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F1日本グランプリ決勝、メルセデスが1-2フィニッシュ。ハミルトンは通算41勝目を挙げ鈴鹿でセナに並ぶ

マクラーレン・ホンダは入賞目前の11位に

2015年9月27日決勝レース開催

優勝した後のパレードラップで観客に手を振るルイス・ハミルトン選手、故アイルトン・セナ選手に並ぶ通算41勝目を、セナが愛した鈴鹿サーキットで実現

 9月27日、三重県鈴鹿市の鈴鹿サーキットで開催された「F1世界選手権 第14戦 日本グランプリ」の決勝レースは、予選2位でスタートしたメルセデスのルイス・ハミルトン選手が、抜群のスタートダッシュで2コーナーまでにトップに立ち、その後のレースを支配して1度もトップを譲ることなく優勝した。

 2位はポール・ポジションからスタートした、ニコ・ロズベルグ選手(メルセデス)。3位は予選4位からリカバリーのレースを見せた、セバスチャン・ベッテル選手(フェラーリ)となり、奇しくも昨年2014年の日本GPと同じ3名が表彰台を獲得した。

 ホンダのF1復帰後、初の地元レースとなったマクラーレン・ホンダは、フェルナンド・アロンソ選手が入賞目前の11位、ジェンソン・バトン選手が16位となった。

11位となったフェルナンド・アロンソ選手

決勝レース日にも多数のイベントが行われ、様々な形でF1を楽しめた

 9月25日~27日の3日間に渡って開催された「F1世界選手権 第14戦 日本グランプリ」。最終日となった9月27日には、サポートレースの決勝レース、オールドF1カーのデモ走行、F1ドライバーによるドライバーズパレードなどのイベントが行われていた。

 一般的にレースイベントと言えば、あたり前だがレースそのものを見に来るのだが、レースに付随して行われるイベントも結構魅力的なのだ。F1日本GPの場合は、グランドスタンド裏に設置される特別ステージのトークショーにドライバーが参加する場合も多い。

 今回のF1日本GPでは、日曜日の特設ステージには、ザウバーの2人(フィリペ・ナッサー選手、マーカス・エリクソン選手)、トロロッソの2人(マックス・フェルスタッペン選手、カルロス・サインツ Jr選手)、ロータスの2人(ロマン・グロージャン選手、パストール・マルドナード選手)が登場し、トークショーを行っていた。

 このほかにも、土曜日にグランドスタンドで行われた前夜祭には、フェラーリの2人(セバスチャン・ベッテル選手とキミ・ライコネン選手)がゲストとして呼ばれるなど、普段はテレビを通してしか見ることがないドライバー達の“生”の姿を見ることができる絶好のチャンスとなっている。特にライコネン選手はこうしたプロモーションがあまり好きではないことがよく知られている。それでも日本GPは特別なためか、イベント参加を行っている。

 そのほか、土曜日のリポートでも紹介したように、オールドF1カーのデモ走行が日曜日の昼間にも行われた。走ったのはゲルハルト・ベルガー氏がドライブするマクラーレン・ホンダ MP4/6、中嶋悟氏がドライブするティレル019・フォード、マーティン・ブランドル氏がドライブするフェラーリF187、佐藤琢磨選手がドライブするロータス88。いずれも金曜日にはグランドスタンド裏の特設ブースに設置されていたマシンだ。ロータス88を別にすれば、いずれのマシンも鈴鹿でF1GPを走ったマシンで、ファンにとっては特別な価値のあるイベントだと言ってもいい。

ゲルハルト・ベルガー氏がドライブするマクラーレン・ホンダ MP/6、1991年の日本GP優勝
マーティン・ブランドル氏がドライブするフェラーリ F187、1987年の日本GP優勝

 12時30分からは、日本GPでは恒例のイベントになりつつある、ドライバーパレードが行われた。これはドライバー達がクラシックカーに乗ってコースを1周するというイベントで、グランドスタンドにいない観客であっても、ドライバーの生の姿を見ることができる機会だ。ほかのGPだと、ドライバー達は大きなトラックに全員乗せられて1周するだけなのだが、日本GPでは毎年この型式が採られており、観客には好評を博しているイベントだ。

