特別企画

【特別企画】岡本幸一郎の「エクストレイル ハイブリッド エコラン競争&オフロード試乗会」参戦記

総走行距離は147.0km、平均燃費は18.5km/L。果たして結果は?

「目指せ1番!」と意気込みも十分にエコラン競争に挑んだ岡本氏。その結末やいかに

 2015年5月に日産自動車「エクストレイル ハイブリッド」が発売されてからの4カ月間で、エクストレイル全体で約2万1000台を販売したうち半分以上をハイブリッドが占めている状況だという。受注台数で言うと平均5300台で、これは目標の3500台を大きく上まわる好調なペースであり、ハイブリッドの販売比率も当初の見込みよりもずっと多いとのこと。

「ブリリアントホワイトパール」の「エクストレイル ハイブリッド」でメディア対抗のエコラン競争が行われた

 そんなエクストレイル ハイブリッドによるメディア対抗の「エコラン競争&オフロード試乗会」が実施され、4日間で28媒体のチームが参加した。

 スタート地点として設定された横浜にある日産自動車 グローバル本社で行われた出発前のプレゼンテーションでは、以下のようなおもなレギュレーションが発表された。

・燃費は車載ディスプレイに表示される燃費計の平均燃費の数値で競う。
・ゴールは山梨県の富士河口湖町にある「富士ヶ嶺おいしいキャンプ場」で、途中のルートは自由(おおむね150km)。
・ただし、8時30分にスタートし、3時間後の11時30分の制限時間に合わなかった場合、超過1分につき燃費0.1km/L減算のペナルティを与える。
・燃費が同値だったときは「EV走行率」で上まわるチームを上位とする。

 燃費を競うエコラン競争にしてはやや走行距離が短めだが、走行ルートに自由度を与えてチーム戦略による差を出そうといったレギュレーションであろうか。

 さらに、燃費を伸ばすコツとして、

・発進時から50km/hまでは意識してできるかぎりモーターで走る。
・回生発電を使って、急ブレーキではなく“ふんわりブレーキ”を心がける。
・停止中はしっかりブレーキを踏む。“ちょん踏み”だとクリープのロスがあるので避ける。
・坂の頂上付近からアクセルオフで惰性で走る。
・1200~2000rpmを使うことを意識して走る。
・高速道路では80~90km/hで走るのが効率的。
・電気を貯めて使う、を繰り返すイメージ。

などのテクニックが参加者に伝えられた。

 プレゼンテーションが終わって地下1階の駐車場に移動し、車両を受け取っていざスタート。ルートの指定は特になく、チームごとに任されていて自由となっているが、我々は奇をてらうことなく、最終的なデータが読者諸兄の参考にもなるよう、もっとも一般的と言えるルートを選択。純正カーナビの検索でも推奨ルートとなっている、首都高速道路の横浜線から保土ヶ谷バイパスを経由して、東名高速道路→圏央道(首都圏中央連絡自動車道)→中央自動車道と走り、大月JCT(ジャンクション)で東富士五湖道路に入って河口湖IC(インターチェンジ)からゴールに向かってアクセスすることにした。

出発前に日産のスタッフ立ち会いのもと、燃費計とEV走行距離をリセット
出発前に駆動用のリチウムイオンバッテリーは6分の4充電状態
純正カーナビで「富士ヶ嶺おいしいキャンプ場」を目的地にセット
スタート地点の日産自動車 グローバル本社からいよいよ発進!

 また、エアコンついてもCar Watchでは、たとえこうしたエコランイベントであっても一般的な使用状況を想定して走行することをポリシーとしているので、常時エアコンONで走行しているので、今回もそのようにした。

 幸い今年は秋の訪れが早く、当日もあまり外気温が高くなかったこともあり、エアコンONでもそれほどコンプレッサーが動かなさそうな感じだったので、燃費への影響は小さいと思われる。筆者としては、エアコンOFFで上位入賞を狙いたいという思いもなくはなかったところだが……。まぁ、もし結果がイマイチだった場合の言い訳にはなるだろう(笑)。

