特別企画

【特別企画】笠原一輝のコードマスターズ「F1 2014」をやってみた

日本GP直前の10月2日発売。ロシアGPの新サーキットをいち早く体験

2014年のF1データが反映されたコードマスターズの「F1 2014」。その年のF1マシン、ドライバー、サーキットが収録され、毎年コンスタントに発売されているため、F1イヤーブックの雰囲気も持つ。F1ファンであれば、とりあえず手に入れておきたいタイトルだ

 Car Watchで主にモータースポーツ関連の記事を執筆している笠原一輝氏。PC Watchの連載「笠原一輝のユビキタス情報局」(http://pc.watch.impress.co.jp/docs/column/ubiq/)を愛読している方ならお分かりのように、本来の仕事はCPUやGPUなどプロセッサ関連(および応用製品)の最新動向を伝えるITジャーナリストだ。

 その笠原氏がこよなく愛するのがF1。F1を楽しく見るためにGP2レースを見るなど、一般的なF1好きとはちょっと異なった視点で楽しんでいるようだ。

 Car Watchでは、昨年、コードマスターズのコンソールゲーム機用タイトル「F1 2013」の体験記(http://car.watch.impress.co.jp/docs/special/20131010_616918.html)をお届けしたが、2014年も最新のF1ルール、チーム、ドライバーを反映した「F1 2014」が、日本グランプリ開幕直前の10月2日(7400円:PS3/Xbox 360版、PS4/Xbox One版は来春)に発売される。

 そこで今年も笠原氏に「F1 2014」の体験記を依頼し、2014年シーズンのF1再現度をチェックしてもらった。


ヘタレゲーマーの筆者でも楽しめる? F1の世界観を再現した「F1 2014」

コードマスターズの「F1 2014」をプレイする笠原一輝氏。「F1 2014」から加わったベリーイージーモードのおかげで、ひたすら走り回っていた

 コードマスターズの「F1 2014」は、F1の世界観をゲームの世界で実現したドライビングゲームだ。2014年のF1世界選手権を走っているF1マシンに、実際にF1に参戦しているドライバーとなって乗り込み、世界19カ国のサーキットを転戦できる。本記事では、そのF1 2014に実際に“搭乗”してみた感想などについてお届けしていきたい。

レースの難易度設定に加わった「ベリーイージー」。これによりレースゲーム初級者でも格段に遊びやすくなった。ハード側に設定変更すれば、リアルな運転が楽しめる点は変わらない

 「F1 2014」を実際にプレイしてみて分かったことは、新しく追加されたゲームプレイレベル「ベリーイージー」というレベルにより、難しいと考えられていたF1ドライブが圧倒的に容易になっており、筆者のようなレースゲーム初心者ユーザーでもそれなりに楽しめることだ。また、2014年のF1データに基づいているため、ベルギーGPを実際には走ることのなかった小林可夢偉選手になりきって走ってみたりできるほか、発売日時点(10月2日)ではまだ行われていない、2014年初開催となるロシアGPのソチサーキットをいち早く走行することができる。実際のF1ドライバーに先駆けて、ソチのサーキットを体験できるなど、F1ファンにとって魅力的なコンテンツが組み込まれている。

 Car Watchの僚誌であるPC Watch(http://pc.watch.impress.co.jp/)を愛読している方ならよくご存じだと思うのだが、軽く自己紹介しておくと、筆者の本業はCPU/GPUなどの半導体や、PC関連の記事をお届けすることで、日本や海外のイベントなどで半導体メーカーやPCメーカーなどに取材することが多い。PCやゲームコンソール(PlayStationやXboxなど)で必須となるGPUの記事を書くことも多いので、よく人には「ゲームお好きなんですよね」といわれることもあるが、実はゲームはあまりしないのだ。

 その答えは単純で、自分の反射神経にあまり自信がないからだ。例えば、FPS(First Person Shooter)のような、反射神経が何よりも大事なゲームなどは大の苦手で、苦手だからやらない→たまにやると下手なのでイヤになる→苦手意識が増してよりやらなくなる……という悪循環。逆に、オセロとかパズルのような反射神経は問われないゲーム、あるいは辛抱強さが問われるようなシミュレーションゲームなどは好きで、比較的よくプレイしている。筆者は、そんな“ヘタレゲーマー”である。

