特別企画

【特別企画】笠原一輝のコードマスターズ「F1 2013」をやってみた

オールドファンからクルマゲーマニアまで幅広く楽しめる「F1 2013」

 Car Watchで主にモータースポーツ関連の記事を書いている笠原一輝氏。PC Watchの連載「笠原一輝のユビキタス情報局」(http://pc.watch.impress.co.jp/docs/column/ubiq/)を愛読している方ならお分かりのように、本来の仕事はCPUやGPUなどプロセッサ関連(および応用製品)の最新動向の執筆を行っている。

 その笠原氏がCar Watchでモータースポーツ関連の仕事を行っているのは、普段からF1はもちろんGP2やF3、インディ、WTCCなどグローバルな視点でモータースポーツの動向を追いかけているため。また、CPUやGPUのコードネームと同様、レースに関する記憶力も抜群で、「199xの××グランプリは○○が優勝した」など細かく覚えているようだ。

 そこで、Car WatchではF1 日本グランプリ開幕直前の10月10日に発売となるプレイステーション 3/Xbox 360用レースゲーム「F1 2013」のレビューを笠原氏にお願いした。F1 2013では、今年のF1に登場する全サーキットと全コンストラクター、全ドライバーを収録して今のF1シーンを再現するのに加え、かつてのF1シーンを再現する「F1 CLASSICS」モードが追加されているためだ。ゲームの詳細なレビューに関してはゲーマー佐藤カフジ氏によるGAME Watchの記事「グッと遊びやすく、ボリュームもアップ!「F1 2013」ハンズオン 」(http://game.watch.impress.co.jp/docs/news/20130910_614668.html)をご覧いただき、Car WatchではF1を愛してやまないITジャーナリストのレビューをお届けする。

笠原一輝氏にF1 2013をプレイしていただいた。ITジャーナリストであり、Car Watchではモータースポーツ関連を執筆している笠原氏は、このF1 2013をどう感じたのだろうか

F1マニアとしての観点からF1 2013を見る

 コードマスターズから発売されるプレイステーション 3/Xbox 360用レースゲーム「F1 2013」は、例年F1 日本グランプリの時期に合わせて販売が開始される。今年は鈴鹿サーキットで行われる日本グランプリの直前となる10月10日の販売開始が予定されており、10月13日の決勝日を前に盛り上がること間違いなしだ。

 F1 2013は3Dグラフィックス技術を活用してF1レースの模様が詳細に再現されており、大画面のハイビジョンテレビなどでプレイするとまさにF1カーに乗っているような雰囲気でドライビングに没頭することができる。本記事では、F1マニアとしての観点からF1 2013がどんなゲームなのであるのかに関して紹介していきたい。

F1 2013の開発中画面。2013年型車とサーキットがリアルに再現されている
F1 2013のレッドブル車。サイドポンツーンの形状やチムニーなどもリアルに再現されていることが分かる
こちらはフェラーリ、レッドブルとの違いがきちんと再現されている
キミ・ライコネンのロータス。段差ノーズの再現具合が素晴らしい

 発売前の開発版をプレイして分かったことは、F1 2013が“クルマゲー”クラスタに属するユーザーだけでなく、あまりゲームコンソール(コンシューマゲーム機)用タイトルはやらないよーという“F1オタク”クラスタに属するユーザーにも十分楽しめるタイトルということだ。実際に毎年11月に行われるヤングドライバーテストにゲーム内で参加し、中位チームと契約、そしてシーズン中に実力を認められれば上位チームからオファーを受けてステップできる可能性のあるキャリアモードをプレイすれば、自分が若手ドライバーとしてF1サークルに入り、ドライバーとしてステップアップしていくというF1ドライバー人生をRPG的に楽しむこともできる。

 また、アラン・ジョーンズ、アラン・プロスト、ナイジェル・マンセル、デイモン・ヒル、マリオ・アンドレッティ、エマーソン・フィッティパルディ、ミカ・ハッキネン、ミハエル・シューマッハら伝説のチャンピオン達に、日本に縁の深い人気のドライバーでもあるゲルハルト・ベルガーと中嶋悟を加えたドライバー達が、過去のF1名車に乗って繰り広げるレースに参加可能な「F1 CLASSICS」モードも備えている。

