トピック

奥川浩彦の「撮ってみましたF1日本グランプリ 2017」(前編)

 祝10周年。Car Watch創刊の2008年から毎年掲載している「撮ってみましたF1日本グランプリ」が、ついに10回目を迎えることとなった。と言っても特別な達成感もなく「よくこんなネタが10年も続いたなあ」と思っている。過去記事を読んでいる人はご存じだと思うが、この記事は筆者の私的な撮影記。個人のブログといった感じなのでご了承いただきたい。

フリー走行で逆バンクを走行するベッテル。EOS 5D Mark IVで撮影。左手を挙げている理由は不明

 今年、筆者の印象に残った仕事は、Car Watchの連載「奥川浩彦の『F1大好き!今年も鈴鹿に行くぞ』」が鈴鹿サーキットのF1公式サイトで転載されたこと。鈴鹿サーキットは日本のモータースポーツの聖地で筆者にとって特別な存在だ。サーキットで観戦を始めて37年。これはモータースポーツファンとして、F1ファンとして素直にうれしいことだった。

F1日本グランプリの公式サイトに転載された

 ただ、残念だったのはF1日本グランプリの観客数が今年も減少したこと。2017年は3日間の延べ人数が13万7000人。決勝日が6万8000人と2016年より5.5%ほど減少した。次のグラフは連載で掲載した過去30年のF1日本グランプリの観客数の推移に2017年の観客数を加えたもの。2015→2016年の12%減よりは減少幅が小さくなったと見ることもできるが、F1日本グランプリ消滅の危機は続いている。来年は鈴鹿サーキットで30回目のF1日本グランプリ。皆さんの協力で観客数増加を期待したい。

F1日本グランプリ、31年の観客数推移

今年も木曜日からサーキット入り

今年は問題なく取材パスが受け取れた。背面は顔写真付き。F1、MotoGP、WEC、WTCCなどの国際レースで顔写真付きのパスはF1のみ

 昨年は筆者の30年連続F1日本グランプリ観戦で、初めて木曜日からサーキット入りした。木曜日からサーキット入りした理由は「メルセデスピットの見学」のためだったが、実際にピットウォークやコースウォークを見ると、その雰囲気は素晴らしかった。

 今年はとくに木曜日の取材はなかったが、いくつか目的があり木曜日からサーキット入りした。目的の1つ目は取材パスと駐車パスの受け取り。ここ2年はプチトラブルがあったが今年は問題なし。面識のないサーキットスタッフから「連載ありがとうございます」とお礼を言われ「こちらこそありがとうございました」と、本当にお礼を言いたいのは私の方ですと思った。

コースウォークとピットウォークで、あのかぶり物を探す

 その足で2つ目の目的であるコースウォークへ。木曜日から大勢のファンが集まっているのを見ると微笑ましい。1コーナーまで歩いて行くと、カルロス・サインツJr.様ご一行が来た。Uターンしてピットへ戻るとピットウォークは大混雑だった。

たまたまの偶然だが、昨年のコースウォークと同様、今年もカルロス・サインツJr.様ご一行が目の前を通って行った。だからと言ってオッサンは「運命」とかは感じない
ピットウォークは大混雑。ドライバーがコースチェックに出るときは目の前を通り抜けていく。タイヤ交換の練習を間近で見ると迫力満点だ

 一昨年のF1日本グランプリで「Car Watchの奥川さんですか」と声をかけていただき、その後Facebookでつながっている矢吹さんのタイムラインに、9月後半からマクラーレンとフェラーリのかぶり物の写真がアップされていた。作ったのは矢吹さん友人の森本さん。フェラーリ2個、マクラーレン4個でマクラーレンの2個はチームに渡す作戦とのこと。

 3つ目の目的はこのかぶり物。ピット出口付近で写真で見たかぶり物の集団を発見。ROLEXの看板下で記念撮影してからしばし雑談。プレゼント用のかぶり物を渡したらマクラーレンのピットに招き入れられたが、フェラーリ版をかぶっていた矢吹さんは入れてもらえなかったとのこと。かぶり物のインパクトは大きく、立ち話をしているといろいろな人が写真を撮らせてくれと声をかけてきた。最後にはドイツのTV局RTLも撮影にやってきた。

