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奥川浩彦の「撮ってみましたF1日本グランプリ 2014」(前編)

 Car Watchの創刊から毎年お届けしている「撮ってみましたF1日本グランプリ」を今年もお届けする。時が経つのは早いもので、気付けば11月。2014年のF1日本グランプリから1カ月以上が経過してしまった。過去にこれほど遅くなったことはないなぁと過去記事を確認してみると、一昨年までは10月に掲載していたが、2013年の掲載日は11月7日(前編)と11月12日(後編)。今年はレース自体が2013年より1週早く開催されたことを考えると、かなり遅めの執筆となってしまった。

 遊んでいたわけではない。言い訳を並べると、F1日本グランプリのフォトギャラリーを終えたあと、F1の翌週は金曜日からWEC(世界耐久選手権)を取材した。WECのフォトギャラリーを終えるとWTCC(世界ツーリングカー選手権)のフォトコンテストの撮影ガイドが続き、それを終えるとEOS 7D Mark IIのレビュー用の撮影を行った。当初はWTCCの取材とフォトギャラリーを終えたら、この「撮ってみましたF1日本グランプリ」の執筆を予定していたが、EOS 7D Mark IIの発売日が前倒しになったため、順番を入れ替えてEOS 7D Mark IIのレビューを先に執筆。そもそも書くのが苦手で遅いという筆者の能力の問題と、それ以外の仕事や打合せなどもあり、やっとこの記事の執筆にたどり着いたら11月となっていたというわけだ。

2014 F1日本グランプリ フォトギャラリー
http://car.watch.impress.co.jp/docs/photogallery/20141009_670636.html
2014 FIA 世界耐久選手権 第5戦「富士6時間耐久レース」フォトギャラリー
http://car.watch.impress.co.jp/docs/photogallery/20141015_671344.html
「WTCC(世界ツーリングカー選手権)フォトコンテスト」撮影ガイド
http://car.watch.impress.co.jp/docs/special/20141022_672285.html
「2014 FIA 世界ツーリングカー選手権シリーズ JVCKENWOOD 日本ラウンド」フォトギャラリー
http://car.watch.impress.co.jp/docs/photogallery/20141029_673681.html
「EOS 7D Mark II」でモータースポーツを撮ってみた
http://car.watch.impress.co.jp/docs/special/20141107_675096.html

 過去の記事を読んでいる人はご存じだと思うが、この記事は筆者の私的な撮影記。さして役にも立たない個人のブログといった感じだが、お時間のある人はお付き合いをいただければ幸いだ。

通勤時間帯を避けて渋滞なしで鈴鹿到着

 2012年はサーキットイベントのつきものである渋滞を避ける抜け道情報、2013年はF1観戦に掛かるコストの紹介を意識して、記憶にないくらい久々の車中泊とスプーンカーブの撮影をテーマとした。だが、今年はバタバタしているうちにレース開催が近付き、特にテーマを考えることもなく鈴鹿入り。強いて言えば、2014年のテーマは駐車場とシケインの撮影だろうか。

 今年も観戦メンバーは、レギュラーと言える高校時代の同級生3人。友人I氏はクルマをRX-8から中古のポルシェに買い替えた以外は大きな変化はなし。友人A氏は横浜から名古屋(正しくはお隣の長久手)の実家に引っ越した。その影響で筆者は東京のお隣、川崎市から鈴鹿サーキットまでの往復を1人で運転することになった。その運転するクルマがステップワゴンからヴェゼルになったのも今年の変更点だ。