ドライバーパレードに参加しているキミ・ライコネン選手
ドライバー・パレードに参加しているセバスチャン・ベッテル選手、インタビューしようとしているのはジョニー・ハーバート氏
ドライバー・パレードに参加しているバルテリ・ボッタス氏
ドライバー・パレードに向かうルイス・ハミルトン選手
ドライバー・パレードに向かうニコ・ロズベルグ選手
ドライバー・パレードに向かう道でインタビューされているフェルナンド・アロンソ選手
ドライバー・パレードに向かうフィリペ・マッサ選手
ドライバー・パレードに向かうニコ・ヒュルケンブルグ選手(左)とダニエル・リカルド選手(右)
ドライバー・パレードに向かう、パストール・マルドナード選手(左)、フェルナンド・アロンソ選手(中央)、ダニール・リカルド選手(右)

 こうしたイベントを終えると、13時30分からはスタート進行と呼ばれる、スタートに向けた準備が進むことになる。すべての車両はレコノサスラップと呼ばれる、スターティンググリッドに並ぶための慣らし走行が始まり、13時40分頃にはほとんどの車がグリッドに並び終えた。その後はグリッド上で、日本の国歌が吹奏されるなどのセレモニーが行われ、14時少し前に、フォーメンションラップを開始。各ドライバーはスタートに向けて、マシンを発進させていった。

レースを決定づけたのは、ハミルトン選手の抜群のスタートと2コーナーでのライン取り

優勝したルイス・ハミルトン選手、セナとなるぶ41勝目を鈴鹿で実現

 予選の結果を見る限り、飛び抜けているメルセデスAMGペトロナスF1チーム(以下メルセデス)の2台(ニコ・ロズベルグ選手、ルイス・ハミルトン選手)のうちどちらが勝つのか、そして混戦となっている、ウイリアムズ・マルティニ・レーシング(以下ウイリアムズ)の2台、スクーデリア・フェラーリ(以下フェラーリ)の2台、インフィニティ・レッドブル・レーシング(以下レッドブル)のダニエル・リカルド選手という5台による3位争いに誰が勝つのかという2つが焦点になりつつあった。

 比較的抜きにくいと言われる鈴鹿サーキットであるため、スタート後どのような順位で1コーナーに入っていくか注目が集まった。一般的にはストレート走行後、1コーナーのコーナリングラインにスムーズに入っていけるアウト側が有利だが、日曜日の朝に降った雨の影響でコースについたラバーも洗い流されており、どちらが有利とも言えない状況の中でスタートを迎えることになった。

 なお、昨日予選10位で通過したレッドブルのダニール・クビアト選手は、Q3の最後に大クラッシュをした時にモノコックにまでダメージがでており、結局モノコックやギアボックスなどほとんどのパーツを交換することになったため、レースはピットレーンからスタートすることになった。路面温度40度、気温28度という環境の中でレースはスタートした。

 スタート準備が進むなか、タイヤウォーマーが取り去られると、14番手からスタートするマクラーレン・ホンダのジェンソン・バトン選手以外は、全車がオプション側のミディアムタイヤになっていた。いずれにせよ、上位争いのメルセデス2台、ウイリアムズ、フェラーリ、レッドブルはいずれもミディアムタイヤで、同じようなタイヤ交換作戦が予想された。そうしたタイヤがどのように使われるのか、それがメルセデス勢の戦いにも、そして3位争いにも大きく影響すると考えられていた。

 だが、そうした予想はスタートですべてご破算になった。レッドライトがすべて点灯しブラックアウトでスタートすると、2位グリッドだったルイス・ハミルトン選手が、素晴らしいスタートダッシュを見せて、ポールポジションからスタートしたチームメイトのニコ・ロズベルグ選手に1コーナーまでに並びかけた。

2位となったニコ・ロズベルグ選手

 インサイドにハミルトン選手、アウトサイドにロズベルグ選手という形でコーナーに入っていった結果、イン、インと回っていったハミルトン選手が、2コーナーでワイドなラインをとると、ロズベルグ選手はそれを避ける形でコース外に押し出される形になり、わずかに減速した結果、後ろを走っていたセバスチャン・ベッテル選手(フェラーリ)、バルテリ・ボッタス選手(ウイリアムズ)にも抜かれて4位に転落した。