森本さんが作成し、9月下旬にFacebookに投稿されたかぶり物の写真
左から矢吹さん、森本さんとその友人
この繊細な作りに注目
後ろのランプはスイッチで点滅する
ドイツRTLが取材をしていった

 マクラーレンに渡したかぶり物の効果は絶大。マクラーレンの公式Twitterには即日登場。金曜日のFP2が雨で走れない時間が長かったので、バンドーン選手がかぶっている様子もツィートされている。アロンソ選手のFacebookにはかぶって歩く様子が動画で紹介され、バンドーン選手のTwitterでも紹介されている。国際映像の中継でもバンドーン選手が被っている様子が放送されるなど、SNS、TV中継、国内外のニュースなどで多くの人が森本さんの力作を目にすることとなった。読者の中にも見た記憶がある人がいるだろう。

マクラーレンの公式Twitterでは何度も紹介された


アロンソ選手のFacebookには動画がアップされた

バンドーン選手のTwitterにも被っている写真が掲載された


 矢吹さん、森本さんと話をしてるところに、筆者が執筆したサーキットの撮影ガイドで何度も観戦エリアから撮った写真を提供してもらっている松本さんが通りがかった。「松本さ~ん」と呼び止め「撮影ガイドに写真を提供してもらっている松本さん」と矢吹さん、森本さんに紹介すると2人が声を揃えて「デグナーの写真」と言った。調べてみると2013年の記事で、よく覚えているなあと執筆した筆者自身が驚いた。

2013年に松本さんに提供してもらったデグナーの写真。2人はこの写真を覚えていた……。ビックリ

 その後は撮影談義。ヘアピン常設席下の「ヘアピン“プラス”」チケットは1日単位は長すぎ。金土はセッション単位にして人数を増やした方がいいよね、などと意見は一致。キヤノンのEOS 5D Mark IVの貸し出しコーナー、雨のスプーンの撮影ポイントなど話は尽きないが、次の目的もあり筆者はピットを後にした。ちなみに森本さんとはこの日が初対面。以前Facebookで友達申請はもらっていたが、会ったことがなかったので保留。この直後に承認させてもらった。

新設されたカメラマンエリアを確認しGPスクエアを散策

 4つ目の目的は新しく設定された130R~シケインのカメラマンエリアの確認。GPスクエアを抜け、Q2席スタンドを少し先に進むと幕で囲われたカメラマンエリアがあった。元々この付近は金網があり撮影には不向きと認識していたので、金網を撤去、カメラホール、撮影用スタンドなどの工夫がされたのかと期待して見に行ったが……何の工夫もなく、ある意味ビックリした。筆者の腕とアイデアと機材ではここで撮影はできないと思い早々に、GPスクエアに戻った。

カメラマンエリアの入口。左右は幕で囲われている
シケイン側から130R方面を見ると、広さはかなりあり、100人以上が入れるスペース
しかし、130R側を見ても……
シケイン側を見ても、撮れそうな気がしない
最下段に降りてシケインを見ると、金網がなければ面白そうな景色だが、二重金網がかなり強敵
130R側もこの金網を回避する方法が筆者には思い浮かばなかった

 目的外だがGPスクエアも少し散策。DAZNのブースでは詳しい話を聞かせてもらった。DAZNはFP1から決勝まで全セッションを配信している。予選と決勝は「メイン映像」「オンボード映像」「ピット映像」を同時配信中だ。この3つ以外にも買い付けられるF1映像がいくつかあるとのこと。

 ストリーミング配信であるDAZNはスカパー!の映像より1分弱の遅延がある。DAZNだけ見る分には問題はないが、F1 Live Timingの情報との時差が気になる点を伝えたところ「Live Timingの表示を遅らせることができる」と教えてくれた。

