特別企画

【特別企画】奥川浩彦の「WTCC(世界ツーリングカー選手権)フォトコンテスト」撮影ガイド(第3回 鈴鹿サーキット西コース編)

今年からWTCCマシンが走ることになった西コースの撮影ポイントを解説

 2014年も「WTCC(世界ツーリングカー選手権)JVCKENWOOD 日本ラウンド」が鈴鹿サーキットで開催される。このWTCC開催にあわせ、4年連続でCar Watch、デジカメWatchが主催のWTCCフォトコンテスト(http://car.watch.impress.co.jp/docs/news/20140926_668477.html)が開催されることになった。2013年までは東コースで開催されたWTCCだが、今年はフルコースとなった。今回の記事では、鈴鹿サーキットの西コースの撮影ポイントを紹介していこう。

西コースの撮影ポイント

 第2回は東コースの撮影ポイントを紹介した。WTCCとしてはフルコースでの開催は初めてとなるので、今回は西コースの撮影ポイントを紹介しよう。東コースの紹介では2013年のWTCCで同時開催されたスーパー耐久のマシンを撮影した写真を使用したが、西コースはSUPER GT公式テストやF1開催時の撮影内容を使って紹介したい。

 各スタンドからコースを見たようすは横長のパノラマ写真を参考にしていただきたい。パノラマ写真の撮影場所はGoogle Mapsの空撮画像に緑の点で示してある。走行するマシンを撮った撮影場所とコースとの位置関係は赤い矢印で示した。使用したレンズの焦点距離をキャプションに記載したので、マシンがどれくらいの大きさで写せるか確認していただきたい。では、今回もコースに沿って、ヘアピン、スプーン、130R、シケインをそれぞれ説明していこう。

ヘアピン

 ヘアピンは、進入側の土手、正面の土手、常設スタンド、200R・スプーン側の土手など、4つのエリアから撮影できる。元々カメラマンに人気の撮影ポイントだが、今回のWTCCフォトコンテストではヘアピン賞が設定されているので多くのカメラマンが集まりそうだ。パノラマ写真は進入側の土手を除く3個所で撮影しているのでご確認いただきたい。

ヘアピン正面、やや右側のパノラマ写真
ヘアピン常設スタンドのパノラマ写真
200R・スプーン側の土手のパノラマ写真

 進入側の土手はヘアピンに進入してくるマシンを流し撮りできるが、金網の影響を受けやすい。クリッピングポイントに切り込んだあたりから金網を避けることが可能。クリッピングポイントから立ち上がりにかけては、マシンを背後から撮ることもできる。土曜日の予選、日曜日のレース2は16時ごろの走行になるので、もしかすると逆光で路面が美しく反射し、面白い絵が撮れるかもしれない。

ヘアピン進入側の土手の上段から撮影
上段から撮るとブレーキングポイントは金網の影響を受けるが、切り込んでからは金網を避けられる。94mm(35mmフィルム換算で150mm)で撮影
ヘアピン進入側の土手の最下段から金網越しに撮影。300mm(35mmフィルム換算で480mm)で撮影

 ヘアピン正面の土手は、進入してくるマシンの正面、クリッピングポイントを抜けるマシンの正面、進入から立ち上がりまでの流し撮りができる。F1でも可夢偉やバトンがオーバーテイクを見せたポイントなので、WTCCでも激しい攻防が期待できる。

ヘアピン正面の土手は湾曲しながら左右に長く続いている
クリッピングポイントを抜けるマシンを正面から撮れる。この付近の金網は撮影に配慮して黒く塗ってあるので、金網越しに撮影しても影響を受けにくい
このエリアの左端最下段はカメラホール越しに撮影できる。ただし、マーシャルが立っていることも多く、撮影できないこともある
カメラホール越しに進入してくるマシンを低い位置で撮影できる。300mm(35mmフィルム換算で480mm)で撮影
ヘアピンを立ち上がるマシンを、斜め後ろのアングルからアウト側の縁石を入れて撮影できる
200mm(35mmフィルム換算で320mm)で撮影

 常設スタンド下の金網沿いは、F1開催時にはカメラマンエリアとなる最も人気の高い撮影ポイントだ。常設スタンド両脇の土手も撮影しやすい。

常設スタンド左側の土手からヘアピン方向
300mm(35mmフィルム換算で480mm)で撮影
常設スタンド左側の土手からも、ヘアピンを立ち上がるマシンをアウト側の縁石を入れつつ斜め後ろから撮れる
126mm(35mmフィルム換算で202mm)で撮影
常設スタンド下のエリアは立ち上がってくるマシンが撮影できる
300mm(35mmフィルム換算で480mm)で撮影
緑の点はパノラマ写真の撮影位置。矢印はマシンを撮影した位置関係 ※Google Maps