 そんな中で、筆者にとって唯一の例外となるジャンルのゲームがある。それが自動車関連、なかでもレース関連のゲームだ。というのも、筆者の最大の趣味はレース観戦で、それこそ子供の時分からF1、WEC、インディカー、スーパーフォーミュラ、SUPER GTなどなどのビッグレースはテレビで欠かさず観戦してきた。F1レースは1987年にフジテレビによる全戦中継放送が開始されて以来、“見逃したレースはない”と自信を持って言えるほどだ(もちろんライブでは見ることができないこともあるので、その時は録画)。ただ、そうした趣味が高じて、Car Watchでレース記事を書かせていただいているので、最近は「レース観戦が趣味です」とは言えなくなってきているが……。

 そんな筆者なので、ヘタレゲーマーのくせにF1関連のゲームに関しては古くからプレイしている。古くは、MS-DOS時代にあった、MicroProseのGrandPrixシリーズ、古きよきオールドF1カーをドライブできたSierra EntertainmentのGrand Prix Legends……、そうしたF1をテーマにしたPCゲームには結構はまった。MicroProseのGrandPrixシリーズなどは学生時代にプレイしたため、それこそ1日中PCの前にかじりつき、ひたすらモナコGPを走ったりとか、今思えば引きこもり寸前の生活をしていた記憶もある。

 そんな筆者が近年はまっているのが、今回紹介するコードマスターズから販売されているF1シリーズだ。このF1シリーズは、一昨年版がF1 2012、昨年版がF1 2013と、F1の後に西暦の年号が入る形になっており、毎年その年のF1を反映した製品が発売されている。

 重要なことは、このF1シリーズがF1の権利を管理する企業(Formula One Group)から公式のゲームとして唯一認められていることだ。公式ゲームのため、その年を走っている実在のコンストラクターやドライバーが実名で登場するのだ。つまり、いつもならテレビの中でしか見ることができない、あこがれのF1マシンに乗り込んだり、あこがれのドライバーになりきって実在のGPサーキットを走ることができる、それが最大の特徴となっている。

 そのF1シリーズの最新製品が今回紹介する「F1 2014」。例年、F1日本GPの前後に発売されることが多く、今年も鈴鹿サーキットで開催されるF1日本GP(10月3日~5日)直前となる10月2日に、PlayStation 3版とXbox 360版が発売される。

バーニー率いるFormula One Groupに認められた唯一の公認ゲーム

 今回筆者がプレイした「F1 2014」はPlayStation 3版で、Xbox 360版と内容の違いはない。F1公認ゲームとなるため、ほかのゲームには絶対登場しない、メルセデス、レッドブル、フェラーリ、ウィリアムズ、マクラーレンといった実在のコンストラクターや、ニコ・ロズベルグ、ルイス・ハミルトン、ダニエル・リカルドといった2014年のF1に参戦している22名のF1ドライバーが実名で登場する。

 コードマスターズのF1シリーズの常として、その再現性は非常に高い。F1ゲームなどの3D描画を伴うゲームは、コンソールゲーム機に内蔵されているGPUというグラフィックスエンジンを利用し、リアルタイム描画を行っている。その再現性を高めるのに最も重要なことは、何よりも正しいデータに基づいているかどうかだ。例えば、タイヤのサイズ、ウイングの形状やサイズ、(縦横高さなど)を正確にデータ化し、それをグラフィックスに置きかえることで、初めて高い再現性を実現することができる。

 古い例え話になって申し訳ないのだが、F1のスケールモデルで定評のあるタミヤは、実際に設計者が現地まで行って実車から計測したのだという。もちろん、その当時と今では情報の量も違うので直接比較はできないが、それぐらいしないとリアルな立体モデルというものを作ることは難しいのだ。画面の中に再現する3Dゲームも同じで、どれだけ正確なデータを把握しているかが、リアルな3Dゲームを作る上では非常に重要だ。

●タミヤ会長、F1取材の裏話などを語る
http://car.watch.impress.co.jp/docs/news/20090803_306795.html

