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奥川浩彦の「撮ってみましたF1日本グランプリ 2014」(後編)

 Car Watchの創刊から毎年お届けしている「撮ってみましたF1日本グランプリ」。前編(http://car.watch.impress.co.jp/docs/news/20141115_676199.html)ではF1日本グランプリの金曜日までを紹介したので、今回は土曜日、日曜日の様子をお伝えしよう。

 土曜日のセッションは11時スタート。取材受け付けなどは前日に済ませているので9時半ぐらいにサーキットに到着すれば大丈夫だ。7時半に同行する友人2人と集合し、この日はステップワゴンからヴェゼルに乗り替えて出発。したものの、数分走ったところでETCカードをステップワゴンに残したままだったこと気付く。仕方なく自宅に戻ってETCカードを回収して再スタート。

 出発でつまずいたものの、8時7分にはみえ川越IC(インターチェンジ)を降り、特に渋滞もなく国道23号で鈴鹿に向かう。前日、メディアセンターでほかのカメラマンと話したときに、「日曜はサーキットからクルマを出すのは大変だけど、金曜、土曜はそれほど混まない」と言われたので、この日は道伯町の駐車場で友人たちを降ろしたあと、筆者だけクルマでサーキット入りすることにした。

鈴鹿サーキット周辺には民間駐車場が点在している

 ゆうえんちの正面ゲート方面は混んでいたので、稲生高校の方からサーキット道路に入ってスポーツゲートに移動。関係者駐車場にクルマを駐めた。例年はF1開催時に通らないルートを走ってみたら、そこかしこで駐車場の呼び込みをしていた。「ここなら1000円なのか」などと思いつつ、土曜の往復と翌日の朝に駐車場の値段をチラッとスマホで撮影しておいた。

A サーキット道路沿線(土曜日撮影)
B サーキット道路沿線(土曜日撮影)
C 稲生高校北側。チェックしたなかではここが最安値(土曜日撮影)
D 道伯町付近(日曜日撮影)
E 道伯町付近(日曜日撮影)

 遠い昔は駐車場で苦労した記憶があるが、最近は安定状態なので駐車場のことは気にしていなかった。思い返すとかなり昔に、Car Watchでレースリポートやインタビューを書いている笠原氏からF1開催時に電話をもらい「駐車場はどのあたりがよいですか」と聞かれたことがあった。今年もケータイWatchの編集長がプライベートでF1観戦するとのことで、抜け道と駐車場のことを聞かれた。今でも駐車場のことを気にする人は多いのかもしれない。

 F1観戦をしている人はご存じだと思うが、観戦チケットと同時に駐車券を購入することもできる。例えばB2席のチケットは5万8700円。これに7P(舗装)駐車場をセットすると+1万300円。7P(未舗装)駐車場をセットすると+8800円。南コース駐車場をセットすると+7200円といった感じだ。これ以外にも、みそのモータープール駐車場では予約なしの当日受け入れも行っている。随時更新の「鈴鹿サーキット駐車場空き情報」ではレースに関係なく空き情報を確認ができるので、国内レースなどの観戦にも役立つ。

駐車券別観戦料金一覧
http://www.suzukacircuit.jp/ticket_s/2014/f1/fee/index.html

F1日本グランプリ駐車場情報
http://www.suzukacircuit.jp/f1/parking/

鈴鹿サーキット駐車場空き情報(随時更新)
http://app.mobilityland.co.jp/suzuka_parking/

 これらは公式駐車場を呼べるもので、なかにはチケットの発売とほぼ同時に完売になる駐車場もある。でも心配は要らない。SUPER GTなどが開催される国内のサーキットのほとんどは山奥に立地しているが、鈴鹿サーキットだけは市街地にある。歩いてコンビニまで行ける唯一のサーキットなのだ。そんな立地だけに、周辺には民間の駐車場が多数点在している。価格は場所によるが、1日1000円から3000円と公式と大きな差は感じられない。

