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奥川浩彦の「撮ってみましたF1日本グランプリ 2015」(後編)
(2015/10/28 00:00)
Car Watchの創刊から毎年お届けしている「撮ってみましたF1日本グランプリ」の後編は土曜日、日曜日の撮影記に加え、民間駐車場の情報、決勝後の渋滞状況、筆者が最近興味を持っている4Kフォトなどについてお伝えしよう。相変わらずの長文なので、忙しい方は気になるところだけ読んでいただければ幸いだ。
前編は走行が危ぶまれるほどの雨だった金曜日の様子をお届けしたが、土曜日、日曜日は天気予報どおり好天に恵まれた。
「撮ってみましたF1日本グランプリ 2015」(前編)
http://car.watch.impress.co.jp/docs/news/20151020_726000.html
例年であれば筆者の仕事はフォトギャラリーとこの撮影記の執筆。なので、フォトギャラリーに掲載する写真を3日間かけて撮影している。国内レースも含めフォトギャラリーに掲載している枚数は50枚から70枚ほど。仮に60枚とすれば1日20枚がノルマだ。走行時間を加味すると金曜日は3時間、土曜日は2時間、日曜日は1時間半なので、金曜日で半分弱(3時間/6時間半)を消化したことになり、計算上は28枚がノルマとなる。
金曜日は雨だったので撮影枚数は少なめ。土曜日、日曜で巻き返したいと感じていた。最終的にフォトギャラリーに掲載した写真は66枚。その内、金曜日に撮影した写真は18枚。感じたとおりやや少なめだ。単純に枚数を増やすことは簡単だ。同じ場所で撮った写真はたくさん使えば数倍に増やすことはできる。
金曜日のFP1、逆バンクで横から流し撮りで撮った写真のうち、フォトギャラリーに掲載したのはフェルスタッペンとボッタスの2枚。同じように撮った写真は多数あるが、使用するのは2~3枚としている。以下のような同じような写真を並べることは避けている。
さらにフォトギャラリーについて言及すると、掲載する写真のサイズはフルHD(1920×1080ピクセル)。拡大写真にはExifの情報(撮影データ)を残してある。Exifの情報を見れば撮影したカメラ、レンズが分かるし、焦点距離、シャッター速度、絞り、シャッター速度優先/マニュアル露出などの設定も確認することができる。焦点距離に関してはトリミングをしているので、実際に掲載された写真の画角とは異なるため参考程度の情報だ。また、スローシャッターを切る際にNDフィルターを使用することがあるので、絞り値も写真によっては参考程度となる。
Exif情報を公開しようと提案したのはCar Watchの編集長。筆者もその考えに賛同し、長年この方法を取っている。おそらく世界的にも、各レースごとにフルHD、Exif情報付きの画像が大量に掲載されるWebメディアは貴重だと思われる。
Exif情報を公開する目的はサーキット撮影をする人に参考にしてもらうためだ。対象としているのは初心者、初級者。気になった写真のExif情報を見れば「シャッター速度1/30秒でこんな感じに撮れるんだ」と、自分で撮影するときの参考になるだろう。ベテランの人ははるかに素晴らしい写真を撮られているし、高級な機材を使われてる人も多いし、Exif情報がなくても写真を見ればどう撮ったかは想像が付くはずだ。
重視しているのはバリエーションで、20~30のバリエーション×1~3枚で約60枚が構成されている。バリエーション豊富な方が初心者、初級者の参考になるという考えだ。マシン(ドライバー)のバリエーションは厳密ではないが、上位入賞者は多め。これはサーキット撮影する人よりも壁紙として使いたい人を意識している。ちなみに、マクラーレン ホンダは順位の割に多めとした。
金曜日の撮影枚数が少なめ、かつ東コースのみで撮影したので、土曜日のFP3、予選は西コースのデグナー、ヘアピンなどで撮影し、枚数とバリエーションを稼ぐ作戦を立ててサーキットに向かった。
土曜日の渋滞と民間駐車場
土曜日のセッションは例年より遅く、12時からFP3が開始される。10時前に着けば十分なので、8時に名古屋市内のホテルで笠原一輝氏をピックアップした。デジタルカメラマガジンのスタッフはレンタカーで7時半に出発したとのこと。息子とその同級生は筆者より少し早く出発。高速道路は使わず、名古屋市内から国道23号で鈴鹿を目指した。
土曜日は四日市内の通勤渋滞はないが、サーキットに向かう人はグッと増える。伊勢湾岸道に乗ると四日市IC(インターチェンジ)-鈴鹿ICは渋滞5kmと電光掲示板に表示されていた。筆者は鈴鹿ICには向かわず、みえ川越ICを降り、国道23号で鈴鹿に向かういつものルートだ。23号に入ったところで先に出発した息子に電話すると、3kmほど後ろを走っていた。
国道23号は富洲原橋付近から渋滞。左側の抜け道に逃げ、1kmほど先で渋滞の続く列に合流。筆者が「50台くらい抜いたかなあ」と言うと笠原氏は「50台以上抜いたんじゃないですか」。止まりそうな流れそうな微妙な混み具合だったが、次の信号を右折してJR四日市駅付近まで抜けるルートを選択した。
右折車線に入るが対向車が多く、長い信号でかなり待たされた。走行車線は流れ始め「50台以上抜かれましたね」と笠原氏。結果としてはカインズホームのある2つ先の信号で右折する方が正解だったようだ。JR四日市駅手前で国道23号に、戻りその後は順調に鈴鹿市内へ。コンビニで買い出しをして9時半にサーキット入りした。
