奥川浩彦の「撮ってみましたF1日本グランプリ 2012」【前編】


 Car Watch創刊の2008年から始まった「撮ってみましたF1日本グランプリ」も気付くと5年目となる。過去の記事を読まれた方はご存じと思うが、内容は撮影日記、ほぼ筆者のブログといった感じだ。筆者としては毎年それほど中身が変わらないこともあり、そろそろ終わりにしてもいいかと思っていたが、編集長から「毎年、読者に読まれているので、今年もヨロシク」と言われ継続することとなった。

 筆者が乗り気ではなかった理由はほかにもある。1つは昨年の日本グランプリが楽しめなかったこと。昨年の決勝はバトンがピット戦略でトップに立ち、アロンソの追い上げを振り切り優勝した好レースだった。プライベートで観戦していれば楽しめたはずのレースだったが、筆者は仕事の義務感もあり、スタートをS字手前で撮影し、2コーナーのイン側に移動、その後もS字1つ目のイン側、逆バンクのイン側で撮影し、S字のところにある地下トンネルで外側に出て逆バンクまで走り撮影を終えた。

昨年の日本GP。スタートはS字手前2コーナーイン側。背景はB席スタンドS字1つ目の右ターン
逆バンクイン側。背景はD席逆バンク

 元々筆者の観戦スタイルがフリー走行3回目まで撮影モード、予選と決勝は観戦モードなのだが、撮影に追われてレースが楽しめなかったことを残念に思っていた。

 2つ目は今年の秋はレースが過密スケジュールになっていること。9月末のSUPER GT第7戦(オートポリス)から、F1(鈴鹿サーキット)、WEC(富士スピードウェイ)、WTCC(鈴鹿サーキット)、SUPER GT最終戦(ツインリンクもてぎ)と5週末連続となる。

 プライベートの観戦ならレース後に仕事に追われることはないが、仕事となるとそうは行かない。筆者の原稿を書くスピードが遅いとか、写真を整理する能力が低いといった要因に加え、年齢的な体力の衰えもあり5週連続サーキット取材はかなりハード。F1仕事がなくなれば随分楽になるな、という期待もあった。

 そんな状況ではあったが、今年も鈴鹿サーキットにF1グランプリがやってきた。今年の個人的なテーマは仕事もするけどレースを楽しむこと。果たしてその結果は……。

秋のモータースポーツシーズンに備えEOS 7Dを追加購入したものの……
 この秋の5連戦に向け筆者は2台目のEOS 7Dを購入した。これまで2007年に購入したEOS 40Dと2009年に購入したEOS 7Dの2台体制でレース撮影を行っていたが、今年はそろそろ40Dを引退させようと考えていた。8月にレンズの修理を行った際にシャッター回数を調べてもらったところEOS 7Dが29万9千ショット。EOS 40Dが22万9千ショットと限界を超えていて、いつ壊れてもおかしくない状況。参考までにシャッターユニットの交換はどちらも3万3千円くらいかかる。

 6月マレーシアで行われたSUPER GT第3戦でEOS 5D Mark IIIを試用し、筆者の使い方ではフルサイズよりAPS-Cの一眼レフのほうがあっていることを確信。EOS 7Dの後継機の発表がないことを願って、9月下旬にEOS 7Dを追加購入した。

 9月26日、午前中に届いたEOS 7Dの設定を行い、新ファームウェアから採用になったファイル名の設定で旧7Dは7D1_****.jpg、新7Dは7D2_****.jpgとし、午後から中部国際空港に到着したF1マシンの取材を行った。その3日後、九州オートポリスで行われたSUPER GT第7戦が2台目のEOS 7Dのデビューレースとなった。

 サーキットで撮影する際は300mmF2.8と70-200mmF4のレンズを2台のカメラに装着している。当然EOS 7Dの方が優れているので、これまでは各セッションで撮影ポイントにより主に使うレンズをEOS 7Dに装着していたが、EOS 7Dの2台体制となり気にする必要はなくなった。

 土曜日は2台で快適に撮影。夜ホテルで撮像素子の清掃も行い、日曜の決勝の朝を迎えた。ここから不幸が始まった。1台目のEOS 7Dの電源が入らない。バッテリーを入れ替えても駄目、バッテリーの抜き差し、電源のON/OFFを繰り返すうちに時々電源が入るようになったが、すぐに切れて使えない状態。最終的にシャッターを切ってもエラーで止まる様になり新7Dの1台体制で撮ることになってしまった。