 その点において、「F1 2014」は何の心配もない。というのも、Formula One Groupの正式なライセンスを受けた公認ゲームとなるため、Formula One Groupを通じて各サーキット、各車両、各ドライバーの正確なデータを受け取っているからだ。実際、「F1 2014」をプレイしていても、カラーリングからスポンサーロゴの位置まできちっと再現されている(ただし、唯一ウィリアムズのスポンサーであるマルティニだけは再現されていなかった。これはお酒の販売が禁止されている地域への配慮だという)。

 そもそも、Formula One Groupは、あのバーナード(バーニー)・エクレストン氏の会社だ。F1ファンなら、“バーニー”の名前を聞いたことのない人はモグリとしか言いようがないが、念のために解説しておくと、エクレストン氏は、1970~1980年代にはブラバムF1チームのチームオーナーで、その後F1チームを組織してFOCAを結成。その組織を通じてチーム側の権利拡大を図り、テレビ放映権をテレビ局に販売することで、チーム側にも、そしてF1そのものにも繁栄をもたらせたF1界の最高権力者だ。

 エクレストン氏のことを守銭奴といって非難する人もいないわけではないが、筆者はお金の大事さを感じているからこそ、今のような世界中で支持されるF1の地位を築き上げたのだと思っているし、彼の発言をテレビを通して聞いているとF1を誰よりも深く愛していることが分かる。その意味で筆者はエクレストン氏のことを深く敬愛しており、その彼の会社が認めた「F1 2014」の再現性は、F1ファンにも納得できるレベルであると言ってよいだろう。

DRSでウイングをパカッと開くあのカイカンが体験できる

 話が脱線気味なので、ゲームの話に戻そう。では筆者的に、どのあたりの再現度が凄いのかと言えば、一番にサーキットを挙げたい。

 テレビでF1観戦していると意外と気がつかないのが、サーキットの高低差。F1ファンなら、F1のコーナーで最も有名と言ってもよい、スパ・フランコルシャンの“オールージュ”が、上ってその後は緩やかにカーブしていくコーナーであることを知っているだろう。だが、その逆に下り路面にはあまり気がつかない人が多い。今年、ルイス・ハミルトンのリアタイヤをニコ・ロズベルグがパンクさせたコーナーとして有名になった“レ・コーム”の先のマウンテンセクション、実は緩やかな下りになっている。そうした高低差も、「F1 2014」だとドライバーとなって体験でき、高低差を感じることができる。スパのような高低差の大きなサーキットを走ると、“あー、このコーナーはこんなに上っているのか”と、素直に実感できて結構楽しい。

オールージュの坂を駆け上ろうとしている小林可夢偉選手ドライブのケータハム。現時にはあり得なかったシーンだが、こんな楽しみ方ができるのも「F1 2014」ならでは
F1日本GP直前に発売される「F1 2014」。今年のF1データとなっているため、ロシアGPのデータも入っている
カシオ……、日立オートモティブシステムズシケインを立ち上がって行くところ。鈴鹿はこの辺りから1コーナーにかけて下り坂となっている。そんなところも実感できる

 もう1つは、F1の車両やルールの再現性だ。例えば、パワーユニットのサウンドに関しても、きちんと今年のデータを元に再現されている。今年のF1は車両面で大きなレギュレーションの変更が行われた。その最大のものは、従来の2.4リッターV型8気筒自然吸気エンジンから、1.6リッターV型6気筒ターボエンジン+ERS(Energy Recovery System)というパワーユニットへ変更されたことだ。従来のF1ではKERSと呼ばれるブレーキシステムからエネルギーを回生するものがついていたが、2014年のパワーユニットではブレーキからの回生に加え、熱エネルギーの回生も行われており、従来よりも大規模に回生が行われている。しかし、その分、無駄に捨てていたエネルギーは減っており、エンジン音は小さくなっている。このため、従来の2.4リッターV型8気筒自然吸気エンジン時代のような甲高い音はせず、賛否両論のある低音中心のエンジンサウンドになっている。

 F1 2014ではこの音もきちんと再現されている。さらに、ストレートを走っている時などに微妙なエンジン音の変化が感じられ、ERSが効いている状況も再現していると思われる(熱エネルギーが回生されるということは、その分エンジン音は小さくなる傾向にある)。本当に地味な変更ではあるが、そういうところもリアルに再現しようという姿勢には好感が持てる。

