トピック

奥川浩彦の「撮ってみましたF1日本グランプリ 2016」(後編)

 Car Watchが創刊した2008年から毎年お届けしている「撮ってみましたF1日本グランプリ」。前編では筆者が思う「カメラマンエリア拡張計画」など木曜日、金曜日の様子をお伝えした。後編はFP3、予選が行なわれた土曜日から話を始めよう。

土曜日の渋滞や民間駐車場

 筆者はここ数年は取材パスをもらっているが、30年かかさずF1日本グランプリのチケットを購入している。それはF1日本グランプリの連続開催が続くようにという筆者の微々たる貢献の意味合いが強いが、取材パスが支給されなくても友人達と観戦できるようにしておこうという保険的な側面もある。

 2015年は使う予定のなくなったチケットを息子に譲ったが、2016年は息子が不参加となり誰に譲ろうかと思っていた。直前にFacebookで周辺機器メーカーに勤めていた頃の同僚でレース好きのKさんに連絡すると「土曜日だけ行けます。いくらですか?」「タダだよ~」ということで譲り先が決定。その後、日曜日も行けることになり、土日とも筆者の自宅近所、名鉄堀田駅でピックアップすることとなった。

 Kさんはモータースポーツ好きだがF1観戦は10年ぶり。数年前に鈴鹿サーキットのピットウォークで偶然会って以来だ。同僚だった頃は一緒にスノボーに行ったこともあるが、筆者が退職して16年ほど経つのでゆっくり話しをするのもかなり久々だ。

 この日からライターさんが参加となり、セッション終了後にメディアセンターで記事作成をしなければならない。2015年の撮影記の記事から撤収時刻を推定し、土曜日の帰りは筆者と一緒にクルマで移動、日曜日の行きはクルマに同乗、帰りは電車で先に帰ってもらうことにした。

 一方、ライターさんは土曜日に東京から新幹線で名古屋に移動。近鉄白子駅経由で昼前にサーキット入り。土曜日の名古屋までの帰りと日曜日の鈴鹿へは同乗で、日曜日の帰りは四日市駅まで筆者が送り、そこから電車で東京まで戻ることとなった。

 土曜日はKさんを駅でピックアップして7時58分に名古屋高速・呼続IC(インターチェンジ)を通過、伊勢湾岸道・みえ川越ICを8時20分に降りて国道23号に合流。しばらく進むと渋滞したので富田浜町の交差点を右折してJR関西本線の西側に逃げ、JR四日市駅の手前で国道23号に戻り、9時20分頃にサーキットの駐車場に到着した。

23号はいつも通り四日市市内まで渋滞していた
9時20分頃に到着。鈴鹿サーキット周辺の道路は白子駅、サーキット道路がそこそこ混雑

 サーキット道路の駐車場事情もお知らせしておこう。鈴鹿サーキット稲生駅の少し先、中勢バイパスの手前付近からサーキットまで民間の駐車場がいくつも目に入る。ドライブレコーダーの映像で確認すると1日2000円、金曜日・土曜日2000円、日曜日3000円、1日5000円、3日1万円などとなっていた。反対車線にも駐車場はあるが映像では値段は分からない。帰りは夜なので映像で確認できていないが、近所の駐車場はほぼ同じ料金だと思われる。

中勢バイパスの手前は1日2000円~3000円(ドライブレコーダーの映像をトリミング)
サーキット手前になるとやや高め価格設定となる

予選の記事用の写真を撮る

 土曜日の撮影場所は報道エリア。この日からライターさんが参加して昨年と同様に予選のレポート記事があるので、記事で使用するための写真を撮る必要がある。一昨年までは予選の記事はなかったので、フォトギャラリーで使用する写真を撮ればよかった。例えばマシンを後ろから撮った写真やスローシャッターの写真はフォトギャラリーでは使用できるがレポート記事では使いづらい。そのため、レポート記事用には比較的お堅い写真を用意するようにしている。加えて同じ場所、同じ向きの写真ばかり並べると見栄えがよくないので、右向き、左向き、正面などのバリエーションも考慮して撮影をしている。

予選1位のロズベルグ
予選1位の写真に後ろ向きやスローシャッターの写真は使いづらい
予選2位~3位を同じ絵にすれば、撮影は楽だが見栄えがよくない

 とは言え、予選のセッション中に右向き、左向きの写真を撮るためコースのインサイド、アウトサイドを移動するのは難しい。仕方ないのでFP3で撮った写真と予選で撮った写真を組み合わせて右向き、左向きの写真を記事用に使用している。