 下の地図は、鈴鹿サーキットのアクセスマップ(PDF)からサーキット付近を抜き出したものだ。サーキット周辺には「他社様駐車場(青四角)」や「他社様駐車場の多い所(薄オレンジ)」という表示で民間駐車場の場所が描かれている。ざっくり言うと、平田町方面からサーキットホテルの前に通じる道、国道23号・白子駅方面からグランドスタンド裏に通じるサーキット道路、逆バンクゲートから下ったみその方面なら駐車場に困ることはないだろう。

地図上のA~Eは駐車場の写真を撮った場所

 看板の写真を撮った駐車場の場所を地図上に示した(A~E)。価格は日々変化したりしているが、相場は1日2000円~3000円といったところ。多くの駐車場が3日間通して出入り自由としているので、近隣のホテルに泊まり、民間駐車場を利用してサーキット観戦することも可能だ。

鈴鹿サーキットアクセスマップ(PDF)
http://www.suzukacircuit.jp/f1/access/image/map01.pdf

FP3は立体交差、デグナー

 さて、駐車場からサーキット内に話を戻してFP3。FP3のセッションは1時間と、前日より短くなる。大きな移動は難しいので、立体交差とデグナーアウト側で撮影することにした。最初は立体交差のトンネル下でデグナー2つ目から立ち上がってくるマシンを撮影。数年前にここでF1を撮影したときはトンネル内の反響でもの凄い音だったが、今年は普通。国内レースと大差ないという感じだ。時代の流れで仕方ないことだが、V型12気筒エンジンのサウンドを知っているオッサンとしては少々寂しい。

 ここは至近距離の撮影でフォーカスに厳しいポイント。最も性能が高いセンターのAFポイントを使用してヘルメットに追従させる。シャッター速度はタイヤの回転が止まらないように1/320秒。前編の130Rの進入と同じように、AFポイント(左側)と原版(右側)を並べて見ていただこう。

 AFポイントはやや右側で撮り始め、3枚目、4枚目と追従が遅れて右側にズレていく。5枚目で修正に入るが、6枚目は修正しすぎて左側にズレる。7枚目はそのままやや左、8枚目はヘルメットをとらえている。原版を見ると1枚目は後ピン、2枚目は前ピン、3枚目で近付き、4枚目のAFは○。5枚目はAFポイントはヘルメットをとらえているが右から左へとレンズを振ったせいでブレている。6枚目、7枚目もAFは○。8枚目はやや前ピンとなった。

AFポイントはやや右
フォーカスは後ピン
AFポイントはやや右
前ピンとなる
AFポイントが右にズレ始めた
AFが合ってきた
かなり右側にズレてきた
これならAFは○
レンズの振りを速くして左に修正を始めるが……
レンズを振ったのでブレた
修正しすぎてやや左側にズレる
これもAFは○
やや左のまま
これもAFは○
ヘルメットをとらえた
やや前ピンとなった

 かなり小さめにマシンが写った1枚目でも、フォトギャラリーで使用する1920×1080ピクセルならトリミングして画面いっぱいになる。フォーカスに○が付けられるのは3枚だが、ブレた5枚目以外はレタッチ・トリミングをすればフルHDなら使える画像だと思われる。AFポイントのセンターとヘルメットを合わせたため上の空間が空いてしまっているので、実際に使用する際は上部をトリミングする。

 こうして見ていただくと分かると思うが、AF性能のテストは撮影者の技量によるところが大きい。AFポイントを完璧に合わせれば合焦する確率はもっと上がるはずだ。とは言え、このポイントは使える画像を稼ぎやすい。フォトギャラリーに全ドライバーを掲載するときに「○○の枚数が少ない」という場合に助かる撮影ポイントだ。