 ちなみに、あとで聞いたところエアコンを使用したチームはほとんどなかったようだ。

エアコンは27℃に温度設定
スタート直後の到着予想時刻は「11時05分頃」との表示。タイムリミットの11時30分には十分に余裕がある

自動的に効率のよい走り方を選択し、切り替えもスムーズな「インテリジェント デュアル クラッチ コントロール」

 まずはスタート地点となる日産グローバル本社の最寄りにあるみなとみらいICから首都高へ。しばらく走ると燃費計の表示はぐんぐん伸びて、やがて2桁台へ突入。それにしても、このあたりの制限速度は50km/hなのだが、その速度を守って走っていると大きなトラックから観光バスにまでビュンビュン追い抜かされ、非常に恐ろしい思いをする。我々のほうが「遵法」という意味では正しいとはいうものの、もっと実態に合わせた制限速度に早く見直すべきだとつくづく思った次第である。

 やがて「K3」(3号狩場線)という路線に入ると制限速度は60km/hになり、スタートから8.7km走行時点で燃費は15km/Lを超えた。このあたりは本当にトラックが多く、あまり周囲の流れよりも遅すぎると危険でほかの車両の迷惑にもなってしまうので、しばらく左側車線の流れに合わせて走行。それでも相変わらずビュンビュン抜かれることに変わりはない。

 メーターパネル中央にある「アドバンスドドライブアシストディスプレイ」には、エネルギーフローとバッテリー充電状況などが表示される。瞬間と平均の燃費を交互に見つつ、タコメーターをチェックすると頻繁にエンジンが停止、再始動を繰り返していることが分かる。自動的に効率のよい走り方をしてくれているわけだ。

「アドバンスドドライブアシストディスプレイ」のエネルギーモニターでは、「インテリジェント デュアル クラッチ コントロール」によるエンジンとモーターの利用状況、バッテリー残量と発電量などをチェックできる

 車線の多い保土ヶ谷バイパスに入ると制限速度は80km/hになる。燃費は徐々に伸びて、横浜町田ICで東名高速に入った時点でちょうど18.0km/Lとなった。走行距離は22.7km。ここで空気抵抗によるロスを抑えるべく、80km/h以下の速度で走っている大型トラックを見つけて後ろについて走る。この効果もあるのか、走行30kmの地点で燃費は19.5km/Lまで伸びた。

 これぐらいの積算走行距離だと、80km/hで巡航走行していても多少のアップダウンで燃費も上がり下がりするのだが、海老名SA(サービスエリア)周辺の走行35km地点あたりで、ついに燃費は20km/Lを超えた! まずは順調だ。

横浜町田ICから東名高速の名古屋方面に進路をとる。燃費は18.0km/Lを超えた
左車線をまったりと走る大型トラックを発見。東名高速はそれほどアップダウンがないこともあり、燃費は順調に伸びていく

 ここから海老名JCTで圏央道へ。燃費はさらにじわじわと伸びて20km/L台の後半までいくのだが、21km/Lにはなかなか届かない。逆に、八王子JCTから2kmほど手前にある高尾山IC出口付近は長い上り勾配がだらだらと続いていて、再び20km/Lを切ることに。八王子JCTでは、走行67.5km地点で燃費は19.8km/L。

大型トラックとは海老名JCTでお別れ。この区間も80km/h制限だ
上り勾配が続き、中央道に分岐する八王子JCT付近では燃費が20km/L台を切った

 そして八王子JCTから中央道に移行。その後も燃費は徐々に落ちていき、小仏トンネルあたりの走行ちょうど70kmの地点で、燃費は19.3km/Lまで下降。相模湖ICの手前で再び20km/L台を回復したものの、それも束の間のこと。このあたりを走ったことがある人にはお分かりいただけると思うが、談合坂SAの手前には長い上り坂があって、やはり燃費走行にはキツい条件。瞬間燃費を見ると、なんと7.5km/Lぐらいに落ちている。ここで平均燃費がまたしても20km/Lを切ったかと思えば、その後はなだらかな下りが続き、大月JCTでは20.5km/Lになるといった感じ。

