ワールドリポート

インフィニティの新ネーミング戦略

インフィニティ「Q50」

 1月13日に開幕したデトロイト・モーターショーにて、ワールドプレミアが行われたインフィニティ「Q50」。

 従来のインフィニティ「G37」、つまり日本国内における日産「スカイライン」サルーンに取って代わるニューモデルと目され、このセグメントのインフィニティ車としては初めてハイブリッド仕様が投入されることでも注目を集めているが、その一方で、お馴染みのセオリーから逸脱したネーミングに、いささかの違和感を覚える向きも少なくないだろう。

 これまでのインフィニティの通例では、シリーズ車名を示す「G」に、3.7リッターの排気量を示す「37」が組み合わされていたのだが、今後のインフィニティはサルーンおよびクーペ、コンバーティブルのモデル名を、すべて「Q」に統一することにしたと言うのだ。

 上記の「Q50」ワールドプレミアに先立つ昨年12月に、既に欧米市場では改名を発表しているように、従来の「G37クーペ」(スカイライン・クーペ)および「G37コンバーティブル」(日本未導入)は、新たに「Q60」シリーズを名乗ることになった。また、これまでの「M」(フーガ/シーマ)は、今後「Q70」シリーズとなる。

 他方SUVやクロスオーバー系モデルはすべて「QX」とされ、従来の「EX」(スカイライン・クロスオーバー)は「QX50」。昨年夏のペブルビーチ・コンクール・デレガンスで公表された7人乗りSUVの「JX」は「QX60」。並行輸入市場で人気の高い「FX」(日本未導入)は「QX70」。そして、特に中東マーケットではトヨタ「ランドクルーザー」やレクサス「LX570」のライバルとして高い評価を受けている「QX」は、「QX80」を名乗り、一連のファミリーであることを強調する名称となったのである。

 これまでのインフィニティは、同じ日本のレクサスやメルセデス・ベンツなどと同じ、シリーズ名に排気量を組み合わせた車名としてきた。しかし近年はダウンサイジング・トレンドが主流となり、ハイブリッド仕様も設定されることから「排気量=車格」とは言えない時代となったことからも、プレミアムカテゴリーの新トレンドセッター、アウディのような命名法を選んだと見るのが自然だろう。

 ちなみに「Q」は、インフィニティ・ブランドの開祖として1989年に登場した初代「Q45」に由来するものと思われ、巷ではインフィニティの原点回帰、ないしはブランドバリューをさらに高めるための方策と考えられているようだ。

 今後のインフィニティは、かなり活発なモデル展開を行うことが予定されていると言う。例えば、2011年のジュネーヴ・ショーでコンセプトが発表されたプレミアコンパクトの「エセレア」は、生産拠点の変更から1年先送りにはなったものの、2015年には英国工場にて量産に移されるという。

 また、メルセデス・AMGとの共同開発による大排気量の高性能バージョンの登場も噂されている上に、以前当コーナーで次期日産「GT-R」に関する噂をご紹介した際にも話題に上った超高級スーパースポーツ「エッセンス」の生産化に関する根強い噂も依然として消えていない。

 同じく今年のデトロイト・ショーにて次期「NSX」コンセプトと「MDX」コンセプトを公開したアキュラ、そしてレクサスと並ぶ和製プレミアムブランドの成り行きには、今後も要注目なのである。

【お詫びと訂正】記事初出時、「QX60」と「QX70」が入れ替わっておりました。お詫びして訂正させていただきます。

武田公実