 心の中で「新しい7Dは買ったけど、お前のことが嫌いになった訳じゃないから……」と思いつつ、残った1台がEOS 40Dでなかったことは、直前で7D2台体制にしたためとホッと胸をなでおろした。

 不幸は続くもので、ANAから台風の影響で名古屋へ帰る便の欠航を知らせるメールが届く。レース終了後に新幹線での帰宅を模索するが、博多駅で係員に聞くと「岡山から先運転見合わせ」とのこと。結局博多のホテルに泊まり翌日の便で帰宅することとなった。

 通常は帰宅すると写真の整理に取りかかるのだが、残り4戦あるのでキヤノンサービスに故障したEOS 7Dを持ち込む。重傷のため見積金額を見て修理するか判断してほしいとのこと。2日後に来た見積は6万6千円。30万ショットを超えているシャッターユニットの交換を含めた金額のため、故障の修理だけ行えばもう少し安くはなるが、シャッターに爆弾を抱えたまま使い続けるのは気分が悪い。

 1台目は発売日購入で18万2000円だったEOS 7Dも現在は9万円前後に値下がりしている。バッテリーの消耗、外観の傷み、ストラップもボロボロ……と考えると新品を購入した方が得という結論に達した。ではすぐにもう1台購入するかと言えば、2台目の7Dを買ったのは1週間前。2週連続で7Dを買うのは普通じゃない。月が変わっているので2カ月連続と考えても……それってどうよ、ということで一旦保留し9月のSUPER GT第6戦で引退したはずのEOS 40Dが4週間で現役復帰となった。「シューマッハの様に3年もブランクが空くよりは4週間で復帰する方がいいだろう」と、訳の分からぬ言い訳を自分にして新7Dと40Dの2台でF1日本グランプリに臨むこととなった。

 個人事業主は月末月初は忙しい。レース仕事とは別業の請求書や銀行関係の業務を消化しつつ、欠航とカメラ修理で大幅に遅れたSUPER GTの原稿のレースレポートを水曜日に完成、木曜の深夜にフォトギャラリーをサーバーにアップ、それから防湿箱に仕舞ったEOS 40Dを取り出しストラップを付け他の撮影機材の準備などを終えると3時過ぎ。1時間ほど寝て5時過ぎに名古屋の自宅を出て26年連続のF1日本グランプリに向かった。

 筆者の初F1は1986年のモナコグランプリ。翌1987年に始まった鈴鹿の日本グランプリから富士の2年を含め26年間、金、土、日と皆勤賞で観戦している。独立して6年、それ以前の20年間はサラリーマンだったので、あの上司にもこの上司にも文句を言われつつ有休を取って観戦してきた。

 毎年金曜日から観戦しているのだが、1989年~1991年あたりで渋滞に巻き込まれ1回遅刻、金曜午前のフリー走行を見逃している。以前は気にしていなかったが、ここ最近、二十数年前の遅刻を少々後悔している。アニキ金本選手の1492試合連続試合フルイニング出場の偉大な記録と比べるべくもないが、1イニング(1セッション)欠場したので日本グランプリのコンプリート観戦とはなっていない……残念。

 今年購入したチケットはG席2エリア。2009年からD席、B2席、J席ときて今年はG席を選択した。B2席がベスト観戦ポイントと思っているが、毎年見ているのでいろいろな場所で観戦するようにしている。最近は取材用のパスが支給されているので筆者自身はチケットを購入する必要がないとも考えられるが、日本グランプリが今後も継続されるように、チケットの自腹購入は筆者自身の小さな貢献と思っている。

 毎年書いているが、26年続いた日本グランプリも日本の経済状況などをみるといつ途絶えるかわからない。サーキットに足を運ぶF1ファンも、テレビで観戦するF1ファンも、1人1人がF1日本グランプリを支えていく気持ちを持っていただければと思っている

 昨年は高校時代の同級生3人のレギュラーメンバーに加え、外資系企業の女性(推定年齢当時35歳、TOEIC800点台)のスポット参戦があったが、今年は春のチケット販売前に女性からパスとのお知らせ。加えて横浜から参加の友人は昨年末にリストラ、再就職はしたものの年収激減で不参加。東京から参加の友人と筆者の2人となった。ちなみにこの友人は中国出張と子供の運動会で2回不参加、24回目の日本グランプリだ。