5位となったバルテリ・ボッタス選手

 1周目の混乱はそれで終わりではなく、7位から抜群のスタートを見せ、フィリペ・マッサ選手(ウイリアムズ)、キミ・ライコネン選手(フェラーリ)を抜き5位にあがっていたダニエル・リカルド選手(レッドブル)の左リアに、マッサ選手の右フロントが接触。両車ともにパンクし、ズルズルと後退していった。これにより、リカルド選手、マッサ選手ともに順位争いからは脱落し、周回遅れでレースを終えることになった。

右フロントタイヤがパンクしてコースアウトするマッサ選手

 また、この混乱にもう1台巻き込まれらのがセルジオ・ペレス選手(フォースインディア)で、両車接触の混乱の後ろでやはり他車との接触があり、1コーナーを飛び出し、やはりタイヤを痛めてタイヤ交換となってしまった。

 この混乱が終わってみると、1位ハミルトン選手(メルセデス)、2位ベッテル選手(フェラーリ)、3位ボッタス選手(ウイリアムズ)、4位ロズベルグ選手(メルセデス)、5位ライコネン選手(フェラーリ)、6位ロマン・グロージャン選手(ロータス)、7位マルドナード選手(ロータス)、8位ニコ・ヒュルケンブルグ選手(フォースインディア)となっており、この後ろにスタートでの12位からジャンプアップしたマクラーレン・ホンダのフェルナンド・アロンソ選手がつける展開となっていた。

決勝スタート直後の2コーナー、ハミルトン選手とロズベルグ選手の激しいつばぜり合いの様子。この2コーナーでの競り合いが、レースを決定づけた
2周目の2コーナー、ハミルトン選手が既に2位のベッテル選手をここまで引き離している
2位のベッテル選手以下、3位ボッタス選手、4位ロズベルグ選手という展開になっている

4位まで後退したロズベルグ選手は、2位にリカバリー

 スタートで飛び出したハミルトン選手は、タイヤ交換の時期も含めて、その後1度もトップを譲ることなく、そのままゴールした。ハミルトン選手は、昨年の日本GPも優勝しており、これで日本GP2連勝となる。1人旅となってしまったハミルトン選手の後ろでは、チームメイトのロズベルグ選手が、2位を取り返すべく4位から激しいレースを展開した。

 最初のターゲットは3位を走っていたウイリアムズのボッタス選手。ボッタス選手は、タイヤの性能劣化が著しかったらしく、徐々にタイムが落ち始める。そのため、誰よりも早く11周目にピットインし、新しいタイヤでタイムを更新してロズベルグ選手の前に居座る作戦にでる。

 その結果、ロズベルグ選手の1回目のピットストップが終わった後も、ボッタス選手はロズベルグ選手の前、3位を維持することに成功する。このため、チームからは無線で“ニコ、タイヤをだめにしてもいいからボッタスを抜け”という指令がでて、ロズベルグ選手は猛チャージ。その結果16周目の、日立オートモティブシステムズシケインで、ロズベルグ選手はボッタス選手のインに入って、見事なオーバーテイクを実現した。

 ロズベルグ選手の次のターゲットは2位を走るフェラーリのベッテル選手。ベッテル選手のオーバーテイクには、ピット戦略を駆使することになった。ロズベルグ選手が29周目の終わりに、2回目にして最後のピットストップをベッテル選手に先んじて入ることになる。この無線は、フェラーリ側に悟られないようにするために、ギリギリに指示されており、ほとんど緊急ピットインのような形でロズベルグ選手はピットインしタイヤを交換した。それにより新しいタイヤでのアドバンテージを生かして、セクター2、セクター3でタイムを大幅に縮めると、次の周にタイヤを交換したベッテル選手がピットアウトしてきたところのほんのわずかに前にでることに成功。いわゆるアンダーカットを成功させ、2位に浮上した。これでロズベルグ選手の2位、ベッテル選手の3位が確定し、そのままゴールした。

3位となったセバスチャン・ベッテル選手

 同じことは、チームメイトのライコネン選手も、1つ前を走っていたボッタス選手にたいして仕掛けて成功した。ライコネン選手は28周目の終わりにピットインしタイヤを交換。翌周ボッタス選手もピットに入ったが、ニュータイヤのアドバンテージを生かしたライコネン選手は、ピットアウトしてきたボッタス選手の前に出ただけでなく、間にタイヤ交換をしていないロータスのマルドナード選手を挟むことにも成功。これにより、ライコネン選手の4位、ボッタス選手の5位が確定した。

