ISO-FIX対応のベビーシートを試す
マキシコシ「カブリオフィックス」+「ファミリーフィックス」
メーカー:マキシコシ(オランダ)
購入価格:合計約6万円

 

カブリオフィクス+ファミリーフィックの組み合わせでISO-FIX対応のベビーシートが実現

 子どもをクルマに乗せるための器具であるチャイルドシートの固定方法が不十分というニュースを定期的に見かけるが、その解決策として期待されるのがISO-FIXによる固定だ。

 従来のようにシートベルトで取り付けるものと違い、金属でできた車体のロアアンカレッジとISO-FIX対応CRSのアームで剛結されるため、力もコツも必要なく確実な固定ができるものだ。しかし、規格と法律の問題、価格の問題、そもそも該当の製品の種類が極めて少ないという理由で普及が進んでいるとは言いがたい。

 それでも、幼児向けのチャイルドシートでは、車両側もチャイルドシート側も「汎用ISO-FIX」であれば対応を気にせず使える「汎用ISO-FIX」への移行が進み、普及の兆しが見えてきた。

 一方で、乳児向けのチャイルドシートは、後ろ向き固定という構造のため汎用ISO-FIXにはならず、対応車種が限定される準汎用ISO-FIXとなる。日本では乳児用チャイルドシートのISO-FIX対応品は一部の自動車メーカー純正品と、海外メーカー製だけという状況であり、一般の人が販売店で製品を目にする機会はまずない。

 そこで、製品が少ない中でISO-FIXに対応した乳児用チャイルドシートを試してみた。オランダのマキシコシの「カブリオフィックス」と「ファミリーフィックス」の組み合わせだ。

シート本体となる「カブリオフィクス」。シートカラーは毎年変わり、これは2010年モデルの「FAST FOWARD」ISO-FIXのベースとなる「ファミリーフィックス」両者を組み合わせてリアシートに固定した。アームは畳むこともでるが、走行中は安全のためにこの位置
ISO-FIX対応車はシートにISO-FIXのマークがあることが多い写真は対応するフォルクスワーゲン・ポロのリアシート。座面をずらすと金具がよく分かるISO-FIXのシートを使っていると車体側にも若干傷がついてしまうのは仕方がない

 ベビーシート本体であるカブリオフィックスは、シートベルト固定なら単体で使用でき、車両の対応をあまり気にせず利用できる。単体では多くのユーザーを見かける。

 ファミリーフィックスはISO-FIXで車両に取り付けておき、シート本体をカチっとハメ込むことでより簡単にチャイルドシートが固定できる仕組みとなっている。ただし、ベースの最大の問題は価格。正規輸入代理店での直販価格はシート本体が約3万円なのに対し、ベースは3万3600円。実際には安売り店で本体が2万円弱で購入できるのに対し、扱いが少ないベースは高い場合が多い。

 実際に利用するには、まずクルマにファミリーフィックスを取り付ける。ISO-FIXのアームを伸ばし、車両側にガイドをあて、ロアアンカレッジにアームをハメ込む。そして少し力を入れてシートとベースの隙間がなくなるようアームに力を入れて縮ませればよい。

 さらに下側のサポートレッグを床に突っ張る長さに調整する。ファミリーフィックスは乾電池が入るようになっており、サポートレッグの調整を含めて状態をブザーやLEDの点灯で知らせてくれる。取り付け状態がわるければ警告ブザーが鳴るという仕組みだ。

ロアアンカレッジはシート内に埋もれていることが多いので、ファミリーフィックスに付属のガイドを刺して取り付けるアームをいっぱいに伸ばす
ロアアンカレッジに向けてアームを差し込んでいくしっかり固定されたか確認するこのままでは隙間があいてしまうのでさらに押し込む
アームが縮んで隙間がないようにする下側のサポートレッグは、グレーの部分をつまむと伸縮するので突っ張るまで伸ばすサポートレッグ先端にはスイッチがありフロアに密着すると中央のLEDが緑に変わる。ちなみにISO-FIXアームが左、右はシートの固定の状態を表示している
サポートレッグが密着していないと中央が赤く点灯するISO-FIXの固定なし、サポートレッグも密着なしでは赤いLEDが点灯するLEDの点灯やブザーのためにファミリーフィックスは単三乾電池を2本使う。電池室はポジドライブのビスで止まっている
カブリオフィックスはアンカーポイントに合わせてハメ込むカブリオフィックスの下側には2本の取付棒があり、ここで固定されるファミリーフィックスからの分離はフロントのグレーのレバーを引き上げるとロックが外れる

