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ポルシェのスモールSUV“マカン”がこの秋登場?

ポルシェが発表したマカンのスケッチ

 ボクスターとともに、21世紀のポルシェに躍進をもたらした功労者、そして近年では世界的な流行となっているスーパーSUVの元祖として敬愛されているポルシェ「カイエン」。その小型版たる新型車が登場するのは、もはや既定路線とされてきた。

 以前は「Cajun(ケイジャン)」というネーミングとともに噂されていたのだが、昨年2月17日にポルシェ本社から発布されたリリースにより、新型SUVを2013年にデビューさせること、そしてインドネシア語で「虎」を意味する「マカン(Macan)」と名付けられることも併せて、オフィシャルコメントとして発表された。

 さらに今年の年明け早々には、かなり軽微な偽装を施した試作車による雪上テストをスカンジナビア半島某国で実施し、そのテスト風景が世界中のスクープ系メディアを賑わしているのだ。

 ポルシェ・マカンに関する情報は、これまでにも数多くのメディアに紹介されてきたが、それらの情報を総合すると、まずはミドルSUVカテゴリーのリーダーの一角を占める“身内”、アウディ「Q5」からプラットフォームや基本コンポーネンツを使用する模様である。

 したがってシャシーやパワートレインは、アウディQ5と基本的に共通となるが、ヴァイザッハのポルシェ技術陣による専用チューニングが施されることになるだろう。

 予想されるパワーユニットは、フォルクスワーゲン/アウディの最新モデルに搭載される直列4気筒直噴2リッター・ターボに加えて、現行カイエンやパナメーラから踏襲される3.6リッターV型6気筒直噴自然吸気、アウディS4用をベースにすると思しき3リッターV型6気筒直噴スーパーチャージャーなども用意されるという。もちろん、いずれのエンジンも「ポルシェ」を名乗るに相応しいチューンが施され、2リッター直4ターボでも220PS前後、3.6リッターV6は300PS前後、そして3リッターV6スーパーチャージャーでは370PS前後に到達するとされている。

 また、本国では190PSの2リッター直4ターボディーゼル搭載モデルも設定されるほか、アウディQ5との組み合わせではすでに日本でも正式リリースされている2.0 TFSI+ハイブリッドのシステムも追加される公算が高いと言われている。

 と、ここまでのメカニズムに関しては、すでに概ね予想がついているのだが、それはスタイリングについても同じこと。雪上テストに供されているプロトタイプは、ヘッドライトやテールランプなどを現行カイエンに似せるための偽装を施しているものの、本来のプロポーションを予測するのは比較的容易な段階に達しているようだ。

 そしてこれらのスクープ写真を見る限りでは、カイエンよりもさらにグラマラスでスタイリッシュ、あるいは「ポルシェ的」スタイルにも見えるのだ。

 これは一昨年に登場し、世界各地で予想以上の大ヒットを収めることになったライバル、レンジローバー「イヴォーク」の影響も少なからず感じられる。イヴォークに成功をもたらした最大の原動力となったのは、「デザインコンシャス」な考え方。イヴォーク以外にもライバルのひしめくミドルSUVマーケットにおいて、カイエンにも負けないヒットを博するためには、魅力的なデザインが不可欠とするスタンスは、至極真っ当とも思われるのだ。

 ところで、今回のタイトルでは「スモールSUV」とは記したものの、英国の自動車専門誌「AUTOCAR」のスクープ情報によれば、マカンのスリーサイズは約4600×約1890×約1650mm(全長×全幅×全高)とのこと。つまり、それなりのビッグサイズではあるのだが、それでも4845×1940×1710mmのカイエンと比べてしまえば、特にわが国など市街地に狭い道路の多いマーケットでは、格段に扱いやすいものとなるだろう。

 現時点における報道では、今年9月末に開幕となるフランクフルト・ショーでのワールドプレミアが予想されている。「カイエン」にも増して日本市場に向いていると思われる「マカン」の全容が明らかになるまでの半年間は、わが国のポルシェ・ファンにとっても待ち遠しい期間となるに違いない。

武田公実