4位となったキミ・ライコネン選手

 同じように、ピット作戦をうまく成功させ、上位に上がってきたのはニコ・ヒュルケンブルグ選手(フォースインディア)。ヒュルケンブルグ選手は2台のロータス勢をピットインの度に追い抜き、スタート時の8位から2つあげて6位になった。ロマン・グロージャン選手、パストール・マルドナード選手が7位、8位となった。

マクラーレン・ホンダのアロンソ選手は、トロロッソ勢とポイントを争い、惜しくも11位に

16位となってジェンソン・バトン選手

 ポイントを獲得できる最後の椅子となる9位と10位の座は、2台のトロロッソ勢(マックス・フェルスタッペン選手とカルロス・サインツ Jr選手)とマクラーレン・ホンダのフェルナンド・アロンソ選手の間で争われた。

 いつもながらの見事なスタートで、12位グリッドから9位にあがったアロンソ選手だが、常にパワーユニットの出力が他車に比べて足りないようで、コーナーでは見事な走りで後ろを押さえることができるのだが、ストレートに来ると他車のオーバーテイクされてしまう状況。バトン選手は、トロロッソとザウバーに2台まとめてオーバーテイクされてしまうような状況で、その原因がパワーユニットにあるのか、シャシーにあるのかはともかくとして、明らかにストレートスピードは足りないことは明白だった。途中アロンソ選手が“まるでGP2のエンジンみたいだ”と言う無線がTV中継に流されており、ストレートスピードの低さに両ドライバーともに悩まされていたのは否定のしようがないだろう。

 そんな中でもアロンソ選手は奮闘し、2台のトロロッソには行かれて、11位に転落したものの、後ろから追い上げてくるフォースインディアのペレス選手、レッドブルのダニール・クビアト選手などを押さえて11位を確保。ポイント獲得こそならなかったものの、ホンダ勢としての意地を見せてくれた。ストレートでのスピードが足りなかったのが、シャシーに原因があるのか、パワーユニット側に原因があるのか、それは外から見ている我々には分からないが、今年の日本GPではマクラーレン・ホンダの服や帽子を来た多くのファンを見かけ、ファンの期待の高さをうかがい知ることができた。来年こそは、こうしたファンの期待に応えるマクラーレン・ホンダの戦いを望みたい。

F1世界選手権 第14戦 日本GP決勝結果(暫定)
順位ドライバーチーム時間
1ルイス・ハミルトンメルセデス1:28:06.508
2ニコ・ロズベルグメルセデス+18.964s
3セバスチャン・ベッテルフェラーリ+20.850s
4キミ・ライコネンフェラーリ+33.768s
5バルテリ・ボッタスウイリアムズ+36.746s
6ニコ・ヒュルケンブルグフォースインディア+55.559s
7ロマン・グロージャンロータス+72.298s
8パストール・マルドナードロータス+73.575s
9マックス・フェルスタッペントロロッソ+95.315s
10カルロス・サインツ Jrトロロッソ+1 lap
11フェルナンド・アロンソマクラーレン+1 lap
12セルジオ・ペレスフォースインディア+1 lap
13ダニール・クビアトレッドブル・レーシング+1 lap
14マーカス・エリクソンザウバー+1 lap
15ダニエル・リカルドレッドブル・レーシング+1 lap
16ジェンソン・バトンマクラーレン+1 lap
17フィリペ・マッサウイリアムズ+2 laps
18アレクサンダー・ロッシマルシア+2 laps
19ウィル・スティーブンスマルシア+3 laps
20フィリペ・ナッサーザウバーDNF

セナの41勝に鈴鹿サーキットで並べたのが嬉しいとハミルトン選手

表彰台での3人

 決勝レース終了後、表彰台のセレモニーが行われた後、表彰台に登った3人のドライバーによる記者会見が行われた。以下その日本語訳になる(翻訳:筆者)。

(ポディウムでの記者会見)

Q:ルイス、おめでとうございます。これでセナの記録に並んだんですよ! 本当にスゴイスタートだったけど、どんなだったか教えてください

ルイス・ハミルトン選手:最初に、今日ここに集まってくれたこの熱いファンに心からお礼が言いたいね、彼等は雨の中でもじっと待ってくれたんだよ……“コンニチハ”、みんな本当嬉しいよ! チームは今週末本当にいい仕事をしてくれたので、こうしてまた1-2の場所に戻ってくれた。僕は本当にいいスタートが切れて、僕らがいいスタートを切れるように頑張って仕事をしてくれたチームにお礼をいいたい。僕個人としてはアイルトンがすごうドライブするのをいつも見ていたここにこれてレースできることが嬉しいし、彼に並んだなんて、この気持ちを説明するのは本当に難しいよ!