ヘアピンをストリートビューで確認
https://www.google.co.jp/maps/@34.8476363,136.5303164,3a,75y,178.11h,70.82t/data=!3m5!1e1!3m3!1s-XpXPzQ-1Tk2EIk2YQNacA!2e0!3e5?hl=ja

スプーンカーブ

 グランドスタンドのある東コースから1番遠いスプーンカーブは、鈴鹿サーキットの“最果ての地”だ。観戦にも撮影にも超お薦めのポイントだが、観客は少なめなので進入からスプーン1つ目、2つ目とどこでも自由に撮影できる。スプーン1つ目のブレーキングはオーバーテイクも多いので、WTCCでもサイド・バイ・サイドの攻防が期待できる。

 スプーンカーブは進入から1つ目、2つ目と切れ目なくほぼ全域が撮影エリアだ。横から、正面から、背面からとさまざまな角度でマシンを撮ることが可能なので、頑張ってたどり着けばお腹いっぱい撮影できる。

スプーン進入部分のパノラマ写真
スプーン1つ目のパノラマ写真
スプーン1つ目奥のパノラマ写真
スプーン2つ目のパノラマ写真
スプーン2つ目立ち上がりのパノラマ写真
スプーンの進入のブレーキングを流し撮りできる。2013年のF1開催時はこの状態だったが……
2014年6月のSUPER GT公式テストのときは胸の高さまで雑草が成長し、土手の下段には降りられなかった
126mm(35mmフィルム換算で202mm)で撮影
スプーン1つ目のコースサイド
300mm(35mmフィルム換算で480mm)で撮影
スプーン進入の正面はカメラホールがあるが、F1開催時は毎年TV中継用のカメラが設置される
土手の上段から300mm(35mmフィルム換算で480mm)で撮影
カメラホールを通して300mm(35mmフィルム換算で480mm)で撮影
カメラホールを通して300mm(35mmフィルム換算で480mm)で流し撮り
スプーン1つ目と2つ目の中間から1つ目方向
300mm(35mmフィルム換算で480mm)で撮影
スプーン2つ目は後方からスローシャッターで狙えるポイントだ。次の3枚は、それぞれシャッター速度1/125秒、1/15秒、1/30秒で撮影
300mm(35mmフィルム換算で480mm)で撮影
最下段に降りると、金網越しにスプーン2つ目を低い位置から撮影できる
300mm(35mmフィルム換算で480mm)で撮影
緑の点はパノラマ写真の撮影位置。矢印はマシンを撮影した位置関係 ※Google Maps

スプーン進入をストリートビューで確認
https://www.google.co.jp/maps/@34.847708,136.524663,3a,75y,256.21h,87.09t/data=!3m5!1e1!3m3!1sq4UAEVybzv6NoEOhwgreTg!2e0!3e5?hl=ja

スプーン1つ目をストリートビューで確認
https://www.google.co.jp/maps/@34.848417,136.524326,3a,75y,227.14h,95.29t/data=!3m5!1e1!3m3!1svGzqF3Y2ZNk2OTq6NpAq-Q!2e0!3e5?hl=ja

スプーン2つ目をストリートビューで確認
https://www.google.co.jp/maps/@34.848777,136.522006,3a,75y,145.61h,79.56t/data=!3m5!1e1!3m3!1s3QPH4_yVue5Wf19wsNYQ4Q!2e0!3e5?hl=ja

130R〜シケイン

 今回のWTCCフォトコンテストではシケイン賞が設定されている。審査基準は「130Rからシケイン立ち上がりまでのエリアで撮影した写真。」となっているので、130Rで撮った写真もシケイン賞の対象になる。130Rを立ち上がるマシンの流し撮りが一般的だが、やや単調な撮影ポイントなので入賞には一工夫が必要という気がする。

130Rのパノラマ写真
130Rのややシケインよりのパノラマ写真
163mm(35mmフィルム換算で261mm)で撮影
130Rとシケインの中間は金網に遮られるので撮影には不向き
シケインの手前。F1開催時はピレリの看板だが、WTCCでは通常のYOKOHAMAの看板に戻るはず。この付近も金網を避けて撮るのは難しい
緑の点はパノラマ写真の撮影位置。矢印はマシンを撮影した位置関係 ※Google Maps