 Live Timingとスカパー!の映像も4~5秒の時差があり、予選などを見ていると最終コーナーを立ち上がるころにはLive Timingが更新され、少し遅れてTV映像が「ハミルトンがトップ!」となる。Live Timingを4秒ほど遅らせるとスカパー!の映像とLive Timingのデータをほぼ同時に表示できる。同様に1分ほどLive Timingを遅らせればDAZNと同期するということだ。このことは筆者にとっては予想外の大きな収穫だった。

GPスクエアのDAZNのブース。モニターには3つの映像が映し出されていた
ブース内のテーブルにはタブレット。DAZNは2端末で同時視聴ができるので、Fire TV Stickでメイン映像をTVに映し、スマホにオンボード映像、タブレットにLive Timingというリッチな観戦ができる
F1アメリカGPの予選でLive Timingを4秒遅らせてみた。この機能は便利

 今年はサーキットの無料Wi-Fiエリアが拡張されていた。グランドスタンド/GPスクエア以外にはC席付近、逆バンクオアシス、最終コーナー、130Rにアクセスポイントが設置されていた。DAZNやスカパー!オンデマンド、Live Timingを見ながら観戦する人には朗報だろう。

Wi-Fiエリア拡張の看板
C席付近、逆バンクオアシス、最終コーナー、130Rにもアクセスポイントが設置された。大型モニターのないスプーンにもアクセスポイントを設置してほしい

 今年のF1日本グランプリのイベントの1つがウィリアムズ40周年。GPスクエアにマシンが展示されていたのでチラ見をした。展示されたマシンで筆者のお気に入りは1986年のFW11。筆者がモナコで初めてF1観戦をしたときのマシンだ。

GPスクエアに展示されたウィリアムズのマシン。お気に入りはFW11
1986年、モナコGPのカジノ前で撮ったレッドファイブ、ナイジェル・マンセルがドライブするFW11

 GPスクエアのど真ん中。F1グッズを売る売店が建ち並ぶ中に巨大なブース(ほぼ建物)を構えるのがIQOSだ。もしかすると最近のF1ファンの中には「なぜここに巨大なIQOS?」と思う人がいるかもしれない。ひと昔前、モータースポーツは多くのタバコメーカーに支援されていた。IQOS=マールボロ=フィリップモーリスで、マールボロのロゴは消えた今も、フィリップモーリスはフェラーリのスポンサーだ。年数は公表されていないが今年9月にはスポンサーの延長も発表されている。フェラーリの赤はイタリアンレッドであり、マールボロレッドなのだ。F1を支えてくれる企業にF1ファンとして感謝したい。

GPスクエアの巨大なブースはIQOS
2006年のフェラーリには巨大なMarlboroのロゴ
史上最強と呼ばれる1988年のマクラーレン・ホンダにもMarlboro

 木曜日のGPスクエアはレースのない平日にしては賑わっているが、金、土、日と比べるとゆったりとグッズを買ったりブースを見ることができる。コースウォークやピットウォークも含め木曜日の鈴鹿サーキットの雰囲気は今年も素晴らしいと感じた。目的外のGPスクエアだったが、予想以上に長時間滞在することとなった。

今年もアイルトン・セナのブースは健在。来年以降を考えるとマクラーレン・ホンダのグッズは買いにくいと思ったが、セナグッズは考えようによっては永久使用が可能だ
ファミリーで観戦する人は、マクラーレン・ホンダのシートに子供を座らせて記念撮影ができる。木曜日なので待つ人の列も短めだった

カメラ機材の搬入を済ませ「熱田護写真展」へ

 5つ目の目的はカメラ機材をメディアセンターに運ぶこと。カメラ機材を木曜日に運んでおけば、金曜日はPCと雨用の長靴と数本のスポーツドリンクを運ぶだけで済む。今回使用するカメラは自前のEOS 7D Mark IIが2台とお借りしたEOS 5D Mark IV。3台のカメラの時刻を合わせ、借り物のEOS 5D Mark IVの設定をEOS 7D Mark IIに合わせてからロッカーにしまいメディアセンターを後にした。