 ファミリーフィックスが固定されれば、カブリオフィックスをはめ込んで固定する。ほぼ上から乗せるだけなので、子供を家の中でカブリオフィックスに乗せておき、まるごと持ち運んでファミリーフィックスにハメ込むこともできる。もちろんその逆も可能で、子供がクルマで寝てしまった場合でも起こさずに家の中に運べる。

 ただし、この場合は相当体力が必要。カブリオフィックスは3.2kgあり、子供の体重は新生児でも3kg超。生まれたばかりで合計約7kg、少し成長すれば10kg以上となり、力持ちのパパでないとこのような使い方は無理だろう。

キャリングハンドルをたためば、シート本体、ベースともにトランクに収納できるファミリーフィックスは少し不安定だが立てかけておけるサポートレッグは本体にカチっとはまるので、不用意にブラブラすることがない
カブリオフィックスには小物入れが付いており、説明書や子供に必要な小物の収納が可能だキャリングハンドルの根本にはベビーカーとの合体のためのフックがある。これで固定されるファミリーフィックスにも小物が入るスリットがある。せいぜい説明書程度だろう
ファミリーフィックスを使う場合のメリットは、全体の角度を3段階に調整できること。ただし、前に出すとフロントシートとの干渉が強くなる使用方法は図示されているので説明書がなくても使用は可能

 また、カブリオフィックスの特長として、ベビーカーとの合体利用が挙げられる。3輪タイプの製品が有名な「クイニー」ブランドをはじめ、非公式なものも合わせれば対応が多いので、クルマから子供を載せ替える際、子供に触れずにシートごと載せ替えることができる。

 合体してのシステムアップは、ガジェット好きのイクメンが大いに注目する機能であるが、前述のとおりシート+子供の重量は軽くない。相応の体力がないと実現しない機能であることは覚えておくべきだろう。

 さて、実際にカブリオフィックス+ファミリーフィックスをクルマに装着した場合の使い心地だが、簡単に装着できる点が便利。しかも確実に固定されるので安全も確保できる。

 ただ、カブリオフィックス単体の場合と、子供の乗り心地に大きな違いがある点に注意が必要だ。単体装着であればリアシートのクッションの上に置くため、リアシートのクッション性能が子供の乗り心地に反映される。しかし、ファミリーフィックスはISO-FIXで後部を固定、前部はフロアに直接サポートレッグで突っ張る形になるため、リアシートのクッション性は子供に関係なくなる。

ISO-FIXではなくシートベルト固定でカブリオフィックスを取り付けた。子供の着座位置が下がっている取付は3点式シートベルトの下側を両側のベルトフックに引っ掛け、たるみをとるこれだけでもカブリオフィックスの根本側はシートにがっちりと固定される
シートベルトの上側をカブリオフィックスの背もたれの裏のフックに引っ掛ければ装着は完了カブリオフィックス側にもイラストの説明が貼ってあるため、説明書なしでもなんとか装着できる

 また、ファミリーフィックスを使うと子供の乗車位置が高くなるため、コンパクトカーではフロントシートと干渉してしまう可能性がある。特に乳児向けチャイルドシートは、後ろ向き固定なのでフロントシートとの距離が近い。場合によってはフロントシートのシートポジションが制限される場合もある。

 乳児向けチャイルドシートは、対象の子供が小さいこともあり小型で軽量。ISO-FIXを使わなくとも固定は難しくなく、後ろ向き固定のため、シートベルトのたるみによる不安定さもほとんどない。そのため、残念ながら高価なファミリーフィックスを購入してまでISO-FIXにする価値があるかどうかは微妙と言わざるをえない。

 本来ならISO-FIXの導入で、チャイルドシートは手軽かつ安全にならなければならないものだが、現実にはまだまだ道のりは遠い。

 なお、マキシコシでは、ファミリーフィックスと結合して使用する幼児向けのチャイルドシートとして「Pearl」を用意している。現時点では国内ではほとんど取り扱われていないが、1年足らずでファミリーフィックスを無駄にせず、子供の成長後もISO-FIXのシートを使い続けるためにはぜひ普及して欲しいアイテムである。

カブリオフィックスはクルマ用だけでなく、ベビーキャリーやバウンサーとして利用できる。ふだんは家に置いておく使い方もありだろう対応ベビーカーまでは試用できなかったが、カブリオフィックスに公式対応したベビーカーを揃え、システムで使うのも便利そうだ、説明書のイラストのベビーカーは左がクイニー・バズ、右がクイニー・ザップと思われる

(正田拓也)
2010年 12月 10日

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