オグたん式「F1の読み方」

【F1日本GP開幕】日本GPの見どころ

 F1日本GPがいよいよ今週末に迫ってきた。

 グランプリが近づくと、「今回の見どころは?」という質問をよくいただく。そして、そのなかで「これだけベッテルが強いと、見どころをあげるのは難しいですよね」と言われる。これは、「見どころは?」という質問に筆者が言葉に詰まってしまったのを受けて、気遣いをしてくださった親切な言葉だった。でも、筆者がすぐに答えられなかったのは、「どこから挙げたらよいのだろう」と、たくさんの選択肢が頭のなかで巡ってしまったからだった。

ベッテル+レッドブルがどこまで速さと強さを見せるか?

 シーズン後半に入って、ベッテルとレッドブルの速さが際立っているのは、皆さんもご存じのとおり。ベルギーGP以降4連勝。とにかく別格の速さだ。しかも、ベッテルは鈴鹿を得意としていて、2009年、2010年、2012年に優勝している。

 現在のチャンピオンシップポイントでは、ベッテルが272点でトップ。アロンソが195点で2番手となっている。アロンソも残り5戦でチャンピオンの可能性はあるが、それはアロンソがほぼ全勝、ベッテルに無得点が続くというかなり非現実的な状況にならないと実現しない。むしろ、今回ベッテルが優勝して、もしもアロンソが9位以下になってしまうと、日本GPでベッテルの4年連続ワールドチャンピオン獲得が決定することになる。

 果たしてベッテルが鈴鹿で王座を確定するのか? それともライバルたちが一矢を報いるのか? まずこれは大きな見どころだろう。

 そして、これまで予選でも決勝でもとてつもない速さを見せてきたベッテルが、ここ鈴鹿でどこまで速く走るのかも注目だ。ベッテルは今年、鈴鹿での5連続ポールポジションがかかっている。また、2006年のQ2でミハエル・シューマッハーが出した1分28秒954の鈴鹿のコースレコードにどこまで迫るのか、それとも新記録を樹立するのかも楽しみなところ。

ライバルたちの戦いも注目

 鈴鹿を得意とするベッテルに対して、ライバルはどこまで戦えるのか? どのように戦うのか? も見どころだ。

 アロンソはきわめて厳しい戦いが強いられるだろう。鈴鹿のコースが求める空力特性は韓国GPのものに近く、直前週の韓国GPでのレッドブルとフェラーリのマシンの性能差ははっきりしていた。後半戦でずっと性能差を埋められなかったことや、今回が2週連続開催なのもあって、今回のフェラーリには劇的な改善は不可能だろう。ただ、アロンソはレース巧者なので、どこまでベッテル+レッドブルに迫れるかは必見だ。持ち前の速さで先行逃げ切りが得意なベッテルと、巧みな走りと臨機応変な戦い方で活路を見出そうとするアロンソの戦いは、好対照でとても興味深い。

 予選ではメルセデス勢も好調で、特にハミルトンは高い集中力で速さを見せている。この鈴鹿でメルセデス勢がどこまで行くかも楽しみだ。

 ロータスも気になるところである。ロータスのマシンはコーナリングを得意とし、コーナーが連続する鈴鹿のコースをよい流れで走れれば、予選でも決勝でもよいポジションにきそうだ。ライコネンの巧さはもちろんのこと、シーズン後半に入ってグロジャンも予選で速くなり、決勝でも安定したレース展開をしている。

マーク・ウェバー、最後の日本GP

 ウェバーはすでに今年いっぱいでF1を去ることを発表。今年が最後のF1日本GPとなる。なかなか日本GPでは勝てず、2010年の2位が最上位。韓国GPでは10グリッド降格ペナルティとレース中の接触からの車両火災と踏んだり蹴ったりの状況だったが、本来の速さと巧さが、このドライバーの高い技量が問われる鈴鹿で開花するところも見てみたい。

それぞれのランクで接戦

 上位チームの動きだけでなく、レースでのトップ10入りを目指す中団グループと、その直下で少しでも上を目指す第3グループの戦いは予選でも決勝でも激しく、そして面白い。

 マクラーレンは今年のマシンで苦しんでいたが、少しずつ成績を上げてきている。バトンは2011年の鈴鹿ウィナーであり、優勝は難しくとも、どこまで善戦して上位に食い込んでくるだろうか? ペレスの思い切りのよい走りも、うまくはまれば刺激的なものになるだろう。

