どこまで進む? MINIの攻勢

2011年の東京モーターショーに参考出品された「MINI ペースマン コンセプト」

 2001年、独BMWの庇護のもとにデビューした新生MINI。その後2006年秋には第2世代にフルチェンジされ、今なお世界中で高い人気を博している。その登場後、シトロエン「DS3」やアルファ・ロメオ「ミト」、アバルト「500」、そして真打ちとも称されているアウディ「A1」などのコンテンダーが続々と誕生し、今や一大人気カテゴリーとなった「プレミアム・コンパクト」だが、MINIはその中にあってもパイオニア、そしてマーケットの牽引車として君臨しているのだ。

 そんなMINI最大の売り物の1つは、ライバルたちを圧倒する豊富なバリエーションと思われる。シリーズの根幹をなす3ドアの「MINI」を筆頭に、初代の後半には「MINI コンバーチブル」も設定された。しかしその攻勢が特に明確となったのは、現行モデルに移行したのちのこと。

 2代目MINIの登場翌年となる2007年には、変則的な左右非対称ドアと観音開きのハッチゲートを持つ「MINI クラブマン」を追加。翌2008年には「MINI コンバーチブル」も2代目に進化した。

 また2010年になると、MINIの名は持ちつつも格段に大型化したSUV「MINI カントリーマン」も登場。日本市場では「MINI クロスオーバー」と命名され、昨2011年の発売早々から大ヒットを飛ばしているのはご存じのとおりだ。

 さらに同じく2011年には、ルーフを低めてスポーティな3ボックススタイルとした「MINI クーペ」と、「クーペ」のルーフを潔く取り去ったかたちの2シーター・オープン「MINI ロードスター」も追加発売され、MINIのファミリーは実に6タイプものボディバリエーションを形成することになったのだ。

 ところがMINIのラインナップ増殖は、これだけでは終わらないことが確定しているようだ。昨2011年の北米ニューヨーク・ショーに参考出品され、同年の東京モーターショーにも来日したコンセプトカー「MINI ペースマン」の正式生産が、間もなく開始されるというのである。

 日本でも慢性的な品薄状態となるほどのヒットを博したレンジローバー「イヴォーク」を仮想ライバルとして見立てたペースマンは、カントリーマン(クロスオーバー)をベースとした3ドアクーペ。この夏あたりから、リア周りにごく小規模の偽装を施した状態でロードテストに供されているようだが、そのボディスタイリングは昨年参考出品されたコンセプトカーとほぼ同一のものとなるだろうと見られている。またメカニズムやグレード編成も、クロスオーバーと共通という観測が多勢を占めている。

 気になる車名は、コンセプトカー時代のペースマンそのままか、あるいは「カントリーマン・クーペ」になる? などと情報が2分しているが、早ければ秋のパリ・サロンあたりでのワールドプレミアもあり得るということで、遠からずリリースが発表されることになろう。

 そして本流となるMINIも、そろそろフルモデルチェンジの時期を迎えつつある模様。来る2013年のフランクフルト・ショーあたりでの発表が噂される次期MINI(F56型?)は、今年秋のパリ・サロンで発表が予定されるBMWの新型トール・コンパクト「1シリーズGT」とFFプラットフォームを共用すると言われている

 また、マッシブな盛り上がりを見せるフロントフェンダーや、より傾斜を強めたウィンドシールドなどは、2011年のジュネーヴ・ショーにおいて発表されたのち、つい先ごろ閉幕したロンドン・オリンピックでもユニオンジャック・カラーをまとって登場した「MINI ロケットマン コンセプト」のデザインモチーフが導入されたものとされている。

 次期MINIのパワーユニットとして現時点で報道されているのは、ベーシックグレードの「ワン」がBMWの次世代エンジンとしても開発されている直列3気筒1.5リッターエンジン。「クーパー」は現行型と同じ1.6リッター直列4気筒にターボチャージャーを追加するとされるが、ヘッドは直噴化される可能性もあるという。

 そして「クーパーS」は次期「クーパー」用1.6ターボ・ユニットのハイブースト版ないしは2リッター直4ターボになるとも予想されている。さらに歴代「クーパーS」に用意されてきた高性能バージョン「ジョン・クーパー・ワークス」もいずれ追加発売され、その際には最高出力が250PS前後にも到達する? という未確認情報も存在するようだ。

 バリエーションモデルの爆発的な拡大と、息をもつかせぬモデルチェンジ攻勢は、ドイツ車に代表される昨今のプレミアムカーの世界では、あたかも常套手段であるかのように見える。しかし、同じ方法論がプレミアム・コンパクトの分野でも通用するのかどうかは、今後のMINI・ファミリーの成功によって大きく変わってくるかにも思われる。

 まずは間もなく概要が明らかになるであろう、ペースマンに期待しておきたい。

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(武田公実 )
2012年 8月 29日