 最終的に予選の記事で使用したのは予選1位~3位とマクラーレン・ホンダの2枚。ロズベルグ、ライコネン、バトンは予選で撮った写真。ハミルトン、アロンソはFP3で撮った写真を使用した。この日は大きな天候の変化はなかったが、もしFP3がドライで予選がウェットとなれば、予選で撮った写真だけで構成するしかないと考えている。

予選1位のロズベルグは斜め左向き(デグナー2つ目立ち上がり)
予選2位のハミルトンは右向き(ヘアピン立ち上がり)
予選3位のライコネンは正面(デグナー2つ目)
アロンソは右向き(ヘアピン立ち上がり)
バトンは左向き(デグナー1つ目と2つ目の中間)

 振り返るとCar Watchのレース記事はここ数年で随分変わったなあと感じている。Car Watchはレース専門媒体ではないので、創刊から5年くらいは概ね筆者1人でレース取材をしていた。2013年のSUPER GT最終戦の記事を見ると1人でサーキットに行き、レースレポートも自分で書き、フォトギャラリーも掲載している。

 最近は人数も増え、8月の鈴鹿1000kmはフォトコンテストの関係で営業の方も参加。ケータイ Watchもau TOM'Sの取材をするなど、編集、営業、ライター、カメラマンとインプレス関係者が計10人ほど参加していた。

 1人取材だった頃はレース直後にレポートと写真を掲載するのは物理的限界もあり、サーキットから帰宅してレースレポートを書いていた。最近はレース当日(ときにレース途中経過も)にレポートが掲載されるようになり、関連する記事の本数も増えた。レース記事が充実することは筆者としても望ましいのだが、それと引き替えに随分慌ただしくなった印象だ。

消化不良に終わったFP3

 FP3はヘアピン立ち上がりの外側(進行方向右側)、予選はデグナーの外側(進行方向左側)で撮影を開始することにした。

FP3は青のラインをヘアピンからデグナーへ、予選は赤のライン移動予定
ヘアピンの立ち上がりでセッション開始を待った

 撮影ルートとして写真の青線のようにヘアピンのアウト側、立体交差(進行方向右側)デグナーイン側、130Rアウト側はつながっている。午後の予選はデグナーのアウト側と立体交差(進行方向左側)を撮影する予定なので赤線のルートとなる。どちらも鈴鹿サーキットの定番コースだが、青線のルートを1時間のFP3で撮って移動するのは厳しい。サクサク撮って急いで移動しようと考えていた。

 予選の記事で使用することを考えているので、予選1位~3位に入る可能性の高いドライバーを撮ったら移動を開始したい。メルセデス、フェラーリ、レッドブルの6台が1回通過したらヘアピン立ち上がりの撮影は終了するつもりだ。

 セッション開始は12時。1時間ほど前に行なわれたSuper FJでほとんど水煙が上がっていなかったのでFP3はドライになると思っていたが、始まった頃は路面がわずかに濡れていて上位チームはなかなか走り出さない。最初に現れたベッテルはスロー走行でヘアピンをインべたで通過。12時3分にロズベルグが通過するがタイヤがインターミディエイト。12時10分に通ったハミルトンもインターミディエイト。

セッション開始3分で現れたロズベルグはインターミディエイト

 ドライタイヤを履いたトップ6が通過したのは、12時22分のロズベルグを皮切りに、ハミルトン、ライコネン、ベッテル、フェルスタッペンと続き、リカルドが現れたのは12時35分だった。リカルドを待つ間はスプーンへ走り去るマシンを流し撮り。リカルドの初ラップを撮って移動を開始した。

リカルド待ちをする間は走り去るマシンを流し撮り
12時35分、やっとリカルドが現れた

 記事で使用するお堅い写真を撮り終えて最低限のノルマはクリアしたが、計画はすでに破綻。デグナーまでたどり着けそうにないが急ぐしかない。ヘアピンのクリッピングポイント側に移動し、立ち上がっていくマシンを斜め後ろからシャッター速度1/80秒で流し撮り。Exifのデータで確認するとこの場所は12時39分から3分間。少し撮影ポジションを移し、縁石に沿って走り去るマシンを背後から撮影。ここは12時43分から2分間だけ撮影していた。すでにセッションは残り15分となった。

斜め後ろから3分間撮影
背後から2分間撮影

 アマチュアカメラマンも報道カメラマンも同じだと思うが、定番の撮影(場所や撮り方)に加え、何か新しい出会いが撮影の楽しみの1つだ。今年、鈴鹿サーキットは春の2&4、夏の鈴鹿1000kmですでに撮影していて、このヘアピン立ち上がりとデグナー、130Rを結ぶルートには筆者が今シーズン出会った絵がいくつかある。それをF1でも撮りたいと思って臨んだ日本グランプリだ。