 パドックでオグたんこと小倉茂徳さんとバッタリ。数日前にメッセンジャーでDAZNについていろいろ聞いたばかりなので、DAZNブースに寄ったことを話した。小倉さんからは「東京の放送局(配信局?)に遊びに来てよ」と言われたので「アメリカ、メキシコ、ブラジルは真夜中ですよね。来年のオーストラリアGPのときに行きます」と答えた。ちなみに小倉さんは金曜日は鈴鹿でPit-FMの解説で、土日は東京に戻ってDAZNの中継を担当するとのことだった……これもビックリ。

3台のカメラを並べて設定。これが意外に時間がかかる
パドックで小倉茂徳さんとバッタリ。少し痩せたように見える。うらやましい

 この日最後の目的は、サーキットからクルマで10分ほどの距離にあるイオンモール鈴鹿で開催中の「熱田護写真展」。熱田さんは鈴鹿出身で日本を代表するF1フォトグラファー。筆者はデジタルカメラマガジンの熱田さんの連載「DRAMATIC CIRCUS」を毎月熟読している。

日曜日のパドックで熱田さんを撮影。カメラを向けると背後にいるF1ドライバーを撮っていると勘違いして避けてくれようとしたので「熱田さんです」と言うと「俺?」と笑顔で答えていただいたので、「はい、記事で使わせていただきます」と言って撮影。使わせていただきました
デジタルカメラマガジンの熱田さんの連載ページ「DRAMATIC CIRCUS」。写真は10月号でハンガリーGPとベルギーGPの写真が掲載されている。現在発売中の11月号はイタリアGP、シンガポールGP、マレーシアGP。11月20日発売の12月号は日本グランプリの写真が掲載されるはずだ

 Facebookでつながっている日大芸術学部写真学科で将来はF1フォトグラファーを目指している窪田さんのタイムラインに「これから名古屋のホテルへ移動」というのを見て「今どこ?名古屋まで乗ってく?」とメッセージを送った。パドックトンネルのGPスクエア側の出口で合流し、一緒に「熱田護写真展」へ。熱田さんの写真は映画館のロビーがアイルトン・セナの写真で、もう1カ所は過去の鈴鹿や今シーズンのF1などを展示していた。

映画館のロビーはセナの写真
もう1カ所は過去の鈴鹿や今シーズンのF1などの写真を展示

 6つの目的をクリアして15時半にイオンモール鈴鹿を出発し、混雑はしていなかったが国道23号からワザと外れて道幅の広い抜け道を日曜日に観戦に来る知り合いのライターさんのために確認。1時間15分ほどで名古屋に着き自宅近所の名鉄堀田駅で窪田さんを降ろした。

金曜日は早起き

 金曜日は毎年早起きだ。四日市市内の平日の通勤渋滞を避けるには6時20分くらいにみえ川越IC(インターチェンジ)を降りたい。5時起きのつもりが少し早く目が覚めたので5時45分に出発。6時09分にみえ川越ICを通過した。鈴鹿サーキットの駐車場に着いたのは6時52分。早く着きすぎたが、10分遅く出発すると20分到着が遅れ、20分遅く出ると40分遅れる可能性があるのでよしとした。

5時47分に自宅近所の名古屋高速の呼続入口を通過(フルHD、16:9のドラレコ映像から加工、以下同)
6時52分に鈴鹿サーキットに到着

 この日はお昼前から雨予報。長靴やPCを持ってメディアセンターに向かうのだが、前日にカメラ機材を搬入済みなので荷物は少なめ。関係者駐車場とパドックを結ぶシャトルバスが7時からの運行だったので、バス待ちをしてパドックへ。パドックのセキュリティゲートはチーム関係者で渋滞していた。

パドックに入るセキュリティゲートは入場するチーム関係者で渋滞していた。早起きすると見たことのないものが見られる
メディアセンターはほとんど人がいなかった

FP1はEOS 5D Mark IV

 フリー走行1回目(FP1)のテーマはEOS 5D Mark IV。今年はキヤノンの「一眼レフカメラ貸出体験会」の機種が「EOS 5D Mark IV」+「EF100-400mm F4.5-5.6L IS II USM」に変更された。ボディとレンズを合わせて70万円ほどする豪華な組み合わせだ。