 ここまで読んできて、これらの名前に1つでもピンと来た人には、1度プレイすることをお勧めしたいところだが、この記事でイメージを掴んでいただければと思う。

実際のコースや車両を忠実に再現、コースの高低差などもリアルに表現されている

コースの高低差が分かる構図。ここはブラジルのインテルラゴスサーキットで、雨中のレース

 PCやゲームコンソール向けのゲームソフトの中で、通称“クルマゲー”と言われる自動車をドライブするタイトルは常に一定のシェアを占めている。最も有名なタイトルはソニーのプレイステーション用として販売されている「グランツーリスモ」シリーズだろう。そうしたグランツーリスモのようなゲームは、ジャンル的には自動車の運転というリアルな行為を、デジタル機器の中で再現する、つまりはシミュレータということになるだろう。

 以前のクルマゲーはそうしたシミュレータといっても、実際にクルマを再現するにはほど遠い状態だったが、現在のソフトウェアは、そのほとんどが実車のデータを元に作られているため、かなり現実に近い状態になっている。ドライバーにかかるGなどのフィードバックに関しても、フィードバック機能を持つコントローラであれば振動などによって簡易的な再現が行われている。近年では、こうしたクルマゲーを利用したゲーム大会の王者が、そのまま現実のレースのレーシングドライバーになり、実際に活躍しているということも起きている。

 今回紹介するF1 2013も、F1ドライバーのドライビングを再現するという意味では、F1ドライブシミュレータといっても差し支えがない。収録されているコースは2013年にF1グランプリが実際に行われているコースで、そこを実際のF1カーのデータを元に再現されているF1マシンで走ることができるのだ。

 F1 2013の重要な点は、実際のF1マシンやサーキットが、このように再現されていることにある。テレビ放送などではあまり分からないが、実際のサーキットに行ってみると、コースの高低差というのは非常に大きい。例えば、ベルギーグランプリの会場として知られているスパ・フランコルシャンは、オールージュに向かって登っていき、ケメルストレート(2001年にミカ・ハッキネンとミハエル・シューマッハが、リカルド・ゾンタを挟んでスリーワイドで追い抜きバトルをした有名なストレート)の終わりからどんどんと下っている。このF1 2013で実際にスパを走ってみると、そうした様子がきちんと再現されていることが分かる。

ステアリングのデータも詳細に描画されている。もちろんマシンによって異なっている
一連の写真はモナコグランプリを走行中のもの。注目していただきたいのは、ステアリングコントローラの角度と画面描画が連動していることだ。ゲームに没入できるポイントだ
こちらがモナコグランプリのスクリーンショット。詳細まで再現されたステアリングホイール、ボディーへの市街地の映り込みなど、高いグラフィックス能力を持つ現代のコンシューマゲーム機ならではの再現性

 日本のファンに身近な例としては、鈴鹿サーキットが挙げられる。実際に鈴鹿サーキットに行ってみるとメインストレートは下りで、バックストレートは登りなんだということに気がつくと思うが、そうした様子もF1 2013ではきちんと再現されている。普段テレビ放送で何気なく見ているコースでも、F1 2013をプレイして自分の目線で走ってみると、「あーここはこんなに登っているんだ」とか、「こんなに下っているんだ、思ったより曲がっているな」など新しい発見をすることができるだろう。

 なお、走行時には、カメラの視点を変えることができるのもファンにとっては嬉しいところだろう。カメラの視点は、クルマゲームで一般的な車両全体が見えるモードや、ドライバーの実際の目線、そしてF1中継でお馴染みのオンボードカメラからの視点などが用意されている。

 シミュレータという意味では、ドライバー目線の視点が最もリアルと言えるが、F1中継でオンボードカメラからの映像を見慣れていると、それがサーキットを見る目線になっている自分に気付くことがある。そうしたユーザーでもオンボードカメラの視点に切り替えると違和感なくプレイできるだろう。ここはF1オタクにとっては見逃せない点だ。