 筆者はステップワゴンの前がノア、その前にはパジェロと長年大きなクルマに乗ってきた。ヴェゼルに乗り替えたことで、これまで使ってきた自転車(ママチャリ)を積むことができなくなった。F1開催までに折りたたみ自転車、あるいは筆者が住んでいる坂道が多い百合ヶ丘でも使用できる電動折りたたみ自転車を購入するつもりだったが、気付いたときにはF1日本グランプリが直前に迫っており、購入する時間がなく断念。そこで名古屋までヴェゼルで移動し、金曜日は自転車2台(1台はA氏の分)を息子に譲ったステップワゴンで運び、土曜はヴェゼル、日曜は再びステップワゴンに自転車を乗せて名古屋の自宅に戻り、ヴェゼルで川崎まで帰る作戦とした。

 木曜日に名古屋へ移動。金曜日は例年だとA氏が始発電車で地下鉄・堀田駅に到着する6時過ぎにスタートしているのだが、今回はA氏がクルマで自転車を運んでくる都合もあり、6時前にスタートとなった。結果的にこの十数分の時間差が絶大だった。

 筆者が初めて鈴鹿サーキットでレースを観たのは、1983年の鈴鹿2&4。高橋徹がF2(現在のスーパーフォーミュラ)デビュー戦で表彰台に立ったレースだ。それ以来、30年以上鈴鹿サーキットに通っており、近年のルートは伊勢湾岸道・みえ川越IC(インターチェンジ)から国道23号を通るルートだ。

 2013年のETCの通行履歴を見ると、名古屋市内の名港潮見ICから伊勢湾岸道に乗った時間は6時27分で、今年は6時11分。みえ川越ICを降りた時間も6時40分から16分早い6時24分だった。金曜日は平日なので通勤時間帯になると渋滞に巻き込まれることが多い。

 昨年はみえ川越ICから一般道に入って、2kmほど進んだ富洲原橋を渡った先から渋滞が始まり、抜け道に逃げて四日市市内で国道23号に戻っている。それが16分早い今年は渋滞なし。国道23号から逸れることなく鈴鹿市内まで移動できた。来年以降に向け、「6時25分前後にみえ川越ICを通過する」というのが教訓となった。

個人的には洋菓子が好きだが、駐車場のご主人には人形焼がベターだろうという選択

 例年どおり、鈴鹿市内のマックスバリュ鈴鹿中央店で買い出し。鈴鹿サーキット近くの道伯町の駐車場にすんなり到着した。ここは長年、F1開催時だけお世話になっている駐車場で、呼び込みもしていないので利用するのは常連の人が中心。駐車料金も周囲にある駐車場より格安だ。川崎から名古屋に移動する途中のSA(サービスエリア)で買っておいた人形焼をお土産に持参した。

 金曜日のセッションは10時スタートだが、初日は取材の受け付けがあるので8時前にスポーツゲートまで自転車で移動。スポーツゲートは関係者がサーキット内にクルマで入る唯一のゲートなので、毎年F1ドライバーを待つファンが大勢いる。そこをママチャリで通過するのは毎度のことながら恥ずかしい。ゲートを通過したすぐ先にある交通センターで最初の受け付け。スカパーのF1解説でおなじみの津川哲夫さんも同じタイミングで受け付けをしていた。ここでメディアパスと駐車券、プレスキットなどを受け取り、メディアシャトルでパドックまで移動した。

 プレスキットは分厚い資料でさまざまな情報が載っている。基本的に英語表記だが、スケジュール、コースレイアウト、パドックの細かなレイアウト(各チームのピット位置、チームオフィスの位置、メディアセンターなど)、パドックのアクセスルート、過去の鈴鹿サーキットの改修履歴、過去の日本グランプリの記録、ドライバーの優勝回数などの記録、成田国際空港や関西国際空港からのアクセス方法などなど、細かな情報が60ページを超える資料として提供される。これはFIAのホームページでも公開されているので、興味がある人は誰でも見ることができる。

日本グランプリのプレスキット(PDF)
http://www.fia.com/sites/default/files/championship/event_report/documents/jpn_media_kit_en_2014.pdf