 グランプリ開催前に、貸出機(=EOS 5D Mark IV)の設定方法と撮影ポイントの説明をしてほしいという依頼があり、「キヤノン一眼レフ貸出体験を120%堪能する方法」と題し、前編では基本的な設定、後編では細かな設定と鈴鹿サーキットの撮影ポイントを紹介した。

 執筆で苦労したのは作例探し。筆者が普段使用してるEOS 7D Mark IIの撮像素子はAPS-Cなので、焦点距離100-400mmのフルサイズ用レンズは35mm判換算をすると160mm-640mmとなる。フルサイズの撮像素子で100-400mmのレンズを使用すると当たり前だが焦点距離は100-400mm。APS-Cのカメラでは逆算すると63-250mm相当のレンズと同等な画角となる。その焦点距離で撮った作例を見つけるのに苦労した。

 そんな背景もあり、「EOS 5D Mark IV」+「EF100-400mm F4.5-5.6L IS II USM」を使用して、観客席やカメラマンエリアから撮影した写真があると来年以降に役立つかも、と思いFP1はこの組み合わせのみで撮影をしてみた。

 取材に来ているデジタルカメラマガジンの人達と貸し出しコーナーのある逆バンクオアシスで合流。カメラマンエリアに入るために用意してもらったタバードも受け取った。Car Watchの編集長から撮影している筆者の姿を撮るように、デジタルカメラマガジンにも私にも連絡が来ていたので、使用目的は皆よく分かっていなかったがカメラマンエリアに立ち、デジタルカメラマガジンの編集長に撮ってもらった。

貸出機と同じEF100-400mm F4.5-5.6L IS II USMを付けたEOS 5D Mark IVを持つ筆者。来年は痩せよう(撮影:デジタルカメラマガジン編集長 福島晃)
撮っている姿もデジタルカメラマガジンの編集長に撮ってもらった。マシンは走っていませんが……(撮影:デジタルカメラマガジン編集長 福島晃)
毎年逆バンクオアシスに設営される「一眼レフカメラ貸出体験会」の貸し出しコーナー
今年は機材は「EOS 5D Mark IV」+「EF100-400mm F4.5-5.6L IS II USM」。20台が用意された
貸出機を受け取りキヤノンのスタッフから説明を受ける観客。カメラの下に見える紙は筆者が作成した基本設定のプリントアウト。役にたったかなあ

逆バンクのカメラマンエリアが拡張された。来年はさらに拡張してほしい

 逆バンクのカメラマンエリアは、今年から最上段に加えダンロップ側の1ブロックもカメラマンエリアとなった。

最上段だけでなく、最下段までダンロップ側の1ブロックがカメラマンエリア
従来は最上段の1列のみがカメラマンエリア(赤ライン)
ダンロップ側の1ブロックがカメラマンエリアになった(赤いブロック)

 エリアが広がったことはよいことだが、逆バンクの撮影ポイントとして人気なのは最下段。筆者も以前は撮っていたが、場所取りが大変そうなのでここ何年か撮っていない。FP1も開始直前には満席状態。ここで観戦したい人は少ないと思うので、来年は最下段もカメラマンエリアにしていただき土日も撮影できるようにしてほしい。贅沢を言うとヘアピンのように手前の金網を黒ツヤ消しで塗るかカメラホールを設置。コース側の金網のホールも増やしてもらえるとうれしい。

最下段は指定席エリアが自由席扱いとなる金曜日しか撮れない人気の撮影ポイント。セッション開始直前は満席状態
来年は最下段もカメラマンエリアにしてほしい(緑ライン)

逆バンクからS字へ

 いつ雨が降り出すか分からない状況でFP1がスタート。逆バンクの最上段は人気のカメラマンエリアだが、金曜日は比較的ゆとりがあったので、ダンロップコーナー側の隅で撮影を開始することにした。まずはシャッター速度を1/100秒にしてオーソドックスに流し撮り。続いて進入してくるマシンを手前の縁石まで入るようにフレーミングして1/20秒で撮影。