 次は撮影ポイントをヘアピン側に移し、トンネルを通過するマシンを撮影。マニュアル露出に変更してマシンをアンダー気味、背景はオーバー気味になるよう撮影した。

マニュアル露出に変更して撮影。フォトギャラリーに掲載した画像

 立体交差をくぐり抜け、デグナー側に移動。次はデグナー2つ目を抜けるマシンの撮影だ。最初はシャッター速度1/320秒で普通に撮影。その後はシャッター速度1/30秒に落としてヘルメットに芯がくるように撮影。こうすれば同じ場所、同じレンズでもバリエーションを増やすことができる。

ハミルトンはクリッピング付近
アロンソは立ち上がり
マッサはスローシャッター

 撮影ポイントをコースを少しさかのぼる方向に移し、次はデグナー1つ目から2つ目に向かうマシンを撮影。これはコンデジでも撮れそうな絵だ。

シャッターボタンを押せば写るというレベルだが、バリエーションは1つ増える
ボツにした画像。フォトギャラリーに掲載する画像は誰でもよかったが、ドライバーごとの枚数の都合でボッタスを選んだ

 さらにデグナー1つ目側に移動してヘアピンに向かうマシンを真後ろから撮ったが、あとからレンズを代えて再撮影したのでこれらはボツになった。ほぼ同じ場所でデグナー2つ目に入るマシンをシャッター速度1/125秒で流し撮り。セッションが残り10分となったので先を急ごうとした。

普段はこのフレーミングで撮るが、今回はボツとした
デグナー2つ目に入るマシンをシャッター速度1/125秒で流し撮り

 いつもと景色が違う。立体交差の橋がピレリの看板で覆われてヘアピン方向の景色がほかのレースと違うことに気付き、レンズの焦点距離を短くして撮り直すことにした。

普段は立体交差のコンクリートがむき出し(WTCCにて撮影)
ピレリ看板が入るように撮り直した

 残る時間は少なくなったが、大きく移動してデグナー1つ目のクリッピングポイントと観覧車が重なる位置から撮影。セッションの残り時間は4分ほど。縦位置で数台、時間にして1分ほど撮り、さらにデグナー1つ目側に移動。デグナー1つ目と2つ目を横から流し撮りできる位置で撮影を開始するとチェッカーが振られた。インラップのマシンを数台撮ってセッション終了。後半はバタバタしたが、デグナー1つ目のハミルトンとアロンソを別々にカウントすると絵のバリエーションは10枚。1時間のセッションなのでまずまずの成果だろう。

観覧車をバックに縦位置で撮影
最後はシャッター速度1/125秒で数台のマシンを流し撮りをしてセッション終了

ピットウォーク

 FP3のセッションが終わり、メディアバスでパドックに戻るとピットウォークが始まっていた。チラッと撮影してきたので掲載しておこう。

ゲストで来場していたナイジェル・マンセル
エディ・ジョーダン(左)とデビッド・クルサード(右)
何度も見かけたジャック・ヴィルヌーヴはいつも笑顔いっぱい
ピットレーンに置かれたタイヤ交換システム。メルセデスは根本がお洒落
フェラーリはマシンをまたぐアームが湾曲していてコスト高そう
異彩を放つマルシャのタイヤ交換システム。1つの根本からたこ足状にアームが伸びている。コストパフォーマンスはよさそう
形状が異なるケータハムの2種類のフロントウイング
こちらはロータスのフロントウイング
ちょっと珍しい(?)女性メカニックの作業風景
F1ピットウォーク名物、ロータスのステアリング
マクラーレンのピットウォールスタンド
こちらはフェラーリ
ピット出口にはロレックス

予選はシケイン、逆バンクで撮影

 予選は約1時間だが、Q1、Q2、Q3と3つに分かれ、それぞれ18分、15分、12分となっている。実質は45分とチョット。インターバルは実質ほんの数分なので大きな移動はできない。走行台数も22台、16台、10台と減っていく。

 撮影場所の候補は東コースのイン側、東コースのアウト側、シケインのイン側、スプーンの4個所。残りのセッションはこの予選と日曜日の決勝の2回。東コースは決勝である程度撮れるので、シケインとスプーンの二者択一。全体のバランスを考えてシケインのイン側から撮影をすることにした。比較的近い逆バンクのイン側まで移動できれば御の字だろう。

