公道イベント「浅間ヒルクライム2012」
変わりやすいお天気の中、霧が晴れたら青空と紅葉が周囲に広がり、色とりどりのクルマたちのボディカラーもキャラクターもより一層濃厚に見えました |
10月最後の週末、長野県小諸市の浅間山麓で「浅間ヒルクライム2012」が開催されました。浅間と言えば、1955年に「浅間高原レース」というオートバイレースが公道を封鎖して開催され、大きな注目を集めたことは、今も日本のモータースポーツの歴史に残っています。そんな歴史を知る人にとっては、公道レースの聖地的なイメージを持つ方もいるのではないでしょうか。私自身もそんな歴史から“浅間ヒルクライム”と聞いて、ほんの少し特別なワクワク感を抱いたのでした。
ただし今回は、私にとって大好きなクラシックカーの走行を見て楽しむだけでなく、ヒルクライムレースを考える機会にもなったような気がしています。
本来ヒルクライムレースは公道を封鎖して行われるのが一般的であり、浅間ヒルクライムもアサマ2000というスキー場に向かう途中の「チェリーパークライン」という道路を封鎖して行われる予定でした。が、警察から1度は封鎖許可が下りたのに、使用許可(封鎖せずに、ナンバー付きの車両だけ走行可能)へと変わってしまったのだそうです。
このイベントは4輪のクラシックカーはもちろん、ナンバーのついていないレーシングカーや2輪が封鎖された公道を走行できることでも注目されていたのですが、封鎖できなくなってしまったことで、2輪にエントリーしていた方たちは断念されたのだとか。
“ヒルクライム”とインターネットで検索すると、日本各地で開催される自転車のイベントばかり。警察も自転車なら許可するのに自動車はダメなのかな……ちょっと羨ましく複雑な気持ちになります。これじゃクルマを楽しむ機会は減るばかりなり……か?
許可についてこれ以上語ると、不満に変わってしまいそうなのでもうおしまい。ただし今回、地元警察の方たちは、イベントのサポートをしてくれたそうですから、これだけはきちんと報告させていただきます。この実績が来年に繋がることを願いたいものです。
ラリーでいうところの0(ゼロ)カーを、アストンマーティンが務めていました。 | ポルシェ「993 GT2 レーシング」 | ケータハム・カーズ・ジャパンの顔、ジャスティンさんも「ロードスポーツ200」でデモ走行してくれました |
フェラーリ「365GTC/4」 | 最新のマクラーレン「MP4-12C」もデモランを披露! |
さて、私にとってヒルクライムと言えばパイクスピーク(アメリカ)ですが、ヨーロッパのほうがクルマのイベントとしてポピュラーであり、各地で開催されているようです。このイベントもそんな欧州スタイルのヒルクライムを日本でも開催しようと、今年から始まりました。
その違いは? と聞かれても困りますが、なんか、ちょっとオシャレな感じ? クルマが発する色気や美しさが、華やかかつ優雅な雰囲気にしているのは間違いありません。またこのイベントに後援や協賛していた団体や企業のサポートも、雰囲気を盛り上げていたのではないでしょうか。
そこで今回、道路は封鎖とはいかなかったものの、山奥で行われたこのイベントはとても和やかなものでした。
4輪の参加台数は当初予定の30台がフル参加し、ナンバー付でないモデルやレーシングカーたちはスペシャルステージ(専用コース)やジムカーナでデモランを披露してくれました。チェリーパークラインでの走行はパレードラン的な走行に変わってしまったけれど、観る側がポジティブにとらえれば、紅葉の中を走るクラシックカーを愛でるのにはちょうどいい速度。静かな山中に各車のエンジン音が先に聞こえてきたと思ったところで、コーナーから色とりどりのクラシックスポーツカーが姿を現し、走り去る様子をワクワクしながら眺めることができました。
ミニ マーコスGT | ロータス「23B」 | |
フィアット「500改 ジップスピード」 | ミニ マーコスGT | ヒルクライムコースのゴール地点では、ヒストリックカーに詳しい武田公実さんによるクルマの解説を聞きながら、走行を眺めることができました |
アルファロメオ「ジュリアSS」は女性2名で参加。クラシックカーラリーで上位入賞経験もあるのだとか、ステキです |
参加者からの感想を集めてみると……今回フェラーリ「365GTB/4」で参加し、日本の自動車収集家としてとくにフェラーリのコレクターとして世界的にも有名な松田芳穂さんは「スピードが出せないからちょっとつまらないけど、クルマの調子もいいし楽しんでますよ」と感想を話してくだいました。
島根県からアルファ ロメオ「1750 GTV」改と共に自走でやって来た迫さんは、このクルマと付き合って15年になるのだとか。公道を走るのは10年ぶりだったそうですが、今回、ヒルクライムに興味があって参加し、「コースは封鎖にならなかったけれど、楽しいし素晴らしい」と。
ホンダ「コリニオ」のオーナー池田さんはさまざまなクラシックカー・イベントに参加されている方ですが、今回の感想を「都会にはない自然の中を走る独特のムードがいいですね」と話してくださいました。
最後にポルシェ「356B」で参加していたモータージャーナリストの吉田匠さんは「今回は道路を封鎖できなかったけれど、すごく面白い。公道を速く走るって子供のころから憧れたしロマンあるしやっぱり楽しいよね。ただ、キケンも伴うわけだから気を付けないとね!」と、ヒルクライムに憧れる者の心理をついた感想が印象に残ります。
2日間で開催されたこのイベントの会場は、標高2000mという高地。そして残念ながらお天気は土曜日の朝から小雨、霧、晴れ、小雨、霧、晴れ……と変わりやすく、おまけに紅葉も始まるほどの気候でしたから、朝夕の寒さに参加者や観客の中には少々防寒不足という方もいたようです。が、ティッシュで鼻水を抑えながら、皆さんのんびりとこのイベントを楽しんでいました。
さらに参加者の方たちは土曜日の夜のパーティや翌日(日曜日)の走行後に行われた表彰式などで、参加者同士の交流も深めていたようです。
浅間ヒルクライムは紅葉とクラシックカーの走行、そしてビジターにとっては長野の温泉や秋の味覚も楽しむのによい機会となるイベントになりそう。来年、第2回が無事に開催されることを期待しています。
ポルシェ「356B」を駆るのは大先輩のモータージャーナリスト、吉田匠さん。プライベートのカーライフも充実している様子が何とも羨ましい! | ときにはこんな霧の中でジムカーナを観ることもありました |
■飯田裕子のCar Life Diary バックナンバー
http://car.watch.impress.co.jp/docs/series/cld/
(飯田裕子 )
2012年 11月 9日