ETCの履歴や笠原氏に撮ってもらった写真で確認すると、みえ川越ICを8時27分に通過。鈴鹿サーキットのスポーツゲートに9時29分に到着した。コンビニに寄って約1時間、ホテルから1時間半はまずまずだろう。
今年も民間駐車場の様子を確認しておこう。サーキット道路の中勢バイパス手前の駐車場は金曜日、土曜日が2000円、日曜日は3000円。この駐車場は土曜日は空いていたが、日曜日は満車となっていた。その少し手前の駐車場は1日2,000円、2日間4000円、3日間6000円。中勢バイパスを過ぎ、サーキット直前のパチンコ屋さん(?)の駐車場は1日5000円。3日間なら1万5000円だ。
前日に確認した道伯町方面の駐車料金も1日2000~3000円。昨年最安値だった稲生高校の北側の駐車場は営業していなかったが、やや南に1日1000円の駐車場があった。徒歩でサーキットに向かうのはやや遠いが、自転車があれば問題なさそうな立地。自転車2台を積んでサーキットに向かった息子達はこの駐車場に2日間2000円で駐車した。土曜日の9時半過ぎで残り2台分の空きしかなく、ギリギリで確保できたらしい。
ちなみに、息子には前日に詳細な抜け道情報を用意した。国道23号の渋滞を避けるルート、鈴鹿市内の渋滞を避けるルートを往路、復路それぞれ6~7枚に分割してプリントアウト。同じルートをGoogleマップのリンク集にしてLINEで送信。時々ミスコースはあったようだが、助手席の同級生がナビをして、行きも帰りも楽勝だったと言っていた。
奇跡的? 1時間のセッション中に4個所のカメラマンエリアで撮影
土曜日に筆者が立てた撮影プランは、FP3が130R→デグナーイン側上、デグナーイン側下→ヘアピンアウト側と移動して撮影。予選は立体交差下→デグナー2つ目アウト側→デグナー1つ目アウト側と移動して撮影。一気にバリエーションと枚数を稼ぐつもりだった。言葉では分かりにくいので図にすると、FP3が青線、予選が赤線のルートとなる。
結論から言うと、この日は青ルートの撮影はできなくなる。青ルートで2014年のF1グランプリで撮った写真の一部を掲載しよう。これ以外にも130Rを横から流し撮り、シケインに進入するマシンのバックショット、デグナー1つ目の流し撮り、ヘアピンクリッピングポイントのバックショットなど、バリエーションが稼げるルートだ。
サーキットに着くとデジタルカメラマガジンの副編集長から「晴れたから昨日と同じ撮影をやり直しましょう」と電話。一瞬固まったが作戦を立て直すこととした。FP1と同じくE2上段→逆バンク→S字では、ウェットとドライの差はあれ似たような絵になってしまう。デジタルカメラマガジンが誌面を作成するためにやり直したいという意図は理解できるが、同じ場所の撮影で2セッションを使うとフォトギャラリーの枚数は激減しそうだ。いつもどおりのフォトギャラリーを構成するためには西コースの撮影も優先したい。
1時間のFP3でデジタルカメラマガジンの誌面とCar Watchのフォトギャラリーを両立させる方法を模索した。最初に思いついたのは、E2席上段の超望遠レンズ体験コーナーで少し撮ったら、筆者だけ電動折りたたみ自転車でデグナーに移動するルート。デグナーのアウト側はダイヤル錠付きの扉があり、報道エリアに入ることができる。
次に考えたのはデグナーアウト側の報道エリアではなく、ヘアピンのカメラマンエリアに移動するルート。同じくE2席上段で撮った後、西ストレートゲートへ自転車で移動し、そこから徒歩でヘアピンまで向かう。西ストレートゲートからヘアピンまでは登りがきつく、息切れしそうなルートだ。
前日、筆者が撮影する姿を副編集長が撮っていたので、カメラマンエリアで撮影を行うなら2人で移動するのが理想だ。デジタルカメラマガジン編集部が借りたレンタカーは逆バンクゲートから数十mのオアシス出展業者駐車場に駐めてある。このレンタカーをデジタルカメラマガジンの編集長が運転して西ストレートゲートまで筆者と副編集長を運んでもらえば、セッション中に2人でE2席上段からヘアピンのカメラマンエリアへ移動して撮影ができそうだ。
さっそくメディアセンターにいる鈴鹿サーキットの広報の人に事情を話し、西ストレートゲートに入れる駐車券を用意できないかと相談。すぐに確認を取ってくれて、西パドック駐車券なら用意できると、いつもながら機敏かつ柔軟な対応をしてくれた。ちなみに西パドックとは、西ストレートのピットの外にあるパドックエリア。F1開催時はS-FJなどサポートレースのパドックとして利用されている。
副編集長に作戦を電話で伝えるが、「西ストレートゲート」「西パドック駐車場」の位置関係が理解されず細かな話しが通じない。西パドックの駐車券は交通センターの受付にあるとのことだったので、筆者はパドックからメディアシャトルで交通センターに向い、そこにレンタカーで迎えに来てもらうことにした。
西ストレートゲートからヘアピンのカメラマンエリアへセッション中に移動するので機材は極力少なくしたい。こんなときに最適なのが前編で紹介した「EF100-400mm F4.5-5.6L IS II USM」だ。前日のFP1と同様、レンズ1本だけをボディーにセットし、1脚を装着してパドックを後にした。
