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【インプレッション】ホンダアクセス「N-ONE Modulo X」

 ホンダ車の魅力をより引き立てる各種カスタマイズパーツをラインアップしているホンダアクセスの「Modulo(モデューロ)」ブランド。そのモデューロが目指す、「誰もが、いつでも、どんな道でも気持ちよく走りを楽しめる」をより高い次元で実現するため、「N-ONE」では一歩進んでコンプリートカーという手法を採った。

 トールワゴンの「N-BOX」に続くコンプリートカーブランド「Modulo X」の第2弾として2015年7月に発売された「N-ONE Modulo X」は、面白いことにN-ONEを愛用していた人が乗り替えているケースが多く、N-ONE全体における販売比率も計画を上回っているという。それだけN-ONEというクルマ自体、こだわりを持って愛用している人が多いということのようだ。

「ちいさなGrand Tourer」というコンセプトは、もともと軽自動車ながらツアラーを意識して開発されたN-ONEのそれをさらに発展させたものといえる。専用アイテムとしてエアロパーツ、アルミホイール、サスペンション、ブレーキパッドが与えられているほか、フロントの高剛性バンパービーム装着や専用CVTセッティング(Sレンジ)、専用EPSセッティングなど、コンプリートカーだからこそできたことも挙げられる。

ホンダアクセスが手掛けるコンプリートカー「N-ONE Modulo X」。パワートレーンは直列3気筒DOHC 0.66リッターターボエンジンに専用セッティングを施したCVTの組み合わせで、駆動方式は2WD(FF)のみの設定。ボディカラーは2トーンカラーのみの設定で、撮影車両はプレミアムホワイト・パールII&レッド。価格は189万8000円
専用のエアロバンパー、フロントグリル、サイドシルガーニッシュなどを装着してスポーティさを強調するN-ONE Modulo Xのエクステリア。これに加え専用サスペンションや専用ブレーキパッド、専用デザインの15インチアルミホイール(プレミアムガンメタリック)、専用マフラー、高剛性バンパービームといったアイテムにより走行性能が高められている。インテリアではステアリングホイールやシートにレッドステッチを施すとともに、フロントシートにはModulo Xのロゴをあしらった
群馬サイクルスポーツセンターではノーマル車両にも試乗

 その真価をより深く味わうべく、今回は「日本のニュルブルクリンク」と呼ばれる群馬サイクルスポーツセンターのコースを走行した。比較のためノーマルのN-ONEも用意されていたので、先にそちらをドライブした上でModulo Xでコースイン。モデューロのデモカーに乗るといつも感じるのだが、走り出して最初のコーナーでその違いを感じる。そしていくつかコーナーをクリアしていくと、その思いは確信となる。

 まず違うのがステアリングフィールだ。切り始めからリニアに向きが変わり、路面をしっかり掴んで曲がっていく感覚がある。そしてライントレース性が非常によい。狙ったとおりにノーズが素直にインを向き、そのままよい姿勢をキープしながら立ち上がりではアンダーステアが出にくいセッティングを実現している。初期の舵角も小さくなっているし、あらゆるコーナーを気持ちよく曲がっていける。制御の変更により、操舵力は軽めながら、センターの据わりがよく、切り込みがスムーズかつリニアで応答遅れがない感じがノーマルとは違う。

 路面の荒れたタイトなコーナーの立ち上がりでも、スムーズにクルマが前へ進んでいこうとするのが感じられる。それだけコーナーではしっかり踏ん張り、タイヤが路面に追従してトラクションを確保できているからだ。路面のアンジュレーションが大きめなコースではなおのこと、より真価を発揮する。足まわりも締めすぎてない印象で、動いてほしいところでよく動く「柔らかさ」と、不要に動かさない「硬さ」が絶妙なバランスで同居している。

 せっかくこういう場所なので、ハイスピードでも攻めてみたところ、ノーマルは挙動が大きく出て、接地性が失われるときがあるのに対し、Modulo Xはそれがない。入力を大きめに感じることはあるものの、とくに横揺れが少なく、振動が素早く収束するので、トータルの乗り心地はこちらのほうがよいように感じる。

N-ONE Modulo Xの開発担当である足立亮一氏(手前)と筆者(奧)

 これにはボディ剛性の向上も効いていると開発担当の足立氏は述べる。「N-ONEはちょっといじるとバランスが崩れてしまう難しいクルマです。あまりフロントを勝たせすぎてもよくないので、開発には苦労しましたが中立をきちっと出しつつ、ノーマルより応答性を上げながらも、高速での安定性を引き上げています。パワステというのは足まわりとのマッチングでよくもわるくも感じられるものですが、そこのチューニングもしっかりやっています」という。

 また、足立氏によると直進安定性には同じく相当に注力した空力の恩恵も大きく、開発時にはデザイナーも同行し、1週間テストコースで詰めてその場で削って空力性能を煮詰めたという逸話もあるそうだ。

 今回は普通の女性が乗っても楽しく感じられることを確認してもらうため、モデューロスマイルの水村リアさんにも筆者の運転で助手席に乗ってもらったり、自分でも運転してもらったりした。そして、Modulo Xをドライブしての開口一番は、やはり「楽しかった!」だった。「普段自分ではこんなにくねくねしたところは走らないし、大丈夫かなと思っていたのですが、安心してクルマに任せて走ることができました。運転が上手くなったような感じがして、もっとずっと長く乗っていたくなったくらいです!」と笑顔で答えてくれた。

群馬サイクルスポーツセンターではモデューロスマイルの水村リアさんも試乗。助手席での感想とともに実際にステアリングを握った印象を語ってもらった

「ノーマルも乗りやすいのですが、ちょっとロールが大きめなことと、路面のわるいところで跳ねる気がしました。グラフで描くとノーマルは揺れの幅が大きくて、Modulo Xは小さい感じ。足下で振動を吸収している印象です」という彼女の走りっぷりは、ノーマルに乗ったときよりも知らず知らずのうちにスピードが出ていた(笑)。やはり安定感が高いぶん自然とそうなってしまうようで、同じN-ONEでもセッティングによって変わることに驚いていた様子だった。

 さらに、「助手席に乗せてもらったときも、路面のガタガタしたところや急カーブでもModulo Xのほうがあまり怖さを感じませんでした。安心して乗っていられるので寝ちゃいそう(笑)」。

 そんな彼女の言葉にも象徴されるように、運転して楽しく、同乗者も快適に乗れる仕上がり。モデューロが培ってきたノウハウを存分に活かすとともに、コンプリートカーならではの完成度をうかがわせたN-ONE Modulo Xであった。価格についても、内容の濃さを考えるとむしろ割安に思えてくるのである。

協力:株式会社ホンダアクセス