 ほかのレースとはまったく異なり、F1開催時はセキュリティゲートを通らなければパドックに入ることができない。セキュリティゲートにはモニター画面があり、パスを通すと自分の顔写真がモニターに表示される。同じFIAが開催するWEC(世界耐久選手権)やWTCC(世界ツーリングカー選手権)は国内レースと大差はないが、F1だけは別格で、まるで異次元の世界だ。メディアセンターの入り口にもセキュリティゲートがあり、ようやくメディアセンターに到着した。

 フリー走行(FP)1回目の撮影はシケイン。撮影ポイントの多い鈴鹿サーキットだが、シケインは撮影ポイントとしてはお薦めとは言えず、筆者自身は観客席からシケインを撮影したことはほとんどない。シケインを選んだ理由はF1の3週間後に開催されるWTCCがフルコース開催となり、WTCCのフォトコンテストにシケイン賞が設定されたからだ。

 WTCCのフォトコンテストが開催されることは事前に知っていたが、シケイン賞が設定されたことは9月下旬の募集記事を見て知った。毎年WTCCのフォトコンテストの撮影ガイドを執筆しているが、シケインは素材となる画像がほとんどない。そこで急きょ、記事用の画像を用意するためにシケインを観客席から撮影することにした。

 パドックトンネルを抜けてグランドスタンド裏のGPスクエアに移動。GPスクエアは例年より観客が少なめに感じたが、セッション開始まで30分を切っていたので、多くの人はスタンドに移動したあとだったのかもしれない。そのなかでやや混んでいたのはマールボロのブース。

 F1からタバコの広告が排除されて多くのタバコメーカーは撤退したが、今でもフェラーリのメインスポンサーはマールボロ(フィリップ モリス)だ。もちろん「Marlboro」のロゴはないが、F1開催時にはブースを設置し、フェラーリマシンも飾られている。

GPスクエアの観客は少なめ
マールボロのブースはやや混雑。右上にフェラーリのマシンがチラっと見える
GPスクエアにはホンダ F1のマシンが展示されていた
こちらは最終コーナー付近。このときは10時前で空いていたが、FP1終了後は列ができていた

 余談だが、かつてF1のスポンサーとしてタバコ会社は定番だった。F1にはマールボロ、JPS、ジタン、ラッキーストライク、WEST、ロスマンズ、マイルドセブン……。国内レースでもキャビン、ラークなどレーシングマシンとタバコのロゴはお似合いだった。

JPSのロータスは羨望のマシンだった(鈴鹿ファン感謝デーにて撮影)
マールボロのロゴを付けたフェラーリ(2005年F1日本GPにて撮影)
こちらはラッキーストライク(2005年F1日本GPにて撮影)
マイルドセブンも懐かしい(2006年F1日本GPにて撮影)
国内レースではキャビンカラーの片山右京選手
ラークは星野一義選手

FP1はシケインで撮影

 GPスクエアから最終コーナーのR席に移動して、セッション前にスタンドからシケイン方向の景色を確認し、望遠レンズでどれくらいの大きさに写るかを3個所ほど撮影。Q1席も同様に撮影して、最後にQ2席のスタンドに登った。

 金曜日はグランドスタンドの席以外は自由席。人気の高い2コーナーのB2席、ヘアピンのI席、シケインのQ2席はほぼ満席になる。毎年のことだが、平日である金曜の午前中から、会社を休んで来たと思われる人がこれほど多く集まるのは凄いと思う。海外で開催されるF1の中継を見ても、FP1からこれだけ観客が入る国はほとんどない。ピーク時と比べれば観客は減ったが、それでも日本グランプリの人気は大したものなのだ。

 セッション開始直前となり、Q2席の上段はほぼ満席状態。Q2席のスタンドは3つのブロックに分かれている。最終コーナー側ブロックの最終コーナー側で最上段まで登り「風景だけ撮らせてください」とコンデジで景色を撮り、望遠レンズでコーナーを撮影した。中央のブロックは混んでいたので、最終コーナー側ブロックの130R側最上段でも同様に景色だけ撮影した。文字で書くと分かりにくいので、Google Mapsの空撮写真を見ていただこう。赤丸が景色を撮影した場所だ。