130Rをストリートビューで確認
https://www.google.co.jp/maps/@34.8444833,136.5312299,3a,75y,173.98h,70.95t/data=!3m5!1e1!3m3!1sc23s1g61hMHkmRC-tcc52A!2e0!3e5?hl=ja

シケイン

シケイン Q2スタンド

 最後に紹介するのはシケイン。今回のWTCCフォトコンテスト開催の記事を見て、筆者が1番驚いたのはシケイン賞だ。思わず「シケインはほとんど撮ったことがないぞ」とつぶやいていた。ということで、F1のフリープラクティス1回目で急きょシケインの撮影を行った。

 F1開催時はシケインやヘアピンのスタンドは金曜日の午前中からほぼ満席となる。セッション中に動きまわって撮影することは難しい。そこで、セッション開始前に何個所か風景写真を撮ってきた。マシンが写っていない写真ばかりだが、金網の位置関係などを参考にしていただきたい。風景写真を撮ったポイントは、Google Mapsの空撮画像に赤い点で示してある。

 なお、パノラマ写真は鈴鹿サーキットが大改装を行ったタイミングで撮影しており、シケインの奥にある看板はCASIOとなっているが、現在は日立オートモティブシステムズシケインとなっている。余談だが、日立オートモティブシステムズはスバル(富士重工業)とEyeSightを共同開発している企業だ。

日立オートモティブシステムズ
http://www.hitachi-automotive.co.jp/

Q2スタンド、130R側上段のパノラマ写真
Q2スタンド、130R側下段のパノラマ写真
Q2スタンド、中央上段のパノラマ写真
Q2スタンド、中央下段のパノラマ写真
Q2スタンド、最終コーナー側上段のパノラマ写真
Q2スタンド、最終コーナー側下段のパノラマ写真
Q2スタンド、130R側のブロック最上段で130R側から撮影。シケイン2つ目付近は金網の影響を受けない
Q2スタンド、130R側のブロック最上段で130R側から撮影。シケイン進入は金網の支柱で撮影は困難
同じ位置からシケイン2つ目のコーナーを300mm(35mmフィルム換算で480mm)で撮影
Q2スタンド、最終コーナー側のブロック最上段で130R側の隅から撮影。この位置ならシケインに進入するマシンもなんとか撮れそうだ
300mm(35mmフィルム換算で480mm)で撮影
200mm(35mmフィルム換算で320mm)で撮影
Q2スタンド、最終コーナー側のブロック最上段で最終コーナー側の隅から撮影。この位置がシケイン進入の攻防を撮るベストポジションと思われる。単独のマシンをアップで撮るにはかなり長い望遠レンズが必要だが、複数台のサイド・バイ・サイドの攻防を撮るなら500mm以下のレンズでも撮影できそうだ。
300mm(35mmフィルム換算で480mm)で撮影

シケイン Q1スタンド

 Q1スタンドはQ2スタンドより低い位置になるので、ほとんどの席が金網と支柱に遮られる。そのなかで最終コーナー側の上段付近は、シケイン2つ目のコーナーを金網の上から撮ることができる。

Q1スタンドのパノラマ写真
Q1スタンド最上段、やや最終コーナー側から撮影。シケイン進入側は支柱に阻まれる
300mm(35mmフィルム換算で480mm)で撮影

シケイン Rスタンド

 Rスタンドも最上段の通路であれば金網の上からシケインを見通せる。ただし、シケインに近い位置はQ1スタンドの柵に遮られるので、シケインに進入するマシンの撮影は難しい。メインストレート側はシケイン全体を見通せるものの距離が遠くなるので、かなり焦点距離が長い望遠レンズを持っていなければマシンをアップで撮ることはできない。

R席スタンドのパノラマ写真
R席スタンド最上段、ややシケイン側から撮影。シケイン進入側は柵に阻まれる
300mm(35mmフィルム換算で480mm)で撮影
R席スタンド最上段、ややメインストレート側から撮影。シケイン進入側はやはり支柱が邪魔になる
300mm(35mmフィルム換算で480mm)で撮影
R席スタンド最上段のもっともメインストレート側から撮影。距離はあるがシケイン全体を見通せる
300mm(35mmフィルム換算で480mm)で撮影

 シケイン賞を獲得する理想的な絵は、3台、4台といったマシンが横並びでシケインに進入するようなWTCCならではのバトルだと仮定すれば、130Rからシケインに進入する部分が撮りたい。金網の影響をもっとも受けないのは、Q2スタンドの最終コーナー側ブロックの上段となる。