交通センターで編集長にピックアップしてもらい、念のため西ストレートゲート、西パドック駐車場を下見。この段階では2人は西ストレートゲートで降ろしてもらって、編集長はセッション終了まで西パドック駐車場で待機してもらうつもりだった。色々相談するうちに逆ルートで意見が一致した。ウェットながらE2席上段は前日に撮影済み。ヘアピンで先に撮影し、E2席上段へ移動すれば、何かトラブルがあってもへアピンとE2席上段の写真が残せるという判断だ。
次はE2席上段への徒歩ルートの確認。E2席付近には逆バンクゲートとデグナー東ゲートがあるが、検証の結果、デグナー東ゲート→逆バンクオアシス→E2席上段が最適と判断した。この間に副編集長にはカメラマンエリアのタバードを準備してもらい、編集長、副編集長、筆者の3人でE2席最上段に集まり移動方法の最終確認を行った。
FP3のセッション前に編集長の運転で西ストレートゲートへ。編集長は西パドックで待機してもらって副編集長と筆者は徒歩でヘアピンに移動した。ヘアピン常設席の下段に用意されたカメラマンエリアは隙間がないほど混雑していたが、これは想定内。筆者は常設席の脇、200R側のエリアで撮影の準備を始めた。
ここでプチ事故が発生。副編集長が土手で滑落した。鈴鹿サーキットの土手は粘土質で滑りやすい。筆者が鈴鹿サーキットに通い出した30数年前は、2コーナー~S字にスタンドはなく全て土手。雨が降ると多くの人が滑落し、無残なほどに泥だらけとなった。久しぶりに泥まみれになった人を見てしまった。
ほどなくFP3のセッション開始。前日が雨で周回数が少なかったせいか、各チーム積極的に周回を重ねてくれた。ヘアピンから立ち上がり、縁石に沿って加速するマシンを撮影する。副編集長には10分経ったら知らせてほしいと伝えた。
最初はクリッピングポイントから縁石に向かって膨らんでくるマシンが正面を向く辺りを、シャッター速度1/400秒で撮影。200R側の土手からマシンはかなり遠いが、焦点距離400mmなのでフルHDなら充分のサイズで撮ることができる。最終的にフォトギャラリーには掲載しなかったので、リサイズだけした元画像とフルHDサイズでレタッチした画像を掲載しておこう。
フォトギャラリーで使用した写真は縁石に沿って加速するマシンをシャッター速度1/160秒で撮影したもの。マシンを大きくフレーミングしたので、背景は少なめとなり、シャッター速度が1/160秒と速めでもそこそこスピード感は出る。
そこそこ撮ったところで副編集長から「10分経過」の声。切りのよいところまで撮った後、土手を降りて金網付近で他のカメラマンに背を向け、スプーン方向へ走りさるマシンを背後から流し撮り。焦点距離を241mmに調整し、シャッター速度は1/60秒。実質3分、15台のマシンを撮ったところでタイムリミットとしていた“セッション開始から15分”が経過した。この撮影は思った以上に成績がよく、6台ほど使える写真が撮れてその内2台をフォトギャラリーで使用した。
これでヘアピンの撮影は終了。ヘアピンのカメラマンエリアは大人気の常設席下だけでなく、常設席の左右の土手、ヘアピン進入側、ヘアピン正面、常設席から少し離れたスプーン側の土手と、ヘアピンを取り囲むようにいくつも設置されているが、今回は立ち上がり側のみ撮影して西ストレートゲートに向かった。
副編集長が「奥川さん、スマホが使えない。編集長に電話して下さい」とひと言。先ほどの滑落でスマホの言語が変わり、連絡先が呼び出せなくなったらしい。パドックで待機している編集長に電話してゲートに移動してもらった。ゲートに向かう途中でケータイWatchの編集長とバッタリ。ゆっくり話す時間はなく「お~コンニチハ~」と声を掛け合い、ゲートで待つレンタカーに乗車。デグナー東ゲートまで1分も掛からない距離をクルマで移動。急ぎ足でE2席上段の超望遠レンズ体験コーナーに駆け上がった。
Exifで確認すると、ヘアピンの最後の1枚が12時15分29秒。E2席上段の最初の1枚が12時29分40秒。この移動には14分強を要していた。おそらく、クルマを自転車に置き換えてもプラス1分程度。一般の方でもセッション中のへアピン→逆バンクの移動は可能だ。この日お借りしたレンズはヨンニッパ(EF400mm F2.8L IS II USM)。2日目なので最初からスンナリ振ることができた。
ここでは14分ほど撮影。欲張りな筆者は階段を駆け下り、逆バンクD1席上段のカメラマンエリアに移動した。逆バンクを目の前とするカメラマンエリアはヘアピンに次ぐ人気撮影ポイントだが、運よく隙間があった。隙間があった理由は目の前の電柱が邪魔だからだ。
セッションの残り時間は14分。メルセデス、フェラーリなど、上位陣はピットイン。走っているのはルノー勢とフォースインディアだけでマシンの走行は少なめ。シャッター速度1/100秒で3分間で8台を撮影して、さらにS字のカメラマンエリアを目指した。
余談となるが、ここ数年で流し撮りの確率が上がってきたと思っている。以前ならシャッター速度1/125秒は何周か撮らないと使える写真が残せなかったが、最近は走行台数や撮影条件にもよるが1~2周でも大丈夫な気がしている。マシンを選ばないという前提だが、1/60秒、1/30秒でも長時間粘って撮影しなくてもそこそこ撮れそうな感じだ。才能のある方や上手な方はそれが普通なのかもしれないが、筆者自身の過去と現在を比較して変化を感じている。筆者は「下手は数撮って当てる」を基本としているので連写でバンバン撮る。筆者は現在54歳。50歳を過ぎても人間は上達するんだ、と思いながら撮影を続けている。