KERSも、DRS、オプション/プライムタイヤも、忠実に再現し体感可能

 視点だけではなくF1レーシングシミュレータとしての機能も本格的だ。ガレージでは、ウイングの角度、ブレーキバランス、タイヤの空気圧、アンチロールバー、サスペンション(車高、スプリングレート)、ギア比、アライメントなど調整可能な項目が多岐にわたっており、本当に本格的にセッティングしようとしたら、F1エンジニア並みにそれなりの知識が必要になるだろう。ただ、それは自分では難しい(もしくは面倒)と感じるユーザー向けに「クイックセットアップ」と呼ばれるオプションが用意されており、ドライ路面に適した設定、ウェット路面に適した設定など大まかな設定を行うことも可能だ。F1ドライバーなら自分のエンジニアに「もっとドライ寄りに」とかそういうように指示を出すのだろうから、あとはエンジニアに任せればオッケーだ。

 現在のF1の勝負を決定する大きな要素になっているタイヤも、オプション(より柔らかい方のドライタイヤ、いわゆるソフトタイヤ)、プライム(固い方のドライタイヤ、いわゆるハードタイヤ)、インターミディエート(溝が浅いウェットタイヤ)、ウェット(溝が深いウェットタイヤ)の4種類が用意されており、ドライバーがエンジニアに指示して交換することができる。グランプリモードでは、決勝レースのみに参加するお手軽な設定のほか、フリー走行(FP)、予選、決勝と順に走り、実際のグランプリの流れを体験する「ロング・ウィークエンド」など、幾つかの設定が選べるが、「ロング・ウィークエンド」では、タイヤの制限(例えばドライとなった決勝では必ずオプションとプライムの両方を利用するなど)も実際のF1同様に適用される。

 なお、グランプリモードでのグランプリのタイプはユーザーが自ら設定可能で、決勝レースのみ~すべて実際のレースに則した流れのロング・ウィークエンドまで設定することができる。またレースの距離も3周~実際の100%の長さまで選択可。例えば、ロング・ウィークエンドの100%に設定しておけば、実際のグランプリウィークエンドと同じように、FP1/FP2が90分、FP3が60分、予選Q1/Q2/Q3、決勝とフルに戦うことができる。実際のF1同様のタイムスケジュールで遊べるほか、ユーザーの都合で設定可能な点は嬉しいところだ。

 また、本作に追加された便利な機能として、セッション中のデータセーブがある。100%の距離でロング・ウィークエンドを体験してみたいけれど、一気にドライブする時間が取れない、集中力がもたないという人でも、この機能を使えば、途中から再開することができる。さらに嬉しいのは、ミスをした時点で使用すると、時間を巻き戻しできる“フラッシュバック”機能の搭載。ラスト数ラップでミスをした際、ボタン1つで失敗をなかったことにしてくれるこの機能は、ゲームらしい要素で、ユーザーに優しい救済アイテムだ。

 F1オタクにとって嬉しいのは、DRS(Drag Reduction System)とKERS(Kinetic Energy Recovery Systems)の機能が用意されており、しかもそれらの機能の表示はF1中継で見慣れたモノと同じなのだ。適用条件はこれまた実際のF1と同様で、DRSについてはDRSのディテクションポイントで前の車両と1秒以内にいればDRSゾーンで利用することができる。

 実際にDRSが利用できるようになれば、DRSマークが点灯し、それを押すと緑のランプが光るとか、KERSボタンを押すとバッテリーのマークが赤く光りゲージが減っていくのもF1での中継の表示と同じだ。F1中継を見ながら「なんだよ、なんでここでKERSもっと使わないんだよ!」とかドライバーに突っ込みを入れている俄評論家(筆者のことだ……)にとっては、KERSやDRSを使いこなすことがどれだけ難しいことなのか、身をもって体験できるというありがたーい機能なのだ。

キャリアモードをプレイすれば、F1ドライバー人生を体験できる

 こうしたドライビングのための機能はホンモノのF1のようにプレイする上で欠かせないのだが、率直に言ってこうしたクルマゲーが得意ではないユーザーは、「どーせうまくラップを刻めないからすぐあきるでしょ」と言いたくなるのではないだろうか。

 自慢ではないが、筆者もそうだ。というのも、筆者はF1やモータースポーツは好きだが、正直さほどヘビーなゲーマーではなく、プレイするゲームといえばクルマゲーに限られており、ほかのゲームはほとんどプレイしたことがない。クルマゲーも結局はゲームである以上、求められるのは自分自身の応答能力だったり、反応能力だったりすると思うが、そうした運動性能が自分に欠けていることはよく認識しているつもりである。なので、率直にいって、こうしたゲームをやってもすぐスピンしちゃうし、人より速く走るのは容易ではない。

