ユーザーの声から生まれた新ジャンルタイヤとは

 いつまでも真夏日が続いていたかと思ったら急に冷え込んで、冬の到来を感じさせる気温変化に、少し戸惑いを感じる今日この頃。温度変化に驚き、風邪をひく人も少なくないみたい。自然界では山間部でイッキに冷え込んだおかげで、例年になく紅葉がキレイなのだとか……。デパートのファッションフロアではやっとコートなど冬物の需要に動きが出てきたそうです。それでは、クルマの冬支度もそろそろ……という方もいらっしゃるのではないでしょうか。

 クルマの冬支度と言えば、降雪地ではすでにスタッドレスタイヤへと“衣替え”ならぬ“タイヤ替え”が始まっている様子。では、ウインターシーズンでも雪に降られる可能性の低い生活圏ではどうでしょうか。わざわざスタッドレスタイヤに履き替えるくらいなら、冬はクルマでの外出を控えますか? そういうわけにはいかないという方もいらっしゃるでしょうし、雪が心配で寒い冬に便利なクルマ生活を我慢するもの悲しい。しかし“ゲリラ雪”に遭って立ち往生するもの心配です。

「CFt」。サイズは165/70 R14 81S、175/65 R14 82S、175/65 R15 84S、195/65 R15 91Sが用意される。サイドウォールには四季を表す花や雪の結晶のマークが入っている

 トーヨータイヤが日本に住むそんなユーザーの声をもとに、「CFt」という新ジャンルのタイヤを開発しました。今年1月に北海道はサロマにあるトーヨータイヤのテストコースで試走させていただいたのですが、なるほどコレは考え方次第では便利かもしれないと感じたのでした。そして、紹介のタイミングを待っていました。ぐふふ……。

 まずCFtというタイヤを一言で説明するならば、「冬タイヤの性能を備えた夏タイヤ」です。つまり普段から履いているタイヤに突然の雪でも安心して走れる冬タイヤの性能も含まれているということになります。

 タイヤが路面と接する部分は左右非対称のパターンデザインが採用され、装着時に内側にくる方は冬性能を、外側には夏性能を重視した設計になっているそうです。そして非対称のパターンに加え、非対称の性能のトレッドコンパウンドを配合。

 その結果、例えば40km/hからのスノー制動距離のテストデータでは……同社低燃費系夏タイヤの「ECO WALKER」(エコウォーカー)は制動距離37m、CFtは20.5mと、エコウォーカーよりも制動距離が大幅に短縮されています。ちなみにスタッドレスタイヤの「GARIT(ガリット)G5」はさすがの15.6m。

 さらにそのほかの性能図からも、スノー性能の優位点はうかがえます。スノー制動性能をはじめ、スノー登坂性能やスノー操縦安定性能はエコウォーカーよりも高く、一方で静粛性やドライ制動性能は互角。ウェット制動性能はほんのわずかエコウォーカーが優れているものの、乗り心地、ウェット操縦安定性能はCFtのほうが優れているという結果でした。

CFtのトレッドパターン外側が夏性能重視、内側が冬性能重視のパターンになっているコンパウンドも非対称
スノー制動距離は夏タイヤの「ECO WALKER」よりも短いECO WALKERと同等の夏タイヤ性能を持ちながら、冬タイヤ性能は高められている

 

 では実際に試走してみた印象はというと、スノータイヤが雪を踏みしめて走るという感覚をCFtでも感じることができただけではなく、これが夏タイヤかと思うと想像以上に安心感を抱くことのできる性能を持っていると実感。また同時に、スタッドレスタイヤの雪や氷路でのハンドル操作に対する応答性や、制動性能の優位性、違いを知ることもできました。

 CFtは雪に対する性能は夏タイヤ以上ではあるけれど、スタッドレスタイヤとは違う。しかしめったに雪が降らない地域でクルマ生活を送っている場合、経済的かつ収納事情などからわざわざ冬用タイヤを購入するのもちょっと……という方には頼もしいタイヤと言えそうです。

 さすがにそういったユーザーニーズをもとに開発されただけのタイヤです。現段階ではこのジャンルのタイヤはトーヨータイヤのみ。日本の冬生活環境に配慮し開発されているため、CFtは国内専用タイヤなのだとか。一般的なオールシーズンタイヤやM+Sタイヤよりも、明らかに冬タイヤとしての性能が高められたタイヤです。

 ただし、CFtはあくまで夏タイヤのカテゴリーに属しているわけで、スタッドレスタイヤではない。つまりチェーン規制中の道路や凍結路では、チェーンの装着もしくはスタッドレスタイヤに替えなければ走れません。くれぐれも間違いないようにお気を付けください。それにそもそも……そう、スタッドレスタイヤを履いていたって過信は禁物。

 これからやって来る冬に向け自分のカーライフスタイルに合ったタイヤ選びをして、安心&快適なウインターシーズンを迎えていただきたいものです。

飯田裕子のCar Life Diary バックナンバー
http://car.watch.impress.co.jp/docs/series/cld/

(飯田裕子 )
2012年 11月 1日