トピック

高橋敏也の「そうだ、今週末はF1に行こう!」

今からでも間に合うのか? F1を観戦するために鈴鹿サーキットを目指すおっさん奮闘記

「F1」である! 「F1」の記事を書くにあたって「F1」の写真を探してみたが、行ったことないんだからあるわけがない。そんな困ったときの「F1」である!

 人間、忙しい状況が続くとどんどん心がささくれ立ってくる。それはやがて人間関係に影響を及ぼし、仕事のクオリティを落とし、ついには愛犬に嫌われるようになるのだ。レアポケモンは出現しなくなるし、出撃させた艦娘たちは大破して帰ってくる。オンライン戦車ゲームをやれば子供から英語で罵られ、ダメになった奥歯を抜く(本当に抜いた)はめになるのだ。

 では、そんな状況を改善にするにはどうしたらいいのか? 話は簡単、休養と気分転換、そして美味しい食事である。家庭を離れて1人で旅をして、好きなことをしながら素晴らしい食事を愉しむ。ああ、想像しただけで何やら少しだけ元気が出てきた。本当にそんなことができたらささくれ立った心も一気に回復するだろう。よし、ならばやるしかない。

 家庭を離れて1人でというのは「ポニョ嫁が興味を持たないことや場所」を選べばいいし、さらに「仕事なんですよ」とごまかせればクリアできる。そして楽しく、美味しくとなるといったいどんなことができるだろうか? アミューズメント系施設だと無理がある。ポニョ嫁が興味を持つし、そもそも私はそんなところへ仕事で行かない。ツーリングというのは仕事っぽくていいのだが、いかんせんツーリングは楽しいのだが疲れてしまう。

 そんなことを考えていて、ふと思い出したのがこれ。

★高橋敏也の「2016 NGKスパークプラグ 鈴鹿2&4レース」観戦記
http://car.watch.impress.co.jp/docs/topics/758482.html

この時は名古屋でひつまぶしを食べ、サーキットでも食い倒れるほど食べ歩いた

 要するに普通のおっさんがレース観戦を目的にドライブをして、宿泊地で美味しいものを食べるという、まさに今の気分にピッタリの企画を以前やったのである! これでしょう! これしかないでしょう! しかも、しかもである。10月7日~9日には鈴鹿サーキットでF1があるじゃないかぁぁぁぁぁ!

 F1、それはおっさんの夢(8耐でも同じようなこと言ってたな)。世界最高峰のフォーミュラカーがサーキットに歴史を刻み込む、まさに真剣勝負! TVでは何度も見たし、いつか絶対にサーキットで生のF1を観戦するんだと誓った若き日の高橋敏也。これだよ、これ! 鈴鹿サーキットに行くと言えば「仕事だよ、仕事!」と言い張れるし、鈴鹿サーキットなら美味しいものが食べられるのは体験済み。そしてF1である。

 これはもう天が私に「汝、鈴鹿サーキットへ行ってF1を観戦し、そして美食せよ」と命じているのだ! よし、ならばF1だ!

F1へゴー!

 ここからおっさんの悪巧みが始まる。まずはCar Watch編集部の籠絡(「ろうらく」と読みます、意味はググってみよう!)を試みる。うまくいけばF1のレポートということで、本当に仕事にできるかも知れないからだ。そんな訳でいつもとは逆パターン、私からCar Watch編集部へと電話をする。

高「実はですね、F1を観戦しに鈴鹿サーキットへ行こうと思いまして」
編「それはよかったですね」
高「ついては観戦レポートを執筆してそちらのサイトに掲載してもらえないかと。で、まあ、ついでにチケットの手配をお願いできないかなーとか。なにせF1に行くのって初めてで」
編「……敏也さん、F1に詳しかったですか?」
高「(まずい)……そりゃあもう! 一番好きな車両はタイレルの6輪で……」
編「ティレルP34のことですか、はあ……。では好きなF1ドライバーは?」
高「(さらにまずい)……あ、中嶋悟さんですかね」
編「ちなみにティレルP34が昔の車両だってことは知ってますよね? 何年ぐらい前だと思います?」
高「あー、15年ぐらい前ですかね、あはは」
編「40年前です。ちなみに中嶋悟さんがF1に初参戦したのは何年前ですか?」
高「やっぱり15年ぐらい前?」
編「29年前、1987年のブラジルです。では最後の質問です! 現在、ポイントトップのドライバーは誰でしょうかっ?!」
高「……片山右京さん?」
編「メルセデスのニコ・ロズベルグじゃあボケェ!……では、さようなら~」
高「ちょっと待ってぇぇぇ!」

