レクサスの逆襲が始まる

レクサス LF-CC

 つい先日、トヨタ自動車のレクサス・デヴィジョンが、パリ・サロンにて、ミドル級クーペのコンセプトスタディ「レクサス LF-CC」を出展したのは記憶に新しいだろう。

 この習作は、次期レクサスISシリーズを示唆するとも言われるもので、一説にはトヨタ86/スバルBRZ用のシャシーコンポーネンツを流用するという。パワートレーンには、新開発の2.5リッター4気筒直噴エンジンに2基の電気モーターを組み合わせた「レクサス・ハイブリッド・ドライブ(LHD)」を採用。ミドルサイズのFRクーペに相応しいパフォーマンスと高い環境性能を両立させ、レクサス側の発表値によるとCO2排出量は100g/kmに抑えられるとのことだ。

 しかし、ここ数年ドイツ製プレミアムブランド勢の後塵を喫している感の強かったレクサスの逆襲は、まだ始まったばかりと言わねばなるまい。レクサスはLF-CCの広報写真発表に先立つ今年8月27日、「ハイブリッドクーペコンセプトを、10月にオーストラリアで開催されるシドニー・モーターショーにおいてワールドプレミアするという声明を発表していたのだ。

レクサス LF-LC

 トヨタ/レクサス側では詳細を明らかにしていないが、「2012年のデトロイトモーターショーで披露したコンセプトカーの発展形」と述べていることから、今年1月のデトロイトモーターショーにて初公開され、「最も美しいコンセプトカー」とも評されたハイブリッドスポーツクーペ「LF-LC」の、より生産型に近い発展バージョンという見方が多勢を占めている。

 レクサスは今回、この「ハイブリッドクーペコンセプト」の一部スペックを初めて公表。駆動方式は4WDとされることから、FRに前輪用および後輪用の駆動モーターを組み合わせたハイブリッドと見られている。パワートレーンのシステム最大出力は500PS以上とされ、マーケットで仮想目標となるであろうメルセデス・ベンツ SLクラスのAMG版やBMW 6シリーズのM版にも匹敵するレベルを目指していることが分かる。

 一方プラットフォームについては、レクサス新型GSシリーズ用にモディファイを加える……というのが順当な線だろう。しかし、先日このコーナーでもお伝えしたとおり、BMWとの間で「次世代スポーツカー用シャシーの開発を共同で行う」との提携が発表されたばかり。復活版トヨタ「スープラ」と「レクサスSC」後継モデルが、BMW次期6シリーズとシャシーを共用化する対象となっている……? と予想されていることを勘案しても、今後レクサスから発表されるリリースは極めて興味深いものとなることだろう。

 ところでレクサスが重要視しているのは、もちろんスポーツカー市場だけではあるまい。現時点における同ブランド唯一のSUVである「RX」シリーズ。こちらも先日「スピンドルグリル」を持つマイナーチェンジ版に移行したばかりだが、実はその下位に相当する小型SUVの開発が、既に大詰めを迎えているというのだ。

 オーストラリアの自動車専門誌「CAR ADVICE」をはじめとする複数の自動車メディアから流布されているスクープ情報によると、トヨタの次期「RAV4」ないしは現行レクサス「CT200h」をベースとし、車名は「CX」シリーズになるとの見方が有力だという。

 このCXシリーズは、少なくとも発表当初はレクサスの金看板であるハイブリッドのみの体制とされ、そのパワーユニットにはレクサス「HS250h」用の2.4リッター直列4気筒ガソリンエンジン+モーターのハイブリッドシステムが流用されるとの予測がなされている。レクサスはこのCXを、既に市場で高い評価を得ているBMW「X1」やアウディ「Q3」に対抗するための切り札としているとのことなのだ。

 これらレクサスのラインアップ拡充計画に関する噂は、ともに大トヨタの開発能力をもってすれば決して困難なものではないことからも、俄然信憑性が高いものに感じられてしまう。またドイツ車に代表される現代のプレミアムブランド、特にコンパクトからプレステージサルーン、SUVにスーパースポーツカーまで取り揃えることで、プレミアムブランドの地位を完全に獲得することに成功したアウディのビジネスモデルをレクサスが意識してしまうのは、ある意味当然のことかもしれないのだ。

ワールドリポート バックナンバー
http://car.watch.impress.co.jp/docs/series/wr/


(武田公実 )
2012年 10月 10日