 また、マクラーレン、フォースインディア、ザウバー、トロロッソの戦いも激しく興味深い。とくにザウバーはマシンが終盤にきてややよくなっていて、ヒュルケンベルクがここへきて速さを発揮している。グティエレスも成績を上げている。

 ウィリアムズ、マルシャ、ケーターハムの戦いも興味深い。ここは、1ポイントあるいはより上位でフィニッシュすることが極めて重要となっている。ウィリアムズとしてはなんとか結果を出して逃げ切りたいところ。歴史の浅いマルシャ、ケーターハムはウィリアムズを抜ければ大成果となる。とにかくこの3チームは、ランキング最下位を逃れ、来年の財務状況をすこしでも楽にするためにも、鈴鹿は重要な戦いとなる。

日本人ドライバー不在でも

 今年の日本GPは2000年、2001年以来の日本人ドライバーなしの予選、決勝になってしまいそうだ。だが、直前になって佐藤公哉がザウバーのリザーブドライバーに指名された。また、スクーデリア・フェラーリのドライバーとして小林可夢偉も鈴鹿サーキットにやってくる。

 佐藤はF1進出を、小林はF1復帰の思いを持っての鈴鹿入りとなる。日本人F1ドライバーはここで途絶えたわけではない。小林は鈴鹿サーキットで土曜日に行われる前夜祭にも参加し、持ち前の巧みなトークでも楽しませてくれるだろう。

イベントやデモランもいっぱい

 日本GPは場内イベントや貴重な車両の展示やデモランもいっぱいで、これも見どころだ。

 今年は、鈴鹿でのF1日本GP開催が25回目という記念の年であり、デモランも豪華。中嶋悟、一貴、大祐の親子による、中嶋悟が乗ったロータス、ティレルのF1マシンの親子走行もある。また、伊沢拓也もマクラーレンMP4/6で走行する。

 日曜日の昼に行われる日本GP伝統のヒストリックカーによるドライバーズパレードも今年はさらに充実し、そのうち2台は開催期間中にグランプリスクエアに展示もされる。

 今年はイベントもかなり増えている。なかでも親子向けのイベントがより増えて、レーシングシアター前ではコチラレーシングのF1ピットという親子向けの施設ができ、タイヤ交換の体験ができるほか、筆者もレーシングカーの仕組みについて説明させていただく。

 25回目の鈴鹿でのF1日本GPは本当に見どころ満載である。

もう1つ大きなレースが

 F1日本GPの翌週は、富士スピードウェイでFIA WEC(世界耐久選手権)富士6時間耐久レースが開催される。こちらは、プロトタイプカーとGTカーのバラエティに富んだ耐久レース。

 プロトタイプカーのLMP1クラスでは、ディーゼルターボ+機械式ハイブリッドのアウディと、ガソリンエンジン+キャパシタ式ハイブリッドのトヨタの戦いとなる。トヨタは後半戦に入って速さを増してきている上に、富士ではル・マン24時間以来の2台体制としてアウディへ反撃をしようとしている。一方、連戦連勝のアウディは完全制覇に向けた戦いをしてくるだろう。

 LMP2クラスでは、中野信治、井原慶子に加えて、松田次生、小泉洋司、平中克幸、植田正幸が参戦。GTプロクラスでは、小林可夢偉がフェラーリのワークスドライバーとして富士を走ることになる。

 LMP1のアウディとトヨタのマシンは、ハイブリッド技術ではF1をしのぐ先進性を誇る。またGTクラスでは、フェラーリ、ポルシェ、アストンマーティンらが激しく覇を争っている。6時間という長いレースだが、随所で激しい競り合いがある上、多種多様なマシンとドライバーが入り乱れて走ることで劇的な展開もありうる。とても面白いレースである。

 パドックパスもチケットも世界選手権戦ながらお手頃な値段で、パドックでドライバーとふれあいやすいなど、とてもフレンドリーでのんびりしているところもWECの楽しさの一部である。

 F1もよし、WECもよし。しかも、その間の10月13日、14日にはお台場でモータースポーツ・ジャパンも開催され、さまざまなレーシングカーやレーシングバイクの魅力にお手軽に接することもできる。そして10月26日にはツインリンクもてぎで2輪の世界選手権戦であるMoto GPも開催される。

 4輪でも2輪でも、大きなイベントが多数ある10月。秋空のもと、速さ、音、空気の振動などをライブで楽しんでみてはいかがだろうか。

小倉茂徳