ティレル(タイレル)P34は1976年と1977年に活躍した初の6輪F1マシン

 半分ぐらい本当の話である(残り半分は盛りました)。仕事にできるかも知れない、そして人気のF1ともなればチケット入手も難しいだろうとCar Watch編集部に頼ってみたのだが、相手もなかなかのものである。そこでまずは籠絡を諦め、この時期(決勝まで1週間!)でもチケットが入手できるのか調べてみた。まず何よりチケットの入手方法は決して難しいものではないと判明。例えばF1が開催される鈴鹿サーキットのサイトから購入することもできる。

(※編集部注:記事掲載現在、鈴鹿サーキットWebサイトでのチケット販売は終了しています。チケット購入は下記のローチケHMVをご利用ください)

 一方、こちらの方が便利に購入できる人も多いだろうと思うのがローチケHMV(旧名:ローソンチケット)。実はこれ、Car Watch編集部に教えてもらったことなのだが。そんな訳で私はローチケHMVでチケットを購入することにした。

★ローソンHMV
http://l-tike.com/sports/f1/

 だが、そこはそれF1である。「このあたりはコスパがよさそう(値段のわりにいい感じで観戦できそう)」とか、「高価だけどここは絶対いい」とかいった席は軒並みソールドアウトか残り僅かだったりする。さすがF1、やっぱりF1、侮るなかれF1! あれこれ調べてみた結果、個人的にはB2あたりがいい席だと思うのだが、自分の判断に自信が持てないF1初心者の私としてはCar Watch編集部に聞いてから決定することにした。

F1の指定席マップ。人気の高い席ほど価格もあがる

 よし、チケット入手の目処はなんとかなった。では、どうやって鈴鹿サーキットへ行こうか? バイクのレースなら愛車でツーリングという手もあるのだが……。

★行ったぞ、鈴鹿8耐! 高橋敏也、ついに憧れの「“コカ・コーラ ゼロ”鈴鹿8耐」を観戦!
http://car.watch.impress.co.jp/docs/news/662213.html

この時はZ1300で鈴鹿まで走ったが、道中パンクに見舞われるなど苦労もあったが、あこがれの鈴鹿8耐に愛車で行くというのはそれ以上に満足感を味わえる

 まず何より愛車であるカワサキのZ1300が現在、エンジンのオーバーホール兼カスタマイズで札幌へ出張中なのである。ならば愛車プリウスと思うのだが、ここでCar Watch編集部からのよからぬ情報が。なんと10月7日の24時まで東名高速道路が集中工事で、金曜日から鈴鹿サーキットを目指す人は要注意というのである。

 さて、さてさて。実はこの時点まで、私は「10月7日金曜日の夜にプリウスで東京を出発し、土曜日の予選からF1を観戦する」というスケジュールを立てていたのだ。なので東名高速道路の集中工事という情報をもらった訳だ。だが、私はあることをすっかり忘れていたのである……。

新幹線でゴー! 宿営地は名古屋!

 いやいや、忘れていた訳じゃない! 10月8日土曜日、私にはイベント登壇という絶対に外せない重要な仕事があったのだ! NAS(Network Attached Storage、ネットワーク上にある記憶装置)に関するイベントが10月8日にある。このためF1予選の観戦はナシと決まった。

 さて、スケジュールがタイトになって来たぞ。10月8日、イベント登壇が終了するのは18時@秋葉原。10月8日出発ということはクルマで行っても東名高速道路の集中工事は回避できるが、鈴鹿サーキットまで6時間前後のドライブとなる。18時にイベント終了、19時に東京出発、鈴鹿サーキット到着は25時、すなわち本戦当日の午前1時……。

 よろしくない、これはよろしくない。せっかく心の癒やしを求めてF1観戦へ行こうというのに、疲れ切ってどうするのだと小1時間。ということでスケジュールを調整しつつ、まずは宿泊施設の情報を調べてみる。というのも、鈴鹿8耐や鈴鹿2&4レースの取材で知ったことだが、ビッグレースが開催される時は鈴鹿サーキット周辺の宿泊施設は早々に満室となるのである。

 それがあなた、今回はF1ですよF1。調べるまでもなく、実は最初から鈴鹿サーキット周辺の宿泊は諦めていたのだ(後で聞いたのだが、F1に合わせて周辺の宿泊施設は半年前からいっぱいになるそうだ)。となると美味しい食事を確実に楽しめて、鈴鹿サーキットからさほど遠くない名古屋がターゲットとなる。ここで交通機関の検討に戻り、東海道新幹線の時刻表とにらめっこ。19時に東京駅を出発するのぞみ253号を使えば名古屋駅到着は20時40分。これならホテルにチェックインしてから超豪華なディナーをいただく余裕がある。名古屋駅周辺や例えば栄あたりなら、宿を確保するのも簡単だ。