 Q1はシケイン1つ目から2つ目に向かってくるマシンを正面から撮影開始。最終コーナー方向に数mずつ移動しながら撮影ポジションを変え、シャッター速度も少しずつ落としていく。最終コーナー側は下り坂なので、シケイン2つ目に対して撮影位置も徐々に低くなっていく。

 AFポイントはすべてセンター。可夢偉はシャッター速度1/320秒でほぼ正面から撮影。少し最終コーナー側に下りて、ベッテルを縁石でタイヤが浮いたところを1/125秒で撮影。右リアタイヤの踏ん張り具合がなかなかよい感じだ。さらに下ってクビアトも1/125秒で撮影。さらにさらに下ってスーティルはシャッター速度1/30秒で撮影した。実際に並べて見ると撮影位置が少しずつ低くなっていくことが分かる。

可夢偉はシャッター速度1/320秒で撮影
レタッチしてフォトギャラリーに掲載した画像
ベッテルはシャッター速度1/125秒で撮影
レタッチしてフォトギャラリーに掲載した画像
クビアトもシャッター速度1/125秒で撮影
レタッチしてフォトギャラリーに掲載した画像
スーティルはシャッター速度1/30秒で撮影
レタッチしてフォトギャラリーに掲載した画像

 Q2は少しシケインの奥に撮影位置をずらし、シケイン2つ目を抜けるマシンを満席のスタンドが背景に入るようにシャッター速度1/40秒で流し撮り。バリエーションというほどではないが、手前のタイヤバリアが入るバージョンと入らないバージョンをAFポイントとズーム位置を変更して撮影した。

手前のタイヤバリアを入れて撮影
タイヤバリアを入れずに撮影

 次に、シケインから立ち上がるマシンを背後から撮影。真後ろからの撮影を試みたが、その先に止まっているクレーン車が邪魔になった。真後ろからの撮影は諦め、シケイン立ち上がりの縁石が手前に入る位置で撮影をして予選Q2の撮影が終了した。

背景に写り込むクレーンが邪魔
撮影位置を微調整、手前に縁石を入れて斜め後ろから撮影した

 シケインでの撮影を終え、予選Q3は逆バンクのイン側に向かうが、インターバル中だけでは移動できなかった。ガードレールとフェンスのあいだに入ると、除草されていなくて一瞬ためらうが、時間的にほかの選択肢はない。最初のアタックでは普通にシャッター速度1/100秒で流し撮り。ツーアタック目は広角気味にズームし、シャッター速度1/30秒で撮影した。予選セッションも8枚ほどバリエーションを稼いで土曜日の撮影は終了となった。

いきなり雑草が立ちはだかる
ワンアタック目はシャッター速度1/100秒で撮影
ツーアタック目はシャッター速度1/30秒で撮影

 この日もメディアセンターに機材を置き、交通センターからクルマでサーキット道路に出た。アドバイスどおり、土曜日は大した渋滞はなし。サーキット道路を南下して、稲生高校側からF1期間中はバス専用となっている中勢バイパスをくぐって道伯町の駐車場に移動する。駐車場でご主人の奥さんと長話し。この日はA氏と2人でヴェゼルに乗り、名古屋まで戻った。

日曜日は台風が接近

この日、日本中で1番カッパを着てる人が多かったのは多分鈴鹿サーキット

 日曜日の天気予報は通り雨。台風が徐々に近付き、レース開催が危ぶまれる状況だ。この日はレース後に自転車2台を回収して帰るため、再び息子に譲ったステップワゴンを使用する。ETCカードも忘れず乗せ替えた。

 決勝は15時スタートだが、ドライバーズパレードが13時30分から行われる。お昼に鈴鹿入りすれば大丈夫なので10時前に名古屋を出た。特に渋滞もなく鈴鹿市内に入り、マックスバリュで雨対策として養生テープを購入してから駐車場に移動した。