赤丸が景色を撮影したポイント ※Google Maps
最終コーナーのスタンドから見た景色を撮影
300mmのレンズでどれくらいに写るかも確認

 WTCCの撮影ガイドの記事には、R席、Q1席、Q2席の7個所からシケインを見た景色を掲載した。

「WTCC(世界ツーリングカー選手権)フォトコンテスト」撮影ガイド
http://car.watch.impress.co.jp/docs/special/20141022_672285.html

 ちなみに、空撮写真にある緑色の丸印は記事で掲載したパノラマ写真を撮影した場所。鈴鹿サーキットのチケット販売サイトに掲載されているパノラマ写真(http://www.suzukacircuit.jp/ticket_s/2014/f1/seat/seat_q.html)と同じものだが、記事に掲載したものは3000×600ピクセルなど大きなサイズとなっている。筆者の手元にある原版は12000×3000ピクセルなど巨大サイズで、大きすぎて公開する機会がない。

 10時になってフリー走行1回目のセッションが始まった。Q2席のスタンド上段は満席状態だったが、下段は目の前に金網があるせいか観客はまばら。最前列に座り、130Rからシケインに進入してくるマシンを金網越しに撮影した。フォトコンテストに参加する人に参考にしてもらうことが目的の撮影だが、300mmF2.8のレンズ(×1.4のエクステンダー付)では離れた金網をボカすことはできなかった。400mmF2.8クラスだとボカせるのかもしれない。

最前列から金網までは数mの距離がある
300mmF2.8では絞り開放で撮影しても金網がうっすらと写り込む。横方向のワイヤーも写っている
トリミングしても微妙

 FP1は開始直後のインストレーションラップが終わると走行するマシンが減る。この合間に130R側のブロックの上段からも景色を撮影しようと思ったが、最上段の左右端は階段を上がるだけでも難しそうな混雑状態。130R側から2本目の階段の最上段に空間を見つけたので、景色だけでも撮ろうと上がってみた。

「風景だけ撮らせてください」と景色だけ撮らせてもらっていたら、300mmと500mmの大砲レンズを持って撮影していたお2人が「ここ、使ってください」と親切に場所を空けてくれた。混雑状況を見るとQ2席でほかの場所に移動するのは難しいと考え、300mm、望遠ズーム、標準ズームを切り換えながらセッション終了までここで撮影した。

 あとになって考えると、途中でR席まで移動してもよかったかと思うが、長めに撮ったので画像は使い切れないほどの枚数になった。そのなかからフォトギャラリーで使用したのは、このセッションだけ走行したマックス・フェルスタッペン(ヨス・フェルスタッペンの息子)とこのセッションだけヘルメットを変更して走ったベッテル。元画像は同じレンズなのでほぼ同じ構図だが、フェルスタッペンの方はコックピット脇に書かれた名前が読めるようアップにトリミング。この2枚以外にも、広角気味に背景を入れてスローシャッターで撮った2枚もフォトギャラリーに掲載した。

このセッションだけ走行したフェルスタッペン
名前が見えるようにトリミングしてフォトギャラリーに掲載
このセッションだけ別のヘルメットを着用して走ったベッテル。ほかの場所で撮ればもっとヘルメットが目立ったはずだ
フォトギャラリーに掲載した画像
広角気味に撮ったのでシャッター速度は1/15秒で撮影。これより遅くすると、背景が鈴鹿の東コースであることが分からなくなる
フォトギャラリーに掲載した画像

 Q2席のスタンドで撮ってみて、やはり撮影ポイントとしてはお薦めとは言えない印象だった。だが、このスタンドができてから初めてここでF1を観たのだが、観戦場所としてはよい印象だった。最前列はなかなか迫力があるし、最上段はコースが広く見渡せる。その点では、来年以降のチケット購入の参考にもなった。