 昨年、筆者は報道エリアで撮影していたので購入した自分の席には1度も行くことができなかった。今年はFIAの取材パスとカメラマンエリアのタバードを支給されたので、微妙に自分の席には行けない予感。息子が大学生になり金曜は授業がないというので、2003年以来9年ぶりに息子を連れて観戦となった。

 記憶は薄いが当時は小学生以下は遊園地の入場券で観戦することができ、日曜の朝にフリー走行があったので3歳年上の娘も連れて土日車中泊で観戦していた。息子は幼稚園から小学4年まで数年間F1を観戦しているが、途中1度、娘が友達を家に呼んでフルーツポンチを作るという話しに誘惑され欠席している。F1に優るフルーツポンチ……恐るべし。

2001年、2002年の写真。古い鈴鹿もジャガーも懐かしい。現在娘は大学4年、息子は大学1年

 名古屋南部在住の筆者は鈴鹿サーキットへ行く場合、伊勢湾岸道の名港潮見IC(インターチェンジ)から高速に乗りみえ川越ICを降りて国道23号を通るルートだ。金曜日は平日なので四日市方面は通勤ラッシュの渋滞がある。今年は例年より1時間ほど早く5時15分に名古屋の自宅を出発。みえ川越ICの出口渋滞もなく5時45分に国道23号線に入り、四日市の渋滞もなく鈴鹿市内へ。柳ランプウェイを左折して市街地に入り24時間営業のマックスバリュー鈴鹿中央店で買い出し。7時前にサーキットの北西、道伯町のセブンイレブン近くの民間駐車場に到着した。

 ここ数年利用している駐車場で、ご主人の携帯に前日に2台分を連絡済み。東京からの友人は朝4時頃には到着していた。ちなみに道伯町付近は民間の駐車場が点在している。帰りの渋滞を考慮すると名古屋方面、関東方面から観戦する人にはお勧めのポイントだ。

 今年はほぼブログなこの記事を読んでいただいた方への感謝の気持ちとして、微妙な裏道情報を記載したい。知人に聞かれるとGoogle Mapsに経路を入れて教えたりするのだが、さすがに記事で公開するのもどうかと思うので、コンビニの名前とか目印になるもので、調べればルートが想像できるようにと思っている。

いざ、カメラマンエリアで撮影

GPスクエアのカメラマンエリアの受付

 ここで積んできた自転車2台を降ろし友人と息子はサーキット場内へ。筆者は1コーナー裏の交通教育センターで取材パスを受け取り、その足でグランドスタンド裏のGPスクエアにあるカメラマンエリアの受付でビブスを受け取り取材体制は整った。F1日本グランプリでは、アマチュアカメラマン向けにカメラマンエリアチケットが販売されており、今年のCar Watch編集部からの依頼は、「カメラマンエリアチケットを体験して、記事にしてね」というものだった。Car Watchが創刊されたのは2008年、それ以前は、アマチュアカメラメンとして鈴鹿を撮り続けていたから、依頼があったのだと思う。本記事でカメラマンエリアと表記する場合、特別な断りのない限り、このカメラマンエリアチケットで撮影のために入場可能な個所を指す。

 自由席が多数あった2006年以前は、バラバラに来た知人同士の金曜午前の待ち合わせはスプーンカーブだった。まずはビールならぬまずはスプーンといった感じだ。現在は全席指定だが、金曜はグランドスタンド以外は自由席。人気の高いヘアピン常設席が比較的空いている金曜午前中の定番ポイントとなっている。

 交通教育センターで本誌連載「オグたん式『F1の読み方』」でお馴染みの小倉茂徳氏と会いご挨拶。再び自転車に乗りヘアピンに向かった。しかし、ここでまたまた不幸が訪れた。シェルのスタンドのある鈴鹿サーキット前の交差点に差しかかると自転車のリアタイヤに異変、スローパンクチャーだ。

 残りわずかな空気で逆バンクゲートまでゆっくり坂を下り、デグナー東ゲートの駐輪場で自転車を放棄。残りは徒歩で西ストレートゲートまで移動。それでもセッション開始1時間前にはヘアピンにたどり着いた。