 下半身はカッパ、上半身はポンチョを着込んで自転車で正面ゲートまで行き、そこから徒歩で入場。ゆうえんちからサーキットに向かう観客のほとんどがカッパやポンチョを着用していて「さすが鈴鹿の観客」と思う光景。普通の街中では見られないこのシーンに「今、日本中で1番カッパを着てる人が多いのは鈴鹿だな」とつぶやいた。GPスクエアでケータイWatchの編集長としばし雑談。2人の思いはただ1つ「無事にレースができますように」ということ。

ドライバーズパレード

この雨はドライバーズパレードには厳しい

 毎年、筆者の撮影の鬼門はドライバーズパレード。納得できる絵が撮れたことがない。しかも、今年は雨が降って条件はかなり悪い。ドライバーズパレード自体は天候の影響もあって無理をせず、ドライバーがコースを1周するあいだにピットでタイヤ交換の練習を撮影した。

まずは前から撮影
次は後から撮影

 パレードを済ませたドライバーたちが戻ってきた。例年はほかのカメラマンと同様に乗車中のドライバーやドライバーがクルマから降りたところに寄って撮ろうとするところだが、今年は大幅に作戦変更。コースからピットロードに戻って来るところを待ち伏せするように撮影した。これは大正解で、例年よりドライバーの顔を撮れる率が高まった感じだ。

雨の2014年決勝

 いよいよ決勝だが、決勝レースが予定どおり行われるかは終わってみるまで分からない天候になった。マックスバリュで買った養生テープを使い、カメラのレインカバーをレンズフードからズレないように補強。決勝の撮影ルートは、コースインラップでS字のイン側、スタートはS字進入を正面から撮影。その後は2コーナーのイン側、ストレートエンドのイン側とインフィールドを先に撮影する。そこからS字にあるトンネルを抜けてアウト側(観客席側)に移動。逆バンクからS字、2コーナーと移動しながら撮ることにした。

 マシンがグリッドに向かうコースインラップの時点で雨は小康状態。マシンの後方に水煙が上がることを期待してフレーミングしたが、当てが外れた。最終的にリアをカットするようにトリミングしてフォトギャラリーに掲載している。

水煙を期待してフレーミングしたが期待外れだった
トリミングしてフォトギャラリーに掲載した画像

 スタートの撮影ポイントは、2コーナーからS字に向かって真っ直ぐ近付いてくるマシンを正面から撮影できる位置。ご存じのように雨のため、セーフティーカー(SC)先導でスタートし、わずか2周で赤旗中断となった。再スタートもSC先導となったのでマーシャルカーも撮影。すぐにアロンソが電気系のトラブルでリタイヤしたが、ウェットコンディションで走るアロンソは貴重だと思ってリスタート直後のアロンソを撮っていたので、その画像をフォトギャラリーに掲載した。SCランが長引いたのでS字を抜けるマシンを背後から撮影しながら実際にレースが始まるのを待った。

スタートはS字進入で撮影。雨のためSC先導となった
SC先導は10周目まで続いた
ウェットコンディションで走るアロンソは貴重
SCランの間にS字を抜けるマシンを後方から撮影

 雨が小康状態になって10周目からレースが再開。レーシングスピードになり、後方が見えないほどの水煙を巻き上げて近付くロズベルグを撮影。SC導入で実質のレース周回数が減ったので、2周だけ撮影して2コーナーに向かった。

水煙を巻き上げて近付くロズベルグ

 2コーナーのイン側は、F1以外のレースでは激感エリアになっている場所の前にあるサービスロードで撮影した。最初は300mmのレンズで2コーナーを抜けるマシンを斜め前から撮影。これは難易度は低め。その次は2コーナーを背にしてS字へ向かうマシンを斜め後ろから撮影。こちらは難易度が高めになる。

 一般的に近付いてくるマシンはシャッターを切るまで助走区間があるのでフレーミングやフォーカシングは楽だが、背後から接近するマシンを後方から撮る場合、フレームに収まらないところから追い始めるのでフレーミング、追従ともに難しくなる。加えてAFの精度でも、近付いてくる被写体より離れていく被写体の方がピントが合わないことが多いような気がする。