セッション時間は残り5分。C席とD5席の間にあるカメラマンエリアで撮影を開始した。このエリアはS字入り口の左ターンから次の右ターンが目の前で、流し撮り、正面、バックショットとバリエーションが撮れる撮影ポイントだ。今回は残り時間がないので入り口の左ターンを流し撮り。焦点距離300mm、シャッター速度1/100秒でマシンを斜め前から撮影。ヘアピン、E2席上段、逆バンクD1席上段、S字と1時間でカメラマンエリア4個所をハシゴする撮影が終了した。
ヘアピンとE2席上段の2個所で撮れれば十分と思っていたが、まさか4個所も撮れるとは、筆者自身が驚いた。まさに奇跡的な移動を行ったFP3だった。パドックに戻り鈴鹿サーキットの広報の人にこの顛末を話すと「鈴鹿を知り尽くしていないとできない芸当ですね」と言われた。
デジタルカメラマガジン11月号には、金曜日に撮った写真が1枚、このセッションで撮った写真が4枚掲載されている。熱田護カメラマンの芸術的な写真も多数掲載されているのでご覧いただきたい。
モータースポーツ撮影ガイド
話しは戻るがセッション前、E2席上段にいるときにCar Watchの読者様から声を掛けられた。「Car Watchの奥川さんですか? もてぎの撮影ガイド参考になりました」とのこと。ツインリンクもてぎの近くに住まわれているそうで、WTCCフォトコンテスト用に書いた撮影ガイドが役に立ったとのことだった。ヘアピンに移動する前でゆっくりお話しする時間がなかったのが残念。どこかのサーキットで見掛けたら、また声を掛けていただきたいと思っている。
筆者は長年Car Watchで初心者、初級者向けにサーキット撮影の方法や鈴鹿サーキットの撮影ポイントの紹介をしてきた。いつか鈴鹿サーキット以外の撮影ポイントを紹介する記事も書きたいと思っていたが、ようやく今年、富士スピードウェイとツインリンクもてぎの撮影ガイドを掲載することができた。
国内でSUPER GTなどの4輪ビッグレースが行われるサーキットは6つ。特に鈴鹿、富士、もてぎはF1、8耐、WEC、WTCC、MotoGPといった国際レースも開催されるサーキットで、日本を代表するサーキットと言える。その3つのサーキットの撮影ガイドを掲載できたことを、筆者自身は1つの区切りだと感じている。逆の言い方をすると、SUGO、岡山、オートポリスは距離的な問題、コスト的な問題があるので、筆者が撮影ガイドを執筆することはないだろうと思っている。
筆者の望みは1人でも多くの人にモータースポーツに興味持っていただき、1人でも多くの人がサーキット撮影の泥沼に足を踏み入れていただくことだ。それは釣り好きが「釣りはいいよ……」と誘ったり、野球好きが「生でナイターを見に行くと打ったボールが白く輝いて見えてさ……」と野球観戦の魅力を語るのと同じで、30数年間続けてきたサーキット撮影の魅力を伝えたいと思ってきた。その活動の1つがサーキット撮影ガイドだ。
たまたま読者の方が筆者の撮影ガイドのリンク集を作成されているのを見て、筆者も自身のホームページに富士、もてぎを加えた撮影ガイドのリンク集を作ってみた。撮影方法などは同じような内容が重複するし、鈴鹿サーキットの撮影ガイドは何度も繰り返し執筆しているが、初心者、初級者、初めて鈴鹿、富士、もてぎへ撮影に行く方にはそれなりに参考となることを期待している。
モータースポーツ撮影ガイド
4Kフォト
筆者が自宅で使用しているディスプレイは27型、2560×1440ピクセル。筆者自身はかなり老眼が進んでいるので、文章を書いたりWebを見たりするには丁度よいサイズだ。撮った写真を確認するときも、EOS 7Dの横方向の解像度は5184ピクセルなので写真の約半分が等倍表示で確認できる。EOS 7D Mark IIは解像度が5472ピクセルなので写真の半分弱(47%)が等倍で確認可能だ。その範囲に被写体(=AFポイント)が入っていれば、画像を動かすことなくピントやブレをチェックできるので、1366×768ピクセルのノートPCと比べると格段に作業効率は高い。また、フォトギャラリーで使用するフルHDも等倍表示でレタッチができるので、現状はこのディスプレイに大きな不満はない。
だが、少し前から筆者は4Kフォト(3840×2160ピクセル)に興味を持っている。きっかけはPC Watchの「4K修行僧」の連載だ。連載が始まった直後に編集部に寄って現物を見せてもらったが、筆者の老眼では4Kディスプレイでスケーリング100%表示すると文字はほとんど見えなかった。だが、筆者には見えないが若い方には見えるのも事実。徐々に高解像度ディスプレイを使用する人は増えていくはずだ。
4K修行僧
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/column/4kshugyousou/
一方、デジタル1眼レフは高解像度化が進み、EOS 5Dsは8688×5792ピクセルの写真を撮ることができる。写真を等倍表示すると4Kディスプレイでさえ半分も表示することができない。ここまで高解像度になると極端な感じはするが、EOS 7D Mark IIでフレームいっぱいに撮った写真を1/3に縮小してフルHDでお見せしているのはもったいないと感じていた。