 友人と息子はレース情報端末「FAN VISION(旧Kangaroo.tvhttp://car.watch.impress.co.jp/docs/special/20081015_37920.html)を借りるのに時間がかかり筆者の方が先に到着。FAN VISIONは3日間借りると1万円弱。金曜だけならデポジットは必要だが無料とのこと。大学生で金なしの息子もこの日はFAN VISIONを持っての観戦となった。フリー走行1回目が始まる頃には、平日の金曜だがヘアピンの常設席、仮設スタンドは満席に近い状態となった……素晴らしい。

FAN VISIONがあると大型ビジョンのない席でも映像を見られるヘアピン常設席、その向こうの仮設スタンドもほぼ満席

 カメラマンエリアは、今年からヘアピンを含むすべてのカメラマンエリアに入れるタバードと、ヘアピン以外のカメラマンエリアに入れるタバードに色分けされた。その甲斐もあって丁度よいくらいの人数が常設席下に並んでいた。

 ヘアピンのカメラマンエリアは進入側、正面、立ち上がり側の土手と常設席下、200R側と大きく5カ所設置されているが、常設席下以外は数えられるくらいの人数だった。

常設席下のカメラマンエリアヘアピン進入側のカメラマンエリア
ヘアピン正面のカメラマンエリア常設席と仮設スタンドの間にもカメラマンエリアが設置されていた

 筆者は常設席下の200R側を最初の撮影ポイントとした。セッション開始。最初はインスペクションで全車コースに出るが、ほとんどのマシンはピットに戻りマシンチェックを行うため20分くらいはマシンの走行は少なめとなる。

 まずはヘアピンから立ち上がってくるマシンをシャッター速度1/320秒で撮り始める。これくらいのシャッター速度で撮ればタイヤは回転しているように写る。フォーミュラカーの場合はあまり速いシャッター速度で撮影するとタイヤのトレッド面がハッキリ写って動きのない写真になってしまう。撮影中は気付かなかったが、撮った写真を見るとバトンだけバイザーがクリアで顔が写っていた。

バトンを撮った写真の元画像をリサイズ。ヘルメット狙いのため前が少し切れた顔が分かるようにトリミングしてフォトギャラリーに掲載した写真(1920×1080ピクセルで掲載)

 撮った写真は最終的にフォトギャラリーとして掲載している。今回は小林可夢偉が表彰台に立ったので「小林可夢偉、F1日本グランプリ表彰台記念 フォトギャラリー(http://car.watch.impress.co.jp/docs/news/20121009_564862.html)」と「2012 F1日本グランプリ フォトギャラリー(http://car.watch.impress.co.jp/docs/news/20121016_566243.html)」の2本立てだ。

 拡大写真については、Tv(シャッター速度)、Av(絞り数値)などのEXIF情報を残してあるので、撮影時の参考にしていただきたい。今年は「小林可夢偉、F1日本グランプリ表彰台記念 フォトギャラリー」の最後の1枚だけドライバーズパレードをグリッド上で撮っているが、それ以外は一般の観客の方と同じカメラマンエリアとスタンドで撮った写真なので、この程度は誰でも撮れるという見方もできるし、この程度しか撮れないという見方もできる。

 この撮影ポイントではヘアピンの立ち上がりでマシン全体がフレームに入るところから、前後がフレームアウトするところまで連写。シャッター速度1/320秒から1/160秒。それをレタッチにより4つほどのバリエーションを持たせた。先ほどのバトンはアップ。次の3点はノーズまで、フロントウィングまで、マシン全体と少し印象の異なる絵としてフォトギャラリーに掲載してる。

元画像とノーズでトリミングし掲載した画像(右は、1920×1080ピクセルで掲載)
元画像とフロントウイングでトリミングし掲載した画像(右は、1920×1080ピクセルで掲載)
元画像とマシン全体を入れ掲載した画像(右は、1920×1080ピクセルで掲載)

常設席左側の土手からヘアピン方向。金網は黒のつや消しで塗装されている

 セッション開始から50分。序盤は走行が少なかったので実質は30分程度撮影し、同じ常設席の進入側の土手に移動した。ここはヘアピンのクリッピングポイントを通過するマシンを正面から撮ることができる。この辺りの金網は金網越しに取った時に色が被らないように黒のつや消しで塗装されている。できれば、2コーナー、逆バンクあたりの金網も同様な対策をして欲しいものだ。