 問題は名古屋から鈴鹿サーキットへの足だが、調べてみるといくつか便利そうなものが見つかった。まずシンプルなのは近鉄名古屋線で白子駅へ行き、そこから鈴鹿サーキット行きのバス、あるいはタクシーを使う方法である。鉄道ということなら同じく近鉄名古屋線を使って伊勢若松駅まで行き、近鉄鈴鹿線に乗り換えて平田町駅下車。そこからタクシーを使うか、あるいはバスで野田バス停まで行って歩く。ただし徒歩で25分ぐらいかかるというので、これはあまりお勧めできない。最後はJR 四日市駅から伊勢鉄道で鈴鹿サーキット稲生駅で下車、そこから徒歩というもの。この場合も通常徒歩20分程度はかかる。

★鈴鹿サーキットのアクセス案内
http://www.suzukacircuit.jp/f1/access/publicfacility.html

名古屋からの電車でのアクセス
大阪・京都方面からの電車でのアクセス

 いくつかの選択肢があるなかで、今回は名古屋からの三重交通の臨時直通バス「サーキットエクスプレス名古屋・鈴鹿直通バス」を使うことにした。というかもう予約した(片道3000円、往復5000円)。

★サーキットエクスプレス名古屋・鈴鹿直通バス
http://ryoko.sanco.co.jp/palook/topics.php/show/259

 問い合わせをして分かったことなのだが、この直通バス、帰路(鈴鹿サーキット→名古屋)は当日でも席にある程度は余裕があるとのことだが、往路(名古屋→鈴鹿サーキット)は予約しないと席が確保できないらしい。ネットからの申し込みはクレジットカード決済で10月4日までとなっている。このためF1に行く、名古屋に宿泊すると決めたらすぐ予約した方がいい。ちなみに10月7日から鈴鹿サーキットの第9駐車場に臨時の窓口が用意され、ここでなら前日まで受け付けを行なうそうだ。7時30分にこのバスで名古屋を出れば、9時ぐらいには鈴鹿サーキット入りできそうだ。

 ここでCar Watch編集部から耳寄り情報が入電。当初、私は名古屋と鈴鹿サーキットの往復をバスでしようと思っていたのだが、帰りはバスではなく別の手段を使った方がいいらしい。というのも、帰りのバスは渋滞に巻き込まれる可能性が高い(確かに鈴鹿サーキット→名古屋の夕方は渋滞が発生しやすい)。このため裏技として行きはバス、帰りは鈴鹿サーキット稲生駅まで歩いて電車を利用するという方法があるそうだ。

 ちょっとここで話は飛ぶのだが、実は上記の裏技、シート選びにも関係しているという。F1のシートに関しては最安の西エリアチケット(9000円~、もちろん完売!)から、メインストレートが見渡せるV2席(6万5900円~)まで細かく別れているのだが、私がターゲットにすべきは東コースを一望できるB2席。当初はA2席を狙ったのだが残念ながら完売。ではなぜA2席やB2席かというと、まず何よりレースを楽しむのに適していること、そしてバラエティに富んだ出店があるGPスクエアから近い。さらにはF1開催時だけ臨時で設けられる1コーナーゲートに近いのだ。1コーナーゲートは鈴鹿サーキット稲生駅に一番近いゲートで、そこから駅までは徒歩15分ほど。つまりレース終了後、そそくさと駅へ向かうにはこのあたりのシートがベストポジションなのだという。

食事からグッズ販売までさまざまな出店がなされるGPスクエア。A2席ほどではないが、B2席からも比較的アクセスしやすい
B2席の様子。鈴鹿サーキットのWebサイトはシートからの見え方の情報が充実しているので便利だ(http://www.suzukacircuit.jp/f1/ticket/map.html

 さすがはCar Watch編集部、このあたりの知識はさすがである。これでもう少しライター使いが優しければいいのだけどね……。F1初心者のおっさんとしてはCar Watch編集部が言うとおりに動いてみて、本当にそうなのかを試してみたいと思っている。ちなみにレース終了後、スムーズに鈴鹿サーキット稲生駅へ行ければ、最終的に東京着は20時頃になるというが本当なのか?

出撃準備完了……なのか?

 10月8日はイベント終了後、秋葉原から東京駅へ移動、新幹線で名古屋へ向かう。宿泊地は名古屋、名古屋駅周辺のビジネスホテルを確保。名古屋でディナーを美味しくいただく。前回の名古屋ではひつまぶしをいただいたので今回はミソカツか、はたまた喫茶マウンテンか?