Q:シンガポールの状況からこうやって逆襲にでることができた理由は?

ルイス・ハミルトン選手:こうした逆襲ができたことは本当に大事なことだ。先週末はフェラーリは本当に速かったし、もう1度基本から自分たちを見直す必要があると考えていた。本当これを成し遂げることができたのは、今のチームあればこそだ。僕らが成し遂げたことは本当にすごいことだし、今日の車は運転していて楽しかったよ。

Q:ルイスありがとう。ニコ、本当に逆襲のポディウムだけど、スタートしてすぐは何があったんですか?

ニコ・ロズベルグ選手:ルイスは僕よりもいいスタートを切って、彼は非常にフェアな動きをして、並んで1コーナーに入ったんだ。でも2コーナーで彼はインをとって、そこで僕の前にでた、それで終わりさ。それから、4位に下がったので、そのままじゃいけないと思って、考え得る限り最上の順位となる2位に戻れるかを考えてレースを戦った。チームとしてこの結果を得られたことはよかったと思っているよ、あのシンガポールでの悲惨な結果の後であることを考えればね。

Q:ルイスとの選手権ポイント差が広がってしまいましたが、彼を捕まえることは可能ですか?

ニコ・ロズベルグ選手:もちろん可能だよ。もちろん今がいい状況ではないことは理解している。本当は今日勝ちたかったけど、それは実現しなかった。次戦頑張るよ。

Q:セバスチャン、あの劇的な勝利の後、もう一度表彰台です。それをこの素晴らしい日本のファンの前で実現した今のお気持ちは?

セバスチャン・ベッテル選手:本当そうだよね、みんなありがとう。この僕の大好きなこのレースで表彰台がとれて嬉しい。僕はこのコースも、ここのファンも、トロフィーもみんな好きだよ。でも残念ながら、今日はもう1つ大きなやつが獲れなくて残念だけどね。ニコとかなり競っていたし、チャンスはあると思っていた。でも今週末は全体的に見れば素晴らしい週末だったと思う。スタートはちょっとトリッキーだったけど、1コーナーまでに2つのすごいファイトがあっておかげで僕は得ができた。

Q:フェラーリは正しい方向に進化しているんでしょうか?今シーズンさらに勝利を重ねることができますか?

セバスチャン・ベッテル選手:僕らは正しい方向を向いていると思う。今シーズンのはじめはこの2人と戦うことは難しかった、彼等はものすごくいい仕事をしていたし、2人ともミスをしなかった。駆られはいい車を持っているし、エンジンもすごい、本当に対等に勝負するのが難しい状況だった。そこから考えれば、僕たちは他の人が考えていたよりもよくなっているし、こうしてここでも表彰台を獲得することができた。そうそう、僕のヘルメットのサプライヤーである「Arai」との関係がもう20年にもなるんだ。僕がまだ小さい子供だった頃からの関係で、日本にいるAraiの関係者の方全員にお礼を言いたいと思う。

Q:セブ、コマーシャルはその辺りでお終いに(笑)。ルイス、カラオケボックスにいくと、アナタはすごいドライバーなだけでなく、すごい歌手らしいですが、今夜もその美声を響かせるのかい?

ルイス・ハミルトン選手:勝利の踊りかい?(笑)。わからないよ、でも昨日は“Victory”というタイトルの歌を歌ったんだ、まさに今日実現したようなね!

表彰台後の記者会見室での3人

(会見場でのプレスカンファレンス)

Q:ルイス、改めておめでとうございます。1コーナーでトップをとってからは、何1つ問題がないように見えました。ですが、レース中に1つか2つシートについてコメントしてましたね、それとバイブレーションがあるとも、何が問題だったんですか?