今回、フォトギャラリー用のフルHD写真を加工するのと同時並行で4Kフォトを作成してみた。実際に作業してみると、フルHDと4Kには大きな差を感じた。ザックリ言うとフルHDに縮小すれば見えないブレやボケが4Kではハッキリ見えてしまう。よりクオリティの高い素材を撮らないと4Kフォトで見せることはできないと言うことだ。フォトギャラリーに掲載した写真のうち何枚かは4Kでは使えずやや枚数は少なめだが、試験的に作成した4Kフォトギャラリーを筆者のホームページに掲載したので、興味のある方は見ていただきたい。
4Kフォトギャラリー
原富治雄氏とカメラマンエリアについて雑談
FP3でデジタルカメラマガジンの撮影は全て終了。メディアセンターに戻り、用意されたお弁当を食べて午後の予選に備えた。ちなみに、F1開催時は国内レースよりもメディアセンターの食事が豪華になる。国内レースではお弁当が1種類なのだが、F1開催時は外国人ジャーナリストが大勢いるので2~3種類のお弁当が用意される。加えてクロワッサンやフランスパン、菓子パンなども食べ放題。お陰で筆者のメタボ体型は加速した。
予選は15時スタートだが、コースを走行して西コースまで移動するメディアバスは14時20分発。食事を済ませ、急いで準備をしてバスに乗り込んだ。立体交差下で原富治雄氏とお会いしたので記事用に撮影させてもらった。セッション開始まで時間があったので、前日のセミナーの話などしばし雑談。カメラマンエリアは原氏の尽力によるところが絶大なので、これからもご活躍を期待している。
セミナーでカメラマンエリアについて原氏が参加者に要望を聞いたが、意外に参加者からの要望は少ない印象だった。原氏との雑談の中でも少し話をしたが、筆者はカメラマンエリアについていくつも要望を持っている。例えばC席のS字側(C3席)の最下段50~100mをカメラマンエリアとし、金網は黒く塗装してカメラホールをいくつか開けてほしい。D5席とD1席の最上段は現在カメラマンエリアとなっているが、D4席(S字2つ目左ターン)の最上段もカメラマンエリアには最適だ。
混雑する逆バンクD1席の最上段はカメラマンエリアを後ろに60~70cm拡大。U字溝を並べて前後2列で撮れるようにしてほしい。1脚が使える様に、U字溝は左右ではなく前後方向に設置希望だ。逆バンク最前列も2重金網のコース側のホールを増やし、観客席側の金網を黒く塗装すれば大人気撮影ポイントになるだろう。デグナー外のエキストラビューの最上段にも仮設スタンドを設置。ヘアピン進入側の土手も金網が高すぎるので、低めに改修するか土手に仮設台を設置してレコードラインに金網が被らないようにしてほしい。スプーン進入のブレーキポイントも仮設台、黒金網、カメラホールなどの工夫をすれば流し撮りの人気ポイントになると思っている。
予選は西コースへ
予選が始まった。予選は上位チームがQ1、Q2に3周しか走らない可能性があるので周回数は少なめ。大きな移動はできないので、立体交差下→デグナー2つ目アウト側→デグナー1つ目アウト側(赤ルート)で撮影だ。
Q1はデグナー2つ目からヘアピンに向かうマシンを立体交差下からサンニッパ(EF300mm F2.8L USM)で撮影。シャッターボタンを押せば撮れる撮影だ。10分ほど撮影したのでおそらく全車の写真を撮ることができた。フォトギャラリーで使用するのは2~3枚だが、バリエーション的に誰々の写真を増やしたいというとき、全車撮りをしておくと役に立つ。
Q1後半はデグナー2つ目のクリッピングポイント。F1開催時は看板が数多く設置され、普段撮っているポイントが撮影できなくなることがある。セッション前に時間があったので事前に下見を済ませておいたので、迷わずU字溝に乗り撮影開始。ここもEF300mm F2.8L USMでシャッター速度1/320秒で撮影した。
Q2はデグナー1つ目と2つ目の間の短いストレートを、EF100-400mm F4.5-5.6L IS II USMで正面から撮影。続いて少し撮影ポイントを移動。EF300mm F2.8L USMに持ち替えて斜め前からシャッター速度1/125秒で流し撮り。Q2最後はEF100-400mm F4.5-5.6L IS II USMに戻してヘアピンへ向かうマシンを後方から撮影した。真後ろから撮りたかったが看板に邪魔されて斜め後ろからの撮影となった。
Q2の撮影中にデグナー1つ目の路面にバンプがあり、アタックラップのマシンが通過すると火花が見えることを発見。そこで撮影ポジションをさらにデグナー1つ目側に移し、Q3は1回目のアタックでデグナー1つ目と2つ目の間の短いストレートを流し撮り、予選最後の走行となる2回目のアタックは火花狙いとした。
アウトラップ、インラップはマシンスピードが低く火花は出ない。スキッドパッドから飛び散る火花の撮影は容易ではない。撮れたらラッキーと思いつつマシンが来るのを待った。セッション残り1分。クビアトを先頭にアタックラップに入った。続いてボッタス、リカルド、ロズベルグが通過したところで赤旗。後続のマシンはスロー走行で通過し、予選は終了となった。
赤旗の原因はクビアトのヘアピン進入時のクラッシュ。念のためスマホでスカパーの映像を確認して「あの大クラッシュで怪我はなし。F1マシンって安全だよな」と思いながらこの日の撮影は終了した。
肝心の火花は微妙。ボッタスの写真を無理やりフォトギャラリーに掲載したが、火花がなければボツ写真のレベル。また来年機会があればチャレンジしよう。
この日撮影した写真でフォトギャラリーに掲載したのは22枚。前日の挽回はできなかったが目標の枚数は達成した。セッション時間が短かったことや、カメラマンエリアのハシゴをしたことを考慮すると上出来だろう。