 過去2レースで撮った新しい写真をヘアピン側から見ていくと、立体交差手前、立体交差出口、立体交差下、立体交差入り口、デグナー1つ目と2つ目の中間、130Rだ。シャッター速度は1/30秒から1/60秒。焦点距離は24mmから70mm。いずれも2&4と鈴鹿1000kmのフォトギャラリーに掲載している。残り15分なので130Rは無理だが、立体交差とデグナーを撮るためヘアピンを後にした。

立体交差手前。シャッター速度1/60秒、焦点距離28mm
立体交差出口。シャッター速度は1/30秒、焦点距離70mm
立体交差下。シャッター速度1/60秒、焦点距離24mm
立体交差入り口。シャッター速度は1/30秒、焦点距離24mm
デグナー1つ目と2つ目の中間。シャッター速度は1/30秒、焦点距離24mm
130R。後ろの土手がG席。シャッター速度は1/30秒、焦点距離24mm
理由は不明だがこの日から撮影禁止になっていた

 立体交差の出口にあるポストまで20mくらのところでカメラを構えると、マーシャルが×のサインを出している。どうやら撮影NGらしい。近くにいた外国人カメラマンにも伝えてポストに近付くと「今日からこの付近は撮影NGになりました」とのこと。図面を見せてもらうと立体交差下までレッドゾーン・撮影NG区間となっていた。立体交差がらみの4パターンは撮れないこととなった……ガッカリ。

 外国人2人を引き連れトンネル出口まで行き「フロム ヒヤー」とデグナー側を指さし叫んだが通じなかったようで、2人はトンネルの下で撮影開始。マーシャルが走ってきて指示をされ、筆者の横に並んで撮影することとなった。

 バタバタしたのに加え露出の難しい撮影なので、マニュアル露出に切り替え露出を調整。撮影を開始したのはセッション終了6分前だった。立体交差の出口に立って撮っているので、天井が斜めにならず真っ直ぐ写っているのも残念。使えそうな数枚の写真から、縁石をまたいで火花の出いてたヒュルケンベルグを採用し、フォトギャラリーに掲載した。

天井が斜めにならなくてガッカリ。火花を理由にこの写真をフォトギャラリーに掲載した

 セッションが終わりメディアバスに乗ると、反対側にいた日本人カメラマンから「何でもめてたの」と聞かれ、「今日からレッドゾーンになったらしい」と話した。その場にいたカメラマンは誰も知らなかったようだ。メディアセンターに戻ると、掲示板に「New Red Zone」と書かれた張り紙があった。路面状況を読み違えたことに加え、レッドゾーンの追加を知らなかったためFP3は消化不良のセッションとなった。

予選は滞りなく撮影

Q1終了間際は下位チームの走行が中心となる

 午後の予選はデグナーのアウト側。予選は走行する時間も周回数も読みやすい。インターバルの時間も決まっているため移動もしやすい。Q1、Q2、Q3と3セッションに分かれ、各セッションは開始直後に3周、終了間際に3周が基本なので、3周の周回が6回あるということだ。予選記事で使用するお堅い写真はQ3に進出できたドライバーが対象なので、デグナー側から立体交差側に移動する作戦だ。

 Q1はデグナー1つ目から2つ目のストレート部分を流し撮り。Q1後半にデグナー2つ目付近に移動してヘアピンに向かうマシンを背後から撮影。F1開催時は看板が多く撮影できない場所が増える。ヘアピンに向かうマシンを真後ろから撮りたかったが、ポジション取りができず斜め後ろから撮ることにした。Q1の終盤はQ2進出を狙う比較的下位のチームが中心となるがそれは仕方ない。

デグナー1つ目から2つ目のストレート部分を流し撮り
Q1撮影ポイント付近。看板に遮られて真後ろからは撮影できない

 デグナー2つ目付近は撮影用のU字溝ブロックが積まれているが、F1開催時は看板で使えない場所が多い。看板に遮られない場所を選び、U字溝ブロックに乗って撮影開始。Q2はデグナー2つ目のクリッピングポイント付近をお堅く撮影。その後は立ち上がりをスローシャッターと2パターンを撮影した。

クリッピングをお堅く撮影
立ち上がってくるマシンをスローシャッターで撮影
Q2撮影ポイント付近。撮影用のU字溝ブロックは沢山あるが、看板が邪魔で使えないものが多い

 Q3は立体交差下に移動し、1回目のアタックはデグナー2つ目から立体交差に向かってくるマシンをお堅い写真で撮影。予選最後となる2回目のアタックはヘアピン寄りにポジションを移し、立体交差の中を走るマシンをマニュアル露出で撮影。どれも定番の撮影なので滞りなく撮影は終了した。