ルイス・ハミルトン選手

ルイス・ハミルトン選手:そんなにはひどくなかったよ、ちょっと不快な程度だったんだ。非常に面白いレースだったよね、みんなもそうだと思うけど、もちろんこのサーキットを走るのは好きだけど、正直に言えばそんなに得意なサーキットではなかったんだ。でもそのサーキットでこうして独走して勝つことができるってのは素敵なことだね。車のバランスは本当によくて、それも僕のエンジニアであるボノやリッキーやメカニック達がいい仕事をしてくれからなんだ。

 今日は本当に昨日よりも調子がよくて、スタートでは自分のラインを維持してひたすら前に進む、まるでヨットに乗ってるみたいだったよ。コーナーに行ったら、風にのって進むみたいなね…本当なんだ、わかってもらえると嬉しいんだけどな……。また、この勝利でアイルトンに勝利数で並んだと聞いて、それがこのサーキットだってことにもこみ上げるものがあるよね。本当に感動的な1日だったよ。

 でも何時までもその余韻に浸っている訳にもいかないよね、チームがなければ今日この日はないので、チームと喜びを分かち合ったら次に進まないといけない。

Q:ニコ、君の方の車への評価はどうだったんだい?それから1コーナーではアウトになってけどそれはどうして?

ニコ・ロズベルグ選手

ニコ・ロズベルグ選手:車は本当にベストに戻ったと言っていいだろうね、シンガポールの時とは全く違うよ。特に予選では、レールの上を走っているように楽しんで運転することができた。レースではスタートでちょっと出遅れてしまって、1コーナーと2コーナーの間でビッグファイトになった。非常に接近した戦いになって、コース外にでなければならなくなってしまい、それが原因でレースを失うことになった。

Q:セバスチャン、今回はダメージリミテーションのように見えました。なぜアンダーカットを許してしまったのですか? それを防ぐことはできなかった?

セバスチャン・ベッテル選手

セバスチャン・ベッテル選手:僕らは安全だと思っていたんだ、タイヤには問題なかったし。でも、ニコがアウトラップで僕らの予想を上回ってきたので本当にびっくりした。自分のインラップやアウトラップには満足している、ただ、後本当コンマ数秒足りなかった。その後彼を抜き返すのはほぼ不可能だった。

 ルイスは全く見えなかったし、今日の彼等は非常に速かった、そういうことだ。もちろん、もう1ラップ速くタイヤ交換していれば、全然違った展開だったと思う。ここのコースではハイスピードなセクションで前の車について走るのは難しいし、僕たちにもチャンスはあったけど、本当ニコのアウトラップのペースを予想することは不可能だった。

 結果からは何とでも言えるしね……。それでも僕たちにとってはいい日だったと思う、素晴らしいリカバリーも見せることができたし、特に金曜日はひどかったし、土曜日の朝も同様だった。最終的にはもう一度ポディウムをとるという最低限の目標はクリアできたと思っている。

Q:ルイスとニコに、スタートの手順について教えてください、2人それぞれ違っているのですか?

ルイス・ハミルトン選手:それぞれ異なる方法をやっているかってこと?同じシーケンスでやってるよ、僕たちがF1にあがってきたときから何も変わっていないよ。スタートのことかな?同じモノを使って異なるシーケンスでやっているというのが答えかな。

ニコ・ロズベルグ選手:基本的には同じだよ。それぞれ自分に合わせたインプットで、それぞれのやり方がある、ファインチューニングだと考えてもらえると分かりやすいかな

Q:ニコ、テレビでは2コーナーで君がトラックの外にでているように見えたのですが、ルイスの動きはちょっとやり過ぎだと感じたのではないですか? それとセバスチャンには、トップのルイスと59ポイント差がありますが、タイトル争いはもう終戦だと考えていますか?