 そんな中で、日産推奨の80~90km/hという高い車速で巡航しているシーンでも、頻繁にエンジンが停止してEV走行となり、その瞬間になんら違和感を覚えさせない制御の巧みさをあらためて実感したことをお伝えしておきたい。

燃費はじわじわと低下。周囲の交通をじゃましないよう、登坂車線も積極的に活用する
当日の中央道は交通量も多めで、あまり燃費最優先で走っているわけにもいかない状況。ゆったり走るトラックを見つけてひと息つく
談合坂SA近辺の長い上り坂で燃費低下。談合坂SA付近では雨も降ってきたが、これぐらいなら走行抵抗の増加を気にするほどではないだろう

 大月JCTから東富士五湖道路に続く富士吉田線に南下。これまた微妙な上り勾配が続いて、走行111km、谷村PA(パーキングエリア)の手前でまたしても20km/Lを切ってしまった。

 それにしても、途中で新型のエクストレイルを見かけることがとても多いことに気がついた。今回のエコラン競争では全車白いエクストレイル ハイブリッドに統一されていたので、白いエクストレイルが後方から近づいてくるのを見ると「ライバルチームに追いつかれたのか!?」と、他チームの走行ルートやペース配分にあれこれ気をもむのだが、よく見るとナンバーが横浜ではなかったりして、朝のプレゼンのとおり、エクストレイルはなかなか好調に売れていることを実感した次第である。

大月JCTから東富士五湖道路方面を目指す。同じようなルートで前方をライバルチームのエクストレイル ハイブリッドが走行していた
大月出口近くでは工事による1車線規制で制限速度が50km/hとなっていた
富士吉田線は直線区間が多く運転しやすいが、微妙な上り勾配の連続で燃費は悪化。谷村PA手前で再び20km/Lを割り込む
偶然かもしれないが、わずか3時間弱のあいだに何台もの現行型エクストレイルと遭遇した。とくに白の車両が多く、そのたびに「ライバルチームに追いつかれたのか!?」と車内に動揺が広がる

 ほどなく富士吉田線の終点となる河口湖ICに到着。燃費は18.6km/Lとだいぶ落ちてしまってちょっと悔しいところだが、ここからは一般道でゴールを目指す。ゴール地点まで残り10kmを切ったところで、ついに燃費が18km/Lを切ってしまった。一般道でもあり、ここから先で燃費が上向くことは望むべくもない……と思ったところで、残り3.6kmという地点で18km/Lに復活。そこからもちょっとずつ燃費は伸びていき、目的地まで残り1kmを切ったあたりから、18.3、18.4、18.5と上がったではないか!

 そして、なんと偶然にもちょうど11時23分、「イイ、ニッサン」の時刻に目的地に到着! これだけでもなにか賞をもらいたい気分だ。燃費もなんとか18.5km/Lを維持することができた。走行距離は147km。EV走行距離は51.5kmと、約3分の1がEV走行だった計算だ。この数値がよいのかわるいのか、ライバルチームの結果が気になってしかたがない。なお、燃料計は、満タン状態で振り切ったところから、ちょうど「1」(「0」、「1/2」、「1」と表示されたなか)の線上を指していた。使ったガソリンの量を計算すると、これだけ走ってわずか8Lたらずということになるわけだ。

 成績は、初日時点で暫定3位。暫定1位はCar Watchでもおなじみで、この日は別媒体で参加していた橋本洋平氏。なんと19.4km/Lだ。2位は自動車工学チーム。EV走行率は低かったが、燃費は18.9km/Lと上々だった。だいぶ差をつけられてしまったが、やはり両チームともエアコンはOFFだったとのことで、筆者もエアコンを使わなければ、もう少し差は小さかったはずだと強がっておこう(笑)。

河口湖ICから一般道に移行。料金は割り引きされて3070円
ライバルチームのあとを追うように一般道を走行
一般道の信号待ちとアップダウンの影響で、ついに燃費は17.9km/Lを計測。さらに到着予想時刻がタイムリミットに迫り始めてきた
朝霧カントリークラブに続く道から細い側道を抜け、ゴールの「富士ヶ嶺おいしいキャンプ場」に到着!
ゴール直後に日産のスタッフが数値を記録。燃費は18.5km/L、EV走行距離は51.5kmで、イベント初日ながら暫定3位となった