デグナー2つ目から立ち上がるマシンをお堅い写真で撮影
立体交差の中を抜けるマシンをマニュアル露出で撮影。バイザーがクリアだと顔が写る
Q3の2回目のアタックは立体交差下からヘアピン側に移動した

記事、帰宅、飲み会

 この日からライターの日沼氏が合流。日沼氏はマン島TTや鈴鹿8耐など2輪系を得意としていて、モータースポーツ好きだがF1は初めてとのこと。高熱による体調不良とのことで「8耐も体調不良で鈴鹿は鬼門」だそう。筆者は日沼氏が希望した予選1位~3位とマクラーレン・ホンダの写真5枚を前述のとおり選択してレタッチ。この日の仕事は終了した。

 前夜祭を見ていた元同僚のKさんに連絡し合流。ライターさん、Kさんを乗せて18時半頃にサーキットを出発した。この日は一番空いている土曜日。予選終了から2時間以上経っているのでほぼ渋滞なし。サーキット道路の稲生四丁目交差点を左折し、南玉垣町北で国道23号に合流。19時14分にみえ川越ICから伊勢湾岸道に乗り19時36分に名古屋高速を降りた。

 1時間チョットで戻ってきたので緊急の飲み会決定。ライターさんは体調不良でホテルに戻ったが、Kさんと筆者は筆者の自宅近所の居酒屋で昔話に花を咲かせた。

日曜日は渋滞なし ドライバーズパレードもまずまず

 日曜日は名鉄堀田駅に8時半集合としたが、早めに集まったので8時20分に出発。8時26分に呼続から名古屋高速に乗り、8時48分に伊勢湾岸道のみえ川越ICを降り国道23号に合流。特に渋滞もなく9時33分に鈴鹿サーキットに到着した。

 最初の撮影は毎年苦戦しているドライバーズパレードとなるが、今年は少しラッキーだった。先頭車両に乗るハミルトンのインタビューが長引いたため、後続のオープンカーに乗ったドライバーが待たされ例年よりは撮影できた。そのため、フォトギャラリーにもドライバーの写真を載せることができた。

2016年はドライバーズパレードで例年より撮影できた

「改造バカ」を探せ

 次のネタ、いやミッションは鈴鹿サーキットにF1初観戦に来ている「改造バカ」こと高橋敏也さんを探すことだ。パソコン好きの方、特に自作PC好きの方には高橋敏也さんの説明は不要だろう。Car Watchでは現在「高橋敏也の“帰ってきた”新型プリウス買ってみたレビュー」を連載中だ。決勝日に鈴鹿サーキットを訪れた観客は72000人。広大な鈴鹿サーキットで72000分の1の改造バカを探すというミッションだ。

 その前に……。決勝前、ピットからグリッドにマシンを移動させるレコノサンスラップをシケインで撮影した。レコノサンスラップは15分間ピットオープンとなり、1周だけ走ってグリッドに向かうマシンもあれば、ピットを通過して数ラップしてからグリッドに着くマシンもある。実質10分弱、2ラップ程度の撮影となる。シケイン付近の撮影ポジションで、シャッター速度を変えながら撮影を済ませた。

シャッター速度1/320秒で撮影
シャッター速度1/160秒で撮影
シャッター速度1/30秒で撮影
Kさんから「高橋さんに遭遇」とメッセージ

 次はミッション遂行だ。高橋敏也の「そうだ、今週末はF1に行こう!」によると高橋敏也さんはB2席で観戦するらしい。B2席の観客は推定4000人。決勝直前ならB2席にいるはずなので72000分の1から4000分の1に絞り込むことができる。実は元同僚のKさんは筆者よりひと足先に高橋敏也さんと遭遇したことをメッセージで知らせてくれていた。

 このどうでもよいネタ、いやミッションのために時間を費やすゆとりはない。昨年筆者は「初めてのF1、復活のF1」まだ間に合う2015 F1日本グランプリ観戦ガイドを執筆したので、F1観戦後に東京まで帰るルートなどをインプレスのスタッフから事前に相談は受けていた。決勝前にインプレスのスタッフに電話をしておおよその席の位置を確認しておいた。

筆者「席はB2のどの辺ですか?」

スタッフ「C席側の最上段付近です。そうそう、さっきお客さんから高橋さんが声かけられて、スゲーなぁ秋葉原だけじゃなく鈴鹿でも有名なんだ、って思ったら奥川さんの知り合いでした」