ニコ・ロズベルグ選手:まだTVは見ていないのでなんとも言えないな。近かったのは事実だし、僕は接触を避けた。これ以上はコメントするのは難しいな

セバスチャン・ベッテル選手:まだ終わってないよ、少しでも可能性があるならチャレンジする、それがレーシングドライバーだ。もちろんトップの人は非常に強力で、僕との差は広がっている。でも少しでも可能性があるならそれを信じ続けない限り、何も実現しないだろ?もちろん現実的に考えて、非常に非常に難しくなっているのは否定しない。でも何かが起こらないって誰が言えるんだい?僕たちは、僕たちのできることを最大限努力する、それだけだよ。あとは状況次第だ。

Q:ルイス、2コーナーでの動きについて、君の側から見た考え方を教えて欲しい

ルイス・ハミルトン選手:僕は特に近づきすぎだったとは思っていないけど……でもインサイドのラインは僕のラインだった。だから僕は僕のコーナーとしてターンインした。その結果として僕らは非常に近づいた、僕はそう理解している。僕はかなりグリップの外側を走っていたので、ニコはたぶんコース外だろうなとは想像したけど、アウトサイドにいる場合は普通に起こることだよ。

Q:セブ、これからも今シーズンの残りレースに向けて順調に開発が続いていくと思っていますか?また、フェラーリは4トークンを残していますが、それを使ったアップグレードを投入するために、5機目のパワーユニットを投入する可能性はありますか?

セバスチャン・ベッテル選手:まだまだ残りのレースは結構ある。もちろんできるだけプッシュしていく。先週と今週はかなり違った感じになっているが、それは僕らが進化したというよりは、彼等(メルセデス)が苦戦したというのが正しいだろうね。もちろんシンガポールではそのチャンスを生かして優勝することができた。

 非常にシンプルな話だけど、チャンスがあればそれを使っていく、それだけさ。もちろん彼等は非常に強力だから、僕たちも相当ハードにやっていかないと勝つことは難しい。彼等に追いつくために、僕らも進化しないかなければならない。何でも学べることはある思う、今週末なんかはまさにそうだよね。例えばタイヤ、木曜日と土曜日には多くの改善点を僕らは学んだ。ともかく今後も車を進化させることをトライしていく。ただ、大きなアップデートというのは、もう終わりじゃないかな。今後はレースごとに少しずつ進化させていくことになると思う。

Q:ルイスとニコに、スタートについて再度質問します。スタート手順はお2人でそれぞれかなり違うんでしょうか? 例えばフォーメーションラップでのやり方とか

ルイス・ハミルトン選手:正直言って大きな違いというのはないんだ、グリッドを離れるときには自分のやり方を実行するだけだし、あとは普通にスタートを切る、同じようにパドルを離す。違いと言えば、パドルを離すまでのリアクション時間の違いや、2つ目のパドルをどのようにスムーズに操作するか、スロットルどのようにスムーズに操作するか、それが違いを作る程度だよ。また、クラッチの調子によっても変わってくる。

 でも新しいレギュレーションでは、みなが同じセットアップでやってるんだ。僕が想像するに、あるときはそれがうまくいく時もあるし、そうでない時もある、あるいはクラッチが熱すぎる時もあるし、逆に冷えすぎている時もある。あるいはタイヤが冷えすぎの時もあるし、熱くなりすぎている時もある。それらの組み合わせで善し悪しが決まってくる。でも一般的なシーケンスそのものはみな同じだよ、保証する。

ニコ・ロズベルグ選手:ルイスの言ってる通りだよ、フォーメーションラップの前に、ピットレーンの出口とかで練習して、フォーメーションラップでも練習する。それだけだよ……。

Q:全員に聞きます、何人かのドライバーがタイヤ圧が心配だという声がありますが、レース中に何か問題がありましたか?

ニコ・ロズベルグ選手:いや何もなかったよ、すべては完璧で、まったく無問題。

セバスチャン・ベッテル選手:また空気圧低かったんだろ(笑)、いや冗談だよ(笑)

ニコ・ロズベルグ選手:ニコニコだけしておくよ!

ルイス・ハミルトン選手:全く知らないなぁ……僕らが知っているのはタイヤは……そういうのはいつも起こる問題じゃないし、今週末のタイヤには何も問題がなかったよ、特に最後のスティントはね。彼等は今回ベストな仕事をしたんじゃないかな、かつてないぐらいね。彼等も満足しているんじゃないかな、あ、でもそれはセブが前のレースで感じたことってのが彼らにとっていいことなんじゃないかな(笑)。予選中は本当によかったし、レースではさらによくなったよね特に車が軽くなった時にはね。でも本当に何の問題もなかったよ、今週はね。

セバスチャン・ベッテル選手:本当に何も言えねぇ!

(笠原一輝/Photo:奥川浩彦)