 撮影位置を2コーナースタンドの正面付近に変更。激感エリアに観客がいるときは邪魔にならないよう気を遣うが、この日は背後に誰もいないのでお気楽。まずは望遠ズームでシャッター速度1/100秒で流し撮り。続いて標準ズームにレンズ交換してスタンドを背景に入れ、シャッター速度1/30秒で撮影した。風雨が強いとレンズ交換をためらうが、このときは雨がほぼ止んでいた。

300mmのレンズで2コーナーを抜けるボッタスを斜め前から撮影。これは難易度は低め
300mmのレンズでS字に向かうハミルトンを斜め後方から撮影。こちらは難易度は高め。もう少し水煙が欲しかった
望遠ズーム(焦点距離91mm)でシャッター速度1/100秒で撮影
標準ズーム(焦点距離38mm)でシャッター速度1/30秒で撮影

 コースイン側のサービスロードをストレートエンドのインフィールド側まで移動。レース再開前にスマホで見た雨雲レーダーは、スタート後に雨が降り出すと予想していたが一向に降る気配なし。水煙を巻き上げるマシンを撮りたかったが、すでにレコードラインには水がなく期待外れだった。

「満員のグランドスタンドをバックに水煙を巻き上げ走るF1マシン」という想定だったが断念。ところが、たまたまライコネンにラインを譲ったエリクソンが水の残ったところを走ってくれたので期待通りの水煙が上がった。メルセデス同士のトップ争いも撮影。A1席の前を走り抜けるベッテルをシャッター速度1/80秒で背景を流して撮り、インフィールド側の撮影は終了した。

レコードラインを走るライコネンのマシンからは水煙が上がらないが、エリクソンのマシンからは期待通りの水煙が巻き上がった
A1席の観客をバックにシャッター速度1/80秒で撮影

 S字の下をくぐるトンネルを抜けて東コースの観客席側に移動するため、ここまで来たルートを戻るようにコースに沿って1コーナー~2コーナー~S字と移動することにした。このころ、コースではメルセデス同士のトップ争いがヒートアップ。少し前にハミルトンが1コーナーでオーバーランしたのも撮影途中で振り向いて特等席で確認し、歩き出した直後にアウト側から大外刈りでオーバーテイクするシーンはすぐ横で観戦させてもらった。

 オーバーテイクの瞬間、ブレーキローターが赤熱するのが見えた。え、そうなの……と立ち止まってしばらく観戦していたが、その後は2度と見ることができなかった。帰宅後に録画した映像を見ると、オーバーテイクシーンでは赤熱していないが、ブレーキングが遅れたオーバーランの周にハミルトンのローターが赤熱しているところが映っていた。

 ちなみに、2コーナーまで戻ったところで望遠レンズでコースを挟んだB2席スタンドの友人2人を確認。手を振ってみたが、レース中でもあり気付く気配はなかった。

 S字のトンネルを抜けて逆バンクのアウト側まで移動し、撮影を再開。まずはS字から逆バンクに進入してくるマシンを撮影した。さらにダンロップ側に移動してクリッピング手前と立ち上がりをスローシャッターで撮影。逆バンクで撮った画像のExifを再確認すると、進入側も立ち上がり側も撮影時間は4分ほど。2ラップだけ撮って移動している。スタートからSCランが10周も続いたのでジックリ撮る時間がなくなっていた。このあたりは仕事で撮る辛さだ。

S字を登って逆バンクに向かうヒュルケンベルグ
逆バンクに下ってくるリカルド
ハミルトンはクリッピング手前と立ち上がりをシャッター速度1/30秒で撮影

 このころから雨足が徐々に強くなってきた。逆バンクからS字2つ目の左ターンまで戻り、サービスロードから観客席手前の土手に上がった。この場所はサービスロードとコースが近すぎるので、報道エリアより観客席の方が撮影しやすい。少しでも観客席に近い位置で撮るため土手に上がった。