 そう、声をかけたのはKさんだった。14時のフォーメーションラップ開始5分前にB2席の正面、2コーナーのイン側に立ち寄り望遠レンズで高橋敏也さんの姿を発見。インプレスのスタッフに電話をして手を振ってもらった。まったくもってどうでもよいミッション、いやネタだが筆者は満足した。無事20時前に東京駅に戻れた高橋敏也さんの観戦記は、高橋敏也の「週末、F1行ってきました!」を参照いただきたい。ついでに離れてはいるが同じB2席にいる同級生2人とKさんも撮影。急ぎ足で決勝スタートを撮るS字の進入付近へ移動した。

決勝序盤はS字、2コーナーをインフィールドから撮影

 2コーナーからS字へ移動途中にフォーメーションラップが始まり、カメラを構えたときは最後尾スタートのバトンが目の前を通過していった。決勝スタートを待つ間にC席の空席の様子をスマホでパノラマ撮影。前編のカメラマンエリア拡張計画で使用した写真だ。

 昨年は2コーナーの立ち上がりでハミルトンがロズベルグを押し出すシーンを撮れたが、今年はハミルトンが出遅れ、ロズベルグがやや後続を引き離すオープニングラップとなった。2ラップ目まで撮影して2コーナーのイン側に移動した。今年のF1日本グランプリは金曜日はカメラマンエリア拡張計画、土曜日のFP3が消化不良となったため、決勝は1カ所の撮影を短時間で済ませ、次へ次へと進む計画だ。新たな試みとしてExifのデータから撮影時刻と移動時間をチェックしてみた。それが何の役に立つのかは筆者にも不明だ。

スタートをS字進入付近で撮影
2ラップ目まで撮影して移動した

 F1マシンは2コーナーからS字まで数秒で走り抜けるが、人間が徒歩で移動すると3分ほどかかるのがもどかしい。実際の歩行時間はもう少し短いと思われる。撮影を終了して一脚を短くして移動開始。次の撮影場所で一脚を延ばしてシャッター速度などの設定を変更して撮り始めるまでの時間が3分ということだ。

 まずは2コーナーからS字に向かうマシンを、斜め後ろからシャッター速度1/60秒で流し撮り。まだスタートから数周でマシン同士のギャップが狭いため、先頭のロズベルグから最後尾のバトンまで7台を撮影。モニターで確認すると使えそうな写真があったので撮影終了。2コーナーのクリッピングポイント付近に移動した。Exifを見ると14時8分54秒から9分16秒まで、この撮影は22秒だった。

先頭のロズベルグを14時8分54秒に撮影
バトンを14時9分22秒に撮影して次へ移動した

 2コーナーのイン側の報道エリアは夏の鈴鹿1000kmでは撮影禁止だった。報道エリアに立って撮影すると、背後にある激感エリアで撮影するカメラマンの邪魔になるからだ。F1グランプリでは激感エリアにお客さんが入れないので規制はなし。もしかすると、今後は2コーナーのスタンドをバックに広角レンズで撮影できるのはF1だけになるかもしれない。

消化器ポスト自体が撮影の邪魔になる(WTCCで激感エリアに脚立を立てて撮影)
オレンジの表示板の足下に消化器が置かれている

 筆者は国内レースで激感エリアにカメラマンがいるときは、消化器ポスト(オレンジの表示板)の脇で撮影している。元々消化器ポスト自体が撮影の邪魔なので、すぐ脇に立った方が邪魔になりにくいと考えている。激感エリアに誰もいなければ好きな位置で撮れるので、F1のときは気楽に撮影ポジションを決めることが可能だ。

 レンズを標準ズームに付け替え焦点距離を24mmにして、スタンドを背景にしてシャッター速度1/30秒で撮影。ここはスローシャッターで失敗率が高いと思い5分ほど撮影した。この原稿を書いている途中で、ここで撮った写真をフォトギャラリーに入れ忘れていたことに気付いた。その理由は自分でも分からないが、ここにフルHDサイズで掲載しておこう。その後、少しS字側に撮影ポジションを移動し、C席スタンドをバックに斜め後ろからシャッター速度1/30秒で流し撮り。ここでは3分間(2ラップくらい)ほど撮っているが、この場所で撮った写真もフォトギャラリーでは使用しなかった。

Eスタンドをバックにシャッター速度1/30秒で撮影。フォトギャラリーに入れ忘れたのでフルHDで掲載しよう
C席をバックに撮影。この写真でもC席スタンドの最前列はほとんど空席になっていることが分かる

 2コーナーの撮影を終えた時刻は14時21分。オープニングラップでロズベルグを撮ってからおよそ17分が経過した。ここからS字まで3分ほどかけて大きく移動。S字に進入するマシンをシャッター速度1/80秒で5分(3ラップ)ほど撮影し、少し逆バンク側に移動して、4分ほどS字1つ目の右ターンを真横からシャッター速度1/100秒で流し撮り。