 余談だが、取材をするようになった今でも筆者は自費でチケットを購入し続けている。2012年はG席、2013年はJ席、今年はB2席を購入した。友人の分も含めて3枚購入し、中央の席を自分用としている。過去にはその席で撮影したこともあるが、今年はその席に行くことはなく、友人は「間に空席があると広くて快適」と言っている。

FP2は130R、デグナー、ヘアピンで撮影

 筆者がサーキット撮影で重視しているのは、フォトギャラリーに掲載する画像のバリエーションだ。1つは絵のバリエーション。できるだけ多くの場所で撮影することに加えて、同じ場所でもレンズを変えて異なる絵を撮るようにしている。もう1つはマシンのバリエーション。表彰台に上がったマシンは多めで、それ以外にも、F1の場合はすべてのマシンが最低1枚は掲載できるようにしている。これはSUPER GTでも同様で、GT500クラスは全車両、GT300クラスは10位以内の全車両を掲載している。

 バリエーションの次に重視しているのは、初級者の参考になる画像を掲載することだ。筆者は30年以上サーキット撮影をしている。筆者にとってレースと写真はライフワークだ。なので、長年に渡り楽しませてもらったレースと写真に感謝し、恩返しとして1人でも多くの人がレースを見に来たり、サーキット撮影をするようになってほしいと思っている。

 二十数年間は趣味だったが、Car Watchが創刊したことで、現在はたまたま仕事として撮影するようになった。フォトコンテストの撮影ガイドなどもレースと写真への恩返しの1つだと考えている。それは野球好きの人が「野球は生で観戦すると……」と言ったり、釣り好きの人が「針に掛かったときの……」と言ったりするのと同じで、自分の好きなものを他人に勧める感覚に近い。WTCCで数年振りに会った知り合いに「どうしたの」と聞いたら「奥川さんの記事を見て、初めてサーキットに撮影に来た」との返答だった。そんな人が1人でも増えてくれればと願っている。

 フォトギャラリーに掲載する画像はExifデータを残してあるので、使用した機材やシャッター速度、絞り、露出補正などを確認することができる。奇をてらった絵もないし、極端なアップの絵もないので、少し撮り慣れてくればデータや背景から撮影のシチュエーションが想像できるはずだ。ベテランの人には無用だと思われるが、サーキット撮影の初級者には参考になることを期待している。

 さて、午前中のセッションがシケインだけとなったので、午後からのセッションでは絵のバリエーションを増やしたいと思った。F1のセッションは金曜日のFP1とFP2が1時間半。土曜日のFP3と予選が1時間となっている。バリエーションを稼ぐには、午後のFP2が時間も長いので重要となる。

 午後は報道エリアで撮影を行った。このセッションが最も移動しやすいので、130R→デグナー→立体交差下→ヘアピンというルートで撮ることにした。130Rのアウト側とデグナーのイン側は背中合わせとなり、その中間が小高い丘になっている。8月末に訪れたSUPER GTのときは腰の高さまで雑草が伸び、自分の靴も見えないほどだったが、F1開催時は草が刈られていた。F1開催に合わせ、報道エリアも普段より綺麗になっている印象だ。

 ガードレールとフェンスの隙間も普段ならクモの巣との戦いになったりするが、この日は妙に綺麗。さらに普段と違ったのはガードレールに設置されたマイク。F1の中継はマイクも豪華なんだと思った。中継と言えばスタッフも外国人で、セッションを待つ間はハンモックで寝るのが流行っているのか、130Rのカメラマンと少し離れたところのカメラマンは寝ていた。午前中に撮影していたQ2席のスタンドを見ると、セッション30分前だがほぼ満席状態となっていた。