例年ならこれでお仕事は終了。友人達と名古屋に戻り、18時過ぎから飲み会というのが定番だが、今年のセッション終了後は毎日仕事に追われた。何時間も友人達を待たせるわけにもいかず、完全に別行動。19時前にサーキットを出て、ホテルが名古屋駅近くに移った笠原氏を白子駅付近で降ろして20時頃に名古屋に戻った。長年続いた「F1のときに友人と集まって飲む」が途絶え、忙しすぎて微妙に楽しくないF1日本グランプリとなった。
決勝前のイベント撮影
決勝が行われる日曜日は12時からレジェンドF1デモ走行。12時45分からドライバーズパレード。11時にサーキット入りすれば大丈夫だが、1987年から約30年間一緒に観戦してきた友人達と今年は1度も顔を合わせていないので、もう少し早めにサーキット入りすることにした。
8時半過ぎ、この日は1人で名古屋の自宅を出発。9時くらいにみえ川越ICを降りて国道23号へ。特に渋滞もなく、9時40分くらいにF1マートの南東の信号からサーキット道路に合流した。Googleマップで渋滞を確認すると、稲生駅から中勢バイパスまで少しだけ渋滞。信号2つ分の渋滞なのでそのまま関係者駐車場を目指した。
例年はレース後に渋滞が発生する決勝日は関係者駐車場を使用せず、道伯町付近の民間駐車場から自転車でサーキット入りしていた。金曜日、土曜日と同じくこの日もレース終了後の数時間は仕事をしなければならない。サーキットを出る頃には渋滞がひと段落しているはずなので、関係者駐車場にクルマを駐めた。
金曜日、土曜日と何度か使おうと思うシーンはあったが、結局F1のために購入した電動折りたたみ自転車は出番なし。せっかく積んできたので駐車場で撮影だけしてみた。電動折りたたみ自転車=10万円くらい?と思っていたが、探してみると6万円ほどで買えることが分かった。最終的に購入したのはカイホウジャパンのSUISUIというシリーズ。27インチのラインアップもあり、メーカーに折りたたんだときのサイズなども確認したら「見に来ますか?」と言われ、八王子まで実車を確認に行った。27インチは折りたたんでも筆者のヴェゼルに乗せることは不可能と分かり、20インチを購入した。F1では活躍しなかったが、筆者が住む百合ヶ丘近辺は強烈な坂の街なのでそこそこ役に立っている。
電動折りたたみ自転車 SUISUI KH-DCY03
http://www.kaihou.com/products/electric-bicycle/2470.html
名古屋駅前のホテルに泊まった笠原氏は近鉄白子駅経由でサーキット入り。白子駅の様子を撮影してもらったので掲載しておこう。
レジェンドF1デモ走行まで2時間弱。友人に電話するとGPスクエアでステージイベントを見ているとのことなので、パドックトンネルを抜けてGPスクエアに向かった。友人達に会って少しGPスクエアの様子を撮影、メディアセンターに戻って仕事の準備を始めた。
ピットウォールでレジェンドF1デモ走行を撮影。ドライバーズパレード待ちをしていると、ザウバーチームがタイヤ交換の練習を始めたのでチラッと撮影。ドライバーズパレードに向かうドライバー、クラシックカーでコースを走り出すドライバー、ピットに戻るドライバーを撮影してイベント撮影は終了だ。
決勝は東コース
いつもは決勝を撮影するだけだが、初日の枚数の少なさをリカバリーするためレコノサンスラップも撮影することにした。レコノサンスラップはピットから、1周走ってグリッドに向かうラップ。決勝スタートの30分前、13時30分から15分間ピットオープンとなる。1周だけ走ってグリッドに向かうマシンもあれば、ピットを通過して数ラップしてグリッドに向かうマシンもある。
撮影場所は逆バンクのイン側。決勝直前、観客で溢れたスタンドをバックに撮る作戦だ。最低20台はマシンが通過する。マシン同士の距離が近すぎると全て撮影はできないが、平均2周とすれば累計40台ほど撮影できる計算だ。
焦点距離は50mm、シャッター速度1/80秒で6分ほど撮影。ここで焦点距離を24mm、シャッター速度を1/30秒に変更して広角気味に撮ろうとしたが、メルセデスAMGの2台が通過しただけで、残り5分半を残して全車グリッドにマシンを並べてレコノサンスラップは終了した。
残るは1時間半の決勝。決勝は当たり前だが全車休まず走るので周回数は多い。53周+フォーメーションラップ+ウィニングラップで最大55周。金曜日、土曜日と比べればセッション中の周回数は倍くらいになる。バリエーションを稼ぐ最後のチャンスだ。
スタートはS字進入のインフィールド側で撮影することにした。ここは2コーナーからS字に向かうマシンが真っ直ぐ近付いてくる場所で、1~2コーナーの攻防を終え、順位が確定した写真を撮ることができる。ご存じのように今年のF1日本グランプリの見せ場は、オープニングラップの2コーナー立ち上がりでハミルトンがロズベルグを押しだしてトップを奪うシーン。それを連写で撮影し、日曜日の記事に9枚の写真を掲載した。
金曜日にストレートエンドとシケイン、レコノサンスラップで逆バンクイン側を撮っている。決勝の撮影計画はインフィールド側のS字進入からS字、2コーナーのイン側を撮影し、インフィールド側の主要ポイントは終了。トンネルをくぐってアウト側に移動し、時間をみながら2コーナー側に移動。引き返して最後は逆バンクを撮る予定だ。