S字に侵入するマシンをシャッター速度1/80秒で撮影
S字1つ目を真横からシャッター速度1/100秒で流し撮り

 S字2つ目の左ターンに移動し、逆バンクに向かうマシンを斜め後ろからQ2スタンドをバックに入れて、シャッター速度1/30秒で撮影。撮影時に時間を計測しているわけではないが、シャッター速度が遅くなると成功率が落ちるため本能的に撮影時間は長くなる。加えてこの場所の撮影は納得がいく絵がなかなか撮れない。フォトギャラリーに掲載した写真(ヒュルケンベルグ)は縁石が左側に寄っているが、ボツにしたもう1枚(ベッテル)は縁石が右側まで写っている。縁石の位置とスピード感はベッテルの写真の方がよいのだが、背景の建物が邪魔。建物がフレームに入らないギリギリにマシンを置きたいこともあり撮影時間は5分と長めとなった。これでインフィールドの撮影は終了。時刻は14時40分。スタートから36分ほど経過した。

シャッター速度1/30秒で撮影。縁石が左側に寄っている
ボツ写真。縁石の位置、スピード感はよいが背景の建物が邪魔

決勝中盤はS字、逆バンクを撮影

 国内レースのS字激感エリア付近にある地下道を通ってD席(D5)の下に移動し、そのまま土手を上ってD4席の金網付近に移動。この移動は4分ほどかかった。背後にいるお客さんに親指と人差し指で「チョット(お邪魔します)」とサインを送ると、最前列の女性がクスっと反応してくれた。S字2つ目のクリッピングポイント付近を走り抜けるマシンを、シャッター速度1/100秒で2分ほど撮影。土手を下りて逆バンクに向かった。

シャッター速度1/100秒で2分ほど撮影
定番スポットなのだが、看板が高く撮影できない。わざわざ記事ネタとして撮影

 逆バンクの最前列、カメラホール越しの撮影ポイントはアマチュアカメラマンの定番スポットだ。F1開催時は金曜日しか撮れないためFP1、FP2の人気スポットとなっている。そのすぐ目の前の報道エリアも報道カメラマンの定番スポットなのだが、今年はデグナーと同様に看板に遮られ撮影ができなかった。

 S字から移動時間5分。逆バンクの立ち上がり側に移動し、最初はシャッター速度1/80秒で3分間撮影。ちなみにこのフェラーリの写真はフォトギャラリーの候補に選んだが、選んだ写真にフェラーリが多すぎるという理由で削除した。続いてシャッター速度を1/320秒に上げて正面から2分間撮影。これは決勝のレースレポートの記事で使用するお堅い写真だ。

シャッター速度1/80秒。フォトギャラリーの候補に選んだが、フェラーリが多すぎたのでボツとした
決勝の記事用にお堅い写真も撮影

 次はシャッター速度を1/30秒に下げ、逆バンクに進入してくるマシンを撮影。過去に何度も撮っている構図だが大苦戦し、7分ほど撮影した。フォトギャラリーに掲載したライコネンの写真は縁石の位置はOKだが、マシンの位置は1車身後ろにしたかった。

縁石の位置はOKだが、マシンはもう1車身左に寄せたかった

 この場所からS字方向を撮った写真を見てもらおう。コースの先に鈴鹿の街が見え、その先に海と船が見える、という話しではない。マシンは左側の白いタイヤバリヤを覆う緑のカバーから見え始める。S字を立ち上がるまではブラインドとなるため、いつどのマシンが来るかが分からない。見えてから撮影したい位置まではコンマ数秒。マシンを選びレンズを振り始め、AFポイントを合わせてシャッターを切る……には時間が短かすぎるのだ。

タイヤバリヤからマシンが見え始める。コンクリート壁の上にカメラマンがいるとマシンの接近が予測しやすい

 筆者の反射神経と、F1はSUPER GTなどよりマシンが速いことが難易度を上げる要因だと思われる。加えて国内レースは報道カメラマンが多く、コンクリート壁の上で撮っているカメラマンの動きでマシンが来ることが分かる。交差点で赤信号から青信号に変わるのを待つ際、交差する方向の信号が黄→赤に変わるのを見て「そろそろ青に変わる」と分かるだけで反応時間は異なる。それと同じでブラインドコーナーからマシンが来ることを少しでも予測できればよかったのだが、今回は誰もいなかったことも影響した。