 ただ、そうした筆者のような“カメドライバー”であっても心配ご無用だ。このF1 2013には、ドライビングアシストの機能が用意されており、設定で自動でブレーキを制御したりということはコンピュータがやってくれる。ある程度慣れるまでは、この機能をありがたく使わせていただくとよいだろう。

 それだけではない。もう1つ注目したいのは、キャリアモードというF1ドライバーのキャリアをシミュレートするモードが用意されていることだ。キャリアモードでは、毎年11月にアブダビのヤスマリーナサーキットなどで行われているヤングドライバーテスト(レギュラードライバー経験があるドライバーは参加できない、若手だけが参加できるテストのこと)から始め、そこで経験を積み、チームと契約してシーズンを戦っていくことができる。ユニークなのは、そのヤングドライバーテストがチュートリアル形式になっており、それによりこのゲームの流れを学ぶことができるのだ。チュートリアルを受けると、メダルがもらえ、テストの成績によって、より上位のチームと契約することが可能になるのだ。

 特筆したいのは、シーズンを戦っているうちに、より上位のチームからオファーが来るような場合もあることだ。頑張って戦っていると、上位チームのマネージャからいきなりメールが来たりして、上位のチームにステップアップすることができる。キャリアモードは、F1ドライバー人生のロールプレイングゲームなのだ。

 モータースポーツファンの楽しみの1つとして、若いドライバーがジュニアカテゴリーにいるときから応援し、応援していたドライバーが階段を駆け上がるようにスターダムにのし上がっていくことがあるだろう。若いドライバーの活躍を知る機会は多く、GP2やF3などの結果を注意深く見ていれば、どのようなドライバーがF1に上がってくるのかをチェックすることができる。注目していたドライバーがF1ドライバーになり、初優勝を遂げたりすれば、感激すること間違いなしだ。そうした楽しみを、F1の入口からゲーム上で再現しているのがこのキャリアモードなのだ。若手ドライバーやそのマネージャになった気持ちを体験することができるのだから、F1マニアであればプレイしない理由がどこにあるというのだろうか。

オールドファンであれば感激必至のF1 CLASSICSモード

 古くからのF1マニアであれば、絶対に見逃せないのが「F1 CLASSICS」モードが用意されていることだ。F1 2013は、その名前からも分かるように、2013年の実在のドライバーとF1チーム、F1カーが2013年のカレンダーに登場するサーキットを走るということがゲームを構成する大きな要素となっている。F1 CLASSICSモードでは、過去のF1で走っていたドライバーとクルマで、現在はF1を開催していないサーキットを走ることができるのだ。標準では下記のようなドライバーとマシンが用意されている。

マシンオリジナルドライバーチームレジェンド(チームにゆかりのある伝説のドライバー)
ウィリアムズ FW07B(1980年)アラン・ジョーンズアラン・プロスト
ウィリアムズ FW12(1988年)ナイジェル・マンセルデイモン・ヒル
ロータス 98T(1986年)マリオ・アンドレッティエマーソン・フィッティパルディ
ロータス 100T(1988年)中嶋悟ミカ・ハッキネン
フェラーリ F1-87/88C(1988年)ゲルハルト・ベルガーミハエル・シューマッハ

 F1マシンは5種あり、いずれも1980年代にF1を戦っていた名マシンだ。そのマシンに実際に乗っていたドライバーと、そのマシンには乗っていなかったがそのチームに関係するレジェンドドライバーの2人が登場し、合計10人の名ドライバーがレースを戦う。

1988年型ウィリアムズ FW12。ジャッドV8エンジンを搭載したマシン。キヤノンのカラーのウィリアムズが懐かしすぎる。サーキットの画面がちょっぴりセピア調なのは、当時のカメラ技術に合わせてこうなっているらしい。なお、レース時には、カラーフィルターのオン・オフが設定可となっている
F1 CLASSICSモードではこのように、オールドマシンを利用して、伝説のドライバーが乗るというコンセプトの「レジェンドレース」がコンセプトとなっている

 このマシン選択は実にシブい。チャンピオンを獲得したマシンをラインアップに揃えたくなるところだが、この5台のうちチャンピオンを獲得したマシンは1980年のチャンピオンカーであるウィリアムズ FW07Bだけで、それ以外のマシンは、いずれもチャンピオンカーではない。そのウィリアムズに関しても1980年代で唯一未勝利だった年のFW12(1988年)が加えられているあたりも実にシブいチョイスだということができる。