 この日は暗かったのであまり問題はなかったが、スローシャッターの撮影は絞り込みにより画像がボケるという問題が発生する。スローシャッターを切ると当然絞り込まれる。高解像度化=画素ピッチが小さくなるほどボケやすい。対策としては「APS-Cよりフルサイズのカメラを使用する」「ISO感度を落とす」「NDフィルターを使用する」などが一般的だ。

 EOS 5D Mark IVはフルサイズの撮像素子を使用しているので有利だ。さらにISO50(相当)に設定ができる点も有利だ。筆者は各レンズに合わせたND4フィルターを持ち歩くようにしているが、この日は使用することがなかった。

逆バンクの左端で撮影開始
最初はごく普通に流し撮り。焦点距離400mm、シャッター速度1/100秒(元画像をリサイズのみ行なった)
フルHDサイズにレタッチしてフォトギャラリーに掲載した写真
手前の縁石が入るようにフレーミング。焦点距離312mm、シャッター速度1/20秒で撮影。ISO感度50に設定し、絞りF11で撮影。NDフィルターは不要だ
フルHDサイズにレタッチしてフォトギャラリーに掲載した写真

 カメラマンエリアのS字側に移動。焦点距離400mmではマシンの正面からアップは撮れない。晴れると青く見える伊勢湾が撮れるがあいにくの曇天。撮っても意味はない気がしたが、一応背景を大きく入れて正面から撮影。同じ撮影ポイントで逆バンクを下るマシンをシャッター速度1/30秒で流し撮りで撮ってみた。

曇天が残念だが、焦点距離214mm、シャッター速度1/500秒で撮影
焦点距離300mm。シャッター速度1/30秒。ISO感度50に設定し絞りはF9
フルHDサイズにレタッチしてフォトギャラリーに掲載した写真

 S字2つ目の右ターンへ移動。赤旗でセッションが中断したのでしばし待機。この撮影ポイントは背景が路面と縁石が主で比較的シンプル。そのためシャッター速度は1/160秒で撮影。速めのシャッター速度とイン側からの撮影なので芯の大きな絵を撮ることができる。激感エリアのないF1日本グランプリでは、初心者が最も流し撮りをしやすい撮影ポイントだと思う。

D3席付近の中段通路で撮影
焦点距離182mm、シャッター速度1/160秒で撮影
フルHDサイズにレタッチしてフォトギャラリーに掲載した写真

 FP1も残りわずか。次の撮影ポイントはC席横のカメラマンエリア。カメラマンエリアの土手に到着し、C席側で撮影を開始すると雨が降り出した。セッションは残り5分ほどあったが、強めに降り出したので全車ピットイン。セッションは残り数分あったがコースに戻るマシンはなく撮影終了。一気に雨足が強くなりあわててポンチョを着てパドックへ戻った。赤旗もあり雨もあり、やや消化不良に終わったFP1だった。

C席横のカメラマンエリアまで移動したが、雨足が強くなり全車ピットイン

FP2は心折れそうな豪雨

 FP1の終了間際に降り出した雨は徐々に強くなり完全にウェット。走行できるか怪しいレベルとなった。筆者は雨の撮影が好きだ。正しく言うと雨の中で撮るのは嫌いだが、ウェット路面を走るマシンの絵は好きだ。とはいえ雨も程度次第で、水煙が上がるのは絵のバリエーションが増えるので好ましいが、走れないほど降るのは困る。

 午後のFP2は報道エリアで撮影。水煙が綺麗な場所として西ストレートの正面(=130R)、ダンロップとデグナーの中間で撮ることにした。セッション40分前にカメラマンをコースサイドまで運んでくれるバスが走る。FP2は14時~15時半なので13時過ぎにメディアセンターを出て、1コーナー付近でバスに乗り130Rで降車。セッション開始までポストの下で雨宿りだ。