オープニングラップを撮り終えてシャッター速度を1/320秒に変更。筆者は正面から撮る場合、タイヤのサイドウォールの文字が流れるように1/320秒を多用している。3周ほど撮ってS字側に移動。S字に切り込むマシンをシャッター速度1/60秒で撮影。背景の流れに加え、被写体となるマシンと逆方向に走る後続マシンが大きく流れることを期待して撮るポイントだが、流し撮りが成功し、かつ運よく後ろにマシンがいるという条件はなかなか揃わない撮影だ。スタートからここまでは全てEF300mm F2.8L USMで撮影した。
スタートから20分ほど経過し、マシンの列がバラけてきた。マシンが近すぎると流し撮りの枚数は減る。そろそろ流し撮りがしやすい時間となった。撮影ポイントをさらにS字方向に移動し、次はS字1つ目の右ターンの流し撮りだ。国内レースでS字の「激感エリア」となる辺りだ。ここはD4席と同じく、撮影ポイントとレコードラインの距離が丁度よい。流し撮りをするとマシンの先端から後端までブレが少ない写真を撮ることができる。
レンズはEF100-400mm F4.5-5.6L IS II USM。焦点距離は124mm、シャッター速度1/80秒。やや重いレンズだが手持ちで流し撮り。7~8分と短時間だったので重さが気になることはなかった。
ここで2コーナーのイン側へ大きく移動。移動だけを考えればスタートを撮影した直後に2コーナーへ移動した方が効率的だが、マシンがバラけるのを待った方が撮影効率がよいという判断だ。レンズをEF24-105mm F4L IS USMに付け替え、S字方向へ加速するマシンを斜め後ろから流し撮り。国内レースでは背景のC席S字側は観客席に人が少ないので、F1開催時ならではの背景となる撮影だ。
2コーナーのクリッピングポイント付近に移動。次はB1/B2席を背景に焦点距離を32mmと広角気味にしてシャッター速度1/30秒で撮影。さらに数mほどS字側に移動して焦点距離を60mmに変更し、シャッター速度1/100秒でマシンをフレームいっぱいに流し撮りした。
国内レースではすぐ後ろの激感エリアで大勢のカメラマンが撮影しているが、F1開催時はサーキットビジョンがあるだけで、誰もいないので気がねなく撮ることができる。筆者はこの辺りで撮影するときは激感エリアのカメラマンの邪魔にならないように消化器ポスト(オレンジ色の棒)の隣で撮るようにしている。元々邪魔な消化器ポストの隣に立てば邪魔になる確率が減るだろうと考えている。ここでレース前半が終了。インフィールド側の撮影も終了だ。
S字のトンネル付近まで戻ったところで立ち止まった。この日はかなり暑く、ペットボトルの飲料がレース終了まで持ちそうにない。100mほど離れたレーシングスクール前の駐車場脇にある自販機で買い足そうと思い機材を地面に置いて歩き始めた。「あっ、財布をメディアセンターに置いてきた」と気付き断念。諦めてトンネルをくぐりアウトサイドに出た。
今年のF1日本グランプリの決勝はいたって順調に進行した。リザルトをみると1時間28分でゴールするハイペースだ。アウトサイドに出た時点で残り推定時間は30分強。2コーナーにも逆バンクにも行きたいが時間的には厳しい。まずはS字に進入するマシンの流し撮りで撮影再開だ。
S字に切り込む左ターンを、斜め前からEF300mm F2.8L USMでシャッター速度を1/100秒に設定して流し撮り。さらに2コーナー側に移動し、EF100-400mm F4.5-5.6L IS II USMを付けたカメラに変更し、焦点距離70mm、シャッター速度1/60秒と焦点距離135mm、シャッター速度1/80秒の2パターンで流し撮り。ここでペットボトルの飲料が底をついた。これ以上先に進むと逆バンクが撮れないので、2コーナーは諦めてUターン。
逆バンク方向に少し戻り、S字1つ目の右ターンのクリッピングを正面からEF300mm F2.8L USMでシャッター速度1/320秒と1/80秒で2パターン撮影。1ラップちょっとの2分半でこの撮影は終了だ。決勝の残り時間は10分強。逆バンクに向かおうとするとコースマーシャルの足下に2Lのペットボトル。残量は半分以上。「スイマセン、お水分けてもらえませんか」とお願いして空になった筆者のペットボトルに水を入れてもらった。灼熱のマレーシアのセパンサーキットで現地マーシャルに水をもらって以来の出来事だ。
水を飲んでほんの少し元気回復。小走りに逆バンクへ向かった。逆バンクにたどり着き、EF300mm F2.8L USMを構えると残り2周。1周はシャッター速度を1/400秒に上げてS字から逆バンクに向かってくるマシンを写し止め、もう1周はシャッター速度を1/60秒に落として逆バンクを駆け下るマシンを流し撮り、再びシャッター速度1/400秒に上げてウィニングラップで観客に手を上げるシーンを撮って今年のF1日本グランプリの撮影は終了した。暑さで疲れた決勝の撮影だったが、結果としてはフォトギャラリーに掲載する写真も撮ることができた。
残りわずかの水を飲み干すと隣に原富治雄カメラマン。「ハミルトン手上げてた?」と聞かれたが、AFポイントをヘルメットに合わせるのに必死でよく憶えていない筆者。筆者はほぼ力尽きた状態だったが、原氏は表彰台に向かうとのこと。丁度メディアバスが来たので2人で乗車するが、原氏は「ここから走った方が近いな」と、わずか200mほど進んだダンロップでバスを降り、シケイン脇からピットロードへ向かった……元気だ。