エクストレイル ハイブリッドは燃費も走りもなかなかの実力

午後はガソリン仕様のエクストレイルでオフロード走行

 昼食に「おいしいキャンプ場」でバーベキューを楽しんだあと、午後には「富士ヶ嶺オフロード」というコースで、“タフギア”としての本領を発揮するエクストレイル(ガソリン仕様)の走りを体感。降り始めた雨のせいでコースはややぬかるんでいたのだが、むしろオフロードではこれぐらいのほうがグリップするそうだ。

 このコースはピンからキリまでいろいろな車種で何度も走ったことがあるが、エクストレイルは乗用車ベースのSUVとしては本当に秀逸で、本格的オフローダーに遜色ない走りを披露する。

「アドバンスドヒルディセントコントロール」はLOCKモードで自動的に作動し、急な下り坂でも一定の速度を維持してくれるので、ステアリング操作に集中できて非常にラクチン。「ヒルスタートアシスト」はもはや珍しい装備ではないが、こういった路面の不安定な場所で、急坂での一時停止から再発進するといった状況では、いつも以上にありがたみを実感する。モーグルなどでもステアリングへのキックバックが抑えられていて、こうしたオフロードでの乗り心地もわるくない。

モーグル路では最低地上高と対地障害角による走破性と、「アクティブライドコントロール」による前後方向の姿勢制御を体感
グリップ力の不安定な下り坂を安定した姿勢でゆっくり進める「アドバンスドヒルディセントコントロール」
急な坂でもぐいぐいと上っていく。途中で一時停止しても、「ヒルスタートアシスト」の効果で不安なく再発進可能

 往路で味わったように日常的なオンロードを快適に走れながらも、本格的なオフロードコースをこれだけ走破できるポテンシャルがあるというのは、本当に頼もしいと思う。

 後日、エコラン大会の結果がCar Watch編集部に届いた。参加全28チーム中で7位。同じ18.5km/Lで3チームが並んだが、EV走行率で上まわったことで7位となった。

ランキング媒体名平均燃費(km/L)総走行距離(km)EV走行距離(km)EV走行率
1位ホリデーオート19.4147.755.337.4%
2位クリッカー19.2160.146.028.7%
3位CARトップ19.0140.958.141.2%
4位自動車工学18.9145.637.725.9%
5位ザ・マイカー18.7147.154.537.0%
6位ル・ボラン18.7147.049.133.4%
7位Car Watch18.5147.051.535.0%
8位オートックワン18.5170.354.532.0%
9位ENGINE18.5145.638.726.6%
10位月間自家用車18.1147.051.631.8%
全体平均17.8149.645.330.3%

 結果表の数値を見ると、走行距離が160kmを超えたチームが3チームあり、逆に130km台で走りきったチームもあるので、いろいろとルートを工夫したチームがあったことがうかがえる。また、上位10チームでEV走行率が30%を下まわっているチームが3チームあるなど、単純にEV走行をすれば燃費が稼げるというわけでもない点も興味深い結果だ。

 とりあえず、我々Car WatchチームもエアコンONで7位なら、まあまあでしょう(笑)。ということで、エクストレイル ハイブリッド、燃費も走りもなかなかの実力の持ち主でありました。

暫定3位から7位となったものの、エアコンONでこの燃費はなかなかの実力といえるでしょう

岡本幸一郎

1968年 富山県生まれ。学習院大学を卒業後、自動車情報ビデオマガジンの制作、自動車専門誌の記者を経てフリーランスのモータージャーナリストとして独立。国籍も大小もカテゴリーを問わず幅広く市販車の最新事情を網羅するとともに、これまでプライベートでもさまざまなタイプの25台の愛車を乗り継いできた。それらの経験とノウハウを活かし、またユーザー目線に立った視点を大切に、できるだけ読者の方々にとって参考になる有益な情報を提供することを身上としている。日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。