ポストの下で1時間半ほど雨宿り。風が強く濡れるし寒いし辛い待ち時間となった。ちなみにこのポストはビアンキ選手の事故現場だ

 セッション開始時刻には豪雨となり何度もディレイを繰り返した。不幸中の幸いだったのは同じ場所でJRPA(ジャルパ=日本レース写真家協会)の吉見カメラマンと一緒だったこと。心折れそうな雨だったが、話し相手がいたので助かった。

 雨足が弱くなり走行可能となったのは14時50分ごろ。もしかすると2~3台走って終わりの可能性もあるので失敗できない撮影だ。ポストからシケイン側に移動しグランドスタンドをバックに撮影開始。最初のマシンはライコネン。暗いシーンに赤いマシンは栄えるのでうれしい。1発で使える写真が撮れたのでひと安心。ポツポツと10台のマシンが通過してくれたのでポスト付近に移動。観覧車をバックに数台を撮影した。

待つこと1時間半。グレーのHaasが来たらガッカリだが赤いマシンでよかった
水煙の量とマシンの色でフォトギャラリー用の写真はアロンソを選択
フルHDサイズにレタッチしてフォトギャラリーに掲載した写真
ポスト付近に戻って観覧車をバックに撮影。このときはウィリアムズしか通らなかった
フルHDサイズにレタッチしてフォトギャラリーに掲載した写真

 残り時間は20分。西ストレート正面は諦め、デグナー2つ目を見おろす場所に移動。マシンが来ない。遠くヘアピンスタンドを見ると、人気の常設席下のカメラマンエリアもこの雨で人はまばらだった。

ヘアピンの観客席も空席が目立つ。常設席下のカメラマンエリアも10人ほど

 バンドーン、ハミルトン、アロンソの3台が通過。シャッター速度1/125秒だったので3台とも撮れたが、最終的に選んだのは水溜まりを踏んでくれたハミルトンとした。

バンドーン、ハミルトン、アロンソのコックピット付近をトリミングした写真。EOS 5D Mark IVの高解像度は魅力だ
深い水溜まりを踏んでくれたハミルトンをフォトギャラリー用に選択
フルHDサイズにレタッチしてフォトギャラリーに掲載した写真

 セッションは残り7分。雨足が強くなり誰も来ない。しばらく待つが心が折れ、数分を残してポスト下に避難した。すぐにセッションは終了。過酷なFP2は終わった。

カメラメーカーのサポートに感謝

 振り返ると10月のレースは雨に翻弄された。F1は金曜日FP2だけだったが、翌週のMotoGPは3日間雨。同時開催のWECはほぼ中止のレースだった。続くスーパーフォーミュラの最終戦は予選Q1で終了し決勝は中止。さらに翌週のWTCCもメインレースが赤旗で終わった。

翌週のMotoGPは3日間雨だった

 筆者が撮影を行なったのはF1とMotoGPの2つ。過酷な天候のときに助かるのがカメラメーカーのサポートだ。F1の雨は1日だけだったが、MotoGPは3日間降り続いたのでCPS(キヤノンプロフェッショナルサービス)の方々には感謝感謝の撮影だった。

 FP2の後、カメラのレインカバーのファインダー取り付け部分が外れた。MotoGPの際に見てもらうと「割れてるから接着するしかない」ということで応急処置。Moto2の決勝前にレンズ交換をしようとメディアセンターに入ったら、外気で冷え切った機材が結露してビショビショに。大急ぎでレンズとファインダーの曇りを除去してもらい撮影に戻ることができた。過去には1台のカメラが動かなくなり代替機を貸してもらったこともある。

 サーキットのメディアセンターでサポートが受けられるカメラメーカーはキヤノンとニコンの2社。コンデジやミラーレスは他メーカーのカメラを使っている人もいるが、報道エリアでマシンを撮影しているカメラはキヤノン製、ニコン製しか見たことがない。観客が使用してるカメラも圧倒的にこの2社が多い。

 筆者がレースを撮ろうと初めて購入した一眼レフカメラは中古のキヤノンA-1。1982年のことだ。なんとなくキヤノンを選んだと記憶している。その後35年、ずっとキヤノンユーザーだ。仕事で撮影をするようになり、メディアセンターでサポートを受けると「よくぞキヤノンを選んだ」と大学生だった自分に言いたい。