筆者はバスでコースを1周してピットに戻った。表彰式はシャンパンファイトも終わりインタビューの最中。走っているマシンを撮ることしか興味のない筆者だが「せっかくなので撮るか」と思い、カメラを構えると隣に原氏……やっぱ元気だ。表彰式をほんの数枚撮ってメディアセンターに戻った。
例年であればカメラをキヤノンさんのプロサポートのスタッフ掃除してもらい帰るだけだが、この日もここから仕事だ。レコノサンスラップから表彰式まで撮った写真をPCにコピー。その間にコンタクトをメガネに代え、食材と飲料を補給。決勝リポートの記事作成始まった。
「スタート2コーナーでハミちゃんがニコを押し出したところ、多分撮れてるはず」などの相談をしながら写真選びをしてレタッチ。笠原氏は原稿を書き上げて編集担当に送信。レース終了から4時間、19時50分くらいにメディアセンターを後にした。かつてない疲労困憊のF1日本グランプリがようやく終了した。
関係者駐車場を20時に出発。サーキット道路もほぼ渋滞なし。笠原氏を白子駅付近で落とし、筆者は国道23号でみえ川越ICを目指した。四日市の大陸橋から四日市競輪辺りまでは断続的に渋滞。JR四日市駅側に逃げてカインズホーム横の踏切で23号に戻った。その後は順調に流れ、21時10分に名古屋の自宅に到着。チョット渋滞したが1時間10分で名古屋までは戻れた。シャワーを浴び、食事もして22時過ぎに息子と名古屋を出発。新東名は息子に運転させ深夜2時に川崎に帰宅した。ちなみに友人はレース後すぐに帰路につき八王子の自宅に21時に着いたとのこと。やはり仕事じゃないF1観戦はうらやましい。
息子達のF1日本グランプリ
F1にそれほど興味はないが、筆者に連れられ幼い頃から何度もF1観戦をしたことのある息子と、長年のF1ファンで初めてF1観戦をした同級生の様子もお伝えしよう。2人は土日の観戦。道伯町から稲生高校へ向かう道沿いの1日1000円の駐車場から自転車2台でサーキットへ向かった。
鈴鹿サーキット前交差点を過ぎてQ2スタンドが見えたところで「うぉ~サーキットだ」と盛り上がる。そのまま坂を下りて逆バンクゲートに自転車を置き、逆バンクオアシスに到着。ちょうどS-FJの予選が行われていたのをオアシスから見てまた盛り上がる。トンネルをくぐり、S席、R席、Q1/Q2席の後ろを抜け、Gエリアの角でコースの見え具合をチェック。そのままヘアピンへ進み、幕で囲われたヘアピンをジャンプしてチラ見。スゲー近いとまた盛り上がる。さらにスプーンに進み、スプーン1つ目の土手でFP3を観戦した……らしい。
FP3が終わって200Rまで戻り、西パドックに抜けるトンネルを通過してOエリアへ。丁度レジェンドF1デモ走行が始まり、昔のF1は音がスゲーと盛り上がる。F1の予選はOエリアの130R寄りで観戦。J席のサーキットビジョンも見えるしマシンも近いと同級生はここがお気に入りだった……らしい。
そのまま西ストレートゲートから外を歩けば近いと思うのだが、再びトンネルを抜けてJ席下を通り、ヘアピンをグルッと回ってGPスクエアに到着。「マルティニのポロシャツが欲しかったけど高くて我慢した」と息子。GPスクエアを後にして逆バンクオアシスに戻ると、E2席用のサーキットビジョンに前夜祭が映し出されていてしばし観賞。その後、自転車に乗って駐車場に戻り帰宅した。
日曜日は自転車で西ストレートゲートに移動し、真っ直ぐOエリアへ。レジェンドF1デモ走行、ドライバーズパレードなどを見て時間を潰し、決勝後は真っ直ぐ帰宅した……らしい。取り敢えず大満足のF1観戦だったようだ。
決勝後の渋滞状況
F1開催前に執筆したF1観戦ガイドで、筆者は東名阪道の鈴鹿ICは混むから避けるようにと書いた。鈴鹿サーキットのホームページでも鈴鹿ICを避けるルートが推奨されている。今年のF1日本グランプリ終了後の渋滞状況を見てみよう。
決勝終了後16時過ぎの鈴鹿サーキット周辺は、鈴鹿サーキット前交差点から4方向とも渋滞している。同時刻、鈴鹿ICは伊勢方面から来るクルマによる渋滞が既に発生し、名古屋方面は渋滞中だ。鈴鹿サーキットから鈴鹿ICに向かう道はそれほど渋滞していない。
17時半、鈴鹿サーキット周辺は渋滞が悪化。サーキット道路両方向、逆バンクゲートから亀山IC、関ICへの推奨ルートとなる県道643号の御園方面はかなりの渋滞だ。鈴鹿ICはサーキットから鈴鹿ICに向かう渋滞が長く伸びている。
筆者が仕事を終えた19時46分、サーキット周辺は渋滞が解消された。しかし、鈴鹿ICはサーキットから鈴鹿ICへ向かう渋滞はそのまま、名古屋方面の高速はさらに渋滞が悪化した。
やはり決勝後に鈴鹿ICへ向かうのは得策ではなさそうだ。また、サーキット周辺は少し離れた民間駐車場を利用すると、渋滞を横目にクルマまでたどり着ける。そこから上手く渋滞を避ければレース後2時間程度で名古屋市内、東京でも5時間チョットで帰ることができる。気になる方は観戦ガイドを読み返していただきたい。
F1終了後はすぐにデジタルカメラマガジンの原稿と写真を納品。続いてCar Watchのフォトギャラリー。別件の仕事を済ませてWECを取材。平行してこの撮影記を執筆し、この後でWECのフォトギャラリーを作成する。昨年は11月に掲載した撮影記だが、今年は雑誌の発売日に合わせたので、レース中もレース後も忙しかった。やはり、F1は仕事より自腹でノンビリ観戦したいと思った今年のF1日本グランプリだった。