 数あるフェラーリのクルマの中でフェラーリ F1-88C(1988年)が選ばれているのは、日本のファンにとって興味深いのではないだろうか。1988年のイタリアグランプリ、この年16戦15勝をしたマクラーレン・ホンダに唯一土をつけたのがこのマシンだからだ。

 2台のロータスだが、1986年のロータス98Tのドライバーがマリオ・アンドレッティになっているのは、このF1 CLASSICSモードが、レジェンドレース的な位置づけになっているからだろう。また、1988年のロータス100Tのドライバーは、ネルソン・ピケ(トリプルワールドチャンピオン)と日本の中嶋悟だが、本作で中嶋悟が収録されているのは、F1を愛する日本のファンのために、コードマスターズの日本支社が収録を強く要望した結果とのことだ。

 そしてサーキットだが、ヘレス(スペイン)とブランズハッチ(イギリス)が選ばれている。ヘレスはスペイングランプリの会場がバルセロナに移る前にF1が開催されていたサーキットだ。多くのファンに記憶されているのは1997年の最終戦ヨーロッパグランプリの会場としてだろう。この1997年のヨーロッパグランプリは、ミハエル・シューマッハとジャック・ビルヌーブの間でチャンピオンが争われた1戦で、シューマッハがビルヌーブにわざと当てにいって自分がグラベルにはまってリタイアするという格好わるい結末を迎えたことでよく知られている(結果シューマッハは1997年のポイント剥奪)。余談だが、このレースで初優勝したのがF1 CLASSICSモードにも登場する、ミカ・ハッキネンだ。

 ブランズハッチは、イギリスのサーキットで、以前はシルバーストーンとイギリスグランプリの会場を分けあっていた。こちらも有名なのは1985年のヨーロッパグランプリの会場としてで、このレースではウィリアムズ・ホンダに乗るナイジェル・マンセルが劇的な初優勝を遂げ、マクラーレン・TAGポルシェのアラン・プロストが初めてのドライバーチャンピオンを獲得したレースとしても知られている。

 こうしたコース、クルマ、ドライバーを利用して、予選、決勝レースを戦うことができる。現代のF1マシンと同じようにセッティングなども可能になっているが、DRSやKERSなどはもちろん用意されていないので、そうした機能は利用することができない。ただ、実際にF1 2013をプレイして気がついたのだが、2013年型のF1マシンに比べると、これら1980年代のF1はドライブするのが難しくなっている。そのあたりもシミュレートされているのだろう。“リアル”にとことんこだわっているのは開発者の心意気が感じられるところだ。

中嶋悟のロータス100Tを走らせているところ。ステアリングのパネルが2013年型に比べてシンプルなことに注目

 このF1 2013では、コードマスターズが運営する会員サイト「CODEMASTERS RaceNet」に登録すると、無料でボーナスカーを手に入れられるようになる。ダウンロードできるのは1976年型のフェラーリ 312 T2。3度のワールドチャンピオンに輝くニキ・ラウダ(現AMGメルセデスF1チーム代表)が1977年にドライバーズチャンピオンを獲得し、1976年、1977年の2度にわたりコンストラクターズタイトルを獲得した伝説のマシンだ。特に、1976年には有名なニュルブルクリンクの事故で瀕死の重傷を負ったラウダは、その後不死鳥のごとく復活し、最終戦となった「F1世界選手権 in Japan」(当時は別に日本グランプリがあったためこの名称で呼ばれた)において、ジェームス・ハントと激しくタイトルを争ったエピソードはよく知られている。大雨となった富士スピードウェイの旧コースのレースでは、安全性を重視したラウダがリタイアし、ハントが1976年のチャンピオンに輝いた。これらのエピソードは、ロン・ハワード監督が、バーニー・エクレストンの協力のもと作成したF1映画「RUSH」に描かれており、日本でも2014年に公開される予定になっているので、F1ファンはぜひご覧になっていただきたい。

1980年型のウィリアムズ FW07B。アラン・ジョーンズが1980年にチャンピオンになったクルマだ。サーキットは現在のスパ・フランコルシャンで、オールージュを駆け上っているところだ。1980年代のスパにあったバスストップシケインなどはないが、オールージュやケメルストレートなどは当時とほぼ同じなので、オールドファンにはたまらないだろう