 そしてF1本戦の10月9日は早朝、臨時バスで名古屋から鈴鹿サーキットへ向かう。レース終了後は速やかに鈴鹿サーキット稲生駅へ向かい、そこから名古屋駅、名古屋駅から新幹線で帰京。シートはB2席を確保し、F1だけでなく鈴鹿サーキットの美味しいものも大いに楽しむ。

 残る問題は、F1観戦に何を持っていくかだ。1泊分の着替えはもちろんとして、やはり雨対策は必須だと思う。しかしなるべくコンパクトかつ軽くしたいので、簡易的な雨合羽(コンビニなどで売っているもの)とコンパクトな折りたたみ傘にしよう。10月9日の天候はもちろん現時点では不明。よく晴れれば暑いだろうが、最近どんどん気温も下がっているし、雨でも降ればまず間違いなく寒くなる。なのでパッと羽織れる上着は用意したい。

 今回はレポート記事を書くという訳ではないので、一眼レフカメラは必要ないと思っている。ビデオはどうせ撮っても見ないだろうから、カメラ系はコンパクトで多少望遠が使えればいいだろう。要するに望遠付きのコンデジだ。ちなみにこれも調べてみて分かったのだが、全長が26cm(ボディ、レンズ、カバー等すべてを含む一番長い距離)を超える望遠レンズカメラは観客席での使用不可というルールがある(危ないし、他の観客の邪魔になる可能性もあるため)。どうしてもしっかり写真を撮りたいという人は、コース各所の撮影エリアを自由に移動できるカメラマンエリアチケット(3万9100円~)を購入しよう。

 基本、私は観戦に集中するので双眼鏡を持っていこうと思っている。高倍率では重い上にぶれてしまって高速移動するF1カーを追いかけるのは辛い。そこで明るくコンパクト、軽量な8倍ぐらいの双眼鏡を持っていこう。高倍率の双眼鏡を一脚で使うという手もあるだろうが、重装備にしたくないし、ワイドに肉眼で観戦した方が楽しいと思う。双眼鏡はあくまで補助的な役割ということだ。

暫定で持っていこうと思っているNikon 1 J3と1 NIKKOR VR 10-100mmの組み合わせ。レンズは35mm換算で27-270mmとなる。普段は取材時の写真メモ用に使っている。軽くて使い慣れているというのがポイント
暫定で持っていこうと思っているNikon MONARCH 7。8倍で対物レンズの有効径が42mm。キャップ付きで防水、メガネをしたままでも使いやすい。もともとはサバイバルゲーム用に買ったもの

 また、クローズアップが見たいというなら、サーキットビジョンに頼るという手もある。実はA2席を確保したかった別の理由として、このサーキットビジョンが目の前にある(※編集部注:B2席にもサーキットビジョンはあります)というのもあったのだ。サーキットビジョンがよく見えないというなら、ぜひともFMラジオを聴けるようにしておきたい。鈴鹿サーキットの場内FM放送「Pit-FM」を聴けるようにしておけば、レース状況も把握しやすくなる。Pit-FMはSNSでの投稿も受け付けていたりするので、FMラジオが聴けるスマホが超オススメだ。

★Pit-FM
http://www.suzukacircuit.jp/f1/pitfm/

エリアによって周波数が異なるので注意しよう!

 もっと情報を入手しながら観戦したいというなら、F1オフィシャルのアプリという手もある。基本は無料だが、月額360円(年間3200円)でライブタイミングも見られるようになるので、よりF1観戦を楽しむことができる。

★オフィシャルアプリ
https://play.google.com/store/apps/details?id=com.softpauer.f1timingapp2014.basic&hl=ja(Android)
https://itunes.apple.com/jp/app/formula-1/id835022598?mt=8(iOS)

 当日、着ていく服はなるべく楽に動けるものがいい。ポイントは靴だ。履き慣れた歩きやすいものが必須である。鈴鹿に限らずサーキットは広く、移動でかなり歩くことになる。歩きづらい靴では地獄のような目に会うこと間違いなし。

 よし、残るは誠意あふれる態度でCar Watch編集部を説得するだけだ!

高「“普通のおっさんが見たF1”というレポートはどうですかね?」
編「さすがにF1では必要ないでしょう」
高「ではレポートライターのサポート役というのはどうですかね。何ならカメラマンのアシスタントでもいいです」
編「……要するに敏也さんはF1に行くコストを、なんとかしてうちに出させようとしているのですね」
高「(バレた)なんということを! そんなことオオアリクイの涙ほども考えたことはありません!」
編「分かりました。では“F1に行こう”というテーマで原稿を書いてください。F1に行きたいと思い立ってから、どういったスケジュールで行くか具体的に書いていただければ結構です」
高「(よし! 名古屋のホテル代ぐらいは稼げた!)えーと、それで観戦レポートは?」
編「いりません」

 はい。という訳でこの原稿が出来上がりましたとさ。いやいや、本当に行きますよ、F1。人生初のF1ですから、そりゃもう今から楽しみで楽しみで、遅ればせながらドライバーとかチームを調べています(本当に知らない)。鈴鹿サーキット、B2席あたりで私を見かけたら気軽に声をかけてください。ではF1でお会いしましょう!

協力:鈴鹿サーキット