 なお、昨年までのF1 2013ではストレートのある地点で前車から1秒以内の時にはDRSを利用でき、かつ必要に応じてKERSを有効にしてエネルギーブーストが行えたが、今年のF1のルールではERSは自動化(コンピュータ制御)されているので、ドライバーが明示的にERSを有効にすることはできない。このため、F1 2014でもERSは自動化。DRSのシステム作動ボタンだけが用意されており、現行ルール同様、前車から1秒以内にDRSラインを横切った後、ストレートでDRSが有効化され、ボタン操作でウイングを開くことが可能になる。

現実のF1のルールに従ってDRSが使用可能になる。DRSボタンを押すと、写真のようにリアウイングの一部がパカッと開く。これで空気抵抗が低減され、最高速が上昇する

ベリーイージーの新レベルで、誰もが楽しめるF1ゲームに

 昨年リリースされたF1 2013では、オールドファンなら涙モノの「F1 CLASSIC」というモードが用意されており、オールドF1マシンやオールドドライバーを利用して最新のサーキットを走ったり、その逆で最新のF1マシンでオールドサーキット走ることもできるという“オマケ”機能が用意されていた。しかし、今年のF1 2014ではそうした“オマケ”は用意されておらず、ストイックに今年のF1にフォーカスしたゲームになっている。すでに述べたとおり、今年のF1は、レギュレーションが大きく変わったこともあり、ゲームを作る人達にとっても対応すべきことが沢山あったのだろうと勝手に推測している。

 今年のF1 2014を始めると、最初に行わないといけないのが、評価テストだ。この評価テストは、1ラップのトライアル型式になっており、まずはこれを利用して1周すると、プレイヤーの実力を評価してくれ、どのモードに設定すればよいかを示唆してくれるのだ。というのも、F1 2014にはベリーイージー、イージー、ミディアム、ハード、ベリーハードの5段階が用意されており、その設定によりコンピュータがどの程度アシストするのかが決まってくる。

 ヘタレゲーマーである筆者にとって嬉しかったのは、このF1 2014からベリーイージーという新しいレベルが設定されていることだ。F1 2014におけるこれらのレベルの違いは、ドライバーの運転をどの程度アシストしてくれるかの違いになる。例えば、本来F1マシンを運転するには、非常に微妙なアクセルコントロールが必要だし、神業的なブレーキングやハンドルさばきが必要になる。しかし、そんなことは一般のゲーマー、ましてや筆者のようなヘタレゲーマーにとって、最初からそのような操作が無理であるのは言うまでもなく、ゲームプログラムがそのような部分をドライバーの替わりに代行してくれているのだ。ベリーイージーでは、理想の走行ラインを表示してくれるほか、走行ラインもアクセルオンの地点は青に、ブレーキングで減速する地点には黄色や赤などで表示してくれ、非常に分かりやすい。それだけで十分運転しやすいのだが、さらにアクセルやブレーキ、ハンドル操作に関してもアシストが入るので、初心者でも充分楽しめるようになる。

 もちろん、ベリーイージー<イージー<ミディアム<ハード<ベリーハードの順でアシスト機能が介在する部分は減っていき、ベリーハードに関しては実際のF1ドライバーと同じような感覚でドライブすることができる(多分)。理想としてはベリーイージーから始め、段々とレベルを上げていく方法だろう。最初からベリーハードで始め、F1ドライバーはどれだけ大変な仕事をしているのか体験するのもよいかもしれない。もう二度と「マルドナード、何やってんだよ」なんて発言ができなくなることかもしれない。

 初心者ではないがヘタレゲーマーの筆者はどうだったかと言えば、ベリーイージーでのプレイは、それなりにレースが楽しめた。イージーでは正直コースの上にいるだけで精一杯だったが、ベリーイージーではレースを戦えるようになり、表彰台に立つことや、優勝することもあった(もちろん、1周目でクラッシュして最後尾ということも多かったが……)。たかがゲームではあるものの、やはり負けると悔しい。負け続けるとゲームをプレイする気力がなくなり、その結果ゲームをしなくなるという悪循環に入ることだってあるだろう。少なくともF1 2014に関してはベリーイージーが追加されたことで、そうした心配はかなり減ったと言ってよいのではないだろうか。