 これら1980年代のF1マシンでのプレイは実に興味深いが、実はもう1つユニークな機能がある。というのは、これらの旧車を利用して、2013年のコースを走ることができるのだ。ウィリアムズ FW12でナイジェル・マンセルになりきって、当時はF1が開催されていなかった、シンガポールのナイトレースを走ってみたり、とかはF1マニアであれば、胸熱なシーンではないだろうか。もちろんその逆(2013年型車)を利用して旧コースを走ることもできる。

 最初から数多くのデータが用意されているが、F1 2013の発売日となる10月10日から、1990年代に活躍した名ドライバーやマシンを収録した「90年代クラシックパック」と、サンマリノグランプリで知られるイモラ、ポルトガルグランプリで知られるエストリルの2つのサーキットが収録された「クラシックトラックパック」が、有料(各1050円)ダウンロードコンテンツとして用意される。

●90年代クラシックパック

マシンオリジナルドライバーチームレジェンド
ウィリアムズ FW14B(1992年)ナイジェル・マンセルデビッド・クルサード
ウィリアムズ FW18(1996年)デイモン・ヒルジャック・ビルヌーブ
ウィリアムズ FW21(1999年)ラルフ・シューマッハアラン・プロスト
フェラーリ F92A(1992年)ジャン・アレジイワン・カペリ
フェラーリ F310(1996年)ミハエル・シューマッハゲルハルト・ベルガー
フェラーリ F399(1999年)エディ・アーバインジョディ・シェクター

 それぞれの細かな説明は省くが、こちらも古くからのF1ファンはもちろん、1990年代からF1を見始めた人にとっても興味あるマシンやドライバー名が並んでいるのではないだろうか。サーキットに関しても、数々の名勝負が繰り広げられ、チャレンジする楽しさにあふれているだろう。

ウィリアムズ FW14B(1992年)。レッド5のゼッケンを付けたナイジェル・マンセルの活躍が強く印象に残る名車。オリジナルドライバーとして、ナイジェル・マンセルも用意される
フェラーリ F310(1996年)。ミハエル・シューマッハがベネトンからフェラーリに移籍した初年度のマシン。90年代クラシックパックに含まれるデイモン・ヒルやジャック・ビルヌーブのウィリアムズ FW18(1996年)とチャンピオン争いをした

 そのほか、今回は体験していないが、クルマゲーのお約束である対戦モードも用意されている。「マルチプレイヤーモード」では、画面を上下分割した2人での対戦や最大16人でのオンライン対戦もでき、全世界のプレイヤーと実際にレースを楽しめる。また、実際にF1ドライバーならば経験し得るシチュエーションで目標にチャレンジする「シナリオモード」も用意され、ボリューム満点だ。

F1 2013は単なるクルマゲーではなく、F1マニアのための総合コンテンツだ!!

 以上のように、F1 2013はクルマゲーの王者格のゲームとして、2013年のF1シーンを車両の面でも、サーキットの面でも忠実に再現しており、実際にサーキットを走るような感覚でプレイすることができる。ゲームコンソールに適合するフィードバック機能付きのステアリングデバイスを入手すれば、F1マシンを高いリアリティでドライブできる。

 そして、F1マニアにとって重要なのはそうしたシミュレータとしての側面だけでなく、ヤングドライバーになった気持ちでゲームを勉強でき、F1ドライバーとして成長していけるよう配慮されていることだろう。オールドファンにとってはF1 CLASSICSモードもあり、伝説のチャンピオンになってプレイするのもよし、そして旧車に乗って現代のサーキットを走るもよし、楽しみ方はいろいろ考えられる。

 F1 2013は単なるクルマゲーを超えた、F1マニアならではの楽しみ方を見いだせる“F1マニアのための総合コンテンツ”だと言ってよいだろう。グルマゲー好きの人はもちろん、クルマゲーにはあまり興味がなかったというF1マニアの皆さんにも、ぜひ1度遊んでいただきたいゲームだ。

オールドサーキットの再現具合に感心する筆者。初心者にも配慮されているゲームだが、F1に詳しければ詳しいほど深い楽しみを得られるゲームと言えるだろう

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笠原一輝

Photo:高橋 学