 ここもシャッター速度1/320秒。車速も遅くデジタル一眼レフカメラのオートフォーカス性能を持ってすればシャッターを切れば自動的に写る鉄板のポイントだ。ここでもクリッピング手前から真正面まで連写し、レタッチ段階でバリエーションを持たせている。Car WatchのフォトギャラリーはフルHDでアスペクト比は16:9。現在のF1はリアウイングが高いので真正面の絵は16:9の比率とフィットしにくい。このあたりも影響している。

元画像とリアウイングをトリミングした画像(右は、1920×1080ピクセルで掲載)
元画像とサイドポンツーンまででトリミングした画像(右は、1920×1080ピクセルで掲載)
元画像と16:9にフィットさせ全体を入れた画像(右は、1920×1080ピクセルで掲載)
元画像と正面の画像と縁石でバランスをとった画像(右は、1920×1080ピクセルで掲載)

 ヘアピン進入、立ち上がりをスローシャッターで少し撮って、セッション残り15分ほどで引退から復帰したEOS 40Dの登場だ。ヘアピンの立ち上がりの縁石付近を斜め後ろから撮る。最初は普通に撮っていたが、マクラーレンとメルセデス、2チームの銀色のボディが逆光を受けキラキラと反射していることが気になった。

ヘアピン立ち上がりの縁石をこの位置から撮る普通に撮った元画像とレタッチした画像(右は、1920×1080ピクセルで掲載)

 SUPER GTのPokka1000kmの様に夕方まで行われるレースでは夕日が逆光になったときにシルエット調の写真を撮っている。太陽の位置は高いが上手くレタッチすれば面白い絵になりそうな予感がした。

Pokka1000kmでヘアピン進入側から撮影(1920×1080ピクセルで掲載)

 ここで露出補正を1絞りほどアンダーにして撮影。フィルムだともっとアンダーにしなければならないが、ピッタリ合わせこむのは難しいため、ある程度アンダーにして後はレタッチで合わせる作戦だ。通常のレタッチではレベル補正を少し行う程度だが、この画像に関してはトーンカーブを細かく変更している。ところがここで普通にシャッター優先で撮った写真の中にメルセデスのボディの反射が強く、勝手にアンダーになった画像があった。それをレタッチした画像は今回のF1日本グランプリで撮った中でトップクラスのお気に入りとなった。

アンダーに設定して撮った元画像アンダーに撮れてしまった元画像
フォトギャラリーに掲載した画像(1920×1080ピクセルで掲載)
フォトギャラリーに掲載したレタッチ画像。お気に入りの1枚だ(1920×1080ピクセルで掲載)

 モノトーンの中に車載カメラ、ヘルメット、グローブ、縁石の赤、ボディ横と縁石外のグリーン、ボディーのシルエットの美しさ、なかなかよい感じだ。EOS 40Dだから撮れたということはないが、一旦は防湿箱に追いやられた40Dが「まだまだ俺は使えるぜ」と反骨精神を見せた1枚となった。被写体がシューマッハというのも悪くない。

 午前のセッションはこれで終了。徒歩でデグナー東ゲートの駐輪場へ行きパンクした自転車を逆バンクゲートの中の駐輪場に移動。毎日ピットビルのメディアセンターに顔を出すように言われてるので逆バンク裏のオアシスからGPスクエア、パドックトンネルを抜けメディアセンターへ。国内レースと違いパドックにいる人の数は少ない。

 メディアセンターの滞在時間はわずか。GPスクエアで「鈴鹿を駆け抜けたF1マシン展」をチラ見してC席に向かった。友人と息子は一足先にC席上段に座っていたが、筆者は午後のセッションを2コーナーからS字、逆バンクを尺取り虫的に移動して撮る予定。

GPスクエアに設置された「鈴鹿を駆け抜けたF1マシン展」ホンダエンジンを搭載した数々のマシンが展示された
多くのファンが撮影していたステージには若きドライバー達
定番ポイントにカメラマンが集まっていた。報道エリアは前方のガードレールの手前

 セッション開始前に2コーナーが撮影できるポイントに移動した。ここは国内レースでも定番の撮影ポイント。土曜からは指定席、望遠レンズが使用不可となるため金曜しか撮れないポイントでもある。ポスト裏、2重金網の切れ間に合わせカメラマンの列ができていた。

