ポルシェのダウンサイジング計画にさらなる進展?

「911」に水平対向4気筒エンジンを搭載した「912」

 今年3月のジュネーヴ・ショーにて、正式なワールドプレミアに供されたポルシェの新型「ボクスター」。そして既にスクープフォトが出回り始め、発表間近とされている次期「ケイマン」には、現代のダウンサイジング化に適応した水平対向4気筒エンジンが採用されることが、既に既定路線となっているという。

 ポルシェAG研究開発部門の元最高幹部で、現在ではベントレー・モーターズのCEOに抜擢されていることでも知られるヴォルフガング・デュルハイマー氏が、まだポルシェに在籍中だった2011年2月に、欧州の一部自動車メディアに語ったとされる情報によると、完全新設計となる水平対向4気筒エンジンには直噴システムが与えられ、排気量は約2.5リッター。高性能バージョンにはターボチャージャーが2基組み合わされ、最大出力は360PS以上、最大トルクでは48kgm以上に達するとも言われている。

 このスペックは、新型ボクスターSに搭載されている直噴水平対向6気筒3.4リッターの最大出力315PS、最大トルク36.8kgmを大きく上回るもの。つまり、パフォーマンス面で失うものは何もない。

 もちろんダウンサイジングによって、燃費やCO2排出量の改善が図られるなど、環境性能の点でも大いに期待ができるものと思われる。さらに言えば、エンジンの小型・軽量化により、さらなる操縦性の向上も図られることになるだろう。

 この期待すべき新型ボクスター/ケイマンの4気筒バージョンは、2014年ないしは2015年に正式リリースされると見られているが、実は今回の本題はここからである。欧米のスクープ系メディアの最新情報によると、この新型フラット4ユニットは、ボクスター/ケイマンのみならず、991系「911」にも搭載される可能性が出てきているという。そしてそのネーミングは「911」でなく、今や懐かしい「912」になるとも言われているのだ。

 ポルシェ912は、1963年にポルシェの歴史的名作911が発表されたのに伴い、クラス/価格ともに従来の「356」から上方移行してしまった穴埋めとして、1965年から1969年にかけて生産された廉価版モデルだ。ポルシェ911のボディに、旧356SC用の1.6リッター水平対向4気筒OHV(90PS)を搭載した折衷型だが、価格の安さに加えて扱いやすさやバランスのよさが高く評価され、今なおポルシェ愛好家からは敬愛されるモデルとなっている。

 また「ビッグバンパー」と呼ばれる1974年以降の930系911シリーズ用のボディに、ポルシェ初の市販ミッドシップ車「914」にも搭載されたフォルクス・ワーゲン製の2リッター空冷水平対向4気筒OHV(90PS)のインジェクション付エンジンを組み合わせた「912E」が、北米マーケット限定で販売されたこともある。これは、“フォルクスワーゲン-ポルシェ”914が販売停止となったのちに、その後継車「924」が導入されるまでに空白期間が生じたため、その間のつなぎとして1975年モデルのみ生産されたものだが、同時に当時から「912」というネーミングに記号的な意味があったことを示す一例とも言えるだろう。

 それだけに、新しいフラット4ユニットが991系911にも載せられるとなれば、すわ912の復活か? という観測がなされるのも無理のないところかもしれない。

 これを真実と受け取るか、あるいはオールドファンの懐古的、または希望的な観測と取るかは意見の分かれるところだが、少なくとも興味深いスクープ情報であることは間違いないだろう。

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(武田公実 )
2012年 4月 25日