ガードレールとフェンスの隙間が普段より綺麗。マイクも豪華
ハンモックで寝ている外国人スタッフ
Q2席はほぼ満席状態

 このときは晴天。西ストレートを正面から撮ると、距離があるので陽炎で像が歪んでしまう。セッション開始までたっぷり時間があったので、普段より綺麗になったガードレールとフェンスの隙間を西ストレート方向に進んでみた。

 立体交差の上は隙間が狭くて通れないが、その手前ギリギリまで進むとちょうどストレートエンドから130Rに向かってステアリングを切り込むあたりだった。「WTCCでEOS 7D Mark IIのAFテストにいいかも」と思い、テスト的にここから撮影を始めることにした。絵的な面白味はないが、至近距離を高速で駆け抜けるマシンを撮るには絶好のポジションだ。

 セッション前にマーシャルカーが通ったので陽炎のチェック。遠方から近付くマーシャルカーを何枚か撮影し、液晶モニターで空気の揺らぎ具合をチェックした。トリミングすると距離感が分からないので、最初の画像で近付いてくるようすを紹介。この4枚のフロント部分をトリミングした画像を見ると、1枚目はボンネットの前の線が波打っていることがはっきり分かる。2枚目もやや揺らぎの影響が残り、3枚目付近から陽炎の影響を受けていないことが分かる。
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近付いてくるマーシャルカーを何枚か撮影
ボンネットのラインが波打っている
まだ陽炎の影響が残っている
3枚目、4枚目の位置なら問題はなさそうだ

 4枚目が立体交差の継ぎ目の位置で、この付近からステアリングを切り込む。その直前の数枚は問題がなさそうだ。報道エリアは撮影位置が低いので、天気がよいと陽炎の影響を受けやすい。とくに被写体までの距離がある場合や夏場は注意が必要になる。観客席からの撮影でも、富士スピードウェイのコカ・コーラコーナー進入を正面から撮る場合や、ツインリンクもてぎのS字進入を正面から撮る場合には、土手の上で金網を避けて撮ると影響が少ないが、土手の下から金網越しに撮ると影響を受けやすい。

遠くの大型モニターに可夢偉のクラッシュシーンが映し出された

 FP2は、セッション開始後数分で小林可夢偉がクラッシュ。J席正面の大型モニターにその映像が映し出されてガッカリする。フォーミュラカーはタイヤがよく見えており、高速なシャッターを切るとトレッド面やサイドウォールのペイントが止まって見えるので、シャッター速度1/320秒で撮影を開始した。

 フォトギャラリーに掲載したのは、路面の継ぎ目より少し離れた位置を単独で走るマグヌッセンと、背景にグティエレスとピレリの看板が写っているロズベルグ。トリミングの仕方で2種類のバリエーションとした。絵的には面白くもなんともないが、せっかく撮ったのでバリエーションの足しにと使った。

単独走行のマグヌッセン
レタッチしてフォトギャラリーに掲載した画像
背景にグティエレスとピレリ看板が写っているロズベルグ
レタッチしてフォトギャラリーに掲載した画像

 似たような画像がたくさん撮れたなかでマグヌッセンを選んだのは、排気熱でリアウイング上のラインが揺らいでいること。筆者はレーシングカーの背後の空気が熱で揺らぐようすが好きという単純な理由だ。

 EOS 7D Mark IIのレビュー記事が先に掲載されたので、F1で撮った画像も原版でお見せしよう。FP2の中継でバトンの車載映像に表示されたストレートエンドの速度は313km/h。バトンもマグヌッセンも車載映像の音を聞く限りアクセルを戻すことなく130Rに進入している。左側の画像はAFポイント、右側の画像は原版だ。

AFポイントはヘルメット狙いだがやや前
ブレのせいかピントは微妙
AFポイントはやや前
ピントは後ピン
AFポイントはやや前
これならピントは○
マシンが近付きAFポイントは修正されつつあるがやや前
再びピントは後ピン
AFポイントがヘルメットをとらえた
ピントが戻り○
筆者がマシンに追従できずAFポイントがずれた。マシンもウイングがフレームアウト
AFポイントも大きくズレ、ピントも後方のエアインテーク付近へ
観覧クルマをバックに130Rを抜けるマシンは真後ろから撮影