 午後のセッションが始まった。1年ぶりにこの撮影ポイントに来たが、エクステンダー(テレコンバーター)を持ってこなかったことに気付いた。普段撮影している報道エリアはポストよりコースに近いガードレールの手前。今シーズンを振り返ってもEOS 5D Mark IIIのレビューで使用しただけで、普段は使用することがない。300mmのレンズでは豆粒のようにしか写らなかったので、少し撮ってS字の方へ移動した。後で確認するとギリギリだがフォトギャラリーで使用することはできた。

元画像の右下にポストの屋根トリミングしてフォトギャラリーに掲載した写真(1920×1080ピクセルで掲載)

 C席のS字側に移動しS字手前のストレートエンド、S字入り口の左ターンを流し撮りしようと思うが、久々のスタンドからの撮影でイマイチ撮影ポジションが決まらない。ほかのカメラマンや観客の邪魔にならないように上下左右にポジションを移しながら最初はズームレンズを200mmにして撮影。途中で300mmに交換して撮影。シャッター速度は1/125秒で撮影した。

C席S字側でズームを200mmにして撮影(右は、1920×1080ピクセルで掲載)
ポジションをさらにS字側に移しレンズを300mmに変更して撮影(右は、1920×1080ピクセルで掲載)

 なんとなくしっくり来ないまま、C席とD席の間にあるカメラマンエリアに移動。下段右側あたりで撮影を始めると急にしっくり来始めた。撮っているのはS字進入の左ターン。しっくり来た理由は、おそらくマシンの車速が一定だからだと思われる。

 流し撮りをする際、マシンの車速が一定ならレンズを振る速度も一定となる。実際のマシンは加減速をするので、無意識にそれに合わせてスイングを行っている。以前ヘアピンの立ち上がりで加速しかけたマシンが急減速したことがあった。加速すると思ってレンズをスイングしているので当然フレームアウト。他のカメラマンも同様だったと思われ、回りから「オォーッ」と声が上がった。ようするに、ファインダーで見てレンズをスイングしているのではなく、動きを予測してスイングをしながらファンダーで見て微調整を行っているということだ。

 コーナーでは車速の変化は小さいが、コーナーの手前のブレーキングポイントは攻めているマシンとそうでないマシンとで車速や減速を開始する位置が異なっている。鈴鹿サーキットの場合、S字の進入、ヘアピンの進入、スプーンの進入などがこれにあたる。F1はその差が大きく、合わせきれない筆者はしっくり来なかったと思われる。

 カメラマンエリアはさまざまな角度で撮影できる。C席の観客向けに目の前の大型モニターも設置してある。決勝はここで観戦しながら撮ることにし、早々に撮影を切り上げ逆バンク方面に向かうことにした。

 S字から逆バンクへ続くD席に移動。まずはD席4エリア、S字2つ目の左ターンを見下ろせるあたりで撮影を再開した。空いていればスタンド中段の通路付近が筆者お気に入りの撮影ポイントだが、混雑していたので最上段から撮影することにした。

 鈴鹿サーキットで初心者が流し撮りをするなら、こことWTCCで設けられる2コーナーイン側の激感エリアをお勧めしたい。マシンとの距離感がよく、マシンが美しく写る撮影ポイントだ。レンズも200mm以下で充分撮ることができる。特にここS字は背景がアスファルトと縁石、芝生とシンプルなのでシャッター速度を1/250秒あたりまで上げてもそこそこスピード感が得られる撮影ポイントだ。

カメラマンエリアから撮影。シャッター速度は1/125秒。安定してファインダーにとらえられるようになったD席最上段から163mm、シャッター速度1/125秒で撮影
レタッチしてフォトギャラリーに掲載した画像(1920×1080ピクセルで掲載)
レタッチしてフォトギャラリーに掲載した画像(1920×1080ピクセルで掲載)

 この日最後は逆バンクだ。逆バンクも撮影ポイントとして人気が高く、スタンド上段にはカメラマンエリアが設置されているので大混雑していた。最下段にも撮影ポイントがあるが、隙間がなさそうな状況だった。カメラマンエリアに隙間を見つけ少し撮影したところでセッション終了。一応予定どおり2コーナーから逆バンクまでの撮影を行うことができた。

