アルファ ロメオ 4C コンセプト

　2011年3月に開催されたジュネーヴ・ショーにて、デザインスタディ「4C コンセプト」として公開され、瞬く間に世界中のスポーツカー・ファンの心を奪ってしまったアルファ ロメオの次世代スーパースポーツ「4C」。

　ごく少数が製作された伝説のスーパーカー、「ティーポ33／2ストラダーレ」（プロトタイプを含めて18台説とされる）に次ぐアルファ史上2つめ、そして一定数を量産するシリーズモデルとしては史上初となるミッドシップ市販車であるこの車は、当初2012年内の市販バージョン発表および正式リリースが予定されていた。

　しかし、その後の追加情報は一切提示されることなく、アルフィスタ（アルファ ロメオ愛好家のこと）をやきもきさせていた。ところが、コンセプト発表から1年と数カ月を経た今年6月、今後の展開を示唆する情報が親会社のフィアット・グループ首脳陣から出されたことで、正式な生産化が俄かに現実味を帯びてきているのだ。

　フィアット・グループが発表したとされるコメントは「エミリア・ロマーニャ州モデナのマセラティ工場において、2013年5月からアルファ ロメオ・ブランドの新型車を生産する」というものらしい。フィアット・グループでは、この「アルファ ロメオの新型車」について詳細を明らかにしていないが、「年産台数は最大で2500台」という少量生産車であることを示唆しているという。

　つまり、マセラティ工場の規模に合わせたと思しきこの生産台数と、「2013年5月から」という生産開始タイミングから判断すると、マセラティ工場で生産されるアルファ ロメオとは、現時点で正式リリースに最も近い「4C」ではないか？　という見方が、欧州はもちろん日本国内のスクープ系メディアでも熱心に語られているのである。

　そしてマセラティがアルファ ロメオ 4Cの生産を行うという観測に基づき、今月あたりから世界の自動車メディアでは、さらなるスクープ情報が飛び交うことになった。それは「マセラティが自社ブランドのミッドシップ・スポーツカーを開発・量産する」というもの。

　かねてから、マセラティは2015年に2座席のリアルスポーツ「グランスポーツ」を発売するという情報が流布されていたのだが、英国の人気自動車雑誌「EVO MAGAZINE」が、マセラティ／アルファ ロメオを兼任するCEOに対して行ったインタビューにて、具体的なプロジェクトが確認されたというのだ。

　このインタビューでは、まずは件の「グランスポーツ」計画が実在すること。そして、アルファ ロメオ 4C コンセプトと同様にカーボンファイバー＋アルミ合金製のモノコックを持つミッドシップ・スーパーカーであることが認められたとされる。

　また、フェラーリ 458 イタリア／スパイダーにほどほど近いボディサイズながら、カーボンモノコックの効力で1200㎏前後のウェイトを目指しているとの由。さらに現行型マセラティに搭載される4.7リッターV8ユニットに、マセラティ用の7速DCTを組み合わせることも明らかになったという。

　また別の筋からの情報によると、現在フェラーリがフィアット・グループ傘下の複数ブランドのために開発しているとされるV型6気筒＋ツインターボも搭載されることになるだろうと言われている。

　アルファ ロメオ 4Cとマセラティ グランスポーツ。双方ともに極めて興味深く、またイタリア車ファンにとってはデビューが待ち遠しいスーパースポーツであることは間違いないところだが、その傍らでいささか心配なのが、アルファ ロメオ 4Cと同じカーボンモノコックを使用すると言われてきたアバルト版スーパースポーツの去就についてである。

　アルファ ロメオ 4C コンセプトと同じ2011年のジュネーヴ・ショーにてヨーロッパ・デザイン学院（IED）から出品されたEVスポーツカーのデザインスタディ「アバルト スコーピオン」は、「アルファ ロメオ 4Cのアバルト版」の可能性を模索するためのコンセプトカーとする見方が強かった。そして、ジュネーヴ・ショーにおける成功から生産化プロジェクトも立ち上がり、信頼できる筋からの情報によると1.4リッター マルチエアエンジンの搭載に加え、「アバルト ミッレ（Mille）」というネーミングも検討されていたという。

　ところがこのプロジェクトについては昨年後半ごろから消息が途絶え、どうやら現在ではペンディングとなっている模様なのだ。

　それでもアルファ ロメオ 4Cの成功次第では、アバルト ミッレ生産計画が再び浮上する可能性も小さいとは言えないだろう。イタリアがもう一度スポーツカー王国となることができるか否か、期待は尽きないのである。