 EOS 7D Mark IIのAFテストは比較のための撮影だったので、シャッター速度が1/1000秒以上で絞り開放。F1は普通に撮ったのでシャッター速度1/320秒、絞りはF6.3付近と条件が異なる。シャッター速度を下げるとブレる確率が高まり、絞り込むとピントが合う確率が上がる。F1はマシン速度が速いのでピントを外す可能性が高い。撮影した周のラップタイムは不明だが、マグヌッセンがこのセッションで計測したベストタイムは1分36秒台。対してEOS 7D Mark IIのAFテストで撮ったスーパー耐久は2分15秒前後。条件が異なるので単純な比較はできないが、EOS 7D Mark IIで撮っていればもう少しピントが合ったかもしれない。

 次は同じ場所から130Rを抜けていくマシンを真後ろから撮影。300mmで撮ったり、望遠ズームで縦位置、横位置で撮ったりと試行錯誤した。フォトギャラリーのレイアウト上、縦位置の画像は3枚(3個所)撮らないと成り立たない。最終的に無理矢理ながら3枚揃えられたので、縦位置で撮った画像も使用した。

 そうこうする内にセッションが赤旗中断。フェンスをくぐって大きなクモの巣の下を抜け、デグナー2つ目を見下ろす丘の上に移動した。

報道エリアではクモの巣は珍しくない
丘の上から見下ろしたデグナー2つ目

 ここからの撮影でメインになるのはクリッピングポイントだが、立ち上がりのアウト側縁石付近を通過するときに逆光となった。雲が増えて日差しが微妙になってきたので、太陽が隠れる前に逆光をアンダー気味に撮影。そのあと、クリッピングを抜けるマシンを撮影した。

立ち上がりの縁石付近を逆光で撮影
クリッピングポイントは定番。シャッター速度1/125秒で撮影

 F1ならではの光景は観客で埋め尽くされたスタンドだ。観客席を背景に入れた画像はおさえておきたい。デグナー側を撮り終えたので向きを変え、Q2席を背景にして撮影した。絵としてはコンデジでも撮れそうな画像なので難しいところはないが、できればマシンが並んでいる絵にしたい。決勝スタート直後ではないので、最終的に4台がフレームに入ったものを最終とした。

2台では寂しい
4台が並んだのでOKとした。写し止めるためシャッター速度1/500秒で撮影

 次は少し撮影ポイントを移動して、130Rからシケインに向かうマシンを真後ろ縦位置で撮影。ピレリ看板の上に満席のQ2スタンドを入れてみた。スキッドブロックから火花が散る瞬間を狙ったが、写真では目で見るほどのインパクトは出なかった。このころには日差しがなくなり、逆に雨が心配になってきた。デグナーイン側に降りる前に西ストレートを正面から撮影。曇ったおかげで陽炎の影響を避けることができた。

Q2スタンドをバックに縦位置で撮影
曇ったので西ストレートを正面から撮影

 デグナーのイン側に降りて、デグナー1つ目と2つ目の短いストレートを流し撮り。背景の木漏れ日が流れるのがポイントなのでマシンをやや下にフレーミングした。この時点で残り時間30分。ヘアピンまで少し距離があるので急ぎ足で移動を開始。

背景を意識してAF点を下に移し、シャッター速度1/160秒で撮影

 立体交差付近は、現在地のデグナーイン側よりアウト側の方が撮りやすい。だが、トンネル下というシチュエーションは貴重なので少しだけ撮影。撮った画像を見ると、ほかのマシンはそれほどでもなかったが、メルセデスのフォルムは予想以上によい感じとなった。セッション終了まで残り20分。