逆バンク上段は大混雑。青いビブスはヘアピン以外のカメラマンエリア用最上段のカメラマンエリアから163mm、シャッター速度1/60秒で撮影

レタッチしてフォトギャラリーに掲載した画像(1920×1080ピクセルで掲載)

 さて、話しはF1から離れるが、鈴鹿サーキットでは今週末WTCC(世界ツーリングカー選手権)が開催される。Car WatchではWTCCフォトコンテストに併せ「WTCCフォトコンテスト」攻略ガイド(http://car.watch.impress.co.jp/docs/news/20121015_565393.html)を掲載した。この日撮影した2コーナーから逆バンクの撮影ポイントは図を入れてより詳しく紹介している。サーキット撮影の初心者やこれから撮ってみたいという方は参考にしていただきたい。

「WTCCフォトコンテスト」攻略ガイドでは図を入れて詳しく解説

鈴鹿と名古屋間の移動のノウハウなど
 ここまでが初日の撮影記。この先は名古屋方面への交通情報となる。関西方面の方やクルマを利用しない方は関係ない内容となるのでご了承いただきたい。

 セッション終了後に逆バンク裏のオアシスで友人と息子と合流。通常なら自転車で道伯町の駐車場へ移動するのだが、パンクしたのでイレギュラーな対応が必要だ。

 まずは逆バンクゲート付近の警備の方に事情を話しパンクした自転車の積み込みの許可をもらった。パンクした自転車と撮影機材を息子に任せ、筆者は息子の自転車に乗り手ぶらで駐車場へ移動。その自転車は駐車場に預け、クルマで逆バンクゲートに戻り、パンクした自転車と機材を積み込んだ。

 金曜日なので土日に比べればサーキット周辺の渋滞は少ない。とは言えシェルのスタンドがある鈴鹿サーキット前交差点から4方に延びる道は必ず渋滞する。おそらくサーキット道路は鈴鹿インター向かう方向も、白子駅方面に向かう方向も渋滞は多め。サーキットホテルの前から道伯町、平田町方面はやや少なめ、一番空いているのは逆バンクゲートから御薗町方面に向かう道だろう。

 16時半頃に逆バンクゲートから御薗町方面に向かい最初の信号付近で混み始めたから左折して中勢バイパスへ。カーナビは左折してサーキット道路方面を示すがそこに行ったら渋滞にはまってしまう。遠回りとなるが右折してグルッと大回りしF1マートの1つ先の交差点を目指す。

 渋滞するサーキット道路を横切り、筆者のカーナビに表示されない1~2年前にできた新しい道を抜け富士電機に突き当たるまで進み右折。次の信号を左折し空いていればマルハンある交差点から国道23号に入ろうと思ったが、そこも渋滞していたので右折して少し手前で23号に合流した。ここまでは完璧。

 国道23号はやや混雑。四日市手前で渋滞するパターンだ。鈴鹿大橋の手前で海側の道に逃げれば小倉橋までは快調に進むことができる。橋を越えると平日は帰宅ラッシュで混雑が始まる。踏切手前で左折して線路脇の道へ逃げ塩浜駅の前を通過。地元の方と一緒に細い道をゴソゴソっと北上した。

 現在、自動車学校で仮免まで進んだ息子は細い路地を見て「絶対無理」と一言。とは言え7~8台のクルマが車列となっているので定番の抜け道と思われる。地元の方は突き当たりまで進んで踏み切りを越え市内へ進むようだが、筆者は少し手前で右折して本道に戻りさらに北上。

 橋を越えたところで混雑していたので、右折して四日市港側から大回りし吉野家の一つ手前の交差点で国道23号に戻った。ここから流れるかと思ったが四日市競輪のあたりまで渋滞していたので左折して踏切を越え西側の道に移動。橋を越えたところからゴソゴソっと細い道を抜け競輪場の先の信号で国道23号に復帰。後は順調に流れみえ川越ICを17時50分に通過、18時20分くらいに帰宅した。

 パンクした自転車を降ろし、カメラのバッテリーを充電、録画したスカパー!の中継を見始めるがすぐに睡魔に襲われ20時前に爆睡。自転車のパンクというトラブルはあったが何とか初日は終了した。

 次回後編は土曜の予選、日曜の決勝をお届けする。

(奥川浩彦)
2012年 10月 18日