 同じシチュエーションを撮る別の方法は金網越しに撮影することだ。金網をボカして撮る方法として、1つは金網に近付くこと、もう1つは明るいレンズを使用することが挙げられる。300mmのF4とF2.8のレンズを比較すると、F2.8のレンズで絞りを開放にして撮った方が金網の影響は少ない。

 Q2スタンドの下段は金網越しにシケインに進入してくるマシンを撮れる。ただし、スタンドと金網に距離があるので、近付いてボカす方法は使えない。レンズの性能でボカすしかないので、それなりの機材を持っている人にアドバンテージがありそうだ。

 実際に300mmF2.8のレンズで金網越しの撮影をしてみた。結果は300mmF2.8では性能不足で、400mmF2.8ぐらいは欲しいという印象となった。

Q2席スタンドの最前列から金網越しに130R方向を撮影。金網まで数mの距離があり、近付くことは不可能。しかし、この金網をボカすことができればシケイン進入のバトルを撮影できる
300mm(35mmフィルム換算で480mm)で、絞り開放のF2.8で撮影。金網はそこそこボカせるが、横方向のワイヤーが目立つ
ときどき金網にピントが合ってしまう
300mm×1.4=420mm(35mmフィルム換算で672mm)で撮影
トリミングしてフルHDサイズにレタッチしてみた
300mm×1.4=420mm(35mmフィルム換算で672mm)で撮影。マシンが130R方向に離れている状態なら金網はよりボケる

 シケインで撮影したほかの画像も掲載しておこう。Q2スタンドの上段は満席状態だったので、最初は「風景だけ撮らせてください」と最上段の数個所で景色だけ撮らせてもらっていたのだが、130R側のスタンドで300mmと500mmの大砲レンズを持って撮影していたお2人が、「ここ、使って下さい」と親切に場所を空けてくれたので、画角を変えながら撮影してみた。シケイン進入側は撮れなかったが、立ち上がり側を撮影したのが以下の画像だ。

Q2スタンド、130R側のブロック最上段、130R側から300mm(35mmフィルム換算で480mm)で撮影
Q2スタンド、130R側のブロック最上段、130R側から122mm(35mmフィルム換算で195mm)で撮影
Q2スタンド、130R側のブロック最上段、130R側から50mm(35mmフィルム換算で80mm)で撮影
レタッチしてフルHDサイズでフォトギャラリーに掲載した画像

2014 F1日本グランプリ フォトギャラリー
http://car.watch.impress.co.jp/docs/photogallery/20141009_670636.html

緑の点はパノラマ写真の撮影位置。赤の点は風景写真の撮影位置、矢印はマシンを撮影した位置関係 ※Google Maps

 2013年のWTCC&F1撮影ガイド 最終回でデグナーのアウト側から撮った画像を提供していただいた松本伸夫さんに「シケインで撮った画像ってありますか?」と聞いたところ、数点の画像を提供してもらった。そのなかから、Q1スタンドとRスタンドで撮った画像を掲載させていただく。使用しているレンズは600mm〜1200mmとかなり焦点距離の長いレンズとなっているが、ぜひ参考にしていただきたい。ちなみに松本伸夫さんの個人サイトはこちら(https://picasaweb.google.com/103189924415151261882)。

Q1スタンドから600mmで撮影(松本氏撮影)
Q1スタンドから840mmで撮影(松本氏撮影)
Q1スタンドから600mmで撮影(松本氏撮影)
Rスタンドから1200mmで撮影(松本氏撮影)
Rスタンドから840mmで撮影(松本氏撮影)

 フルコースを使用して初開催となるWTCC。そのなかでも比較的カメラマン人気の高くないシケインを題材としたシケイン賞に筆者は注目している。毎年、もの凄い撮影テクニックとアイデア、センスを見せてくれる作品が数多く応募されるので、シケインで撮った「スゲーッ」と唸るような作品が応募されることを期待している。

奥川浩彦

パソコン周辺機器メーカーのメルコ(現:バッファロー)で広報を経て2001年イーレッツの設立に参加しUSB扇風機などを発売。2006年、iPR(http://i-pr.jp/)を設立し広報業とライター業で独立。モータースポーツの撮影は1982年から。キヤノンモータースポーツ写真展3年連続入選。F1日本グランプリ(鈴鹿・富士)は1987年から皆勤賞。