ベリーイージーとはいえ、優勝するのは嬉しいものだ。次のレースに挑もうというモチベーションがわいてくる

 このベリーイージーモードにしてからは、F1 2014にすっかりはまってしまった。今回のテストプレイは2時間程度しか時間をもらえなかったのだが、時間があっという間に経ってしまい、正直“もう終わり??”と言いたい気分だった。

 なお、マシンセッティングなどに関しては、ピット画面から調整を行う。昨年までのF1 2013同様に、クイックセットアップ(ストレート重視か、コーナー重視か、あるいはウェット設定かなど)も利用できるほか、ウイングなどの設定を細かく設定することもできる。このあたりも、より深く遊びたい人には深く、とりあえず遊びたい人にはそれなりにという配慮がうかがえる。

クイックセットアップでの手軽なセッティングもできるが、より詳細に追い込むこともできる

フルレースにチャレンジすると、DRSやタイヤ交換なども体験できる

 もう1つ実際にプレイして気がついたことは、やっぱりフルレースは楽しいという点だ。F1 2014には、さまざまな楽しみ方が用意されていて、3周だけのクイックレース、シングルレース(実際のレースの25%、50%、フルレース)、1シーズン、通信を利用したマルチプレイなどがある。プレイヤーの都合(沢山時間がある人には1シーズン、特定のGPだけを楽しみたい人はシングルレースなど)に合わせてプレイすることができる。

 シングルレースが楽しいのは、クイックレース(3周)では楽しむことができない、DRSやタイヤ交換などができる点だ。といっても、今回は時間もなかったので、フルレースの1/4となる25%レースをプレイしただけだったが、4周以上になるためDRSのシステムが有効になり、かつ途中でタイヤ交換が1回入るようになる。もちろん、タイヤ交換そのものは、ピットクルーが行うモノであり、ドライバーはただ見ているだけだ(実際F1 2014でも、ピットイン時にはドライバーは見ているだけだ)。

 しかし、ピットアウトして出て行くときのライブ感は、F1レースそのものだ。ミラーには後ろから迫ってきている後続のクルマが大写しになるので、1コーナーで抜かれないようにブロックする必要がある。ピットイン前は順位が自分より低かったのに、自分よりも先にタイヤ交換していたドライバーが、ピットイン後に追いついてきたりすると「おーアンダーカットされそう、危ねー、クルーのみんなちゃんと交換してくれたのか!」とか叫びたくなり、まさに気分はF1ドライバーだ。

クイックレースは手軽でよいのだが、画面のようなピットインなどのイベントが発生しない。シングルレースなどでガッツリ走り込んでみてほしい

 なお、自分が遅い理由をピットクルーのせいにしていると罰が当たったのか、調子に乗って走っていたら、壁に激突して、右前輪がとれてしまったこともあった。基本ベリーイージーでは多少壁に当たっても走り続けられるのだが、あまりにヒドイ当たり方をすると壊れてしまい、リタイアになるようだ。画面には、ドライバー(その時はマルシアのビアンキ選手で走っていたのだが)がピットに帰ってクルーに謝る(言い訳する)画面が表示され、むろんヘタレドライバーの筆者も画面のビアンキと一緒にクルーに謝ったのであった……(苦笑)。

ベリーイージーでも、運転ミスが大きいとマシンがクラッシュしリタイアすることに
ピットに戻って謝っている? 思わず笑えるシーンだが、クラッシュしたのは筆者のせい
こちらはシナリオモード。手軽に楽しめるベリーイージーから、おそらく難しいであろうハードまで、4段階の難易度が用意されていた。それぞれの難易度ごとに複数のシナリオが収録されている

