その後は「ID」や「DS21」のバリエーションとして加わったコンバーチブルモデル。その生い立ちについては諸説あるが、元々はアンリ・シャブロンといういわゆるコーチビルダーが、DSをベースに架装して販売。その評判がよく、のちにシトロエン自体もカタログモデルとして加えたというのが一般的なストーリーらしい。内外装も豪華に仕立てられていて、当時の価格はDSの約2倍という超高級車だった模様
所々に置かれたショーケースのなかには、時計やペン、ミニカーなどのグッズが芸術作品のごとく飾られる。ほかにもアロマキャンドルやスキー板まで購入できる

そのほかのショールーム

プジョーのショールーム「プジョー アベニュー」が改装中だったのが残念
ルノーの「アトリエ ルノー」。シャンゼリゼ通りに一番最初にショールームをオープンしたのがルノーなのだとか
「ランデブー トヨタ」と名付けられたトヨタのショールーム。今年のWECマシンが入り口に置かれているというのは、欧州でステイタスのあるモータースポーツに積極参加しているというアピールだろうか。こういうイメージ作りが大事なのだと思った。6月になればル・マン24時間レースも開催される
メルセデス・ベンツのショールーム「メルセデス・ベンツ ギャラリー」。エントランスに足を踏み入れただけだったけれど、斬新さが印象的

 個人的にパリといえば、のんびりと美術館巡りをしたい派なのだけど、これだけのショールームがあちこちに点在していると、違うスイッチが入るようでテンションが上がる。次回はゆっくりと時間をとってショールーム巡りを楽しみたい。リベンジを狙います!

 新型のプジョー 308は車名こそ先代と変わらぬものの、その中身はすべてが一新されたと言ってもよいほど大きな世代交代を遂げていた。Car watchではその詳細を河村康彦さんがリポートする予定。ぜひそちらをご覧ください。

飯田裕子