ロータスはイマイチ
メルセデスのフロントまわりは予想以上によい感じとなった

 この日、最後の撮影はヘアピンだ。立体交差側から土手を上下して段差を越え、ヘアピンのアウト側にたどり着く。進入側を背後から撮るがイマイチ。時間がないので足場のわるいところを抜けて立ち上がり側に移動。残り時間5分。ヘアピンの定番はクリッピングポイントを正面から撮る位置と常設スタンドの下、さらに200R側に進んで常設スタンドの先などだ。クリッピングポイントはパスして常設スタンドの下で撮影開始。

 マシンが近付いてきたところでノーズが切れないよう、AFポイントは左上に移動。雨もポツリポツリと降り出して暗くなってきたので、ISO200に変更してシャッター速度1/320秒で撮影。直後に赤旗が出たので撮れたのは1ラップとチョット。数台撮ったなかで、ヘルメットシールド内の目まで写ったバトンと少し手前の位置のボッタスをフォトギャラリーで使用した。

最後にバランスが取れるよう、AFポイントを左上に移動して撮影
ボッタスは立ち上がってきた途中
バトンは近付いてきたところを撮影

 200R側に移動してもう1個所と思っていたが、残り3分半で赤旗。そのままセッションは終了した。残り3分半と言っても、通常ならチェッカーが出たときにコントロールラインを通過していたマシンは1周走ってチェッカーを受け、さらに1周してピットに戻るので、プラス2周ほど撮影できる計算。なので、チェッカー後も2分半程度は撮れるので、本来は残り6分ほど撮れていたはずだ……残念。それでも、FP2は合計12のバリエーションを撮影し、FP1の出遅れをカバーできた。

 撮影終了後はコースを周回するバスでパドックに戻る。バッテリーと記録メディア以外の荷物をロッカーに預け、交通センターに駐めた自転車で駐車場まで移動し、はるか先に戻っていた友人と合流。これまではRX-8に車中泊していたI氏だが、ポルシェでの車中泊は無理ということでこの日は名古屋市内のホテルに宿泊。私とA氏は自宅に戻るので、3人でステップワゴンに乗って名古屋まで向かうことにした。積んできた自転車は駐車場に残し、日曜に回収する。

 サーキット周辺はそこそこ渋滞していたが、いつものように抜け道を通って国道23号に入る。その先は大きな渋滞もなく名古屋に到着した。この道中、ポルシェを買ったI氏が興味を示したのは衝突防止・軽減装置の「Mobileye(モービルアイ)」だ。

 モービルアイはざっくり説明すると“アイサイトの後付け版”といった製品。後付けなのでブレーキ操作まではしてくれないが、追突しそうになったり車線逸脱をすると警告を発してくれる。SUPER GTのGT300クラスでマクラーレンを駆る加藤寬樹選手も、同乗してすぐに「これ何?」と興味を示したし、Car Watchの編集長も、夜間に雨で見にくい白線を認識して車線逸脱警告が鳴ったときに「これ、精度高いね」と口にするなど、運転時の安全性を高めてくる装置だ。

「Mobileye(モービルアイ)衝突防止補助システム」
http://car.watch.impress.co.jp/docs/series/minigoods/20120907_557737.html

 また、多くのクルマが純正搭載する30km/h程度までしか反応しない装備より、50km/h、100km/hと警告音を出してくれるほうが実用的。7月にステップワゴンを譲った息子も「これはよいね」と言っているし、筆者もお薦めの装置だ。「ポルシェに取り付けできるかなぁ」とI氏に言われて「聞いておくよ」と答えたが、未だに確認を取る暇がない。名古屋に着いてそのまま近所の居酒屋に移動。オッサンだけの飲み会でF1初日は幕となった。

 次回の後編は、鈴鹿サーキット周辺の民間駐車場の情報と、土曜日、日曜日のセッションのようすをお伝えしたい。

(奥川浩彦)