 このあたりでスーティルがダンロップの先でコースアウト。大型ビジョンにスロー映像が映し出され、大きな事故ではないことが分かった。撮影を再開してしばらくするとSCが導入され、何台かがピットイン。インターミディエイトとエクストリームウェットにタイヤ選択が分かれ、再スタート後の天候によっては大逆転の可能性が出てきた。

 このとき、おそらくサーキットにいた多くの人がビアンキがクラッシュしたことを知らなかった。帰宅後に録画を見ても、レース終了まで解説陣もそのことに気付いていなかった。

 話題をを撮影に戻そう。時刻は17時近くになり、天候の影響で周囲はかなり暗め。シャッター速度を1/125秒に設定するためISO感度を800に上げた。SC導入でスロー走行するマシンを土手の上から撮影し、土手を降りてS字を抜けるマシンを斜め前から流し撮り。1ラップ撮ったところで赤旗が出た。雨は降っていたがレースを中断するほどとは思えなかった。タイヤ選択が分かれ、これからレースが面白くなると思った矢先の赤旗だ。残り周回数から考えるとこのままレース成立となりそうだったので、トンネル下で雨宿りをしているうちにやはりレース終了となった。

ISO感度を800に上げ、土手の上からシャッター速度1/125秒で撮影
サービスロードに戻って1ラップだけシャッター速度1/125秒で撮影

 あとから考えると重大な事故によるレース終了は当然の判断なのだが、事故の事実を知らない状況では不可解な赤旗終了というのがこのときの印象だった。予定ではこのあとにS字1つ目、2コーナーとS字の間の直線、2コーナーと撮影するつもりだったので、レース撮影という面では消化不良となった。スタートから10周がSCラン、46周で赤旗終了ということは、53周予定の決勝が実質35周ほどで終わってしまったので残念な思いで撮影を終了した。

 3日間の撮影でバリエーションは54枚とまずまずの枚数になった。フォトギャラリーに掲載した画像は63枚なので、9枚は同じ場所で撮影した異なるマシンの画像を重複掲載している計算。観客席で撮った画像はシケインの4枚となった。ちなみに、WEC(世界耐久選手権)やSUPER GT最終戦のフォトギャラリーにも観客席で撮った画像が掲載されている。特にSUPER GT最終戦のフォトギャラリーは、78枚中23枚が観客席で撮った画像だ。

2014 F1日本グランプリ フォトギャラリー
http://car.watch.impress.co.jp/docs/photogallery/20141009_670636.html

2014 FIA 世界耐久選手権 第5戦「富士6時間耐久レース」フォトギャラリー
http://car.watch.impress.co.jp/docs/photogallery/20141015_671344.html

2014 SUPER GT最終戦「もてぎGT250kmレース」フォトギャラリー
http://car.watch.impress.co.jp/docs/photogallery/20141119_676832.html

 S字から歩いてパドックに戻り、キヤノンのプロサービスでカメラをメンテナンスしてもらった。機材を撤収してメディアセンターを出るタイミングでI氏に電話すると、すでに駐車場を出てポルシェを運転中とのことだった。やはり観客席からすぐにサーキットを脱出すると早い。

 自転車でパドックトンネル、GPスクエア、ゆうえんちを抜けて正面ゲートから駐車場に移動。自転車2台をステップワゴンに積んで帰路につくころには18時を回っていた。サーキット周辺はそこそこ渋滞していたが、いつもどおり右へ左へ逃げて国道23号に合流。四日市を過ぎたころに先行するI氏に電話してみると、伊勢湾岸道で事故渋滞に巻き込まれたとのこと。みえ川越ICに着くころには湾岸弥富ICからみえ川越ICまで10kmも渋滞していた。

 2013年はA氏と川崎まで帰ったが、今年は名古屋の自宅に寄るので伊勢湾岸を避け、そのまま国道23号を直進。20時ごろに名古屋の自宅に到着した。A氏は自分のクルマで帰宅し、筆者は風呂に入ってからF1の中継を見て、21時半ごろヴェセルで川崎に向かった。

