トピック
新型「アウトランダーPHEV Sエディション」で“走り”とお手軽アウトドアを楽しんでみた
2017年3月30日 00:00
先進のアウトランダーPHEVが大きく生まれ変わり「Sエディション」が登場
電動化技術は今後もますます重要になる。ハイブリッドの推進力となったトヨタ自動車では2016年にはハイブリッド比率が5割に達し、さらに近い将来、内燃機だけで走る乗用車はなくなると公表。電動化は世界の自動車業界の趨勢でもある。
ハイブリッドに先鞭をつけた「プリウス」は今やトヨタの基幹車種であり、さらにハイブリッドの先にある「プリウス PHV」も発売された。PHV(PHEV)はハイブリッドバッテリーで走れる距離を伸ばし、なおかつ外部充電できるためガソリンの使用量を大幅に減らすことができるので次のハイブリッドと言われている。
さて、三菱自動車工業の「アウトランダーPHEV」だ。三菱自動車は2013年、すでに独自のアプロ―チで限りなくEV(電気自動車)に近いアウトランダーPHEVを世に送り出した。いかにも技術に野心的な三菱自動車らしい商品だ。
一部改良を受けた2017年モデルは、アウトランダーPHEV登場以来、2回目のビッグマイナーチェンジで、2年前には外観が「ダイナミックシールド」デザインとなり、今回は、主に制御、走りなど、中身が大きく変わった。また、コネクティング技術として大きな話題を呼びそうなスマートフォン連携ディスプレイオーディオを搭載したことも大きな話題だ。
さらにスポーティグレードとしてSエディションが登場したことも注目される。ここではSエディションにフォーカスを当て、アウトランダーPHEVならではの走りと使い勝手を楽しむためにプチキャンプに出かけてみた。
まず東名高速道路 東京IC(インターチェンジ)近くにある三菱自動車 世田谷店へ。この世田谷店は、同社の次世代店舗コンセプト「電動DRIVE STATION」第1号店で、電動車両の普及を見据えたディーラーになっている。ディーラーの一角には停電時でもPHEVから給電できる家屋を模した部屋があり、実際に太陽光と併用しながら電気を絶やさない様子を再現できる。今回は、この世田谷店でアウトランダーPHEV Sエディションをピックアップし、千葉のキャンプ場「イレブンオートキャンプパーク」へ向かった。
今回のビッグマイナーチェンジではスマートフォン連携ディスプレイオーディオも大きなトピックだ。iPhoneやAndroid端末につなぐことでApple CarPlayやAnoroid Autoが使え、常に最新のナビデータが得られる。もちろん、音声認識やオーディオ、電話を掛けるなど、使い慣れたアプリをアウトランダーPHEVで使うことができる。クルマで使えるアプリは、安全の観点から使えるものに制限があるが必要十分以上の機能が使える。
今のところ相性はAndroidの方が上だが、iPhoneもすぐに同じレベルになるとのこと。このイレブンオートキャンプパークまで自分のiPhoneのCarPlayで案内されたが、音声で呼び出しもでき、使いやすかった。まだ音声認識など改善点はあるが、将来性もあり期待できる。
走りのよさと、EV走行モードが印象的なアウトランダーPHEV
アウトランダーPHEVは前後にモーターを持ち4輪を駆動するAWD。独立制御で様々な路面に対応できる能力を持つ。今回はドライ、ウェット路面だったが、チャンスがあればAWD技術に長けた三菱自動車ならではの低ミュー路走破にもトライしたい。
新型アウトランダーPHEVではさらにEV走行能力を強化するため、2017年モデルでは強制的に電気だけで走るEVプライオリティモード(EV優先モード)を設定し、ハードウェアスイッチも備えた。その走行距離は最大で60kmになる。
モーターによる加速の気持ちよさは内燃機関とトランスミッションによるものとは違って、極めてスムーズで理にかなっている。アクセルを踏んだ直後から高いトルクを発揮し、1900kgの車重があるSUVの加速とは思えないほど力強く、滑らかなものだ。もちろんアウトランダーにはいわゆるトランスミッションはなく、連続的で気持ちのよい加速はいつ乗っても快感だ。