 S字方向に戻り、看板で撮れなかった定番の位置より少しS字側で、進入してくるマシンをシャッター速度1/400で撮影。さらにS字側に移動し、逆バンクからデグナーに向かうマシンを斜め後ろからシャッター速度1/60秒で撮影。どちらも撮影時間は3分だった。逆バンクの撮影は移動と撮影で21分を要した。

シャッター速度1/400で3分間撮影
シャッター速度1/60でここも3分間撮影

マッサの鈴鹿ラストラン

ピットビルを背景に入れシャッター速度1/40秒で4分間撮影

 逆バンクの撮影を終え、2コーナー方向に4分かけて移動。時刻は15時16分。チェッカーまで残り14分ほどとなった。S字に進入するマシンをシャッター速度1/100秒で3分間撮影。さらに2コーナー方向に移動し、2コーナーからS字へ加速するマシンをシャッター速度1/100秒で2分間撮影。ほぼ同じ場所でピットビルとVIPラウンジを背景に、S字に進入するマシンをシャッター速度1/40秒で4分間撮影。レースは残り2周だ。

シャッター速度1/100秒で3分間撮影
2コーナーからS字へ加速するマシンをシャッター速度1/100秒で2分間撮影

 残るはエンディングの撮影だ。ラストラップは2コーナー側に移動し、芝生から浮き上がってくるマシンを撮影。さらに2コーナーに近付き、チェッカー後に優勝したロズベルグが手を上げるシーンを撮りたかったが手を上げずに通過。ベッテルは手を上げてくれたが4位では意味なし。最後の最後は鈴鹿ラストランのマッサだ。

ラストラップは芝生から浮き上がってくるマシンを撮影
ベッテルは手を上げてくれたが4位

 今年のF1日本グランプリでは、最後にプチ素晴らしい光景を目にすることができた。12位以下はラップダウンとなったため、9位~11位争いをしたマッサ、ボッタス、グロージャンがコース上で最後にチェッカーを受けた。2コーナーをボッタス、グロージャンが先に通過し、9位でチェッカーを受けたマッサが最後尾で2コーナーに現れ、ランオフエリアに出て観衆に手を振るシーンを見ることができた。今年のフォトギャラリーのマシンの最後の1枚は観衆に手を振るマッサ、ドライバーも最後はマッサとした。ちなみに前編の最初の1枚をマッサにしたのは長年F1で活躍したマッサへの感謝。後編の最初の1枚はもしかしてラストランのバトンとした。

フォトギャラリーの最後は鈴鹿ラストランのマッサとした

 2015年のフォトギャラリーの満足度は高かったが、2016年のフォトギャラリーはそれほどではなかった。FP3の消化不良もあるが、最大の理由は天気。昨年は雨のセッションがあったので撮っていても楽しかったし、絵のバリエーション的にもよかったと思う。

レース終了後の渋滞は

 レース終了後はメディアセンターに戻り、決勝レポート用の写真の選択とレタッチ。記事の完成を待つ間にキヤノンの現地サポートにカメラ、レンズの清掃をしてもらい、サーキット周辺、鈴鹿IC周辺、国道23号の渋滞の様子もチェックした。

レース終了1時間後となる16時50分頃、鈴鹿サーキット周辺の主要道路はかなり渋滞
同時刻、鈴鹿ICは名古屋方面がそこそこ渋滞
同時刻、国道23号は鈴鹿川手前が渋滞。四日市市内は大きな渋滞なし
18時頃、鈴鹿サーキット周辺の渋滞はやや緩和
同時刻、鈴鹿ICは高速の入り口手前から激しく渋滞
同時刻、国道23号は四日市競輪を先頭に四日市市内までかなり渋滞。鈴鹿川手前も渋滞

 元同僚のKさんは、レース終了後にB2席から鈴鹿サーキット稲生駅に向かい電車で帰路についた。刻々とメッセージを送ってくれたので紹介しておこう。16時11分:(鈴鹿サーキット稲生駅から)四日市行きに乗りました。立ってはいますが、空いています。16時26分:四日市に着きました。16時34分:快速に乗り換えましたが、大混雑です。17時09分:名古屋駅に着きました。17時53分:いま最寄駅(東海市)に着きました。名鉄のダイヤが乱れてたのが想定外でしたが、2時間くらいで着けたので上出来です。と順調に帰宅できたようだ。

 記事が完成し、ライターさんと一緒に19時前に鈴鹿サーキットを後にした。四日市まで筆者がクルマで送り、ライターさんは電車で東京まで、筆者はとりあえず名古屋の自宅まで戻る計画だ。18時53分に駐車場を出て、ゴソゴソっと渋滞を避けて19時06分に南玉垣町北で国道23号に合流。鈴鹿川から先が渋滞していたのでファミマのある交差点で県道6号に逃げ、19時26分にJR四日市駅でライターさんを落とし、カインズホームまで線路の西側を進み、国道23号に19時36分に合流。19時44分にみえ川越ICから伊勢湾岸道に乗り20時06分に名古屋高速・呼続ICを降りた。