 東名高速は豪雨。後方から台風が接近しているので、いつ通行止めになってもおかしくない状況だ。途中でケータイWatchの編集長に電話すると150kmほど前を走行していたが、「雨が凄くて怖い」とのこと。24時前に雨が酷くなり、新東名の駿河沼津SA(サービスエリア)に入るとI氏からのメールを受信。昭島の自宅に着いたと連絡だが、やはり「ずっと豪雨で危なかった」とメールの文面に書かれていた。

 クルマから降りる気がしないほどの雨だったので、メールの返信をして雨雲レーダーを確認。待っていても止みそうな気配はなく、ここでのんびりしていると通行止めになると感じて運転を再開。日付変わって1時半ごろに川崎に到着した。

ビアンキ選手の事故について

 筆者がビアンキ選手の事故を知ったのは翌日の月曜日だった。この事故についても触れておこう。事故が起こったのは不幸が重なった結果で仕方がないことだと思っている。色々な見方はあると思うが、現行のレース運営では避けられなかったと感じる。

 レース中にアクシデントが発生すればドライバーの救助、マシンの撤去をしなければならない。通常はその区間だけ黄旗が出されてマーシャルや作業車両がコースに入る。しかし、実際にはレースマシンは多少のペースダウンはすれど、レーシングスピードで走行しているのは事実だ。その都度SCランにすれば安全性は高まるが、あまり現実的ではないように思える。

 仮にレース途中でSCを導入した場合、トップのマシンをSCが抑えるまでの時間、SCの後方に隊列が追い付くまでの時間が必要になる。例えば今回のF1日本グランプリは、ウェットコンディションのためラップタイムは2分ほど。レース開始時のSCランのラップタイムは2分40秒ほどだ。もしトップのマシンが1コーナーを過ぎたときにSC導入となれば、SCがトップのマシンを抑えるのに2分ほど必要になる。そのトップの前を走るマシンがややペースを落とし、ラップタイム2分40秒の隊列に追い付くのに3~4周。隊列が整ってレーシングスピードで走るマシンがいなくなるまでは4~5周、10分ほど掛かることになる。その時間にマーシャルや作業車両がコースに入れないというのは非現実的だ。

 F1の翌週に開催されたWECでは「フルコースイエロー」というシステムが導入されている。実際にフリー走行でも決勝でもフルコースイエローになるシーンがあった。詳しい仕組みまでは理解していないが、フルコースイエローになるとその瞬間にコース上を走るすべてのマシンが80km/hに速度を落とす。マーシャルが作業を終えると解除され、また一斉にレーシングスピードで走り出すという仕組みだ。

 このシステムであればマーシャルや作業車両は短時間でコースに入ることができる。各車のギャップはそれほど変わらないので、SCランのようにそれまで築いたギャップを失うこともない。レース進行と安全性を両立する有効な手段だと思われる。

 筆者は30年以上サーキットやTVでレース観戦を続けている。そのあいだに何人かのドライバーが命を落としている。1983年の富士GC最終戦で高橋徹が亡くなったとき、実際にサーキットにいた1人だ。振り返ればサーキットもマシンも安全になり、昔よりは死亡事故は減ったと思う。しかし、改善の余地があることは今回のF1日本グランプリを見れば明らかだ。ドライバーの自己責任でペースダウンをするのではなく、システムとして強制的に速度コントロールをする仕組みを取り入れないと、今回のような事故を防ぐのは難しいだろう。

 F1ではいよいよ来シーズン、ホンダエンジンが復活する。復帰後すぐに大活躍できるほど甘い世界ではないと思いつつ、期待しているのが本音だ。2015年のF1日本グランプリにホンダエンジンが凱旋帰国するとき、多くのファンが鈴鹿サーキットのスタンドを埋め尽くす光景が見たいと願っている。

(奥川浩彦)