新たに追加されたSエディションはスポーティグレードで走りも重視したモデル。ダンパーはビルシュタイン製を装着し、このチューニングがかなり優れている。ダンパーは普通は減衰力を重視するが、あえて初期の動きに着目し装着している。つまり路面からのショックがガツンとしたものではなく、マイルドで滑らかだ。
併せてSエディションでは、ボディの一部に接着剤を使用し、数字に表われる部分剛性よりも全体が締まる感じになっている。使用部分はボディ後半の開口部で、リアハッチゲートとリアホイールアーチ付近に約4mの長さで使われている。
効果は大きく、例えば段差乗り越しなどで瞬間的に接地を失うような場面でも、すぐに追従してくれ、サスペンションの動きも無駄がない。段差の高さによってはまだバタバタする場面もあるが、それでも収束は早い。
アウトランダーPHEVのハンドリングはもともと重いバッテリーを床下に搭載しているために重心高が下にあり、ロールの少ないSUVとは思えない安定性の高さを誇っていたが、Sエディションではさらに磨きがかけられ、ビルシュタイン製ダンパーのチューニングでロールはスムーズに進行し、同時にステアリングの応答性が滑らかになっていた。この滑らかさはワインディングロードだけで効果があるわけではなく、むしろ日常的な市街地こそ本領を発揮する。街角でスッキリとハンドルが切れることでクルマを動かすという質感が上がっている。
もう一つ、アウトランダーPHEVの魅力は静粛性の高さにある。このクラスのSUVの静粛性はかなり高いとは言うものの、エンジンとトランスミッションのノイズはそれなりに室内に伝わってくる。アウトランダーPHEVは基本的に電気モーターで動くので内燃機の回転の上昇に伴うノイズは限りなく小さく、ロードノイズが一番大きいということになる。
また走りには直接関係ないが、60Aの急速充電器であれば急速充電時間が30分から25分に短くなっている。たかが5分、されど5分で、充電に限らずバッテリーマネージメントの進化が及ぼす影響は大きい。
搭載されている走行用バッテリーなどは80セルのままで基本的には変わらないが、制御をブラッシュアップすることでノーマルモードでもEVで走る領域を拡大して、強めのアクセルでもエンジンをかけて充電するタイミングを遅くしている。つまり市街地ではほとんどEVで走るので、きわめて静かで滑らか、快適だ。
高速道路での走りの安定感も高く、駆動は電気だけでも走れるが、さすがに瞬く間にバッテリーを消耗するのでエンジンをかけて充電する。さらに高速走行を続けるとガソリンエンジン直結となり、内燃機の効率の高いところを使って走る賢いシステムだ。
1500Wの給電能力を使って、最新家電製品でお手軽キャンプ
キャンプ場が近づいたら、電化製品の使用に備えて、バッテリーチャージモードでエンジンをかけて充電を開始する。走りながら充電するのですぐにというわけにはいかないが、30分ほどチャージモードで走るとバッテリー残量はプチキャンプに十分なまで満たされた。
キャンプ場では早速調理にかかる。とはいえ、最新の電化製品で瞬く間に美味しい親子丼、ステーキ、うな豆腐などを美味しく食べるだけだが……。
下ごしらえができているとはいえ、1500Wまでの電気製品が使えるので、手軽で便利な調理が可能だ。ただしコンセントがロアコンソール背面とラゲッジルーム運転席側の2カ所にあるため、合計1500W以内で使われていることが分かるような表示部があると便利だなぁと思った。とはいえワット数の大きな鉄板焼きも問題なく使え、電気の常で早い調理が可能なのはプチキャンプにはうれしい。
最後にはミルで挽いた香り高いコーヒーをいただき、楽しいプチキャンプはアッという終了した。この間に充電するためのエンジン始動はなかった。冒頭の世田谷店店長に聞いた話では、10日分の家庭用電力ならガソリン満タンのアウトランダーPHEVで賄えるということなので、プチキャンプぐらいではまったく問題ないだろう。5人乗りのキャビン空間や大きなラゲッジルームがあるのも、キャンプ用品を無理なく積み込めるアウトランダーPHEVならではの魅力だ。
アウトランダーPHEVでは、予防安全のe-Assistもカメラとレーザーレーダーを併用した歩行者検知機能付衝突軽減ブレーキとなり、誤発進防止システム、後側方車両の接近検知機能など一気にレベルアップした。この種の技術は日進月歩で折を見てさらに進化していくことは間違いないだろう。
協力:三菱自動車工業株式会社