 筆者はサーキットでしかお世話にならないが、さまざまなイベントをサポートしているそうで、MotoGPと同じ週末は富士スピードウェイのWEC、岐阜関カントリー倶楽部で開催された男子ゴルフ「日本オープンゴルフ選手権」にもサポートを送り込んでいるとのことだった。

F1のサポートメンバーは、左から徳元信宏さん(西日本プロサポート課)、山室雄さん(大分サービス推進部)、久保田暢さん(西日本プロサポート課)、津田聡太郎さん(東日本プロサポート第二課)
MotoGPのサポートメンバーは、左から福原聡さん(プロサポート部キヤノンサロン課)、梨澤萌さん(イメージコミュニケーションテクニカルセンター)、中島淳さん(プロサポート計画課)、根岸肇さん(西日本プロサポート課)

熱田さんのセミナーは今年も参加できず

 金曜日のセッション終了後、逆バンクオアシスの貸し出しコーナーでは熱田護氏の「カメラマンスペシャルセミナー」が開催されていた。毎年参加したいと思っているが、その日の記事掲載があるので今年も参加できず。デジタルカメラマガジンの副編集長にコンデジを渡して動画を撮ってもらうことにしたが、ミニ三脚を渡し忘れてしまった。ほぼ録音となったが、メッチャ面白い。来年の宿題となった。

今年も参加できなかった熱田さんのセミナー(デジタルカメラマガジン撮影)
超望遠レンズ体験は昨年と同様、ヘアピンと逆バンクで開催された

 17時ごろにこの日の仕事は終了。同級生との飲み会は名古屋・栄で19時スタート。金曜日はF1渋滞に加え帰宅渋滞もあるので間に合わないが帰宅の途についた。17時13分にサーキットの駐車場を出て、近所で給油して17時29分に国道23号に合流。鈴鹿川を渡って2つ目の信号から渋滞したので右折して県道6号へ。こちらも鈴鹿川を渡ると渋滞していたので左折して近鉄の塩浜駅前を北上し、大井の川橋南詰の少し手前で県道6号に戻った。

 ライターの笠原さんは名古屋駅近くのホテル泊なので18時00分にJR四日市駅で降ろす。そのまま国道23号と平行して北上し、18時13分に四日市競輪近くのなか卯のある交差点で国道23号に復帰。18時22分にみえ川越ICから伊勢湾岸道に乗り名古屋高速までは順調に進むが、最後に事故渋滞。18時50分ごろに自宅近くの呼続出口にたどり着いた。ライターの笠原さんも同じころに名古屋駅に到着したらしい。

17時13分にサーキットの駐車場に出発
18時にJR四日市駅の交差点で赤信号の間に笠原さんを降ろす
18時42分、名古屋高速で事故渋滞

 バッテリーを充電、ポンチョやカメラのレインカバーを干して飲み会へ。友人2人はFP2で早々に撤退したとのこと。詳しく聞くとFP2の雨足が弱くなったときに「今がチャンス」と駐車場に戻ったそうで、マシンが走り出す音を聞きながらサーキットを後にしたらしい。確かに、仕事でなければその選択はありだと思った。

 前編はここまで。後編は予選の行なわれた土曜日と決勝が行なわれた日曜日の様子をお伝えしよう。また、今回はサーキット周辺の民営駐車場を回ってみたので、F1開催時の駐車場情報もお伝えしたい。

提供:キヤノン株式会社、キヤノンマーケティングジャパン株式会社

奥川浩彦

パソコン周辺機器メーカーのメルコ(現:バッファロー)で広報を経て2001年イーレッツの設立に参加しUSB扇風機などを発売。2006年、iPR(http://i-pr.jp/)を設立し広報業とライター業で独立。モータースポーツの撮影は1982年から。キヤノンモータースポーツ写真展3年連続入選。F1日本グランプリ(鈴鹿・富士)は1987年から皆勤賞。