現実にはあり得ないシーンの再現も可能、ソチはF1ドライバーよりも先に走れるぞ

 「F1 2014」はゲームだけに、現実にはあり得ない(あり得なかった)プレイだって可能だ。例えば、日本のファンにとって今年最も複雑なGPとなってしまったのが、スパ・フランコルシャンで行われたベルギーGPではないだろうか。日本の小林可夢偉選手に替わってこのサーキットを走ったのは、これまた日本で成長して今や押しも押されぬWECのトップドライバーとなったアンドレ・ロッテラー選手。日本のファンとしては、日本人の可夢偉選手を応援しているのはもちろんだけど、日本でトップドライバーに成長したロッテラー選手のことも“おらが村のドライバー”と思っている訳で、その2人が椅子取り合戦をすることになった状況は、非常に複雑な思いだったのではないだろうか。

 だが、「F1 2014」でシーズンのドライバーとして登録されているのは、もちろん小林可夢偉選手。従って、プレイするレースとしてベルギーGPを選び、ドライバーに可夢偉選手を選べば、幻となってしまった“小林可夢偉、ケータハムでスパを走る”の図を、ゲームの中で再現できる。スパを好きなコースといってはばからない可夢偉選手の無念を、ファンの自分が晴らす、そんなことが「F1 2014」では可能な訳だ。

 そして、もう1つ、“これは”と思えたのがロシアGP。2014年が初開催となるロシアGPの会場となるソチのソチオートドロームサーキットは、すでにF1 2014に収録されている。あたり前だが、このソチのコースは今年初開催であるので、これまで走ったことがあるのは、デモで走ったことがあるマルシアのドライバーとレッドブルのベッテル選手ぐらい。つまり、ほとんどのF1ドライバーにとって未経験のコースなのだ。

 ところが、そのロシアGPが開催される10月10日~12日に先駆ける10月2日に、このF1 2014は日本のみ先行発売される(欧米では10月17日)。つまり、10月2日~9日の間に買った日本のファンは、F1ドライバーの多くが走ったことすらないソチのコースを走れるというのだ(もちろんロシアGP開幕前までの話……)。実際、筆者もソチのコースを走ってみたが、クルマから見えるコースは韓国のコースに似ている感じだったが、やはりティルケサーキットだなと思える部分が多かった。

多くのF1ドライバーより先にソチのオートドロームサーキットを走ってみた。折角なので天候を雨に設定。近年のサーキットはヘルマン・ティルケ氏によってデザインされたものが多く、オートドロームサーキットもその1つ。一連のティルケ作品に通ずる雰囲気を持つ

 現在のF1では、シミュレーターと呼ばれるマシンを利用してF1ドライバーは練習するモノだが、予算に余裕がない下位チームでは、新しいコースのデータを作る予算などないかもしれない。もしかしたら日本GPに合わせて来日するときに、日本語版のPlayStation 3なりXbox 360と一緒にF1 2014を買っていくF1ドライバーの姿を見ることがあるかも、と想像するのも楽しい。

●コードマスターズのWebサイトで公開されているF1 2014によるソチの1ラップの動画
http://blog.codemasters.com/f1/09/f1-2014-sochi-hot-lap/

F1ファンなら、F1コンテンツとして購入したい「F1 2014」

 以上のように、F1 2014は、F1ファンなら必見のポイントが多数ある。特に、今年のバージョンで追加されたベリーイージーという新しいレベルは、筆者のようなゲーマーであっても気軽にプレイすることができた。「F1は好きだし、毎戦見ているけど、ゲームは苦手だからなー」というカジュアルゲーマーでも、気楽に楽しめるようになった点が最大のバージョンアップポイントであると言ってもよいくらいだ。

 もちろん、2014年のF1情報が反映されている点も魅力だ。小林可夢偉選手になってベルギーGPを走るもよし、あるいはルイス・ハミルトン選手になり、モナコGPでポール・ポジション獲得を目指すもよし、あるはフェルナンド・アロンソ選手になってシリーズで毎戦勝ち続けるのもよし、ファンならではのさまざまな楽しみ方を考えられるだろう。また、発売後1週間だけの“限定特典”"だが、F1ドライバーよりも早くソチのコースを走れるというのも、ウリと言えるだろう。

 「F1 2014」は、F1ファンならば、ゲームというよりF1のエンターテインメントコンテンツとしての購入を強くお勧めしたい。

筆者も可夢偉選手と同じくスパがお気に入りのコース。ケータハムではなく、メルセデスで走ってみるとその走りやすさに驚いた。マシンの違いも再現されている

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笠原一輝

Photo:安田 剛