19時25分、まもなくJR四日市駅に到着。国道23号は四日市競輪まで渋滞中
19時35分、踏切を渡ると渋滞の先の国道23号に合流できる

 昨年、逆バンクの超望遠試撮会で「Car Watchの奥川さんですか? もてぎの撮影ガイド参考になりました」と声をかけてもらった読者のYさんとはレース後にFacebookでつながった。Yさんは18時23分に駐車場の写真をアップして帰路についていたが、20時12分に「四日市で渋滞にはまっています」とコメントをくれたので、渋滞に巻き込まれたと思い様子を聞いてみた。

 Yさんは駐車場を出た後にマックスバリューで買い物をして、すき家で夕飯を食べて鈴鹿を出発したのは19時半。その後は筆者と同じく国道23号のファミマの交差点で右折して県道6号を進み、四日市市内で国道23号に戻ったのが20時12分とのことだった。「同じルートですね」と聞くと「奥川さんの以前のレポートを参考にさせていただきました。Googleマップと照らし合わせました(^^;)」とのこと。この記事の理想的な活用法だ。

 今年はリザーブドライバー(息子)が参加していないので、名古屋から深夜に川崎に向かうことは断念。翌日の朝に移動した。帰宅後にフォトギャラリーの作成に入ったが、完成間近で金曜日から始まるMotoGP前に出発。もてぎから戻ってフォトギャラリーを完成。一連のF1撮影は終了となった。

F1の地上波放送復活を願う

 最後に余談だが、筆者が今年1番気合いを入れて臨んだ撮影はMotoGP。鈴鹿8耐は1984年から20回以上撮影しているし、十年以上前に鈴鹿サーキットで行なわれたMotoGPも撮ったことはあるが、ツインリンクもてぎで2輪レースの撮影経験はなし。昨シーズン、今シーズンはF1以上に面白いレースが展開されていたので、昨年から「行ってみたいなあ、撮ってみたいなあ」と思っていた。

 MotoGPは今年も富士スピードウェイで行なわれたWECと同日開催。Car Watchの編集長にお願いして、WECをパスしてMotoGPの撮影に行くことにした。練習とデータ取りのため5月に行なわれた全日本ロードレースを撮影。8月のツインリンクもてぎ2&4も撮影。自宅では2013年、2014年のMotoGP日本グランプリの映像を見て(2015年は雨)走行ラインや各コーナーでどれくらいバンクが深くなるかなどもチェック。

 もの凄い気合いを入れて臨んだMotoGP。最初のセッションでロッシ、マルケス、ロレンソなどを撮り始めた瞬間は、1981年に初めて富士スピードウェイでレースを見たときと同じくらい感動した。MotoGPのフォトギャラリーがF1よりはるかに凄いわけではないが、少し満足度の高い写真が撮れたと思っている。また、昨年に引き続き筆者の個人サイトに今年のF1とMotoGPの4K(3840×2160ピクセル)写真をフォトギャラリーとして追加掲載した。

 現在、F1は地上波もBS放送もなくなり、一般の人の目に触れる機会が減っている。一方、MotoGPは録画放送ながら日本テレビが地上波で放送している。加えて地上波の解説をするチュートリアルの福田さんが素晴らしい。筆者はスカパー!でMotoGPを見ることができるが、「チョット待って地上波で見よう」「スカパー!で見たけどもう1回地上波で福田さんの解説で見よう」と思うことがある。MotoGPでコースサイドを移動するメディアバスで福田さんと同乗した際にそのことを伝えると「嬉しいわあ~ありがとう」と言っていた。

5月の全日本ロードレースのメディアセンターで後ろの席に福田さんがいてビックリ
ツインリンクもてぎで開催されたMotoGPでも撮影に応じてくれた

 MotoGPの放送を見るたび、F1の地上波放送復活を期待してしまうのは筆者だけだろうか。先日掲載した「エプソンとモータースポーツの歴史を振り返る」のように、エプソンはメルセデスF1チームのスポンサーだ。ホンダもマクラーレンと組んでF1に復帰している。これらF1に関連する企業の支援は必要だと思うが、数日遅れの深夜3時からの録画放送でもよいからF1の地上波放送を復活させてもらいたい。できればチュートリアル福田さんのような、本当にレースが好きな芸能人を解説に加えて、基本生放送で見ている筆者が「もう1回地上波で見たい」と思えるようなF1放送を実現してほしいと願っている。